馬鹿な…6285字…?プロローグより伸びているだと…?本来の予定なら2000字程度のつもりだったのに…
2050/01/01 12:56 日本海上空・航空自衛隊 C-3U 無人機管制機内
「はぁ…」
「どうした?」
モニターを監視している隊員がため息をつき、交代要員の隊員がそれを聞いて、声をかけてくる。
「いやさ、かれこれ六時間近く、無人機群を西に出してるわけじゃん。普通なら朝鮮半島なり大陸沿岸なりがとっくに映ってるはずなのに、ずっと海ばっかりでさ……本当に見つからないんじゃないかと思って」
「滅多なことを言うんじゃない。」
「いやだってさ、この星が日本以外に陸地のない海洋惑星でしたー、なんてことだってあり得るだろ?」
「…懸念は分かるが、今は任務中だ。私語は慎め。」
「いやお前から話しかけてきたんだろ」
「うっさい黙れこの※△×☆野郎。」
「なんつー暴言!?」
その時、無人偵察機の監視モニターの一つが、これまでの海一色の景色とは別の色を映し出した。
白い砂浜、黒い岩肌、緑の草原、地平線…それはまさに陸地だった。
「――ッ陸地発見!」
一拍置いて、機内が慌ただしくなる。
「映像固定!」
「該当機の映像をメインに回せ! 座標算出、距離、方位、海岸線の長さを出せ!」
「了解! 無人偵察機三号、映像固定。方位西北西、距離――算出中!」
「他の機を向けろ。高度は維持、低空には入るな。全データを記録」
「統合任務管制へ緊急報告。陸地らしき地形を確認」
数秒の沈黙の後、回線の向こうから応答が返る。
『こちら統合任務管制。映像を受信した。陸地確認、復唱する。陸地確認』
通信の声は、努めて平静だった。だが、その奥にわずかな震えが混じっていた。
『C-3U、現高度を維持したまま偵察を継続せよ。無人機の陸地上空への進入を許可する。ただし、低空進入、急接近、威圧的機動は禁止。海岸線、河川、人工構造物、航空脅威の有無を優先して確認せよ』
「了解。現高度維持。陸地上空への進入を開始します」
中央歴1638/01/01 クワ・トイネ公国第六飛竜隊
年明け初日から早々に偵察任務へと駆り出されたマールパティマ。
彼は非常に複雑な心境だった。新年早々に空を飛べる事への開放感、休日返上となってしまった事への不満感、ロウリア王国による海上迂回の可能性を警戒する任務という名誉ある任務への誇り、海中に潜むであろう見えない海獣への僅かな恐怖心。
それらの感情が混ざり合い、彼の心境を複雑なものにしていた。
「ぁー…やっぱ海を見てるとちょっと怖いな…覇竜なんてこんな近海に居ないって分かってても、いつか襲われるんじゃないかってハラハラする…第一こんな高度まで来れるわけないのに…」
そんな海に対して若干の苦手意識を抱いている彼の視界に、白っぽいものが映る。
「ん…あれは…?相棒、接近するぞ」
「ぐる」
相棒たるワイバーンを駆り、少し上空を飛ぶそれに向かって、慎重に速度を上げていく。
やがて見えて来たのは、白っぽい色をしており、風車のように回る何かを備えた、羽ばたかない鳥だった。
その姿は、近づいていくにつれて違和感を増していく。
生物感が無いのだ。渡り鳥ならば羽毛が、ワイバーンならば鱗や翼膜が、コウモリなら毛が。生物ならあるはずの風を掴むための、あるいは保温をするための構造がまるで無いのだ。それはまるで、鏃の金属のようで…
「!?なんだ、うっすらと光った!?いや、光を…纏ってるのか?魔法か?」
マールパティマと謎の渡り鳥の距離が200mを切った時、謎の鳥がうっすらと光を纏ったのだ。更には首のように見える先端をわずかに振り、マールパティマとの間隔を広げるように進路を変えた。
「(アレはやはり…敵なのか?いやしかし、人が乗るための場所も鞍も見当たらない…しかし、普通の鳥とも、ワイバーンとも違う。やはり迎撃すべきか…?)…っあ!?」
マールパティマが思考を回していた間に両者はすれ違い、慌ててワイバーンをひるがえす。が…
「速い…ッ!?ワイバーンよりも圧倒的に速いのか!?」
「しかも…しかも、あの速度のまま上昇しているだと!?」
みるみるうちに離されていく距離。更には高度まで取られる。マールパティマは魔信を手に取り、通信を行う。
「我、未確認生物を確認す!対象はワイバーンを遥かに上回る速度で飛行し、さらに高度を上げながらマイハーク方面に進行中!対象に騎手は確認できず、人を乗せるための構造も見当たらないが、伝書鳩に類する連絡手段である可能性あり!繰り返す…」
2050/01/01 18:40 東京都新宿区・防衛省市ヶ谷庁舎 中央指揮所
中央指揮所の照明は落とされ、壁面を覆う巨大な表示装置だけが室内を青白く照らしていた。
長机を囲むのは、防衛省、統合幕僚監部、情報本部、航空自衛隊の各担当者たち。その向こう側には、官邸地下会議室の様子が等身大の
総理、官房長官、防衛大臣、外務大臣をはじめとする官邸側の出席者たちが、まるで同じ室内にいるかのように席についている。
「それでは、正午過ぎに発見された大陸および現地文明に関する第一次情報分析会議を開始します。」
進行役の言葉と同時に、正面の大型画面へ無人偵察機が撮影した映像が表示された。
「最初に、無人偵察機三号と接触した飛翔生物について報告します。」
「対象は伝承上のワイバーンと非常に似通った形状をしており、手綱、鞍、固定具と思われる装備が確認されています。以後、仮称としてワイバーンと呼称します。」
「このワイバーンについてですが、我々は飼育あるいは軍事的訓練を受けた個体である可能性が極めて高いと判断しています。」
騎乗者の姿が拡大される。
画質補正された映像には、兜と防具を身につけた人影が映っていた。
「騎乗者についても画像解析を行いました。体格、四肢の構造、頭部形状は人類と非常に近いものです。」
「顔貌の詳細までは確認できません。しかし、頭部一、上肢二、下肢二。手綱を扱う指の動き、姿勢維持、周囲を確認する首の動きなどから、人類と同等、あるいは極めて近縁の知的生命体である可能性が高いと考えます。」
室内に小さなどよめきが起きた。それは、あるいは安堵の息だったのかもしれない。
"未知の大陸に住むのは人間に酷似した知的生命体である"
この事実は、政治家達にとって少なくない安心をもたらしたのだろう。だが、会議の緊張感は継続している。
「続いて、都市近郊で確認された四騎について報告します。」
画面が切り替わり、無人偵察機が広大な農地の上空へ差しかかった直後の映像が映される。そこには、都市の一角から四体のワイバーンが次々と飛び立つ所が映し出されていた。
四騎は高度を上げ、扇状に広がりながら無人機へ接近している。が、速度が遅く包囲しきれていない。
「四騎はこちらの無人偵察機を半包囲するような形で展開していますが、無人機と比較すると速度差が大きく、無人機の速度で振り切ることが出来ています。」
「…これは、何のために半包囲を取ろうとしていたのだ?」
「迎撃のため、という線が最も有力ですが…都市郊外への誘導を行おうとしていた可能性も否定できません。」
「…ふむ…続けてくれ。」
「はい。その後、都市部の撮影を終えた無人偵察機は、交戦回避規定に従って高度と速度を上げ、都市上空から離脱しました。その後、四騎による追撃は確認されていません。」
「結局、こちらへ向かって来ていた理由は不明、か…」
「はい。現在揃っている情報では、撃墜を意図した迎撃か、領域外への退去を目的とした警告行動なのか。意図を特定することは出来ません。ですが、迎撃のためと考えた方がよろしいかと。」
「まぁ、そうだろうな。」
「重要なのは、彼らが都市上空へ接近する飛翔物に対し、組織的に部隊を発進させ、都市外へ誘導しようとした点です。」
「…つまり、制空権の概念がある、と?」
「現代的な意味での制空権と同一かは不明です。しかし、少なくとも彼らは、支配地域上空を自らの管理対象として認識している可能性が極めて高いと判断します。」
官邸側の出席者たちが一様に表情を険しくした。
「我々は、相手の領空へ無断で侵入したと受け取られている可能性がある、ということですね。」
外務大臣の問いに、分析官は短く頷いた。
「その可能性はあります。」
映像はさらに切り替わる。
上空から撮影された都市。
石造りと木造の建物が密集し、外周には壁が巡らされている。都市の外には、まるで雑草の如く雑多に、どこまでも広がる金色の平原が広がっていた。
「続いて、都市および周辺地域の分析結果です。」
複数の画像が並べられる。
市街地。
港。
帆船。
街道。
水路。
そして広大かつ野放図に広がる農地。
「都市の規模、建築様式、道路整備、港湾設備、船舶の形態などから、技術水準は地球史における中世から近世初期に近い可能性があります。」
「人口は?」
「都市部のみで数万人規模。周辺集落を含めれば、さらに多いと推定されます。」
次に、農地と思われる平原の画像が拡大された。
「穀物と思われる作物が、極めて広範囲に分布しています。人為的に区画整理された農地というより、自生に近い密度で広がる穀物群を、必要に応じて刈り取っているように見えます。」
「ではこれは…管理された農地ではなく、雑多に穀物が生えているだけの…平原?」
「このような土地が…」
「…つまり、食料供給能力は高いかもしれない、と。」
農林水産省から参加している担当者が、画面を食い入るように見つめていた。
「現時点では断定できません。ただし、少なくとも都市人口を支えるだけの生産・集積・流通体制は存在すると見られます。」
「日本が今、一番必要としているものだな。」
誰かが呟いたが、その言葉に反論する者はいなかった。
分析官は最後の資料を表示した。
人間に酷似した騎乗者。
飛翔するワイバーン。
広大な農地らしき平原。
「以上を総合し、情報本部としては、対象地域に国家またはそれに準じる政治組織が存在すると判断します。」
「文明水準については?」
「建築や船舶だけを見れば、我々より低い可能性は高いと考えます。しかし、ワイバーンの軍事運用、未知の通信手段、その他未確認の技術または現象を考慮すれば、単純に下位文明とみなすべきではありません。」
「技術体系が違う可能性がある」
「その通りです。」
防衛省側からの報告が終わり、中央指揮所が静まり返る。
やがて、官邸側の立体映像の中で総理が口を開いた。
「では、ここからは今後の方針について協議します。」
外務大臣が資料を確認しながら発言する。
「現在の状況を放置すれば、相手側には正体不明の飛翔物が領域へ侵入し、都市を偵察して帰還したという事実だけが残ります。」
「最初の印象としては最悪に近いな…」
「はい。可能な限り早期に、我々が意思疎通可能な国家であり、敵対意思を持たないことを示す必要があります。」
「接触手段は海路か?」
防衛大臣の問いに、海上自衛隊の担当者が答えた。
「航空機による接触は、先ほどの経緯を考えると適切ではありません。沿岸部へ船団を派遣し、海上から接触を試みるのが最も安全と判断します。」
「船団の編成は?」
「海上自衛隊の大型護衛艦を中心に、海洋調査船を随伴させる案を検討しています。」
画面上に、暫定的な船団編成図が表示された。
「護衛艦については、航空運用能力を持つ大型護衛艦を一隻選定します」
「いわゆるヘリ空母か。」
「はい。ただし、今回の任務では戦闘ヘリの搭載はありません。そもそも現在の我が国には、専用の戦闘ヘリ部隊は存在しません。」
「搭載する航空戦力は?」
「垂直離着陸能力を持つ戦闘機、輸送・連絡用航空機、無人機、および49式歩兵支援パワードスーツを予定しています。」
官邸側で、わずかなざわめきが起きた。
「49式まで持っていくのか?」
「戦闘使用を前提としたものではありません。災害対応、重量物処理、未知生物への緊急対処を想定した予備戦力です。」
「ただし…"最悪の事態"が起きた場合に救出可能性が最も高いのは、本兵器であると判断しています。」
「それは…いや、当然の判断か…」
「しかし、49式は威圧的に過ぎるのでは?」
「そのため、航空機および49式は艦内格納とし、甲板上には駐機させません。」
大型護衛艦の外観が表示される。
広い甲板を持ち、外見上は武装が目立たない。
「大型護衛艦は、通常の護衛艦と比較して武装が外部から判別しにくく、政府要人や交渉団を安全に収容できる空間も確保されています。一方で、万一の場合には十分な航空運用能力と防御能力を発揮できます。」
「つまり、威圧を避けながら、必要な戦力は内部に保持する、と。」
「その通りです」
総理が、防衛大臣へ視線を向けた。
「護衛艦の武装はどうしますか?」
「フル装備で出します」
即答だった。
「非武装、あるいは武装を大きく削減した状態で未知の海域へ政府要人を送り込むことは認められません。周辺海域には、未知の海洋生物や他国勢力が存在する可能性があります。」
「ただし、射撃管制レーダーの照射、砲身の指向、艦載機の露出など、威圧的と受け取られる行動は禁止します。」
「当然です」
外務大臣が続ける。
「調査船を同行させる理由は?」
「航路および沿岸部の安全確認です。海底地形、水深、潮流、海洋生物、海水成分を調査します。」
「交渉船団なのに海底調査も行うのか…」
「今後、継続的に往来することを考えるなら不可欠です。また、護衛艦だけで接近すれば軍事目的と受け取られる恐れがあります。調査船を加えることで、船団の目的を分散して見せる効果もあります。」
官房長官が資料を閉じた。
「政府要人は専用船ではなく、護衛艦に乗せるのですね。」
「はい。居住性、通信設備、防護能力、医療設備を考慮すれば、大型護衛艦が最適です。」
「相手側には、こちらが代表団を軍艦へ乗せてきたように見える可能性があるが?」
「それは避けられません。しかし、政府要人の安全と、威圧を最小限にすることを両立させた結果です。」
しばしの沈黙。
総理は正面に表示された都市の映像を見つめた。
広大な農地。
石造りの街。
上空を舞うワイバーン。
これまで人類が空想の中でしか知らなかった光景。
「……分かりました。」
全員の視線が総理へ集まる。
「船団には、海上自衛隊の大型護衛艦および調査船を使用します。」
「政府代表団、外務省、防衛省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、研究機関から必要な人員を選定してください。」
「護衛艦は完全武装。ただし、相手に対する威圧的行動は厳禁。航空機および49式は艦内に収容し、必要が生じるまで外部へ出さないこと。」
「接触方法については、図像、音声、映像、身振りなど、可能な限り複数の意思表示手段を準備してください。」
総理は一度言葉を切った。
「我々は今日、未知の文明を発見しました。」
「最初の接触は、今後の日本の運命を左右することになります。」
「こちらの安全を確保しながらも、相手を敵と決めつけてはなりません。」
「対話する意思があることを、可能な限り明確に示してください。」
「了解しました」
防衛大臣が応じる。
「船団の出港予定は?」
「最短で、明後日未明です」
「では、その予定で準備を進めてください。」
総理の言葉をもって、会議の方針は決した。
日本は、初めて発見した異世界の国家へ向けて、外交船団を派遣することとなった。
2日後の、2050/01/03 12:17。あるいは中央歴1638/01/03 12:17。
異界からの転移国家たる日本と、第三文明圏外国たるクワ・トイネ公国の間で、相互不可侵、使節団の相互派遣、暫定的な国交の樹立を定めた臨時協定が締結された。
用語解説コーナー
C-3U
・航空無人機管制機。輸送能力を削除し、代わりに大容積を用いたAWACS機能、及び無人機管制機能を搭載している。
・機内には無人機からの情報を解析可能なコンピューター、及びAIが備えられている。
・翼下ハードポイントから最大四機の無人機同時射出が可能であり、亜空間格納機能により10回のリロードを可能としており、最大44機を運用可能となっている。
・通常運用時は11機同時運用を行い、ローテーション/予備機を残して運用する。
・射出する無人機は無人偵察機の場合と無人戦闘機の場合の二種類がある。
49式歩兵支援パワードスーツ
・2049年に日本にて発表された人型兵器。
・逆関節形状の脚部、機体各所についたマナイリリウム粒子スラスター、頭部のない機体形状、機体各所の補助翼、重力制御回路、マイクロMEデバイス式シールド、亜空間収納、B2機関に加え、様々なオプション装備が作られた。
・48式強化電磁狙撃銃、49式強化電磁突撃銃、50式小型地対空マルチミサイルランチャーなど、様々なオプション装備を装備、換装可能となっている。
・なお、日本政府はパワードスーツと言い張っているが、全高が5.7mある上に、操縦系統まであるので、世界では"人型機動兵器"だの"特撮"だのと呼ばれている。
・この頭に"強化"とついている銃器達は、準機関砲並みのサイズを誇っており、事実上の49式専用装備である。
・なお、本来の歴史であれば第二次冷戦中に小型レーザーCIWSを固定装備として二門搭載する改良がなされている。