皇帝の妹   作:ベアグミの妖精

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前々回ぐらいに、日常回は⭐︎をつけると言いましたが今回みたいな個人個人の親密度イベントみたいなのは名前と♡を付けます。まぁこれも飛ばしても補足は入れます。明日の投稿は少し厳しいと思います。


柊 彩乃 1♡

 

 

 

ある日のこと。

放課後のトレーナー室では、いつものように蓮司郎と彩乃が話をしていた。

 

「おじいちゃん、これなんですけど……」

彩乃が一枚の紙を差し出す。

 

「なんだ?」

 

「映画のチケット、二枚もらったんです」

 

「ほう」

 

蓮司郎が受け取って見る。

 

「映画か」

 

「はい。今週末の午後からなんですけど、せっかくの休日ですし二枚あるので誰かと見に行こうと思って」

 

「そうか」

 

「それでですね、まず友達に声をかけたんですけど予定があって……」

 

「ふむ」

 

「その次の人も予定があって……」

 

「……」

 

「そのまた次の人も駄目で……」

 

蓮司郎は黙って彩乃を見る。

 

「お前さん」

 

「はい?」

 

「何人に断られた?」

 

「えっと……」

 

彩乃は指を折って数え始める。

 

「……五人です」

 

「五人もか」

 

「みんな予定があったんです!」

 

「分かってる」

蓮司郎は呆れたように息を吐く。

 

「で、どうするんだ?」

 

「どうしましょう……」

 

彩乃はチケットを見つめる。

 

「せっかく二枚あるのに……」

 

「一人で二枚食うわけにもいかねぇしな」

 

「映画を二回見るのはちょっと……」

 

「だろうな」

蓮司郎が苦笑する。

 

「まぁ、焦らず探せばいいだろ」

 

「そうですね、まだ数日ありますし」

 

そう言い彩乃がチケットを眺めていると、そのとき。

 

「失礼します」

 

扉が開いた。

 

「おう、ゼータか」

 

「こんにちは柊さん、彩乃さん」

 

「こんにちは、ゼータちゃん」

彩乃も振り返り挨拶をする。

 

ゼータは二人の前まで歩いてくると、彩乃の手元にあるものへ視線を向けた。

 

「……映画のチケットですか?」

 

「そうなんです!」

 

ゼータの問いに、彩乃は勢いよく答える。

 

「実は二枚もらったんですけど、一緒に行ってくれる人が見つからなくて……」

 

「そうなんですか」

 

「もしゼータちゃんが暇だったら、その……」

「一緒に行きませんか?」

 

そう言い、彩乃は少し遠慮がちにチケットを差し出した。

 

ゼータはチケットを見る。

休日の午後、その日は特に予定がない。

 

「……映画、ですか」

 

「はい!」

 

「何の映画なんです?」

 

「昔の南極を舞台にした映画です。南極に残されることになった犬たちが出てくる作品で……」

 

「犬、ですか?」

 

「はい、かなり感動する映画らしいですよ」

 

「……なるほど」

 

ゼータは少し考えた。

映画を見ること自体、嫌いではない。

 

「分かりました、良ければご一緒させてください」

 

「本当ですか!?」

 

「はい。その日は特に予定もありませんので」

 

「やった!」

と彩乃が嬉しそうに笑う。

 

「じゃあ、決まりですね!」

 

「はい」

 

「ありがとうございます、ゼータちゃん!」

 

「こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます」

 

そんな二人を見ながら、蓮司郎は小さく笑っていた。

 

「良かったじゃねぇか」

 

「はい!」

 

「ったく。これでチケットも無駄にならずに済んだな」

 

「そうですね!」

 

彩乃は嬉しそうにチケットをしまう。

 

「それじゃあ、当日よろしくお願いしますね!」

 

「はい」

 

こうして、ゼータと彩乃の休日の約束が決まった。

 

⸻

 

休日

 

待ち合わせ場所に着いたゼータは、周囲を見回した。

 

「……まだ少し早かったでしょうか」

 

時計を見る。

約束の時間までは、あと30分ほどある。

 

すると。

 

「あっ!」

 

遠くから声が聞こえた。

 

「ゼータちゃん!」

 

振り向くと、彩乃が小走りでこちらへ向かって来ているのが見えた。

 

「お待たせしました!」

 

「おはようございます、彩乃さん」

 

「おはようございます!」

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそ!」

 

彩乃は笑顔で答える。

 

「映画は午後からなので、それまで少しお買い物しませんか?」

 

「いいですね」

 

二人は並んで歩き始めた。

 

⸻

 

最初に向かったのは、駅前にある大きな商業施設だった。休日ということもあり、館内は多くの人で賑わっている。

 

「まず、どこへ行きますか?」

 

「うーん……」

 

彩乃が周囲を見回す。

 

「雑貨屋さん、見たいです!」

 

「分かりました」

 

二人で店内へ入とそこには、色々な小物が並んでいた。彩乃とゼータは一つ一つの商品を眺めながら歩いていく。

 

「これ可愛いですね」

そう言い彩乃が指を刺したのは、猫型のペーパーウェイト。

 

「本当ですね」

 

「ゼータちゃんはこういうの好きですか?」

 

「そうですね、結構好きです」

 

「意外です」

 

「そうですか?」

 

「はい。ゼータちゃんって、もっと実用的なものを選びそうなイメージがありました」

 

「……確かに、そうかもしれません」

 

「じゃあ、この辺りで好きなのは?」

 

「こんな感じの小さい動物の置物とかですね」

 

「可愛い!」

彩乃が嬉しそうに笑う。

 

「じゃあ、この辺り一緒に見ましょう!」

 

「はい」

 

二人で棚を眺めていく。

しばらくして、ゼータが小さな青い鳥の置物を手に取った。

 

「これ……」

 

「気に入りました?」

 

「少し」

 

「買っちゃいましょう!」

 

「え?」

 

「今日の記念ですよ!」

 

「今日の記念……」

 

ゼータはそう呟き、少し考え。

 

「……そうですね」

小さく笑って、その置物を買い物かごへ入れた。

 

⸻

 

その後も二人は店を巡った。

本屋へ行けば二人とも新しいトレーニング関連の本を一通り見たのち、ベストセラーの小説などにも目を通す。

 

服飾店では彩乃がゼータに似合いそうな服を探そうとし。

 

「これなんてどうですか?」

 

「私には少し派手では?」

 

「そうですか?」

 

「はい」

 

「じゃあ、こっちは?」

 

「……こちらなら」

 

「なら決まりですね!」

 

そんなやり取りをしながら、時間はゆっくりと過ぎていき気がつけば、昼食の時間になっている。

 

「ゼータちゃん」

 

「はい?」

 

「お腹空きませんか?」

 

「少しだけ」

 

「じゃあ、ご飯にしましょう!」

 

二人は商業施設内のレストランへ入った。

 

⸻

 

「うーん、何にしましょうか」

 

メニューを開き、彩乃は真剣な表情でページをめくっている。

 

「……」

 

「彩乃さん?」

 

「決まりました!」

 

「では、店員さんを呼びますね」

 

そう言い、呼び鈴を鳴らすとすぐに店員が来て彩乃が注文を始める。

 

「これと…これと…」

 

「……」

 

ゼータは目を見開きながら、彩乃の注文内容を聞いていく。

 

メイン料理二つにサイドメニューを数個、そしてデザート。

 

「結構頼みますね」

 

「お腹空いてるので!」

 

「なるほど」

 

ゼータは自分の注文を始める彩乃より少し控えめだ。

 

しばらくして料理が揃い。

 

「いただきます!」

と彩乃は嬉しそうに食べ始めた。

 

「美味しいです!」

 

「ふふっ、よかったですね」

少し笑い、ゼータもゆっくり食べる。

 

ウマ娘である以上、普通の人間よりは食べるだが、ゼータは基本的に少食だ。

 

一方。

 

「……」

 

彩乃はかなり食べる。

ゼータが一皿を食べ終える頃には、彩乃はすでに次の料理へ。

 

「彩乃さん、食べるの速いですね」

 

「そうですか?」

 

「はい」

 

「実は私、結構食べるんですよ」

 

「見ていれば分かります」

 

「えへへ……」

 

彩乃は少し照れながら食事を続ける。

 

そして。

 

「ごちそうさまでした!」

 

最後のデザートまで、綺麗に食べ終えた彩乃の空になった皿を見てゼータはまた少し驚く。

 

「……本当にたくさん食べましたね」

 

「美味しかったので!」

 

「私も美味しかったです」

 

「じゃあ、また食べに来ましょう!」

 

「そうですね」

そう言い、ゼータは笑った。

 

「また二人で」

 

「……!」

彩乃が一瞬固まる。

 

「はい!」

 

嬉しそうに返事をした。

 

⸻

 

お店を出て、彩乃が時計を見る。

 

「あ」

 

「どうしました?」

 

「そろそろ良い時間なので、向かいましょうか!」

 

「分かりました」

 

そして映画館へ着き、館内へ入り、チケットを確認する。

 

「こっちですね」

 

「はい」

 

二人で席へ着く。

 

「楽しみですね」

 

「そうですね」

 

照明が落ちる。

 

スクリーンが明るくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

――映画鑑賞中――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上映が終わり、館内の照明が戻り観客たちが少しずつ席を立っていく。

 

「……」

 

ゼータは隣を見る。

 

「彩乃さん?」

 

返事がない。

 

「……彩乃さん?」

 

彩乃は俯き肩が小さく震えている。

 

「……うぅ」

 

「……」

 

ゼータは驚いた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「……大丈夫じゃないです」

 

声が震えている。

 

「……あれは、ずるいです……」

 

「……」

 

「こんなの……泣いちゃいますよぉ……」

 

彩乃は目元を拭う。

しかし、なかなか涙が止まらない。

 

ゼータは困ったように笑いながら、ハンカチを差し出した。

 

「これ、使ってください」

 

「ありがとうございます……」

 

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

 

「……はい」

 

彩乃はハンカチを受け取り、目元を押さえる。

 

「……すみません」

 

「謝らなくていいですよ」

 

「でも……」

 

「感動したんでしょう?」

 

「……はい」

 

「なら、いいじゃないですか」

 

ゼータは優しく笑った。

 

「私も、少し胸に残る映画でした」

 

「ゼータちゃんもですか?」

 

「はい」

 

「……よかった」

 

彩乃は涙を拭いながら、少しだけ笑った。

 

二人はしばらくその場でゆっくりと落ち着くのを待ち、やがて席を立ち映画館を後にする。

 

「……ゼータちゃん」

 

「はい?」

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

「こちらこそ」

 

「一緒に来てくれて、嬉しかったです」

 

「私も楽しかったです」

 

「本当ですか?」

 

「はい」

 

ゼータは少し考え、そして。

 

「……それに」

 

「?」

 

「今日は、彩乃ちゃんと一緒に来られてよかったです」

 

彩乃の目が丸くなる。

 

「……え?」

 

ゼータ自身も、自分が何と言ったのか気づいた。

 

「……」

 

少しだけ頬が熱くなる。

 

「今……」

 

「……はい」

 

「彩乃ちゃんって……」

 

「……言いましたね」

 

「……」

 

ゼータは恥ずかしそうに目を逸らす。

 

「すみません。なんとなく……」

 

「謝らないでください!」

 

彩乃は嬉しそうに笑った。

 

「むしろ、嬉しいです!」

 

「……そうですか?」

 

「はい!」

 

「では……」

 

ゼータは少しだけ笑う。

 

「これからは、彩乃ちゃんと呼んでも良いですか?」

 

「むしろお願いします!」

彩乃は満面の笑みを浮かべた。

 

「私も、これからはゼータちゃんって呼びますから!」

 

「前からそう呼んでいましたよね」

 

「そうでした!」

 

「ふふっ」

 

二人は顔を見合わせて笑った。

 

「じゃあ、帰りましょうか」

 

「はい!」

 

夕方の街を、二人並んで歩いていく。

 

今日一日だけでも。

買い物をして、一緒に食事をして、映画を見て、たくさん話をした。ゼータにとっては、普段のトレーナー室で過ごす時間とはまた違った、新鮮で楽しい一日だった。

 

そして彩乃にとっても。

 

「ゼータちゃん」

 

「はい?」

 

「また一緒に出掛けましょうね」

 

「はい」

 

ゼータはまた少しだけ笑う。

 

「次は、彩乃ちゃんが泣かない映画にしましょう」

 

「それは……保証できません!」

 

「ふふっ」

 

夕暮れの中二人の笑い声が、静かに響いた。

 

そしてこの日を境に。

ゼータにとって彩乃は、ただの「柊トレーナーの孫」ではなく。気軽に話をして、一緒に出掛けられる友人のような、そんな、少し身近な存在になっていった。

 

 




モチベが爆上がりするので、良ければ感想や評価をよろしくお願いします!



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