ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
「おぬしたちなぁに道草食っとるんじゃ!さっさと手伝え!」
甲板に戻ってきた三人を、シドの怒鳴り声が迎えた。
「うっせーぞ、じーさん!」
エッジは文句を言いながら、手にしていた部品をシドへ差し出す。
「これでどうだ!!」
「ふむ、十分じゃ!!さっそく取り付けに入るぞ!!!」
シドは部品を受け取ると、満足そうに頷いた。
そのままシドの指示のもと、ファルコンの船首へドリルの取り付け作業が進められていく。
やがて作業は無事に終わり、ファルコンの船首には巨大なドリルが取り付けられた。
こうしてファルコンにドリルが取り付けられた。
「これで地上に出れられるのね」
「ありがとうシド……シド?」
セシルがお礼を言うが、シドからの返事はない。
すると、シドの身体がゆらりと傾いた。
「シド!」
シドがその場に倒れ、セシルたちは慌てて駆け寄った。
◇ ◇ ◇
ドワーフ城の医務室。
そこには、倒れたシドが寝かされていた。
「シド……」
「無茶するから……」
「どうやらワシなんかの出る幕じゃなくなってきたの……おまけにこの体じゃワシにできるのは飛空艇をいじることくらいじゃ……」
「そんなことない、十分助かった」
「まったく……そんな体でよくやるぜじーさん、あんたにゃ負けたぜ!」
「早くよくなって……」
仲間たちは眠るシドを囲み、言葉をかける。
シドの力がなければ、地上へ戻ることもできなかった。
その無茶を知っているからこそ、誰も責めることはできなかった。
ただ一日でも早く、元気な姿を見せてほしい。
その思いだけは、皆同じだった。
「セシルと……ローザを頼むぞ……!」
「分かってるって!あんたはここでゆっくり待ってな!」
「ああ、後は任せてほしい」
「セシル……気を付けるんじゃぞ!」
「シドも」
シドは一行を見送るように、力強く頷いた。
その姿に、セシルたちは改めてシドの想いを受け取る。
「さ、行け。こんなジジイに構っとる暇はないはずじゃ!」
「ありがとう……シド!」
シドに見送られ、セシルたちは医務室を後にした。
扉が閉じる直前、セシルはもう一度だけ振り返る。
そこには、ベッドに横たわりながらも、最後まで仲間たちを気遣うシドの姿があった。
「よし、じゃあ行くぞ」
「おい、待て怪我人その2。てめーは戻れ」
医務室を出たところで一行に着いていこうとするギースに対し、エッジは呼び止めた。
「なんでだ」
「なんでだ。……じゃねえよ。てめーは一度鏡見てこい。その包帯まみれで戦う気か?」
「傷はほとんど癒えてる。戦闘には支障はない」
ギースは包帯の一つを解き、癒えた傷を見せるが、エッジはそんなギースを睨みつける。
自分では問題ないと思っているのだろうが、その姿はどう見ても万全には程遠い。
エッジの口調こそ荒いが、その目には苛立ちだけではなく、無茶をさせたくないという心配が滲んでいた。
そして、それはエッジだけではない。
他の皆もギースの姿を見つめる目には同じ心配が浮かんでいた。
「ギース、君もシドと一緒に待っていてくれ。後は僕たちがやる」
「……却下だ。俺も行く」
セシルの言葉にも、ギースは首を横に振る。
「君はまだ──」
「大丈夫だ。さっきも言っただろ。戦える」
セシルがなおも説得しようとするが、ギースは譲らない。
その表情には、ただ戦いたいというだけではない、どうしても自分が行かなければならないという強い意志が滲んでいた。
「それに、決めろと言ったのはエッジ。お前だ」
「……………………」
ギースは先ほどの話を引き合いに出す。
それを聞いたエッジは、何も言わずに黙り込んだ。
「?」
当然、先ほどの話を聞いていないセシルたちには、ギースの言葉の意味が分からない。
エッジはしばらく黙ったまま、ギースを見つめていた。
「決めれるのか?」
「……それは、分からない。だが、ここで待ってたら俺は一生後悔する」
ギースはまっすぐにエッジを見つめる。
答えはまだ出ていない。
カグヤをどうするのかも、自分が何を選ぶのかも、今のギースには分からない。
それでも、ここで何もせずに待っていることだけはできなかった。
後になって「あの時行っていれば」と思うことだけはしたくない。
「だから、一緒に行かせてほしい。約束する、無理も……邪魔もしない」
「そーかよ。じゃあ勝手にしろ。オレはもう止めねー」
「エッジ!」
あっさりと引き下がったエッジに、セシルは思わず声を上げる。
だが、エッジはそれ以上何も言わなかった。
これ以上止めてもギースの意思は変わらない。そう判断したのだろう。
セシルは何か言おうとしたが、ギースの決意を感じ取り、言葉を飲み込んだ。
「無理だけはしないでくれ……」
「分かってる。これ以上心配はかけさせない」
ギースを加え、セシルたちはドワーフ城からファルコンへ乗り込む。
そして、ファルコンのドリルで岩を掘り進め、地上への道を切り開いていった。
やがて岩を抜け、ファルコンは地上へと姿を現した。
「おおー太陽がまぶしいぜー!」
久しぶりに浴びる太陽の光に、エッジは嬉しそうに目を細める。
「このままミシディアに向かうのか?」
「いや、その前に行くところがある」
「行くところ?」
◇ ◇ ◇
──ファブール
「ヤンが……生きてたのか」
ギースは、ヤンが生きていたことをセシルたちから聞かされる。
さらに、今はまだ意識が戻らず、シルフたちに看病されていることも聞いた。
セシルはその報告と、ヤンを目覚めさせる方法がないか聞くためヤンの奥さんの元へ向かっていた。
「………………」
しばらくして、セシルが神妙な面持ちで戻ってくる。
「セシル!」
「奥さんから話を聞けた?」
セシルは、ヤンの妻から渡されたものをすっと取り出した。
取っ手の付いた円盤状のもの。
セシルが手にしていたのは──フライパンだった。
「……フライパン?」
「ああ、フライパン……話をしたら、これをヤンの奥さんから……」
戸惑いながら、セシルは説明する。
「『こいつでガツンと喝を入れてきな』……って」
「……そ、そいつで?」
セシルは手にしたフライパンを見つめる。
ヤンの妻が何を意図してこれを渡したのか、いまひとつ理解できていない様子だった。
「これで……料理を作ればヤンは目覚めるのかな」
「そうか。これでカツを作るのか!」
「そんな頓智じみた方法じゃないとは思うぞ」
「兄弟そろってボケるんじゃねえ」
セシルとセオドールのやり取りに、ギースとエッジが呆れたようにツッコミを入れる。
フライパン一つを前にして、妙な方向へ話が進みかける。
「確かにヤンは石頭だけど……まさかよね?」
「確かに酒瓶で殴っても無事だったが、まさかな……」
「……殴る機会があったの?」
「まあ色々あって……不可抗力だ、不可抗力」
「……不可抗力だったか?」
「あっちが操られてたんだから不可抗力だ」
フライパンを見つめながら、皆の脳裏には同じ光景が浮かんでいた。
だが、いくらなんでもまさか──
誰もそれを口にすることはなかった。
ギースはかつて、酒瓶でヤンを殴ったバロンでの一件を思い出すが、それでもまさかという思いだった。
「とにかく……これを持っていくしかないかな?」
「……行くしかないな。それしか渡されてないなら」
セシルたちは、渡されたフライパンに戸惑いながら、ヤンが眠るシルフの洞窟へ再び向かうことにした。
◇ ◇ ◇
──シルフの洞窟
「………………」
覚悟を決めたセシルは、眠り続けるヤンの前に立った。
ここへ来るまでに、誰がそれを行うのか、そしてシルフたちに止められず実行するにはどうすればいいのかを、皆で話し合って決めていた。
結果、セシルが何をやるかはシルフには言わず、ただを目覚める方法があるとだけ告げ、実行することになった。
「あ! やめ──」
シルフが止めるよりも早く、セシルはヤンの頭にフライパンを振り下ろした。
ゴンッ!!
鈍い音がシルフの家に響き、フライパンがヤンの頭を直撃した。
「ヤンが死んだらどうするの!」
「ム……」
その乱暴な行動を見たシルフは、思わず声を荒らげる。
しかし、フライパンの衝撃を受けたヤンは身じろぎすると、ゆっくりと目を開いた。
「うーん……もう、修行の時間か?もうしばらく寝かせて……」
寝ぼけたヤンは、いつものように妻に起こされたのだと思い、まだ眠り足りないとばかりに呟く。
だが、次第に視界がはっきりしてくる。
「……ん?」
見覚えのない天井。
自分を取り囲むシルフたち。
そして、目の前に立っているセシルの姿。
そこでようやく、ヤンは自分が置かれている状況を思い出した。
「はっ!セシル殿?」
「ヤン!」
「よかった!」
ヤンが無事に目を覚ましたことに、セシルたちは安堵と喜びの表情を浮かべる。
「巨大砲爆発に巻き込まれて死にかけた私を……シルフたちが救ってくれた」
ヤンは、巨大砲の爆発に巻き込まれた後、自分がシルフたちに救われた経緯を説明する。
「私も行こう……」
「だめ!まだ寝てなくちゃ!」
ヤンは起き上がると、セシルたちの旅に着いていこうとする。
しかし、シルフに止められてしまう。
「世界がかかっているのだ!寝ているわけには……」
「怪我人の出る幕じゃねーぜ」
「そなたは?」
ヤンはエッジへ視線を向ける。
見慣れない男の姿に、誰なのかと問いかけるような表情を浮かべていた。
「オレはエブラーナのエッジ!あんた以上に腕は立つさ!」
「俺の従兄だ」
エッジは胸を張り、自信満々に名乗り、すかさずギースが補足する。
エッジの言葉を否定するでもなく、むしろその腕前を知る者として、さらりと付け加えた。
「エブラーナ!なるほどギース殿の……なおさら私も……!」
「無茶しないで!私たちも力を貸すから!」
エッジの素性を知ったことで、ヤンはますます自分も同行しようと身を起こしかける。
しかし、それを察したシルフがすぐに制する。
「?」
ヤンは戸惑ったようにシルフを見る。
「この人は召喚士。召喚士なら私たちを呼び出せるわ!」
「私たちも戦います!ヤンの代わりに!」
リディアが召喚士であることを知るシルフたちは、彼女に力を貸すことで、ヤンに代わってセシルたちの力になると告げる。
「よろしくねシルフさん!」
「かたじけない……私の分も頼む!」
自分の代わりに戦うと申し出てくれた彼女たちへ、静かに頷く。
こうしてヤンは、自ら戦うことはできずとも、シルフたちに想いを託すことにした。