ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
何かを隠されている。
最近、セシルはそんな感覚を抱くことが増えていた。
兄とギース、それとエッジ。
彼らが自分に何かを隠していることを、セシルは薄々感じ取っていた。
だが、それを問いただそうとは思わなかった。
自分だって、みなに話していないことがある。
セオドールと旅をし、ギースからカグヤの話を聞いたことで、セシルは少しずつ昔の記憶を取り戻していた。
それを、まだ仲間たちには伝えていない。
話す機会がなかったというのもある。
だが、それ以上に、戻ってきた記憶があまりにも断片的で、自分でも何が本当なのか、どう伝えればいいのか分からなかった。
だから、今はまだ口にしなくてもいい。
そう思っていた。
それでも──取り戻した記憶の中に、どうしても忘れられない光景がある。
炎に包まれた場所。
その中で、一人の少女が立っていた。
「セシリー……?」
泣いているのか。
笑っているのか。
その表情すら、今のセシルにははっきりとは思い出せない。
「あは、はははははは!」
炎の中で、少女は泣くように笑っていた。
その声だけが、今も鮮明に耳に残っている。
◇ ◇ ◇
月から戻ったセシルたちは、魔導船を走らせ、バブイルの塔へと近づいていた。
しかし、塔が視界に入った、その時だった。
低く重い音とともに、地面が大きく揺れる。
「キャア!?」
「バブイルの塔が!?」
窓の外へ目を向けると、バブイルの塔が不気味な光を放ち始めていた。
「遅かったか!」
フースーヤが険しい表情で塔を見つめる。
「何!?」
「バブイルの巨人が誕生する!」
次の瞬間、塔全体がまばゆい光に包まれた。
光は天へと伸び、塔の内部から巨大な影がゆっくりと姿を現していく。
やがて──バブイルの塔から、巨大な人型の姿が立ち上がった。
その巨体は、見上げてもなお全貌を捉えきれないほどに巨大だった。
全身から凄まじい魔力を放ち、その足元では大地が激しく震えている。
「……あれが、バブイルの巨人……」
セシルたちは、目の前で誕生した巨大な存在を呆然と見つめた。
巨人がゆっくりと腕を掲げる。
次の瞬間、その掌からまばゆい光が放たれた。
光線は大地を一直線に薙ぎ払い、凄まじい爆発とともに地面を大きく抉っていく。
さらに別の場所へと光線が放たれるたび、大地が次々と破壊されていく。
「ひどい……」
「ちくしょおお!!」
「もう……どうしようもないの?」
あまりにも圧倒的な破壊を前に、セシルたちは言葉を失う。
その時だった。
「アレは!?」
地上から、いくつもの砲撃が巨人へ向かって飛んでいく。
轟音とともに砲弾が巨人の身体へ次々と命中し、爆炎がその巨体を包み込んだ。
「ドワーフ戦車隊、見参!母なる大地のため、我々も戦う!」
「ラリホー!」
ドワーフたちが戦車を率い、次々と砲撃を繰り返す。
しかし、巨人はなおも歩みを止めない。
「私だけ寝ているわけにもいくまい!」
その戦車隊の中には、ヤンの姿もあった。
「ワシが来たからにゃ、心配いらんぞ! エンジン全開じゃあ!」
「はいっ!」
続いて、上空から複数の飛空艇が姿を現した。
シドが先頭の飛空艇を率い、巨人へ向けて猛然と飛んでいく。
「久しぶりだな!あんちゃん!」
「長老に助けていただきましたの!」
「そなたたちだけではない!この大地に生きとし生けるもの、すべての命の戦いじゃ!」
別の飛空艇には、ミシディアの魔導士たちが乗っていた。
その中には、石化から解放されたパロムとポロムの姿もある。
「セシル、君たちに教わった勇気を見てくれ!」
さらに別の飛空艇が巨人へと迫る。
その船上には、トロイアの兵たちを率いるギルバートの姿があった。
地上ではドワーフの戦車隊が砲撃を続け、空では飛空艇が次々と巨人へ攻撃を仕掛けていく。
大地に生きる者たちが、それぞれの力を振り絞り、バブイルの巨人へ立ち向かっていた。
「みんな……!」
セシルは、目の前に広がる光景を見つめる。
圧倒的な力を振るっていた巨人の動きが、わずかに鈍った。
「巨人が……戸惑っている!」
「今のうちに内部に入る!」
「なーるほど!ヤツの心臓部を叩くってわけか!」
地上から続く猛攻によって、巨人の動きにわずかな乱れが生じていた。
「シド、頼む!」
セシルが呼びかけると、シドが操る飛空艇が近づいてくる。
セシルたちは急いで飛空艇へと乗り移った。
「ヤツの口に近づくのだ!」
乗り込むなり、フースーヤがシドへ告げる。
「だ、誰じゃい……偉そうに!」
突然現れた老人に、シドが怪訝そうな顔を向ける。
「月の民、フースーヤだ」
「月の民じゃとー!?」
シドが驚きの声を上げる。
しかし、フースーヤは気にする様子もなくシドを見つめた。
「できるか?」
「ワシを誰じゃと思っとるんじゃ!飛空艇のシドじゃぞ!まかしとかんかい!」
「今だ!」
「みんな、つかまっとれ!」
飛空艇が一気に加速する。
ドワーフの戦車隊や他の飛空艇が放つ砲撃の隙間を縫い、シドは巨人へと接近していく。
巨人が放った光線が、飛空艇のすぐ脇を掠める。
「うおおっ!?」
船体が大きく揺れる。
それでもシドは操縦桿を離さない。
やがて、目の前に巨人の巨大な口が迫った。
「飛び込め!」
セシルたちは一斉に飛空艇から飛び降り、巨人の口の中へと身を躍らせる。
そのまま一行は、バブイルの巨人の内部へと入り込んだ。
◇ ◇ ◇
バブイルの巨人の内部へ入り込んだセシルたちは、目の前に広がる光景を見渡した。
内部には複雑な機械や無数の管が張り巡らされ、壁の奥では青白い光が絶えず明滅している。
外から見た巨体に相応しく、その内部もまた広大で、どこまでも続いているように感じられた。
「ここが、巨人の中……」
「みんな、怪我はない?」
「大丈夫!」
ローザの問いかけに、リディアがすぐに答える。
「無事に全員入り込めたようだな」
フースーヤも周囲を見渡し、全員が揃っていることを確認する。
「心臓部はどこにあるんだ?」
「ここからさらに奥に制御システムがあるはずだ。それを破壊すれば巨人は止まる」
フースーヤの言葉に、ギースは奥へ続く通路へ視線を向ける。
「よし、じゃあさっさと行こうぜ!俺たちの城をこれ以上破壊されたかねーからな!」
エッジはそう言うと、いち早く通路の奥へ向かって駆け出した。
セシルたちもその後に続き、巨人を止めるために内部を進んでいく。
◇ ◇ ◇
巨人の内部を進んでいくと、やがて一行は広大な吹き抜けへと出た。
その先には、さらに奥へと続く通路が見えていた。
「制御システムはこの道を抜けた先だったはず」
フースーヤが前方を見据える。
「待ちかねたぞ!」
「!?」
吹き抜けの先から、聞き覚えのある声が響いた。
「ルビカンテ!?」
そこに立っていたのは、倒したはずのルビカンテだった。
さらに、セシルたちの周りを囲むように次々と人影が姿を現す。
「巨人は止まらぬ!」
「クカカ……お前たちは!」
「ここで屍となる!」
バルバリシア、カイナッツォ、スカルミリョーネ。
かつてセシルたちが死闘を繰り広げた四天王が、再び一堂に姿を現した。
「四天王!」
セシルたちは思わず身構える。
「ゼムス様より……」
「授かった命で!」
「お前たちを殺す!」
「また、戦えるとはな!」
ルビカンテが一歩前へ出る。
「だが、前の戦いでお前たちに教えられた。力を合わせるということをな……
さあ、回復してやろう!」
ルビカンテが手を掲げると、セシルたちの傷ついた身体を温かな光が包み込んでいく。
消耗していた力が戻り、これまでの戦いで負った傷も癒されていく。
「持てる力のすべてでかかってくるがいい!」
四天王が一斉に構える。
ゼムスの力によって蘇った四天王が、今度こそ力を合わせ、セシルたちへ襲い掛かった。