人生は詰んでいたと思っていましたが間違いでした。ダメ人間はチートスキルで無双します。   作:燈夜4649

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今日もなかよくパセリつみ

「アレフ! 片っ端から片付けろ!」

「もちろん!」

「ジュリアも援護をたのむ! 全ては吾(われ)のリンゴのために!」

 

 あ、リンゴのためなんだ?

 

「シグちゃん、リンゴのためなの!? ライア様、そんな事じゃきっと怒っちゃうよ!?」

 

 あ。ジュリアってば注意するところって、そこなんだ?

 

 ◇

 

 俺達は山ほど蠢いている毒水パセリを切り裂いてゆく。

 今度は触手に気をつけながら。

 

「アレフ! 動きが良くなって来たではないか!」

「そうなんだよ。さては<<剣士>>の習熟度が上がったのかな?」

「そうかもな! それともしかすると、この数のモンスターを倒したのだ。レベルアップしたのかも知れんぞ!?」

 

 と、シグがパセリを殴る。

 

「俺って強くってるのかシグ!?」

 

 と、俺がパセリを切りつける。

 

「ん、少なくともカッコ良くなってる! 動きに切れがあるな!」

 

 と、シグが枝をかわして蹴り一発。

 

「それにしても凄い数だな。どういうことなんだ?」

 

 と、俺が振り向きざまに幹を切りつける。

 

「そんな事、俺にはわからないよシグ。ジュリア、わかるか」

「ううん……全然わからない。それよりも、よそ見しないで気をつけて!」

「おう!」

 

 俺は剣を振るい続ける。

 切り飛ばされる触手。

 切断させる幹。

 飛び散る毒液、跳び退く俺。

 

「しかし、何だこの数……キリが無いぞシグ!」

「バカな! アレフ、まさかお前諦めると言うのでは無いな!? 引き上げるというのではないな!?」

「シグ?」

「リンゴはどうなるのだ! このままでは吾のリンゴは!」

 

 そ、そうか。やっぱりリンゴのためなんだ?

 

「仕方ないだろ!?」

「仕方なくない!」

「だってこの数、どうしろと言うんだよ!」

「全部やっつける!」

「いやいや、キリが無いって!」

「ぐぬぬ……!」

「って……アレフ! シグちゃん! あれを見て?」

 

 ジュリアが示す先。そこには切り伏せた毒水パセリの残骸。

 なにもない──って。

 何かが光った。

 

「何だ?」

「何かある! 光ってるの!」

 

 俺はジュリアの示すそれを摘み上げる。

 それは小さなクリスタル。緑色のクリスタルだ。

 

「これって──」

「あ、あっちのも持ってる!」

「こちらのも持ってたわ!」

 

 俺とジュリアはクリスタルをせっせと拾い集める。

 

「シグ! 一度引き返そう!」

「なんだとアレフ!?」

 

 ◇

 

「どうして引き返したのだアレフ!」

 

 シグがリンゴを食べる事ができずに拗ねている。

 

「手掛かりを手に入れたからだよシグ」

「手掛かりだと?」

「うん」

「リンゴが食えるのか!?」

 

 いや……だから、違う……違わないけれど。

 

「クリスタルを見つけたの。あの毒水パセリの全部にこの小さなクリスタルが入っていた──」

「わかったぞ!? そのクリスタルは何カパーで売れるのだ!? リンゴ幾つ分になるのだ!?」

「いやいや、違うから。売り物じゃないから」

 

 ◇

 

「クリスタルですか。緑のクリスタル……毒水パセリ……うーん……」

「何かわかります? サンディさん?」

 

 金髪を指でくるりとさせながら、冒険者ギルド受付のサンディさんは困ったように目を伏せる。

 

「すみません、私では何の事だか……せめて<<鑑定>>スキル持ちの人ならあるいは」

「そっか。<<鑑定>>か……」

 

 ◇

 

 シグのクリッとした目が輝いた。

 

「ふーん。それを調べる事で原因を探すのか。良く頭が回るなアレフ! さすが吾の騎士!」

「サンディさんに聞いてもわからなかった。シグ、<<鑑定>>をしてくれるか?」

「リンゴをくれるのか!?」

「いや、あの、だから……」

「くれないのか……」

「<<鑑定>>出来たなら、リンゴをまた食べれるようになるかも?」

「そうなのか!? ならば<<鑑定>>するぞ! する!

 

 名前:成長のクリスタル

 用途:生物の成長を促進させる。

 

 生物の成長を促進させる!? こ、これを吾に譲れ! こ、これがあれば吾もジュリアのような豊満な乳に……ボンキュッボンな体に……なぁアレフ! 良いだろう!? 吾に一つ、一つで良いから譲れ! な? 吾に一つ寄越せ!」

「シグは竜人族だから、これ一つぐらいじゃ成長しないと思うよ?」

 

 俺は一つクリスタルをシグに手渡した。

 シグの顔がぱぁっと明るく。

 ああシグ。そんなに嬉しいのかお前は。

 とはいえ、ドラゴンにどんどん成長されても困る。

 変身したら山より大きくなりました、ってことになりかねない。

 

「何を言うか! また子供扱いして! 吾は竜人族の皇女、シグルデだぞ!? 吾はもう一人前なのだ! 立派なレディなのだからな! そこのところを間違えるなよアレフ!!」

「はいはい」

「むー! 子ども扱いするな!!」

「シグちゃんは十分大人だよ? 女神ライア様もきっとそう思ってるよ!」

「おお! 分かってくれるかジュリア!」

「もちろん! 私はいつでもシグちゃんの味方だし!」

「明日も行くぞ! 行ってこの成長のクリスタルを全部吾のものにするのだ! 良いなアレフ! ジュリア!」

「はいはい。もちろん付き合うよ。可愛いシグのためだしな!」

 

 俺は気合を入れる。

 なぜかシグは赤く膨れ顔。

 

「シグちゃんったら可愛い!」

 

 ジュリアが笑う。

 

「よく言ったアレフにジュリア! でも可愛い言うな! 麗しいと言え! 吾は可愛いのではない。麗しいのだ!」

 

 せいいっぱい背伸びして、シグは言ってくれた。

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