ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
ひりひりと焼けつく日差しを浴びながら、ギースは砂漠を歩いていた。
行く手を阻む魔物を刀で軽く斬り伏せ、そのままカイポを目指す。
「……魔物が多いな」
前にこの砂漠を通った時は、ここまでではなかった。
最近になって魔物の数が目に見えて増えている。
嫌な予感を覚えながら歩いていると、砂丘の向こうに人影が見えた。
「……人?」
慌てて駆け寄る。
倒れていたのは、一人の若い女性だった。
「お、おい! 大丈夫か!」
肩を揺すると、女性の身体は異様なほど熱い。
意識はなく、苦しそうに浅い呼吸を繰り返している。
「……セシル……」
かすれた声が、唇から漏れた。
「死なないでセシル……」
うわごとのように、その名を何度も繰り返す。
恋人なのか、家族なのか、それとも仲間なのか。
ギースには分からない。
だが、このまま放っておけば助からないことだけは分かった。
ギースは女性を背負い、急いでカイポへ向かった。
◇ ◇ ◇
途中、何度か魔物の襲撃を受けたものの、それらを退けながら、日が落ちる頃にようやくカイポへたどり着いた。
村の入り口へ差しかかると、一人の老人がギースたちの姿に気付く。
「まさか、その子は高熱病か!早く、わしの家へ!すぐ寝かせねばならん!」
「ありがとう、頼む!」
老人に案内されて家へ入ると、奥から一人の老婆が慌ただしく姿を現した。
「おやまぁ、高熱病かい!おじいさん、薬草を!坊やはオアシスから水をお願い!」
「分かった!」
ギースは言われるままオアシスへ走り、水を何度も運んだ。
老人は薬を調合し、老婆は濡れ布を替え、三人がかりで女性の看病を続ける。
ようやく女性の苦しそうな息遣いが落ち着いた頃には、夜が明け、日がすっかり昇っていた。
「……よし。ひとまず落ち着いたか」
「助かったのか?」
「いや、今は熱を抑えておるだけじゃ。このままでは、いずれまたぶり返す」
「じゃあ、どうすれば……」
「高熱病を治すには、『砂漠の光』が必要じゃ。しかし――」
「ローザ!」
慌ただしく一人の暗黒騎士が部屋へ飛び込んできた。
そのまま寝台へ駆け寄り、女性の手をそっと握る。
「………………」
少し遅れて、小柄な少女が静かに部屋へ入ってきた。
不安そうに寝台を見つめる少女へ、ギースはちらりと視線を向けるが、暗黒騎士の方に声をかけた。
「その恰好……バロンの暗黒騎士だな。彼女が何度もうわごとで『セシル』って呼んでたけど……お前がセシルで合ってるか?」
「あ、ああ……君は?」
「通りすがりだ。彼女が砂漠で倒れてるところを見つけて、背負ってここまで運んできた。あとは、この家の人たちが手伝ってくれた」
ギースはここまでの経緯を簡潔に説明した。
「彼女は今、高熱病に侵されておる」
「高熱病?」
「この地域特有の風土病じゃ。バロンからここまで無理をして来たのだろう。急ぎ旅で体力を消耗したところへ、この砂漠の気候が追い打ちをかけた」
「そんな……治療する方法はないんですか?」
セシルは眠るローザへ視線を向けた。
苦しそうな寝息は少し落ち着いていたものの、その顔色は青白いままだ。
「ある。幻の宝石『砂漠の光』じゃ。しかし、あれはアントリオンの洞窟でしか手に入らん。ダムシアン王家の者しか立ち入ることを許されておらんのじゃ。稀に王家の行商人が持ち込むこともあるが、ごくわずか。今、カイポには一つもない」
老人の話を聞き終えたギースは、小さく腕を組んだ。
「つまり、いつ来るか分からない行商人を待つか、ダムシアン王家に直談判して取りに行くしかないってことか」
「……ありがとうございます。もう少し彼女を診ていただくことは可能でしょうか」
「それは構わんが、どうするつもりじゃ」
「ダムシアンへ、『砂漠の光』を取ってきます」
「OK。じゃあ、俺も手伝う」
ギースが迷いなくそう言うと、セシルは驚いたように目を見開いた。
「……恩に着る」
「気にするな、乗り掛かった舟だ」
ギースは照れ隠しのように肩をすくめる。
「そういや、まだ名乗ってなかったな。俺はギース」
ギースは軽く笑って右手を差し出す。
差し出された手をしっかりと握り返し、セシルも穏やかに微笑んだ。
「僕はセシル。よろしく頼む、ギース」
「よろしくな、セシル。それと……君も一緒に行くのか?」
「うん、あたしもついてく」
ギースは少女の前にしゃがみ込み、目線を合わせる。
「そうか、よろしくな」
「あたしはリディア、よろしく」
小さく微笑むリディアに、ギースも笑みを返した。
「準備をしたら、ダムシアンへ向かおう。ここからなら地下水脈を通るのが一番早い」
セシルとリディアは小さく頷く。
三人は『砂漠の光』を求め、地下水脈へと向かった。