ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~ 作:しょーもないおっさん
「……フハハ、ハハハハハ!」
グラウンドの隅で、赤城はダンベルを握り締めながら、壊れた玩具のように笑い声をあげていた。
前回の記録時に見合わせたときにわずかに青山に負けていた赤城はショックのあまり、さらに自分を追い込み、過負荷の原則とプロテイン摂取、そして超回復のサイクルを繰り返すうちに、脳内麻薬の分泌によって「快感」へと変わり、筋肉一色となっていた。
「いいぞあんちゃん! キレてる、キレてるぜぇ!」
「ええ、青山さん! 大胸筋が、大胸筋がちぎれんばかりに喜んでいます!!」
段々楽しくなってきたどころか、完全にビルダーと化した青山と並び、二人は狂ったように肉体を追い込み続けた。
限界まで鍛え、プロテインを貪り、泥のように眠る。そんなストイックな二人の熱量に触発され、周囲のスーパーゾンビたちも「オォォォン!」と唸り声をあげながら、負けじとパワーラックのバーベルをガチガチと鳴らして己の限界に挑み始める。
グラウンド全体が、濃厚な筋肉の熱気で満たされていく。
そんな彼らの成長を、朝礼台の上のマッチョ兄さんゾンビは、まるで我が子の巣立ちを見守るかのように、深く、満足げに頷きながら見つめていた。
そして、ついにその日が訪れた。
「見てくれ!これが!!私の数日間の成果だ!!!」
頭の中は筋肉一色となり、楽しげに笑顔を浮かべた赤城が、朝礼台のマッチョ兄さんゾンビに視線を送り。
赤城は、彼の真似事をするように、大きく息を吸い込んで両腕を斜めへと突き出した。
筋肉のカットを、バルクを、ここまでの血と汗の結晶を、世界に証明するかのように――。
——テレレーン♪
その瞬間、世界から一切の色彩が剥ぎ取られ、完全なモノクロームの停止空間へと突入する。
歪む空間のただ中に、あのシステムウィンドウがポップアップした。
【イベント発生】
「なっ!なんなんですか!またですか!なぜ私がノリ始めるときに……!」
「がはが、あんちゃんには、まだ早いってことだな。フン!」
憤慨する赤城とそれに対して、所かまわずにポージングを決める青山。
そんな二人にお構いなく空中へ浮かび上がった、3択。
▶ここまで鍛え上げた肉体(成果)を見せつける
▶ここまで鍛え上げた肉体(成果)を見せつける
▶ここまで鍛え上げた肉体(成果)を見せつける
「「……」」
互いに、目を見合わせ。
「「フ……」」
「「フハハハハハハハハ!!!!! 見せてやるさ、俺たちのマッスルをォォォォォォッッッ!!!!!」」
赤城と青山の、脳まで筋肉に染まった狂気の爆笑がモノクロの空間に木霊する。
システムが勝手に▶ここまで鍛え上げた肉体(成果)を見せつける、をロックオンし、ピピッと決定の電子音が鳴り響いた。
その瞬間、世界に目も眩むような鮮やかな色彩が爆発するように戻る。
「「オォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」」
赤城、青山、そしてマッチョ兄さんゾンビと数え切れないほどのスーパーゾンビたち。
その場にいる全員が、息を合わせ、魂を同調させ、大地を揺るがす咆哮と共に、今できる最も美しいポージングを一斉にバシッと決めた。
赤城と青山が渾身の力で「サイド・チェスト」を決め、胸板をこれでもかとせり上がらせる。
その瞬間、言葉なき魂の称賛が、確かに二人の脳裏に響いた気がした。
【イベントno.5:『ポージング』完了】
突如として、朝礼台の上のマッチョ兄さんゾンビの肉体が、内側から眩い光を放ち始めた。
その光は瞬く間に周囲へと伝破し、ベンチプレスを握っていたゾンビも、トレッドミルを走っていたゾンビも、数十匹のスーパーゾンビたちが次々と「光の柱」となって消滅していく。
ポージングを決めたまま、周りの状況など知ったことかと二人はただ笑いあっていた。
「ワハハハハハ!」
「だははははは!」
ただひたすらにポージングを決め、狂ったように笑い声をあげ続ける二人の頭上から、天を突くほどの巨大な光の柱が降り注ぐ。
「せいっ!わはは。青山さん、光の当たりでサイコーに決まってるよ!」
「とりゃっ!だはは、そういうあんちゃんもな!」
眩い光に包まれながらも、二人は流れるようにポージングを切り替え、互いの肉体を称え合った。
眩い光が二人を優しく、そして強引に包み込み――次の瞬間、激しい閃光が収まったグラウンドには、静寂だけが残されていた。
そこには、くすんだ曇り銀のダンベルが一つ落ちていた。
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