ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
カインが再び操られ、ゴルベーザの手に最後のクリスタルが渡ってしまった。
しばらく、誰も何も話せなかった。
重い足取りのまま、一行はドワーフ城のジオット王のもとへ戻る。
「おお!よくぞ戻った!さあ、最後のクリスタルを……」
「………………」
「……実は」
ジオット王の声に、セシルたちはすぐには答えられなかった。
誰もが俯き、重い沈黙がその場に落ちる。
やがてセシルが口を開き、最後のクリスタルまでゴルベーザの手に渡ってしまったことを告げた。
「なんと!揃ってしまったか!もはや打つ手はない……あの魔導船の伝説が本当でもない限り……」
「魔導船?」
思わぬ言葉に、セシルは聞き返した。
最後の希望とも取れるその名に、一行の視線がジオット王へ集まる。
「遥か昔にあったとされる巨大な船じゃ。こんな伝説がある。竜の口より生まれしもの」
「それはミシディアの!」
ジオット王の言葉に、セオドールが反応した。
その伝説は、ミシディアに伝わるものとして、セオドールにも馴染みのある話だった。
「ご存じか?ミシディアを!」
「地上の、魔導士の里……私の故郷です」
「なんと!ミシディアは実在したか!」
ジオット王は驚きに目を見開く。
遥か昔の伝説として語り継がれてきたミシディアが、地上に実在していたことに驚きを隠せなかった。
「長老は祈りの塔に入られ祈り続けています」
「もしやそのお方は……魔導船を復活させるおつもりか?いや!そう信じるしか道はない!」
ジオット王の表情に、わずかな希望が宿る。
すべてのクリスタルを奪われ、絶望的な状況に追い込まれた今、魔導船の伝説だけが残された可能性だった。
「ミシディアだ!ミシディアに急ぐのじゃ!」
「でも、地上への道は塞がっています!」
「バブイルの塔もクリスタルが全部揃っちまって近づけやしねー!」
地上へ続く道は塞がれ、バブイルの塔もゴルベーザの手に落ちたクリスタルによって、その力を増し、入ることはかなわない。
地上へ戻りたくとも、今のセシルたちには、そのための手段がなかった。
「ワシが何とかしよう!」
重苦しい空気を吹き飛ばすような声が響いた。
「シド!」
振り返ったセシルたちの前に、シドが姿を現す。
「ファルコンの船首にドリルを付け、地上への穴を塞いでいる岩を掘りながら進むんじゃ!」
「傷はもういいの?」
「こんな老いぼれの怪我を心配している時じゃなかろう!」
「ほんとにできんのか?」
「飛空艇のシドに不可能の文字はないわ!」
セシルたちは口々にシドの身体を案じるが、当の本人は怪我など気にする様子もない。
すでに頭の中はファルコンの改造でいっぱいらしく、ドリルを取り付ける方法や必要な材料について考え始めていた。
「よっしゃ!さっそく改造じゃあ!」
「なるほど、飛空艇の改造か、俺も手伝おう」
さっそく飛空艇へ向かおうとするシド。
そこに場の空気をさらに軽くするような調子で、ある人物が姿を現した。
「ギース!」
「もう動いていいのか!?」
あれほどの重傷を負い、ドワーフの城で眠っていたギースが現れたことに、セシルたちは目を見開いた。
身体のあちこちにはまだ包帯が巻かれている。
顔色も決して良いとは言えず、完全に傷が癒えたわけではないことは一目で分かった。
「なんじゃ、おぬしは寝といてよかったぞ?」
「セシルたちが帰ってきたと聞いた途端に、シドが騒いで医務室を飛び出たから、その騒ぎで起こされたんだよ俺は……あれだけ騒がれちゃ、寝れるものも寝れねえ」
ギースが起き上がった原因は、どうやらシドだったらしい。
「それに、呑気に寝てる場合じゃないみたいだしな。急ぎなら人手の一つや二つ多めにほしいだろ?」
「ふん、まあいい。一大事じゃ!怪我人だからと容赦はせんぞ!」
「ああ、そのつもりで頼む」
ギースの言葉を聞いたシドは、にやりと笑った。
セシル、セオドール、エッジ、ギース、そしてドワーフたちまで、全員がシドの指示のもとで改造作業に駆り出されることとなった。
全員、シドの指示のもとで改造作業に駆り出されることとなった。
怪我人のギースまで容赦なく戦力に数え、シドは次々と作業を割り振っていく。
こうして、ファルコンの改造作業が慌ただしく始まった。
◇ ◇ ◇
ファルコンの改造作業は、シドの指揮のもとで着々と進んでいた。
ギースとエッジは二人で、部品の取り付け作業を行う。
「なんというか……妙に板についてるな」
エッジの手際の良さに、ギースは感心したように声を漏らす。
「おめーが『釘打ち』の異名をじじいに伝えたから、前の作業でもオレはいいように使われてたんだよ!」
「ああ、アレ……確かに話したが、覚えてたんだなシド」
磁力の洞窟で何気なく話したことを、今でもシドが覚えていたことに、ギースは少し驚いていた。
「なんでネジ回しまでオレの仕事になるんだっ!」
「『ネジ回しのエッジ』に異名変えるか?」
「変えるわけねーだろ!」
エッジは文句を言いながらも、ネジを回して部品を固定する。
ギースはそんなエッジの姿を見て、どこか楽しそうに笑っていた。
「笑ってんじゃねえ!」
「いや、似合ってるなと思ってな」
そんな軽いやり取りを交わしていたエッジだったが、ふと表情を変える。
しばらくギースの横顔を見つめた後、周囲へ視線を巡らせた。
これから尋ねることは、ほかの者にむやみに聞かせるわけにはいかない。
エッジは周囲に誰もいないことを確認すると、ギースへ問いかけた。
「おい、おめー俺に何か隠しごとしてねえか?」
「隠しごと?何が?」
ギースは手を動かしたまま、何のことか分からないとでも言うように答えた。
その口調も表情も、いつもと変わらない。
だが、こういう時のギースが一筋縄ではいかないことを、エッジはよく知っていた。
「………………」
このギースに、探りを入れても埒が明かない。
ならば、最初から核心を突くしかなかった。
「『俺はお前は殺せない』」
「っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、ギースの手が止まった。
幻獣の村で、エッジだけが聞き取ったギースの言葉。
あの時は意味が分からなかった。
だが今なら、その言葉の意味が分かるかもしれない。
「な、なんだそれ……」
「おめーが大怪我しているときに、ぼやいてた言葉だ」
エッジはギースの反応をじっと見つめる。
ギースは明らかに動揺していた。
先ほどまで浮かべていた余裕のある表情は消え、視線がわずかに泳いでいる。
「封印の洞窟でゴルベーザに会ったぜ」
実際にゴルベーザを目の当たりにした瞬間、エッジは言葉を失うほどの衝撃を受けた。
そして、気づいた以上、このまま知らぬふりをする選択肢は存在しなかった。
「!」
「……さすがに、会って気づけないほどオレは鈍感じゃねえぞ」
封印の洞窟でゴルベーザと対峙したことで、エッジの中にあった疑念はもはや疑念ではなくなっていた。
ギースがうわ言のように口にしていた言葉の意味が、ようやく繋がった。
「そのうえで、オレはおめーに聞いてる。隠していることを、おめーの口から洗いざらい全部吐け」
「……俺の、口からか……」
ギースは俯き、しばらく黙り込んだ。
やがて小さく息を吐くと、手にしていた工具を置く。
もう誤魔化しても仕方がない。そう観念したように、ギースはゆっくりとエッジへ顔を向けた。
「エッジ、お前の想像通りだ」
それだけを告げると、ギースは一度言葉を切った。
自分の口からその名を告げることを躊躇うように、わずかに視線を落とす。
「ゴルベーザは……カグヤだ」
その名前が告げられた瞬間、エッジの表情が固まった。
想定はしていた、それでも、実際にギースの口から告げられると、その衝撃は大きかった。
だとしても、エッジにはまだ疑問が残っている。
自分が知るカグヤは、こんなことをする人間ではない。
ギースを傷つけ、クリスタルを奪い、世界を脅かすような存在になるなど、どうしても結びつかなかった。
「いったい、何があった?」
「何が……あった、か……それは、分からない」
「分からない?」
ギースは俯いたまま、しばらく言葉を探すように黙り込む。
そんなギースの言葉に、エッジは眉をひそめた。
「分からないんだよ、あの日にあいつに何が起こったのかが!」
ギースは思わず声を荒らげた。握り締めた拳が小さく震えている。
「あの日から、ずっと答えを探してるんだ……」
そして、ギースはカグヤがゴルベーザとなった日のことを語り始めた。