ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
地下水脈は思った以上に涼しかった。
砂漠を歩いて火照った体にはありがたいが、その分魔物も身を潜めやすい。
ギースは刀に手を添え、辺りへ注意を巡らせた。
「ここはダムシアンからカイポへ向かう一番近い道だ」
ギースは辺りを見回しながら、聞いていた話を思い返す。
「でも、最近は使われなくなってるらしい」
「どうして?」
リディアが不思議そうに首を傾げる。
「魔物の影響か」
「ああ。ただでさえ最近は魔物が凶暴化してるのに、この地下水脈には特に手強い魔物が住み着いたらしい。討伐にも失敗して、今も居座ってるって話だ」
「だから、みんなこの道を使わなくなったんだ」
話を聞いていたリディアは、小さく首を傾げた。
「ダムシアンの人たちは困らないの?」
リディアの素朴な疑問に、ギースは軽く頷いた。
「ここが一番近い道ってだけで、他にも道はある。それにダムシアン側には王族専用のホバー船もある」
「ホバー船?」
聞き慣れない言葉に、リディアはぱちぱちと瞬きをする。
「簡単に言えば……浮かぶ船?」
「?」
首を傾げるリディアを見て、今度はセシルが口を開いた。
「飛空艇とは違うのか?」
「あっちは本当に空を飛んでるだろ。山の上だって越えていける。ホバー船はそこまで飛べないらしい」
「ふーん」
「ま、一般市民はどっちも使えないけどな」
ギースはそれ以上飛空艇の話を広げず、会話を切り上げた。
「……待て」
人の気配を感じて、ギースが足を止める。
「人がいる」
視線の先──橋の向こうには、一人の老人が腕を組み、仁王立ちしていた。
「……あのおじいさんは一体……」
「こんなところに突っ立ってる以上、何か目的があるんだろうが……ただの偏屈じいさんだったら面倒だな」
「通してくれるかな」
三人は声を潜め、老人の様子を窺う。
「聞こえとるぞ、おぬしら!!」
老人の怒声が地下水脈に響き渡った。
「こそこそ好き勝手言いおって!さっさとこんか!」
「す、すまない」
老人に一喝され、三人は素直に老人のもとへ歩み寄った。
「ぬ!おぬしらよく見れば暗黒剣の使い手とエブラーナの侍か!頼む、手を貸してくれ!」
セシルとギースの身なりを見た老人は二人の正体を見破り助力を求めた。
「どうしたんです?」
「娘のアンナが吟遊詩人に騙され、ダムシアンに行ってしまったのじゃ!」
「では、まさかあなたは賢者テラ!」
「いかにも! このわしがテラじゃ!」
セシルは旅支度の最中、カイポで耳にした噂を思い出した。
賢者テラの娘アンナが家を飛び出し、吟遊詩人とダムシアンへ向かったという話だ。
「ダムシアンに不吉な気配が立ち込めておる!心配になってダムシアンに向かう途中なんじゃが、この先の地下の湖におる巨大な魔物に手こずっとる」
「それでこんなところで仁王立ちしてたのか」
「誰が好きで立っとるか!!」
ギースはようやく、橋の真ん中で仁王立ちしていた理由に納得した。
「とてつもない力を持った奴じゃ!私の魔法だけでは倒せん!おぬしらの力があれば行けるはずじゃ」
「分かりました。ダムシアンへは僕らもいかなくてはならないんです」
「ならば決まりじゃ!一刻も早く、ダムシアンへ行くぞ!」
目的を同じくしたテラを加え、一行は地下水脈の奥へと歩みを進めた。
冷たい水が足元を流れ、苔むした岩肌からは絶えず雫が滴り落ちている。
「きゃっ!」
「リディア!」
足を滑らせたリディアの腕を、セシルが咄嗟に掴んだ。
「大丈夫かい、リディア」
「う、うん……ありがとう」
セシルに支えられて立ち上がったリディアを見て、ギースは足元を流れる水流へ視線を落とした。
「俺たちは足を取られるくらいで済むけど、リディアの背じゃ流れに持っていかれかねないな……」
大人なら膝下ほどの水深でも、幼いリディアには腰近くまで水がある。
「んー……セシル。前を任せてもいいか?」
「構わないが、いったい何を?」
「リディア。この地下水脈を抜けるまででいいから、しばらく俺に背負われてくれないか」
そう言ってギースはしゃがみ込む。
「う、うん」
リディアは小さく頷き、ギースの背中へ身を預けた。
「重くない?」
「大丈夫だ。故郷の悪ガキ連中に比べりゃ軽い軽い」
ギースは笑いながら立ち上がった。故郷の悪ガキどもを引きずり回していた頃に比べれば、この程度の重さなど苦にもならない。
「とはいえ、女の子を背負ったまま近接戦闘はさすがに無理だ。しばらくは
「別の手段?」
ギースは懐から一枚の札を取り出した。
「ボムのかけらみたいな、魔法の力が込められた道具ってあるだろ? あれに近い」
ギースは札をひらひらと揺らして見せた
「この札は、吸収した技をそのまま使えるんだ。まあ、使い切りだし、札に収まりきらない強い技は吸収できないけどな」
「なんと、そのような札があるのか」
「ああ。ただ、エブラーナの門外不出の秘術だから。しくみは教えられないぜ」
「ふむ……それもそうじゃな」
興味深そうに札を見つめるテラだが、ギースは秘術のため仕組みについては答えられないときっぱりと首を横に振った。
テラもギースの言葉に納得したのか深く追及しなかった。
「今の俺は、旅の途中で吸収してきた札が山ほどある。背に腹は代えられないから大出血サービスで大盤振る舞いだ」
ギースは札を懐へしまい込み、にやりと笑う。
「──というわけで」
「というわけで?」
「しばらく近接戦闘はセシル一人で頑張ってくれ」
そう言うと、ギースは「あとは任せた」と言わんばかりに、リディアを背負ったまま一歩後ろへ下がった。
「ああ、任された」
セシルは苦笑を浮かべながら剣を抜き、一行の先頭に立った。
隊列を整えた四人は、地下水脈のさらに奥へと歩みを進めた。