ファイナルファンタジーⅣ ~IF~   作:FF4熱再燃中

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ドワーフ城⑥

 

 カインが再び操られ、ゴルベーザの手に最後のクリスタルが渡ってしまった。

 

 しばらく、誰も何も話せなかった。

 重い足取りのまま、一行はドワーフ城のジオット王のもとへ戻る。

 

「おお!よくぞ戻った!さあ、最後のクリスタルを……」

「………………」

「……実は」

 

 ジオット王の声に、セシルたちはすぐには答えられなかった。

 誰もが俯き、重い沈黙がその場に落ちる。

 やがてセシルが口を開き、最後のクリスタルまでゴルベーザの手に渡ってしまったことを告げた。

 

「なんと!揃ってしまったか!もはや打つ手はない……あの魔導船の伝説が本当でもない限り……」

「魔導船?」

 

 思わぬ言葉に、セシルは聞き返した。

 最後の希望とも取れるその名に、一行の視線がジオット王へ集まる。

 

「遥か昔にあったとされる巨大な船じゃ。こんな伝説がある。竜の口より生まれしもの」

「それはミシディアの!」

 

 ジオット王の言葉に、セオドールが反応した。

 その伝説は、ミシディアに伝わるものとして、セオドールにも馴染みのある話だった。

 

「ご存じか?ミシディアを!」

「地上の、魔導士の里……私の故郷です」

「なんと!ミシディアは実在したか!」

 

 ジオット王は驚きに目を見開く。

 遥か昔の伝説として語り継がれてきたミシディアが、地上に実在していたことに驚きを隠せなかった。

 

「長老は祈りの塔に入られ祈り続けています」

「もしやそのお方は……魔導船を復活させるおつもりか?いや!そう信じるしか道はない!」

 

 ジオット王の表情に、わずかな希望が宿る。

 すべてのクリスタルを奪われ、絶望的な状況に追い込まれた今、魔導船の伝説だけが残された可能性だった。

 

「ミシディアだ!ミシディアに急ぐのじゃ!」

「でも、地上への道は塞がっています!」

「バブイルの塔もクリスタルが全部揃っちまって近づけやしねー!」

 

 地上へ続く道は塞がれ、バブイルの塔もゴルベーザの手に落ちたクリスタルによって、その力を増し、入ることはかなわない。

 地上へ戻りたくとも、今のセシルたちには、そのための手段がなかった。

 

「ワシが何とかしよう!」

 

 重苦しい空気を吹き飛ばすような声が響いた。

 

「シド!」

 

 振り返ったセシルたちの前に、シドが姿を現す。

 

「ファルコンの船首にドリルを付け、地上への穴を塞いでいる岩を掘りながら進むんじゃ!」

「傷はもういいの?」

「こんな老いぼれの怪我を心配している時じゃなかろう!」

「ほんとにできんのか?」

「飛空艇のシドに不可能の文字はないわ!」

 

 セシルたちは口々にシドの身体を案じるが、当の本人は怪我など気にする様子もない。

 すでに頭の中はファルコンの改造でいっぱいらしく、ドリルを取り付ける方法や必要な材料について考え始めていた。

 

「よっしゃ!さっそく改造じゃあ!」

「なるほど、飛空艇の改造か、俺も手伝おう」

 

 さっそく飛空艇へ向かおうとするシド。

 そこに場の空気をさらに軽くするような調子で、ある人物が姿を現した。

 

「ギース!」

「もう動いていいのか!?」

 

 あれほどの重傷を負い、ドワーフの城で眠っていたギースが現れたことに、セシルたちは目を見開いた。

 身体のあちこちにはまだ包帯が巻かれている。

 顔色も決して良いとは言えず、完全に傷が癒えたわけではないことは一目で分かった。

 

「なんじゃ、おぬしは寝といてよかったぞ?」

「セシルたちが帰ってきたと聞いた途端に、シドが騒いで医務室を飛び出たから、その騒ぎで起こされたんだよ俺は……あれだけ騒がれちゃ、寝れるものも寝れねえ」

 

 ギースが起き上がった原因は、どうやらシドだったらしい。

 

「それに、呑気に寝てる場合じゃないみたいだしな。急ぎなら人手の一つや二つ多めにほしいだろ?」

「ふん、まあいい。一大事じゃ!怪我人だからと容赦はせんぞ!」

「ああ、そのつもりで頼む」

 

 ギースの言葉を聞いたシドは、にやりと笑った。

 

 

 セシル、セオドール、エッジ、ギース、そしてドワーフたちまで、全員がシドの指示のもとで改造作業に駆り出されることとなった。

 全員、シドの指示のもとで改造作業に駆り出されることとなった。

 怪我人のギースまで容赦なく戦力に数え、シドは次々と作業を割り振っていく。

 こうして、ファルコンの改造作業が慌ただしく始まった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ファルコンの改造作業は、シドの指揮のもとで着々と進んでいた。

 ギースとエッジは二人で、部品の取り付け作業を行う。

 

「なんというか……妙に板についてるな」

 

 エッジの手際の良さに、ギースは感心したように声を漏らす。

 

「おめーが『釘打ち』の異名をじじいに伝えたから、前の作業でもオレはいいように使われてたんだよ!」

「ああ、アレ……確かに話したが、覚えてたんだなシド」

 

 磁力の洞窟で何気なく話したことを、今でもシドが覚えていたことに、ギースは少し驚いていた。

 

「なんでネジ回しまでオレの仕事になるんだっ!」

「『ネジ回しのエッジ』に異名変えるか?」

「変えるわけねーだろ!」

 

 エッジは文句を言いながらも、ネジを回して部品を固定する。

 ギースはそんなエッジの姿を見て、どこか楽しそうに笑っていた。

 

「笑ってんじゃねえ!」

「いや、似合ってるなと思ってな」

 

 そんな軽いやり取りを交わしていたエッジだったが、ふと表情を変える。

 しばらくギースの横顔を見つめた後、周囲へ視線を巡らせた。

 これから尋ねることは、ほかの者にむやみに聞かせるわけにはいかない。

 エッジは周囲に誰もいないことを確認すると、ギースへ問いかけた。

 

「おい、おめー俺に何か隠しごとしてねえか?」

「隠しごと?何が?」

 

 ギースは手を動かしたまま、何のことか分からないとでも言うように答えた。

 その口調も表情も、いつもと変わらない。

 だが、こういう時のギースが一筋縄ではいかないことを、エッジはよく知っていた。

 

「………………」

 

 このギースに、探りを入れても埒が明かない。

 ならば、最初から核心を突くしかなかった。

 

「『俺はお前は殺せない』」

「っ!?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ギースの手が止まった。

 幻獣の村で、エッジだけが聞き取ったギースの言葉。

 あの時は意味が分からなかった。

 だが今なら、その言葉の意味が分かるかもしれない。

 

「な、なんだそれ……」

「おめーが大怪我しているときに、ぼやいてた言葉だ」

 

 エッジはギースの反応をじっと見つめる。

 ギースは明らかに動揺していた。

 先ほどまで浮かべていた余裕のある表情は消え、視線がわずかに泳いでいる。

 

「封印の洞窟でゴルベーザに会ったぜ」

 

 実際にゴルベーザを目の当たりにした瞬間、エッジは言葉を失うほどの衝撃を受けた。

 そして、気づいた以上、このまま知らぬふりをする選択肢は存在しなかった。

 

「!」

「……さすがに、会って気づけないほどオレは鈍感じゃねえぞ」

 

 封印の洞窟でゴルベーザと対峙したことで、エッジの中にあった疑念はもはや疑念ではなくなっていた。

 ギースがうわ言のように口にしていた言葉の意味が、ようやく繋がった。

 

「そのうえで、オレはおめーに聞いてる。隠していることを、おめーの口から洗いざらい全部吐け」

「……俺の、口からか……」

 

 ギースは俯き、しばらく黙り込んだ。

 やがて小さく息を吐くと、手にしていた工具を置く。

 もう誤魔化しても仕方がない。そう観念したように、ギースはゆっくりとエッジへ顔を向けた。

 

「エッジ、お前の想像通りだ」

 

 それだけを告げると、ギースは一度言葉を切った。

 自分の口からその名を告げることを躊躇うように、わずかに視線を落とす。

 

「ゴルベーザは……カグヤだ」

 

 その名前が告げられた瞬間、エッジの表情が固まった。

 想定はしていた、それでも、実際にギースの口から告げられると、その衝撃は大きかった。

 

 だとしても、エッジにはまだ疑問が残っている。

 自分が知るカグヤは、こんなことをする人間ではない。

 ギースを傷つけ、クリスタルを奪い、世界を脅かすような存在になるなど、どうしても結びつかなかった。

 

「いったい、何があった?」

「何が……あった、か……それは、分からない」

「分からない?」

 

 ギースは俯いたまま、しばらく言葉を探すように黙り込む。

 そんなギースの言葉に、エッジは眉をひそめた。

 

「分からないんだよ、あの日にあいつに何が起こったのかが!」

 

 ギースは思わず声を荒らげた。握り締めた拳が小さく震えている。

 

「あの日から、ずっと答えを探してるんだ……」

 

 そして、ギースはカグヤがゴルベーザとなった日のことを語り始めた。

 

 

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