ファイナルファンタジーⅣ ~IF~ 作:FF4熱再燃中
ギースが後ろに下がったことで、セシルの負担が増えたが、テラとリディアの魔法、ギースの札術で襲い掛かる魔物を一行は苦もなく倒した。
しばらく地下水脈を進むと、セシルたちは広い空間に出た。
中心にあった魔法陣をテラは見つけ、魔力を込めると、魔法陣は淡く光る。
「よし、ここなら休めるな」
「本当だ、特に補修する必要もなくてラッキーだな」
ギースは欠けた箇所一つない魔法陣を見回すと、小さく手を合わせ、この魔法陣を作った先人の魔導士へ感謝した。
「この魔法陣はなに?」
見慣れない魔法陣を不思議そうに見つめ、リディアは尋ねた。
「先人の魔導士が用意してくれた安全地帯ってところだな」
「この魔法陣の上ならば、結界が張られて魔物が入ってこれんのじゃ!」
テラは魔法陣の中央を見回し、小さく頷いた。
「やつとの戦いに備え、私のテントで態勢を立て直すとしよう!」
◇ ◇ ◇
一行はテラのテントで休息をとる。携帯食を食べ終えたリディアはうつらうつらと船を漕ぐ。
「眠いなら先に寝ていいぞ」
「うん…………すーすー」
よほど疲れていたのか、リディアは横になってすぐに眠った。
眠ったリディアに、ギースは毛布を掛ける。
「この子は確か……」
「ミストの……召喚士です」
テラはリディアの素性を確認する。セシルは言い淀みながらも答えた。
「良い資質を秘めておる。修行を積めば他の魔法も使いこなせるじゃろう」
「確かにこの歳で白、黒、召喚は末恐ろしいな」
ミストの召喚士については、話でしか聞いたことがないが、その才能はギースの想像をはるかに超えていた。
白魔法、黒魔法、召喚魔法。今はまだ初級の術しか扱えないとはいえ、三系統もの魔法を使える者など滅多にいない。一つの系統すら扱えない者の方が、世の中にはずっと多いのだから。
「しかし、かわいい寝顔じゃ……幼い頃のアンナのようじゃ」
「その人はあなたの……」
「ただ一人の娘じゃ。吟遊詩人とダムシアンへ駆け落ちしてしまってな……私が許さなかったばかりに……」
歳をとってから生まれた、かわいい一人娘だ。素性のしれぬ吟遊詩人と共にすることをテラは許せなかった。
結局、業を煮やしたアンナは吟遊詩人とダムシアンに向かってしまった。
「ダムシアンの方に感じられる不吉な気配が私の気のせいならばいいのだが……おぬしらはなぜダムシアンに?」
「……僕の仲間がカイポで高熱病にかかっているんです」
「『砂漠の光』か……あれが無いと私でもどうにもならん。おぬしたちも急ぎか……」
セシルの脳裏に、カイポへ残してきたローザの姿が浮かぶ。ギースたちの看病で、ひとまずの危機は脱していたが、それでも楽観視はできなかった。
「洞窟の魔物とはいったい?」
「カイポでは八匹の水蛇って噂だったが」
「巨大な八つの足を持つ恐ろしいヤツじゃ。アンナとおぬしらの仲間のためにも、まずヤツを倒さねばな!」
「確かに話はそこからだな。俺たちもさっさと寝て、明日に備えようぜ」
セシルたちは明日に向け、それぞれ静かに眠りについた。
◇ ◇ ◇
「いたぞ、ヤツがオクトマンモスじゃ!」
テラの指差す先、地下湖から突き出ていたのは二本の巨大な触腕だけだった。
次の瞬間、水面が大きく波立つ。
六本の触腕が次々と水中から飛び出し、一行を取り囲んだ。
「なっ……!」
八本の触腕が一斉にうねり、獲物を逃がすまいと迫る。
「来る!」
セシルは咄嗟に前へ踏み込み、振り下ろされた一本を剣で受け止めた。
重い衝撃が腕へ伝わる。
「くっ……!」
「受け止めるなセシル!別のが来る!」
ギースの叫びとほぼ同時に、左右からさらに二本の触腕が唸りを上げて襲いかかった。
セシルは受け止めた触腕を弾き返すと、身をひねって二本目をかわす。しかし三本目が脇腹をかすめ、その勢いで大きく後退した。
「数が多い……!」
「リディア、悪いが降ろすぞ!」
「うん! セシルを手伝ってあげて!」
ギースは素早くリディアを降ろすと、そのまま刀を抜き、セシルの隣へ並んだ。
ギースは八本の触腕を見回し、小さく舌打ちした。
「一本ずつ相手してたら埒が明かないな……」
「ギース……十秒時間を稼げるか?」
セシルは静かに暗黒剣を構えた。
その姿を見たギースは、何を狙っているのか悟る。
「分かった、十秒とは言わずに二十秒くらい稼いでやるよ」
ギースはセシルの前へ飛び出し、迫る一本を斬り払う。
しかし、切り払った直後には別の二本の触腕がうねりながら襲いかかる。
「おそい!」
身を低く沈めて二本の触腕を躱し、その勢いのまま一本の触腕を駆け上がる。
「もらった!」
高く跳び、根元へ刀を振り下ろす──
しかし、別の触腕が横合いから割り込み、刃を弾き返した。
「ちっ!随分器用なタコだな!」
攻撃を防がれ、空中で体勢を崩したその瞬間、さらに三本の触腕がギースへ襲いかかる。
「ギース!」
「なめるな!」
ギースは空中で身をひねって触腕をかわすと、懐から一枚の札を抜き放った。
「──“グラビデ”!」
札から放たれた重力の塊が触腕へ叩きつけられる。
凄まじい重圧に、数本の触腕が地面へ押さえつけられた。
「私もおることを忘れるでない!」
テラの杖が眩く輝く。
「“サンダー”!」
轟音とともに雷が落ち、オクトマンモスの触腕を撃ち抜いた。
青白い稲妻が巨体を走り、オクトマンモスは苦しげに身を震わせた。
「効いておるぞ!」
「さすが賢者!」
セシルは暗黒剣を強く握り直す。
「…………“暗黒”!!」
己の生命力を刃へと注ぎ込む。
漆黒の斬撃が解き放たれ、オクトマンモスの触腕をまとめて切り裂いた。
「ナイス!」
「さすが暗黒剣の使い手!動きが鈍りおったぞわい!じゃが、ここからが本番じゃ!手負いの獣ほど恐ろしいものはないぞ!」
テラの言葉の後、怒り狂ったオクトマンモスが残った触腕が一斉に振り下ろし、水しぶきとともに地面を激しく叩く。
「どわぁ!?」
ギースは転がるように身をかわした。
「リディア、私が合わせる。“サンダー”を!」
「うん!」
リディアは小さく頷き、テラと同時に魔力を練り上げる。
「「“サンダー”!」」
二つの雷がほぼ同時にオクトマンモスへ降り注ぐ。
「ったく、俺にこの手まで使わせやがって……」
ギースは雷が消えきらぬうちに刀を構えた。
「今なら──!」
刀身が残った雷を吸い上げ、青白い稲妻を纏う。
「“雷切斬”!!」
刀はオクトマンモスの眉間を深々と貫いた。
巨体が激しく痙攣し、八本の触腕が力なく水面へ崩れ落ちる。
やがて地下湖は静寂を取り戻した。
「……やったか?」
「たぶん?」
「もう気配は感じないな……」
「これでダムシアンへ行けるぞ! この滝の奥から地上へ出られるはずじゃ!」
オクトマンモスを倒した一行は、滝の奥へ続く道を抜け、ダムシアンへと向かった。