ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~   作:しょーもないおっさん

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二作目です。至らない点もあるかと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
また、本作はコメディ寄りの作品となっております。

本作は他サイトにも同時投稿しています。


ルート1 第1話

「——というわけだから、君たちにはこれから送る世界を何とかしてもらう。以上」

 

それが、すべての始まりだった。

彼の記憶は、出世を目前にしたある夜、深夜残業の帰り道、居眠り運転のトラックが突っ込んできたところで途切れていた。当然、次に目が覚めるのは白い天井の病院のベッドの上か、あるいは冷たい棺桶の中だとばかり思っていたのだ。

しかし、彼の視界に飛び込んできたのは、上下左右の概念すら曖昧な、一面が真っ白な空間だった。そこに浮かんでいたのは、自称・神、なぜか【観客】と呼べという、ナメ腐った態度の光の球体である。

 

「は? 何とかしろって、説明が雑すぎませんか!?」

声を荒らげたのは、どこにでもいそうな若者だった。すっきりと刈り上げた黒髪に、細身の体を包むネイビーのスーツ。派手な装飾は一切なく、仕立ての良さよりも「無難さ」が前に出ている。

 

「まず、キミたちは、元の世界であと1秒後に死ぬ運命だったのさ、そこをこの!僕が!救ってあげようってわけさ。でもね、タダでそんなおいしい話あるわけがないよね?そこで、僕の暇つぶしに付き合ってよ、これから送る世界を何とかしてくれれば、元の世界でもちゃんと蘇生してあげるよ、悪くない話でしょ?」

 

「ほう?」いつからいたのか隣には胡散臭そうな男性が呟いた。

 

「あ、テンポ悪くなるから、生活に必要なモノは念じれば送るよ。それ以外は……まぁ僕が認めれば送るかな?こんなところかな?んー……これだと難易度が高いか……よし!ヒントをあげよう、キミたちの前にも送った連中がいたけどね、例外なく皆『勘違い』していたよ。じゃあ、がんばってね~」

 

「ちょっと待て!なんとかってなんだ!もっとしっかり―――」

食い下がろうとしたが、神は聞く耳を持たない。

 

「まあ、おれぁ死なずに済むなら何でもいいや。がはは!」

その隣では、能天気に笑っていた男がいた。

無精髭に、ボタンを外した白シャツ。夜の街で遊んでいそうな佇まいだ。しかし、瞳は、妙に鋭く、綺麗に澄んでいる。

 

「はぁぁ!? なんでそんな簡単に受け入れてんだよ! ふざけんな!

出世が目前だったのにいきなり事故にあって、さらにこんなのってありかー!!」

絶叫が白い空間に木霊し、二人の身体は光の粒子となって、新世界へと叩き落とされた。

 

 

***

あの世界と言っていたが、現代とはさして変わらないように思えたが、アスファルトは激しくひび割れ、へし折れた電柱が道路を塞ぎ、見上げるビル群は窓ガラスがことごとく割れて半ば廃墟と化している。そして何より、鼻を突く異様な悪臭と、遠くから響く地を這うような唸り声。

 

「ひっ!?」叫びそうなサラリーマンの口を押さえる男。

「しっ!静かにしろ、見つかるとヤバそうだ」

転送されてわずか数十秒。視界の先では、体のあちこちが損壊しているのに軽自動車並みの速度で壁を駆け、アスファルトを爆走している、おそらく死体『ゾンビ?』の群れが通り過ぎていった。もはや、それは災害に近かった。

 

「……行ったようだな、とりあえずこのまま身を隠しておこうぜ」

「すいません、助かりました、あ、私『赤城 紅一』といいます」

「『青山 藍乃介』だ。それと気にすんな。アレ見ちゃあ当然だ。俺もあんちゃんが先に叫んだおかげで冷静になれたからよ、お互いさまってやつだ。がはは」

 

「とりあえず、どうします?あっ!そういえば、必需品は念じれば送るって言ってましたよね。

使えるか試してみましょうよ、えーと、水と食料、それから武器?は後回しでいいか?」

 

赤城が脳内で念じる。すると、何もない空間からミネラルウォーターのペットボトルとアンパンがその場に突然現れた。

 

「お!すげ~な~。んじゃあ、おれぁこれだな」

青山がぽん、と手を叩くと、虚空から冷え切った瓶ビール2本とプラスチックのカップが2つ出現した。

 

「……」

「……青山さん。何頼んでるんですか?」

「ん? 試し♪試し♪。ほらよ、あんちゃんの分」

「飲むわけないでしょうが!!」

「そぉかい? じゃあ俺がもらうわ」

数分後、物陰で、さらに追加で送られてきた酒も残すところ一本となり、泥酔状態の青山が「がはは、タダ酒はうめぇなぁ」と管を巻いていた。

一般人でしかない二人が、いつあのゾンビ?に襲われるかもわからないというのに。赤城は強烈な胃痛に襲われ、頭を抱えるしかなかった。

 

「なんでこんな目に……。今まで下げたくもない頭を下げ、やりたくもない接待なんかもしてきて、やっと出世できるって時に事故にあうだなんて、ツイてない……ハァ」

途方に暮れていた赤城だったが、その時、足音がこちらに近づいてくることに気づいた。

 

なにかが近づいてくる。赤城は息を呑んで身構えた。

ビルの影からぬっと現れたのは、ボロボロになったタイトスカートを着た、一人の女性型のゾンビだった。生前はきっと、仕事の出来る凛としたOLだったのだろうか。だが今や、その頭部の右半分は大きく損壊し、赤黒い肉と骨が露出している。

しかし、先ほどの猛スピードで走っていたゾンビ?とは明らかに違っていた。彼女には襲いかかってくる気配がなく、ただ濁った瞳で、じっとこちらの様子を伺うように見つめている。

 

「(ひ、またゾンビ……!? 見つかった!?やばい……青山さんは?……逃げ……どこに?…………。???襲って……こない?でも、こっちを見てる?……。どうする、どうする……?)」

赤城が恐怖で全身を硬直させていると、隣の泥酔おっさんが笑った。

 

「んお!マジかよ?酌まで付くのかい? 最近のあーー、サブスクってサービスかい?嬉しいねぇ」

「サブスクってそういうときに、使うモノじゃねーから!つーかそうじゃねーよ!早く逃げ――」

青山は千鳥足でOLゾンビに近づくと、何を思ったか、先ほど残った最後の一本の瓶ビールを彼女の前に差し出し、さらに空のカップも突き出したのだ。

「さ、頼むわ」

 

話が通じるわけがない、常識で考えて、次の瞬間に喉笛を噛み切られて終わりだ。赤城は悲鳴を上げそうになった。

しかし、OLゾンビは、瓶を手に取り、不器用な手つきで瓶を傾け、青山のカップにトトト……とビールを注いだのだ。

「おっ、トトト……っと。ありがとな。……かーうまいねぇ!美人に酌してもらえると手酌よりも旨く感じるわ、不思議だな~がはは!」

青山は笑いながらも、突如真面目な顔になり、

「でもな、ここだけの話だぜ、おれぁよ、……大吟醸派なんだ。がはは」

注がれたビールを美味そうに煽りつつも、さして重要ではないことをさも重要という感じで囁きまた大笑いした。

 

その瞬間だった。

 

【システム起動しました】

——テレレーン♪

 

青山の脳内に、あまりにも不釣り合いな、レトロな電子音が響き渡った。

 

「あん?」

訳が分からず、青山が目を見開く。次の瞬間、世界は一瞬にして色彩を失い、セピア色の静止画のようにすべてが停止した。風に舞っていた紙くずも、隣で青ざめた顔を浮かべる赤城も、遠くのゾンビの唸り声さえも、完全に静止している。

そして、青山の目の前に、虚空から蛍光ピンクの半透明ウィンドウが出現した。

 

【イベント発生】

 

という文字が流れ、

さらに、OLゾンビの頭上に『?』という文字が浮かんでいる、その下に、信じられない「3択」の文字列が展開された。

 

▶ 礼はしないとな、お返しの酌をする

▶ さらに酌をしてもらい、一人で飲む

▶ 酔っていい気分になり、服を脱ぎ全裸ダンスをキメル

 

「(うーん、普段なら全裸ダンス一択だが、流石にそれは初対面のおねぇちゃんには失礼だな……よし)」

青山は上の選択肢をタッチした。

 

▶ 礼はしないとな、お返しの酌をする

 

選択肢を選んだと同時に、世界が一気に鮮やかな色彩を取り戻す。

青山は飲み終わったカップをひっくり返し、今度はOLゾンビの前に突き出した。

「今度は俺が酌する番だ。ほら、おねぇちゃんも飲みなよ」

 

OLゾンビは、しばらくカップを見つめていたが、そっとそれを受け取り、青山が注ぐビールを受け止めた。

その瞬間、青山の脳裏にシステムメッセージが流れる。

 

【イベントno.1『酌』完了】

 

「……」

赤城は開いた口が塞がらなかった。「は!?え!?はぁぁぁーーーー!!?」

赤城の叫びが響き渡ると同時に、青山の脳内に、全く見覚えのない「謎の光景」がフラッシュバックした。

 

 

~~~

『やっぱり、先生の娘さんだけあってすごいね』

万国旗が揺れる校庭。

少女は、小さく頷く。

——諦めた面持ちで。

~~~

 

 

「―—やまさん、青山さん、どうしたんですか?」

青山が頭を振りながら「飲み過ぎたか……」と呟いていると、突然、廃墟の陰から激しい足音が近づいてきた。

「おい! そこの生存者! 何をしている、早くこっちへ来い!」

 

銃を構えた防護服姿の人間の集団が現れた。その気配を察知したのか、OLゾンビはビールの入ったカップを持ったまま、素早く物陰へと去っていった。

一方の青山は、泥酔状態で頭を振ったのが禍したのか、一気にアルコールがまわりその場に大の字になって一瞬で爆睡を始めていた。

 

「え!?ちょっと青山さん!? マジかよ、ここで寝るのかよ!?嘘だろ……」

赤城はあり得ないと思いながら、泥酔してイビキをかき始めたおっさんを背負い、防護服姿の集団たちの案内のもと歩き出した。おっさんの体重で腰の心配をしながら。

ゾンビのあふれた不条理な世界での、これが彼らの最悪で、奇妙な第一歩だった。

 

つづく

 




※相変わらず作者は豆腐メンタルです。お手柔らかにお願いいたします。
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