ウルトラマンゲイザー   作:すぐりん

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思いつきで書いてみた試作品のようなものです。

好評ならちまちま続きを書いてみます。


戦火は宇宙から

 

 ある日、この世界に神様が現れた。

 

 神様は言った。平和の為に、君たちに力をあげようと。

 

 だけど神様は、ほんの一部の人たちにしか……いや、ひとつの国にしか力を与えなかった。

 

 そしてそれは、戦争の始まりの引き金を引いた。

 

 その国は“地球共和国”と名を変えて、神様からもらった強力な兵器を使って世界中に侵攻を開始した。世界は瞬く間に火の海になり、多くの国が消え、世界はめちゃくちゃになってしまった。

 

 西暦2089年。私は今、そんな世界に生きている。

 

 一筋の希望も見えないこんな世界だけれど、一日でも多く明日を迎える為に。

 

 この絶望の中で、私は今日も戦い続けている。

 

 

 

 

 

 日本、旧東京都心。

 

「くそっ、共和国の連中こんなとこに来やがって!」

 

 捨てられた廃墟の街に隠れ潜む、8メートル程の人型有人ロボット兵器。60式機動歩兵。かつて自衛隊が運用していた量産型の機体だ。その数はおよそ十機。カーキ色に染め上げられている。

 

 対するは53メートルもあるブロンズカラーの巨体を誇る巨大ロボット。両腕には鮮血のように赤いドリルを装備し、スリット状の目も赤く輝いている。

 

 レギオノイドα。本来この地球に存在する筈のない、遠い宇宙で使われていたロボット兵器だ。

 

「うわぁーっ!」

「タナカ! くっ……」

 

 機動歩兵の一機が迂闊にも近付いた途端、機体はドリルに巻き込まれ崩壊、中のパイロットごと爆散してしまう。

 

 巨体でありながらレギオノイドの動きは生物のように滑らかで俊敏。三百万光年離れた宇宙の闇の巨人が築き上げたとある銀河帝国の兵器であったそれは、地球人類の文明の産物など、軽く蹴散らす程の性能を持っているのだ。

 

「そんなガラクタで、このレギオノイドに勝てるかよ!」

 

 レギオノイドのパイロット、共和国の兵士である地球人の男は足元を健気に走り回る機動歩兵を見下ろし、笑いながら操縦桿の引き金に指をかけた。

 

「高エネルギー反応、来るぞ!」

 

 機動歩兵のパイロットの一人が気付いたその時、レギオノイドの目が輝いた。

 

 瞬間、超高熱の光線が放たれ、崩れかけたビルごと機動歩兵の部隊を飲み込んでゆく。光がおさまり、目を開けると光の軌道のビルは消え、そこにいた筈の兵士たちもまた消えてなくなっていた。

 

「嘘だろ……」

 

 地獄のような光景に、パイロットの一人が嘆く。

 

 レギオビーム。本来光学兵器など持たないこの星の人類にとっては、その威力はあまりにも凶悪過ぎたのだ。

 

 死を撒き散らし、そびえ立つ絶望。それでもまだ、諦めていない者が一人いた。

 

「これ以上はやらせない!」

「ハヤミ!?」

 

 機動歩兵が一機、脚部のローラーを火花が散るほど回転させて突撃してゆく。右手には大口径キャノン、左手には……杭打ち機(パイルバンカー)。専用カラーである白に染め上げられたその機体に乗るのは、黒髪の高校生くらいの少女。

 

 彼女の名はハヤミ・カホ。この放棄された旧東京で抵抗を続ける反共和国ゲリラのエースパイロットだ。

 

「こいつ、ちょこまかと!」

 

 カホの機動歩兵はレギオノイドの足元を動き回るものの、ビームが飛んでくる様子はない。何故か、それは……。

 

「首の可動域の死角、側面か後ろに回り込めばビームは来ない」

 

 カホは過去の戦闘記録から、レギオノイドαとの戦い方を既に考え出していた。

 

 自分の機体の何倍もある機体の威圧感に圧倒され、接近戦を挑もうとは思わないだろう。だが目からのビームが最大の脅威とわかっていれば、素早く側面や背後に回れる至近距離こそが小型の機動歩兵にとって有利な距離となる。

 

「遅い!」

 

 ドリル攻撃を繰り出されるも、それは読めていた。カホは難なく避け、流れるような動きで急ターンしレギオノイドの背後に回り込むと、その膝裏に左手の杭の先を突きつけた。

 

「これで……!」

 

 そして炸裂。強力な炸薬で突き出された杭は装甲の薄い関節を貫き、風穴を開ける。さらにそこに至近距離からの大口径砲を叩き込む。

 

 膝が爆裂。片方の脚部を失ったレギオノイドはそのまま転倒し、身動きが取れなくなった。

  

「やった、ハヤミがやったぞ!」

「流石俺達の勝利の女神だ!」

 

 倒れたレギオノイドを前に、生き残ったゲリラの兵士たちは歓喜し、カホを称える。

 

「増援が来る前に撤収します。急いでください」

 

 だがカホの表情はまだ厳しい。レギオノイドは共和国で最も多くの数が配備されている量産兵器に過ぎない。一機だけで出てきた今の機体は、偵察か何かだろう。共和国にはより強大な兵器も数多く存在するという。

 

 たかがレギオノイド一機を倒したくらいで浮かれている余裕などない。戦場でのカホに、笑顔はなかった。

 

 

 

 

 

 旧東京都心、地下鉄跡。

 

 かつての爆撃で東京は首都機能を移転、放棄されたとはいえ、残された広大な地下鉄網は身を隠すにはうってつけだ。駅や線路を改装して残された人々は集落や基地を築き、ここで暮らしていた。

  

「カホ姉ちゃん、勉強教えて!」

「うん、いいよ。わからないのはどこ?」

「えっと……」

 

 ここに帰ると、カホは優しい女の子に戻る。笑顔で子供たちに勉強を教えたり、一緒に遊んだり、お年寄りの手伝いをしたり。機動歩兵を駆り、強大な敵に立ち向かうエースパイロットの面影はそこにはない。

 

「はい、お礼のチョコレート!」

「いいよ、そんな大事なの。私はいいから、みんなで食べて」

「ありがとう!」

 

 自分の幸せを投げ捨てて、みんなの為に頑張る。そんなカホの事を人々は心配していた。

 

「カホちゃん、ちょっとは休みなさいな」

「疲れたでしょう。薄味だけどスープでも飲みなさい」

 

 道を歩けば声をかけられ、その度にぺこりと頭を下げるカホ。マグカップに入ったスープをズズズと飲む姿を見て、彼女にスープをあげた老婆は安心した。

 

 この子は放っておくと何も食べず、みんなに自分の分の食べ物さえ恵んでしまう。そんな気質の子だから。

 

 そんなカホにもひとつ、楽しみがあった。

 

「今日はどれにしようかな…」

 

 地下集落の中の自分の家に帰ったカホは、本棚から本を見繕う。物語を読む。それがカホの唯一の自分の幸せと言える時間だった。そしてその時間は、夜と決まっている。

 

 寝る前に本を読み、布団に入って夢を見る。それがカホにとって、何よりも楽しい時間だった。

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「おはようございます」

「おはよう、カホちゃん」

 

 目を覚ましたカホは、集落を歩きながら人々と挨拶を交わす。集落とは言っても大都市である東京の生き残りというだけはありかなりの人数だが、その中でもカホは有名人だった。

 

 今日は平和だといいなと、そんなカホの願いはすぐに打ち砕かれる事となる。

 

「地震……?」

 

 ガタガタと地面が揺れ、明かりが点滅する。直後、慌てた様子でゲリラの見張り番が声を張り上げた。

 

「敵襲だーっ!」

「行ってきます!」

「気を付けてね、カホちゃん」

 

 敵襲。それを聞いてカホはすぐさま格納庫へ向かい、機動歩兵に乗り込んでリフトで地上へと上がってゆく。

 

 他の兵士たちも地上に辿り着いた時、そこにはレギオノイドとは違う何かがいた。

 

「なんだ、あれは……」

 

 三つ目のような顔の、歪な上半身をした巨大な機械巨人。肩からは光弾を放ち、立ち並ぶビルを豆腐のように崩してゆく。

 

「かかってこい雑魚共。こいつはレギオノイドとは一味違うぞ」

 

 それに乗るパイロットは、不敵な笑みを浮かべながら引き金を引き、街を破壊し続ける。

 

 無双鉄神インペライザー。かつて宇宙に皇帝として君臨したとある宇宙人により作り出された戦闘兵器である。元々は自律兵器だが、この機体は有人機として建造されたものだ。

 

「あいつら、本気でこの国を潰す気かよ!」

「潰された国はたくさんある。やるしかない」

 

 地球共和国の目的は、この地球の統一。その為に全ての国を滅ぼすつもりなのは明白だ。

 

 恐れ慄く他の兵士たちに先んじてインペライザーへ突撃するカホ。他の兵士たちもじっとしてはいられないと、その後に続いてゆく。

 

「雑魚が何匹いようと!」

 

 肩から光弾を放つインペライザー。その一撃は容易く機動歩兵を貫き、爆散させてゆく。だがそんな中、怯まず突き進む一機の機動歩兵の姿があった。カホの機体だ。

 

「当たるわけには……!」

 

 一度でも当たれば終わり。慎重に敵の攻撃を避けながら、距離を詰めるカホ。だが……。

 

「死ね、白い奴!」

「っ!?」

 

 背後で突然避けた筈の弾が曲がり、カホを追ってきた。どうやらこの光弾、追尾能力があるらしい。必死にカホは避けようとするが逃げきれない。

 

 さらに目の前に光。直後、カホは意識を失った。身体の感覚が、一気に失われていくのを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

「……を……ませ……」

 

 声が聞こえた。

 

「目を覚ませ。この地球の少女よ」

「ここは……」

 

 目を開けると、そこはまるで捻れた宇宙のような空間だった。そして目の前にいるのは、何やら銀と赤の、人型のナニカ。カホに語りかけているのは、そのナニカらしい。

 

「現実ではない、この世のどこでもない世界だ。解っていると思うが、君はもう死んでしまった」

「そう、だめだったんだ……」

 

 死んだ。そう言われても、すんなり納得できてしまった。光弾の挟み撃ちを受けたのだ。きっと自分の身体はもう、骨も肉片も残っていないだろう。突然訪れた死だが、こんなものだとは覚悟していた。今ここに意識がある意味はわからなかったが。

 

「あなたは誰?」

 

 それよりカホは問う。目の前にいるナニカは、何者なのかを。

 

「ゲイザー。ウルトラマンゲイザー。遠いM78星雲、光の国からやってきた、ウルトラマンだ」

「ウルトラ、マン……?」

「かつて我々の種族が、友から与えられた大切な名だ」

 

 ウルトラマンゲイザー。それがこの存在の名前らしい。

  

「私は君たち地球人に対し神と名乗る存在、指名手配中のメフィラス星人を追ってここまで来た。彼は未開の星の文明に不相応な兵器を与え、戦乱を巻き起こし、星を支配する。しかし我々光の国は、原則惑星内の内紛においては介入する事ができない」

 

 彼はそう説明すると、カホにあるものを渡した。

 

 掌にきれいに収まって握る事ができる、カプセル状の装置だ。

 

「そこで私は、君と一つになる事にした。私の力を、命を、君に預ける。その力で君が何を為すのか、この星の人類が何処へ向かうのか。この地球に対し我々光の国がどうするべきなのか、見定めさせて欲しい」

 

 そう言われても、死んだ自分に何ができるのか、カホにはわからなかった。だが、構わずウルトラマンゲイザーは話を続ける。

  

「心配することはない。私の命で、君は蘇る。そしてそのカプセル、ベーターカプセルを使えば……」

 

 ベーターカプセル。初めて見るものだが、カホにはなんとなく使い方はわかった。

 

 カホはカプセルを天高く掲げ、親指でカチリとボタンを押す。すると視界が真っ白に染まり……。

 

 

 

 

 

「デュワッ!」

「なっ……!」

 

 場所は戻り、旧東京。破壊の限りを尽くすインペライザーの前に、突如として銀の巨人が姿を現した。

 

「きょ、巨人……だと?」

 

 インペライザーのパイロットは、目の前に起きた未知の現象に驚きを隠せない。インペライザーと同じくらいの大きさの巨人が、何もないところから突然現れたのだ。驚かずにはいられないだろう。

 

 そして巨人は自分の身体を見下ろし、池のような水溜まりを鏡のようにして自分の姿を見る。

 

(これが……ウルトラマン。これが、私?)

 

 こうしてハヤミ・カホは、ウルトラマンと融合した。困惑しながらも、ウルトラマンは構えを取りインペライザーと対峙する。

 

 その様子を遥か空の上、宇宙から眺めている者がいた。 

 

 

 

 

 

「とうとう来ましたか、ウルトラマン」

 

 宇宙船でモニター越しに地上の眺めながら、ワインをくゆらせる黒い宇宙人。

 彼こそがゲイザーが追っていたメフィラス星人。メフィスと名乗り神を自称して共和国に接触し、過剰な武装を与えた張本人だ。

 

 彼はウルトラマンを知っていた。知った上で、最大の脅威と考えていた。それでもメフィスは余裕を崩さない。

 

 そう、彼はウルトラマンの“弱点”を知っていたのだ。

 

「ですがあなたに、人間を殺せますかねぇ?」

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