人生は詰んでいたと思っていましたが間違いでした。ダメ人間はチートスキルで無双します。   作:燈夜4649

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ふぁいと!

「アレフ! 次の街はどこに行くのだ?」

「シグ。王都で少し名前を売っておこうと思うんだ。王都を拠点に冒険を繰り返して名声を勝ち取る! そして英雄へと一歩一歩進むんだよ!!」

「だから下水道で冒険したのだな!? 行こう行こう! もう一度下水道に行こう!」

 

 シグはリンゴを齧りながら元気に言ってくれる。

 

「ひぃいいいいいいいい!? 女神様、ライア様お助けを!? あの生き物はもう嫌ぁ~~~!」

「アレフ君……わかっているわよね?」

 

 感じる期待の視線が一つ。

 そして感じる非難の視線が二つ。

 

「……い、いやあの、下水道はちょっと……」

 

 うん。

 実は俺も下水道はちょっと勘弁。

 

 ◇

 

「ジュリアはどうだったの? 宣教許可証だっけ。それは貰えたの?」

「それが……だめだったの。大教会には行ったのだけど……許可証はすぐには渡せないって。それなりの実力を教会に証明して見せなきゃダメみたい」

「と、言うと?」

「冒険者で名を上げるとか……」

「そっか。ジュリアにも名声が必要なんだ?」

「うん。そうなのアレフ」

「名声なら、このあたしにこそ必要よ! 最強の魔術は氷魔術! あたしにはこの世のありとあらゆる炎の魔術師に氷の魔術の偉大さを知らしめる使命があるの! そのためには名声が必要よ! そのためにはアレフ君の頑張りが必要ね! さぁ、頑張りましょうねアレフ君!!」

「あ、ハイ」

 

 ◇

 

「シグ、お前向きの仕事……クエストじゃないけれど、面白いイベントを見つけてきたぞ?」

「ん? 吾(われ)の出番か!? なんだそれは!」

「リンゴ早食い競争だ」

「……リンゴはやぐいきょうそう?」

 

 わかってない。わかってないな? これは。

 

「ええとな、シグ。お前は大会会場でリンゴを食べるだけで良い。ただし、急いで食べなきゃいけない。それも沢山だ」

「おおおおおおおおおおおおおお! 何だそれは! 素晴らしいな!!」

「しかも、優勝するとリンゴと賞金が貰える。そしてリンゴ大食いチャンピオンの名声もだ」

「おおおおおおおおおおおおおお! 凄いぞそれは! リンゴが食べられる! それも好きなだけ! アレフ! よく探してきた、それでこそ吾が騎士!!」

 

 ◇

 

「おおお、凄い人だな!」

 

 大会の会場はとある通りの商店街前広場。

 大食い自慢のフードファイター達がたむろしている。

 見るからに巨漢の大男。

 その体のどこに食い物が消えるのかわからない妙齢の美女。

 そしてでっぷりと太ったこれは食いそうな男。

 それから、それから……。

 

「シグ、受付を済ませるぞ」

「わかった! 絶対に優勝してみせる!!」

 

 って、今もリンゴ食ってるし!?

 

「シグ、今はリンゴは我慢だ。大会が始まったら嫌でも食わなきゃいけない。だから今は食べなくて良いんだって。我慢しろよ!?」「なぜだ? リンゴは幾らでも食べられる。今食べるのも後で食べるのも一緒だろう?」

「それはそうだけど、今はお腹をすかせておこうよ」

「なぜだ? 食べようと思えば幾らでも食べられるぞ? それこそ何でも」

「それはそうなんだけど……まぁ良いや。受付を済ませよう」

「うん。わかったぞアレフ!」

 

 ◇

 

「ええと、子どもの部で参加ですね? お名前は……」

「誰が子どもが! 吾を子ども扱いするな! 吾はこれもでも大人! 立派な大人なんだぞ!?」

「え?」

「ええと、シグ……こいつの言うとおり、一般の部でエントリーをお願いします」

「え? でも……」

「名前は『シグルデ』でお願いします」

「は、はぁ……」

 

 ◇

 

『さぁリンゴ大食い選手権、次々と選手がギブアップする中、そろそろ四人に選手が絞られたぁ!』

 

 シグがリンゴを手に取る。リンゴが消える。

 シグがリンゴを手に取る。リンゴが消える。

 

 シャリシャリシャリシャリ、シャリシャリシャリシャリ!

 ガツガツガツガツガツガツガツガツ!

 

「うまうま。うんまうまうま」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 シャリシャリシャリシャリ、シャリシャリシャリシャリ!

 ガツガツガツガツガツガツガツガツ!

 

「何だあのガキんちょ! 凄いぞ!」

「おいおい、大男のバレスの奴顔真っ赤にしてるぜ。いい加減限界なんじゃねぇの?」

「いや、それは無いだろ。だってあのガキんちょがまだ食ってるんだ。大の男が先にリタイヤだなんてありえるわけが……」

「おい! 向こうをみろ! 太っちょガンツが引っくり返ったぞ!」

「あっちじゃ大食いアイネの姉さんがギブアップだ!」

 

『これは大きな番狂わせだ、小さな体のシグルデ選手、どこまでバレス選手に追い縋れるのか!』

 

「うまうま。うんまうまうま」

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 シャリシャリシャリシャリ、シャリシャリシャリシャリ!

 ガツガツガツガツガツガツガツガツ!

 

 ん、あの大男。手が震えて……。

 

『おおっとバレス選手、ダウン。ダウンだ! 泡を吹いて倒れたぞ!?』

 

「うまうま。うんまうまうま」

 

 シャリシャリシャリシャリ、シャリシャリシャリシャリ!

 

『なんと言うこと! 小さな小さな挑戦者、シグルデ選手が優勝だー!』

 

「うまうま。うんまうまうま」

 

 シャリシャリシャリシャリ、シャリシャリシャリシャリ!

 

『あの小さな体のどこにリンゴは消えるのか!? って、まだ食べているぞシグルデ選手!!』

 

「うま?」

「シグ! もう食べなくていいんだ! お前の優勝だ!!」

「アレフ? リンゴ美味いぞ。もっと食べて良いんだよな?」

「いや、あの……また後で食べような? 今はもう、賞金貰って帰ろうな?」

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