ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
ヤンを妻の愛で目覚めさせ、セシルたちはシルフたちの協力を得ることができた。
そして、セシルたちにはミシディアとは別にもう一つ、向かわなければならない場所があった。
「地上へ出ることができたら、バロン城へ向かうのじゃ!
そこで……一撃必殺の刃を持つものがおぬしたちを待っておる」
幻獣王リヴァイアサンから告げられた言葉を胸に、セシルたちはバロン城へと向かった。
セシルたちを待つもの……その人物には、心当たりがあった。
幻獣の世界へ行き、再びここへ戻って来い。そう告げた人物が、この城にはいた。
「よく来てくれたな」
バロン城で待っていたのは、バロン王だった。
あの日と同じように、淡い光をまといながら、静かにその場に立っている。
「遅くなり申し訳ございません」
「よい、おぬしたちも随分と苦労をしたようだ。事情はすでに幻獣王様からうかがっておる」
幻獣の世界へ行けと告げられたあの日から、随分と時間が経っていた。
セシルはそのことを詫びたが、バロン王は責めることなく、穏やかに受け止めた。
「陛下……」
「そんな悲しい目をするな。魔物にやられはしたが私は、永遠の力を手に入れた」
セシルは改めて、目の前に立つバロン王の姿を見つめる。
そこにあるのは、確かに懐かしい王の面影だった。
だが、その身体は淡い光をまとい、かつて生きていた頃とは明らかに異なっている。
もう、この人は生者ではない。
そう思い知らされ、セシルの胸に寂しさが込み上げた。
「そのミストの召喚士が呼び出せば私はいつでもお前の力になる。一撃必殺の幻獣としてな」
そう告げると、バロン王の姿が淡い光に包まれる。
光が晴れた時、そこに立っていたのは、甲冑に身を包み、巨大な馬にまたがった騎士の姿だった。
かつての王としての面影は残しながらも、その姿からは圧倒的な力が放たれている。
セシルたちは息を呑み、目の前に現れた存在を見つめた。
「だが、幻獣界の掟によりお前の力を試さねばならぬ。ぬかるでないぞ……」
次の瞬間、騎士となったバロン王が手綱を引く。
大地を蹴り上げ、馬が一気に駆け出した。
セシルたちに試練を課すため、バロン王は容赦なく襲い掛かった。
ローザが魔力を集中させる。
淡い光がセシルたちを包み込み、迫り来る攻撃に備えて防御の力を与えていく。
迫り来る巨体に、セシルは剣を構える。
「!!」
振り下ろされた剣を、セシルは剣で受け止めた。
凄まじい衝撃が腕を駆け抜ける。
足元の床が軋み、セシルの身体がわずかに後ろへ押し込まれた。
それでも、セシルは剣を離さない。
バロン王は剣を引くと、間髪入れずに馬上から横薙ぎの一閃を繰り出した。
セシルは身を屈め、その刃をかわす。
「そこだ!」
エッジが懐へ飛び込み、二刀を振るう。
しかし、バロン王は馬を巧みに操り、紙一重でその斬撃をかわした。
そのまま距離を取るかと思われた馬が、突然方向を変える。
バロン王は馬上から剣を振り下ろし、今度はエッジへと迫った。
「おっと!」
エッジが二刀を交差させて受け止める。
だが、勢いまでは殺しきれず、その身体が後方へ弾き飛ばされた。
「エッジ!」
エッジへ追撃を加えようとしたバロン王の前へ、ギースが刀を手に割って入る。
鋭く踏み込み、横薙ぎに刀を振るう。
バロン王は剣を合わせてその一撃を受け流した。
ギースは流された刀を素早く返し、今度は下から斬り上げる。
バロン王は馬を走らせながら身を翻し、刃をかわした。
「“サンダガ”!」
セオドールが魔法を放つと、直後、バロン王に激しい雷撃が馬上へと降り注いだ。
バロン王は馬を駆り、雷撃の間を縫うように駆け抜ける。
しかし、その動きを追うように次々と雷が落ち、逃げ場を狭めていく。
「お願いします!“リヴァイアサン”!」
リディアが両手を掲げる。
召喚の光が大きく広がり、室内をまばゆい光が包み込んだ。
次の瞬間、轟音とともに巨大な水流が巻き起こる。
その中から姿を現したリヴァイアサンが、バロン王へ向かって激しい津波を放った。
逃げ場を失ったバロン王と馬を、巨大な水流が飲み込む。
激しい水圧に押し流され、バロン王の身体が大きく揺らいだ。
「……………………」
水流が引いていくと、バロン王はなおも馬上に立っていた。
濡れた甲冑から水滴を落としながら、ゆっくりとセシルたちへ顔を向ける。
「よい仲間を持ったなセシル……だが、このままでは終わらん!我が奥義、斬鉄剣を受けきれるか!!」
バロン王は剣を高く掲げる。
その刀身に凄まじい力が集まり、周囲の空気さえも震え始めた。
やがて、掲げられた剣がゆっくりと振り下ろされる。
放たれた斬撃が、一直線にセシルたちへと迫る。
「“
ギースが札を掲げる。
淡い光が札から溢れ出し、迫り来る斬撃を包み込んだ。
凄まじい威力を秘めた斬鉄剣が、まるで吸い込まれるように札の中へと消えていく。
「っ!我が奥義すらも吸収するか!」
バロン王が驚きに目を見開く。
「ああ、とっておきの……最後の一枚だからな!!」
斬鉄剣を吸収され、バロン王は静かに剣を下ろす。
しばしセシルを見つめた後、その表情がわずかに和らいだ。
「たくましくなったな……」
バロン王は馬を駆り、最後の一撃を繰り出す。
迫り来る剣を前に、セシルは剣を構えた。
激しい衝撃がぶつかり合い、腕に重い負荷がかかる。
それでも、セシルは踏みとどまる。
力を込めて相手の剣を押し返すと、そのまま一歩踏み込み、バロン王へ向けて剣を振り抜いた。
「陛下!」
刃が届く寸前、バロン王の姿が淡い光に包まれる。
「バロンを、いや……世界を頼むぞ」
その声とともに、王の姿が光の中へと消えていく。
「私もオーディンとして、お前と戦おう!」
最後の言葉を残し、バロン王の姿は完全に消えた。
その場に残ったのは、静かな余韻だけだった。
「陛下……」
セシルは、消えた光を見つめる。
やがてリディアの身体を淡い光が包み込んだ。
その光が消えた時、彼女の中には新たな幻獣──オーディンの力が宿っていた。
おまけ
入れられなかった一コマ
ヤンの奥さんに愛のフライパンを返し、お礼に包丁をもらった後。
「今度は包丁をお礼に貰った……」
「よく手入れされてるな。エッジが投げたらそこらの魔物はイチコロだぜ」
「ああ……なかなかの業物だぜ!」
「……もらったお礼を魔物に投げるのは……」
「真っ先に武器にすることを考えるな」
武器にすることしか考えていないギースとエッジを、
お礼の品を投げつけるなと止めるセシルとセオドールだった。