ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
ゼムスの力によって蘇った四天王が、今度こそ力を合わせ、セシルたちへ襲い掛かった。
「へ!俺たちに負けた奴らが今更束になっても俺たちの敵じゃねぇぜ!」
「お前、ルビカンテとしか戦ってないだろ、でもって一回目は負けたくせに」
「細けぇことはいいんだよ!!」
エッジが強気に言い放つが、ギースはすぐさま冷静に突っ込む。
その指摘にエッジは一瞬言葉に詰まったものの、すぐに開き直った。
「フシュルルル……この土のスカルミリョーネの恐ろしさとくと味わええええ!!」
スカルミリョーネが巨大な牙を剥き出しにし、そのままエッジへ向かって突進する。
「“分身”!」
エッジは忍術で自らの分身を生み出す。
突進してきたスカルミリョーネは狙いを外し、分身へと勢いよく突っ込んでいった。
「っあぶねえ!」
「油断はするな二人とも!以前に戦った時とは、力がまるで違う!」
セオドールは四天王を見据えながら、二人へ警告する。
「ゼムス様より力を授かったのだ!!今までの我らと同じと思うな!!」
スカルミリョーネがセシルへ向かって腕を振り下ろす。
セシルは咄嗟に剣を構え、その一撃を受け止めようとした。
「ぐっ……!」
凄まじい衝撃に耐えきれず、セシルの身体が弾き飛ばされる。
以前ならば受け止められたはずの一撃だった。
それが今は、まともに受ければ吹き飛ばされるほどの力を持っている。
「セシル!?“ケアルダ”!」
ローザがすぐさま回復魔法を唱える。
「お願い!“イフリート”!!」
リディアが召喚を行う。
炎をまとったイフリートが姿を現し、スカルミリョーネへ向かって炎を放とうとした──その瞬間。
横合いから大量の水が押し寄せ、イフリートの炎を一気にかき消した。
「!」
「クカカカカ……俺を忘れてもらっちゃ困るぜぇ?」
カイナッツォが不敵に笑う。
その身体を覆うように水の障壁が渦巻き、セシルたちを値踏みするように視線を巡らせる。
やがて、その視線がギースで止まった。
「もう札は無いんだってなぁ!じゃあ、これはどうするんだぁ!?」
カイナッツォの周囲で水が一気に膨れ上がる。
巨大な水の塊が渦を巻きながら押し寄せ、すべてを飲み込もうとする津波となってセシルたちへ襲い掛かった。
「ほっほっほほほ!カインがいないお前たちにこの風をしのげるかしら!」
バルバリシアが両手を広げる。
その周囲に凄まじい風が渦巻き、巨大な竜巻が生まれる。
ミールストームとなった風が吹き荒れ、津波とともにセシルたちへ襲い掛かった。
「さあ、我ら相手にお前たちはどう立ち向かう!」
ルビカンテが炎をまとい、腕を振り上げる。
次の瞬間、燃え盛る炎が渦を巻きながら一直線に放たれた。
水と風、そして炎。
四天王の力が次々と重なり、セシルたちの逃げ場を奪っていく。
──分断して!
「!」
突然、セシルの脳裏に女性の声が響いた。
──あの四人をまとめて相手にはできない。一人ずつ、各個撃破を!
「(一人ずつと言ったってどうやって!)」
セシルは迫り来る攻撃をかわしながら、声に意識を向ける。
誰の声なのか。なぜ今、自分に語りかけているのか。
そんな疑問を考えている余裕はなかった。
四天王は互いに距離を取ることもなく、四人揃ってセシルたちを追い詰めている。
──セシルはスカルミリョーネを!
声が響く。
──彼の本来の強みは自分の姿を見せず、大量のアンデッドたちを際限なく操ること、彼をここに出してる時点でスカルミリョーネを何も活かせてない。
セシルは試練の山の光景を思い出す。
確かにあの時のスカルミリョーネは試練の山のアンデットたちを操って戦っていた。
──他のみんなもそれを分かってスカルミリョーネまで攻撃を届けさせないようにしている。
セシルが周囲を見渡す。
カイナッツォの水。バルバリシアの風。ルビカンテの炎。
三人の攻撃が絶え間なく繰り出され、スカルミリョーネへ近づこうとする隙すら与えてくれない。
──だから、まずスカルミリョーネからみんなを引き離して!
「(分かった。けど、どうやって?)」
──ルビカンテには当てがある
「(当て?)」
彼女は、ルビカンテの性格を知る者だからこそ確信を持っていた。
蘇った今も、あの男が持つ戦士としての誇りまでは失われていないと。
◇ ◇ ◇
エッジは四天王の動きを警戒しながら、次の攻撃に備えていた。
──エッジ!
「(はあ!?おまえなんで……罠か!?)」
突然、聞き覚えのある声が脳裏に響き、エッジは思わず身構える。
なぜ彼女の声が自分に語りかけているのか分からない。
ましてや、この状況で届く声となれば、罠を疑うのも当然だった。
──罠と思っても構わない。あとはエッジが判断して!
「(聞くだけ聞いてやるよ!なんだ!!)」
──四天王を分断する!ルビカンテに一騎打ちを挑んで!!
「(一騎打ちぃ!?それで何とかなんのかよ!)」
──何とかする足掛かりを作るの。とにかく分断しなきゃ。四人纏めては相手にしちゃだめ!
「(ああもう!しゃあねぇな!)」
──ただし、エッジ。
「(ただし?)」
──一騎打ちをするなら、ルビカンテはあなた一人で倒して!
「(軽く言ってくれるな、半分罠みてーなもんじゃねえか)」
一度は一人で敗れた相手に、今度は一人で倒せと彼女は言ってくる。
エッジはその難題に、不敵な笑みを浮かべた。
「(いいぜ、その罠乗ってやる)」
もともと、借りは返すつもりだったのだ。
ルビカンテを倒したことはある。
だが、それも仲間たちと共に戦った結果だった。
だからこそ──今度は、自分一人で決着をつける。
「(ただ、向こうが受けるかは知らねぇぜ?)」
──大丈夫だよ。
「(……随分自信あるな?)」
彼女の言葉には、迷いがなかった。
その確信に満ちた言い方に、エッジはわずかに眉をひそめる。
──たとえゼムスの影響を受けても、ルビカンテは認めた男の一騎打ちを拒まない。
◇ ◇ ◇
「“水遁”!」
エッジが素早く印を結ぶと、足元から大量の水が噴き上がった。
渦を巻く水流が勢いよくルビカンテへと襲い掛かる。
水流がルビカンテの身体を直撃し、そのまま勢いよく押し流した。
だが、ルビカンテは倒れることなく、水を振り払うように身体を起こす。
「一騎打ちとしゃれこもうぜ、ルビカンテ!」
「ほう……」
「エッジ!?」
「いったいなにを!」
突然の申し出に、ギースとリディアが驚きの声を上げる。
「面白い……力を合わせ私を打ち破った男が、今度は一人で私に戦いを挑むか」
ルビカンテは不敵な笑みを浮かべる。
エッジの挑戦を退けることなく、ゆっくりと構えを取った。
「いいだろう。その一騎打ち、受けて立とう!」
その瞬間、二人の周囲から炎が一斉に噴き上がった。
燃え盛る炎が円を描くように二人を取り囲み、他の者たちとの間を隔てていく。
まるで、この場そのものが二人だけの戦場へと変わったかのようだった。
「セシル!ルビカンテはオレが引き受けた!」
炎の壁の向こうへ取り残されたセシルたちを振り返り、エッジは力強く声を上げる。
突然の一騎打ちに戸惑う仲間たちを安心させるように、真っ直ぐルビカンテを見据えた。
──これで、ルビカンテは引き離した。
「(待ってくれ!君の当てはエッジのことか!?)」
──うん。ルビカンテはエッジの挑戦を拒まない。分断するのならこれが確実。
「(エッジ一人で無茶だ!)」
セシルは炎の壁の向こうにいるエッジを見つめる。
声の主が考えた作戦の意図は理解できた。確かに、ルビカンテはエッジの一騎打ちを受け入れた。
だが、それとエッジ一人で戦えるかどうかは別の話だった。
──無茶でもやるしかない。エッジも納得した。
声の主はエッジも納得した上での一騎打ちであるとセシルに告げた。
セシルは炎の壁の向こうにいるエッジを見つめる。
無茶な作戦だと思う。それでも、エッジ自身が納得して挑んでいるのなら、今はその覚悟を信じるしかなかった。
「(次はどうするつもりだ?)」
声の主の作戦に従うことにしたものの、セシルはその無茶とも思えるやり方に、わずかな疑念を抱いていた。
──こっちから仕掛ける必要はない……辛うじて正気だったルビカンテを切り離した、多分、もう効果は出るよ。
「(……?)」
セシルは、その言葉の意味を測りかねる。
いったい何を狙っているのか。エッジとルビカンテを分断しただけで、何が変わるというのか。
今のセシルにはその意図が見えなかった。
──ゼムスはみんなを生き返らせたけど……完全じゃない。
──心残り、執着を増幅させて生き返らせた。
その言葉の意味を、セシルはすぐには理解できなかった。
だが、目の前で繰り広げられている戦いを見れば、その異常さは明らかだった。
カイナッツォはギースだけを執拗に狙い続け、バルバリシアもまた、ローザへの攻撃を繰り返している。
まるで他の者の存在が目に入っていないかのように、二人への攻撃だけに意識を集中していた。
そのせいで、四天王同士の連携にもわずかな乱れが生じ始めている。
──だから、本来なら止まるところで止まれない。
「(なんで二人が)」
カイナッツォがギースを、バルバリシアがローザを執拗に狙う理由が、セシルには分からなかった。
──カイナッツォはギースの札でやられたこと根に持ってた。
──ローザは……バルバリシアなりに思うところがあったみたい。カインがこの場にいたらカインを狙ってただろうけど。
その異様な戦い方の理由を聞かされ、セシルはようやく理解する。
ゼムスによって増幅された、四天王それぞれの心残りや執着が、戦いの中に表れているのだ。
──そしてセシル、あなたも例外じゃない。
「っ!」
その言葉に、セシルの表情が強張る。
「シャアアアア!!」
次の瞬間、スカルミリョーネが咆哮を上げ、セシルめがけて猛然と襲い掛かった。
その目にセシルの姿を捉えると、激しい憎悪を滲ませる。
「憎たらしい!このパラディンめ!!この私、スカルミリョーネがその前に始末するはずだったのに!!」
──スカルミリョーネは言わずもがな。あなたをパラディンにしてしまったから。
セシルは迫り来るスカルミリョーネの攻撃を、どうにか受け流す。
「(君は……彼らをよく知っているんだね)」
──……………………。
ここまで四天王の事情を知っているのなら、気づかないわけがなかった。
間違いなく、声の主は四天王と近しい人物なのだ。
──うん、そうだよ。
声の主は、もはや言い訳をすることなく、その事実を認めた。
──だけど私の意思はただ一つ。バブイルの巨人を止めること。
声の主の言葉には、迷いのない決意が込められていた。
過去に何があったとしても、今この場で果たすべきことだけは見失っていない。
──だからセシル、私はあなたに協力するの。
何の保証もない声だった。
それでも、セシルにはなぜか、その言葉を疑う気にはなれなかった。
──ギースの方は気にしないで、何なら放っておいても構わない。
「(ええ!?)」
あまりにもあっさりとギースを突き放すような言葉に、セシルは思わず驚きの声を漏らした。
先ほどまで協力すると言っていたのに、あまりにも扱いが雑だった。
──……冗談。セオドールがフォローに回ってるようだから任せておいて。
セシルの反応を確認した声の主は、少しだけ間を置いてから、冗談だったと付け加えた。
──問題はローザの方、本当ならセシルが手助けできれば良いけど、今セシルが動いたらもれなくスカルミリョーネが付いてくる。
セシルはローザへ視線を向ける。
その言葉どおり、バルバリシアはローザを執拗に狙い続けていた。
助けに行きたいが、そのたびにスカルミリョーネに邪魔をされていた。
──セシルはとにかく早くスカルミリョーネを。ミストの召喚士に焼かせてもいい。
──バルバリシアはそのままローザとあの月の民に相手をさせて。私も二人の助言に回る。
声の主の言葉に、セシルは周囲へ視線を巡らせる。
ローザはバルバリシアの攻撃を受けながら応戦し、その相手をフースーヤが支えている。
ふと、セシルの中に疑問が浮かんだ。
「(僕以外に声を……いや、君はエッジと会話できたんだっけ)」
そのまま他の者へ助言を送ろうとした声の主だったが、そもそもセシル以外に声を届けられるのか、セシルには分からなかった。
しかし、エッジが声の主に言われてルビカンテに一騎打ちを挑んだことを思い出す。
──そういうこと。じゃあそっちはお願いね!
「(君も、ローザを頼む!)」
──うん!大船に乗ったつもりで任せといて!
それだけ言葉を交わすと、セシルはスカルミリョーネへ向き直った。
声の主もまた、ローザたちへ助言を送るため、セシルのもとから意識を離していく。
それぞれが、自分のすべきことへと動き始めた。