人生は詰んでいたと思っていましたが間違いでした。ダメ人間はチートスキルで無双します。   作:燈夜4649

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この、おにいちゃんだよ!

「リンゴ、リンゴ! リンゴだリンゴぉ!」

「あら、この焼き魚美味しいわね……何の魚?」

「「あは、あははははは……」」

 

 俺とジュリアは苦笑い。

 シグはいつもの調子で朗らかに。ファラエルさんは美味しい魚に舌鼓。

 

 よしよし、蛇のお返しが出来たぞ!

 ファラエルさん、あれが川から獲ってきたモンスターだと知ったら驚くかな……?

 

「あ、ファラエル! その魚はアレフが川から獲ってきた巨大モンスターの肉だぞ!?」

「そうなのアレフ君。やるじゃない。これ、淡白(たんぱく)で美味しいわよ?」

「「……」」

「うん、美味しいわ。どうしたのアレフ君、ジュリアちゃん。食べないの?」

 

 動じない。

 ちっとも驚いた様子が無いんだけどファラエルさん!?

 

 ◇

 

「このお兄ちゃん! このお兄ちゃんだよお父さん!」

 

 ん?

 何の事は無い。

 気がつけば俺は子どもに足を引っ張られていた。

 リーフ、確か名前をリーフと言った。

 川で溺れかかったところを助けた男の子だ。

 

「ね、『竜殺し』のアレフ!」

「『竜殺し』……君が……いや、あなたが!」

 

 衛兵の姿をし、剣を腰に佩いたこの男。

 リーフのお父さんだろうか?

 

「今日はリーフの危ないところを助けて頂いたそうで……本当に感謝しています、アレフさん」

「いえいえ」

「そうだぞ! アレフは凄いのだ! 何せ竜人族たる……」

「アレフさん、噂どおりの強さなのですか? その歳で……本当にお若い」

「いや、スキルのおかげですよ」

「それはどのような?」

「<<剣士>>です」

「おお! <<剣士>>! レアな上級スキルではないですか!」

「ええ、まぁ……そうらしいですね」

「ならば、ライア様に感謝しないといけませんね。そのスキルを与えてくれた女神ライア様に」

「ああ、実は違うんです」

「……違う?」

「このスキルは神様から頂いたものではないんです。あ、いや……今の話、忘れてください。と、とにかく俺は<<剣士>>のスキル持ちです。習熟度は──」

「<<鑑定>>! うん、アレフの<<剣士>>の習熟度はSだな! 頑張ったなアレフ!!」

「S! なんと……それは素晴らしい! どうです、一度手合わせを願えませんか。私も王都の治安を預かる衛視(えいし)の身、鍛錬(たんれん)の機会を逃したくは無い」

「俺と、……勝負ですか!?」

 

「がんばれー、お父さん!」

「おお! アレフやれやれ!」

 

「なに!? 野良試合だ!? おいみんな! 『竜殺し』のアレフが衛視のカインと野良試合だ! オッズは……そうだな、1:10でアレフ有利だ! 掛けるか!?」

「掛けになんねーよ!」

「あはは!」

「仕方ねぇな、とにかく楽しもうぜ!」

 

 ◇

 

 テーブルと椅子が壁よりに下げられる。

 俺と衛視カインさんを取り巻く人の波。

 カインさんの息子リーフと俺の仲間たちジュリア、ファラエルさん、そしてシグ。

 そして何よりも、少しでも技を盗もうと目を爛々と光らせる王都の冒険者たち。

 

「カインさん、剣に鞘を付けて殴りあう……これで良いのですね?」

「はい、そうしましょう!」

 

「お父さん、頑張ってー!」

「頑張れカイン! 自称英雄に王都の衛視様の強さ、見せてやれ!」

「あはは! おい『竜殺し』! あっさりやられて俺たちをガッカリさせるなよ!? 本気で行け本気で!!」

「アレフ! 油断しないで! 経験は相手のほうが絶対に上なんだから!」

「そうよアレフ君。気を抜かないでね!」

「アレフ。吾(われ)の騎士として立派に戦え!! 負けたらお仕置きだからな!!」

 

 俺はカインさんを観察する。

 要所要所を覆った金属の部分鎧。

 そして鋭い眼差し。

 真っ直ぐに構えられた隙のない剣。

 

 対する俺は革鎧に鋼の胸当て。

 こんな事なら、リンゴよりも防具をそろえて置けば良かった。

 みんなが言うように、変なところを鞘で叩かれて痛めでもしたなら、またジュリアに怒られる。

 俺は剣を構える。

 

 静まる周囲、音をなくす喧騒。

 

 ゆっくりと。右へ……右へと回る。カインさんもじりじりと、左へ、俺の左へ回る。

 

 ダン!

 

 カインさんが先に仕掛ける。

 踏み込む!

 

 カインさんの剣が伸びる。

 

 顔面に突き!

 

 俺はカインさんの剣筋を右に避ける。

 掠めるは鼻先一つ。

 俺は剣を左に薙ぎ払う。

 胴を凪ぐ手応え。

 

「お父さん!」

 

 すぐさま起き上がろうとするカインさん。

 俺はそんなカインさんの喉元に剣を──!

 

「そこまで!」

 

 シグの手が俺の剣先を掴んでいた。俺の剣の鞘を。

 

「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 湧き上がる観衆。

 拳を突き上げる冒険者たち。

 

「アレフ!」

「アレフ君……」

 

 俺はカインさんに手を差し出す。

 

「鋭い突きでした」

「いや、アレフさん……私の負けだ、完敗だ。そして改めて礼を言わせてくれ。リーフを救ってくれてありがとう。君こそ本当の英雄だ」

 

 カインさんは「お父さん!」と飛びつき縋るリーフの頭を撫でながらそう言ってくれた。

 俺、俺……本当に強くなったんだな……。

 

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