人生は詰んでいたと思っていましたが間違いでした。ダメ人間はチートスキルで無双します。 作:燈夜4649
「お宝♪ お宝♪ リンゴが買えて嬉しいな♪」
ガラガラゴロゴロパカラパカラ。
馬車の荷台でシグがリンゴを齧りながら鼻歌を歌っている。
ポロン、ポロロンと、丁寧にも吟遊詩人エリフキンの伴奏付きだ。
「アレフアレフ。結局お宝はどのくらいあったのだ!?」
「んー、あの遺跡……コカトリスが住み着いていた居ただけでたいしたお宝は見つからなかったな」
「なんだ。そうなのか」
「でも村長さんから肉のお礼金とコカトリス退治のお祝い金は貰った」
「なるほど。さすが吾が騎士アレフ! そういうところはしっかりしているな! はっはっは!」
「お金……と言うよりリンゴで払ってもらったようなものだけどな! だからシグ! そのリンゴは大切に食べるんだぞ?」
「そんな事は言われなくてもわかってる! アレフ、吾(われ)をいつもいつも子ども扱いするなぁ!」
「アレフとシグちゃんって本当に仲良しね」
「ふふふ。何だか微笑ましいわね、ジュリアちゃん? あ、その顔……ちょっとだけ妬いてる?」
「~~~! 違います!」
◇
「ほんと、この辺りは何も無いところね。退屈だわ」
「岩と石ころばかりの荒地ですからね。でもそんな荒地に咲く花が三輪……んんん! これはノートに詩を書き溜めておかねば!」
「エリフキンは勉強熱心だなー」
「詩に掛けている情熱を感じるのよね。ね、アレフ君? アレフ君にはわかるわよね、アレフ君は剣技に情熱を注いでいるのだから」
「そんな事を言うのなら、ファラエルさんだって氷の魔術に掛けている情熱の凄さは半端じゃないですよ」
「あら、それを言うならジュリアちゃんの信仰心も相当なものよ? いつも女神ライアへの祈りを欠かさないじゃない」
「そんな、ただ私は女神ライア様のお声が聞きたくて……」
「ふふふ……みんな何かに一生懸命なのよ。人それぞれにね」
「アレフ、吾(われ)はお腹が空いたのだ」
「おいシグ! 今食ったよなリンゴ食べてたよな!?」
「♪一つは真理に尊く、一つは祈りに純粋で、一つは自分に正直で。それぞれの花~♪」
◇
パカラパカラ。ゴロロゴロロ。
「えーと、アレフ君。砂混じりの風で良く見えないのだけど……もしかして前方に村がある?」
俺は前に出る。茶色い大地を見回したその先に──。
「あの大きな岩と岩の谷間……確かに建物が幾つかありますね。道もそちらに続いていますし、緑が見えますし」
「ん、立ち寄ろうかアレフ君」
「♪花は水場に立ち寄った、三輪仲良く水場に寄った~♪」
◇
俺達の前には料理の山が……どうしてこうなった?
「いやー、荒地の旅は大変だったでしょう!」
初老の村長が俺達をなぜか歓迎してくれる。
「馬車に乗ってきたからそれほどでもないかな」
「アレフアレフ! 食ってみろ! この村のリンゴはとても甘いぞ!」
「竜神様のありがたいお水で作っておりますので、とても甘くなるのです。どうぞどうぞ、お食べ下さい。幾らでもあります」
「そうかそうか! うんまうんま!!」
「プリースト様もどうぞ! ああ、女神ライア様に仕えるお方なのですね! さぁ、どんどんお食べになってください!」
「え、ええ。──アレフ?」
「食え食え。食えるうちに」
「それでは、私も頂きます」
「さぁ、そちらの美しい魔術師様も」
「悪いわね」
「いえいえ。旅人を温かく迎える事はこの村の伝統ですからな! はっはっは! さぁ、酒もありますぞ! ささ、皆様にお注ぎして!」
◇
「んでですね、聞いてくださいよファラエルさん~!? アレフったら酷いんですよ~。もう酷いったら酷いんですってば!」
「あは、あははははジュリアちゃん。ちょ~っと落ち着こうね~? 飲み過ぎじゃないのかな~?」
「ファラエルさんお酒が足りてませんね!? 飲みましょう! ただ酒です! さぁ飲みましょう!!」
「ちょ、ちょっとジュリアちゃん!?」
「誰だよジュリアに飲ませた奴!? ファラエルさん困ってるだろ!?」
「うんまうんま、うんまうんま! 美味いなこのリンゴ!!」
「……♪(ポロロン)」
◇
「もう! アレフったら人の気も知らずに! 他の女の子とばかり仲良くして!」
「そうよね~。アレフ君は八方美人よね~。ね~聞いてるんでしょアレフ君~本当はそこのところどうなの?」
「そんなの答えられるわけ無いだろ答えられるかよ!? って、頭クラクラして来た……」
「うんまうんま、うんまうんま……お腹いっぱいになって眠くなってきたのだ……」
「♪……zzz」
◇
ザーーーーーーーーー……。
んー。頭痛い。それに何だかうるさい。
これは水の音? 水の音か?
「ぐぉおおお、ぐがー、ぐぉおおおぉぉぉぉぉ……」
ああ、シグのいびき? って、俺寝てた?
「ああ、アレフだめ、急にそんな……あっ……」
おいジュリア。どんな夢だよ。
「アレフ君も甘えん坊さんね……良いわ、このお姉さんが特別に可愛がってあ・げ・る……」
ファ、ファラエルさんもなんと言う夢を……ああ羨ましい! 夢の中の俺!
んで。
辺りを見回せば水の壁。滝だ。大滝。地面の周りを大滝が覆っている。
そして足元には俺とシグ、そしてジュリアとファラエルさん、そしてエリフキンさんが縛られ寝転ばされていていて。
ああ滝壺。
ああね、そうね、そういうことか。
たまたま通りがかった知らない村でいきなり村長に歓待される。
そんな美味しい話、ありえませんよねー。
ですよねー。
「オマエタチカ。前回カラ一ヶ月……待ッテイタゾ、イイ加減腹ガ減ッテイタトコロダ……」
雷の落ちるような怒鳴り声がする。
顔を上げてみれば滝の向こうに黒い大きな影。
それがヌット顔を出して……ですよねー。
嫌な予感って、当たるものだよな!