ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~ 作:しょーもないおっさん
「基礎知識のアニメは教えました! 儀礼の正装たるコスプレも整えたました! となれば、サブカルチャーの三位一体、最後を締めくくるのは『イベントたる即売会』しかありません!」
「そんな、三位一体やだな~……」
衣料品店から少し離れた崩落のない広場。そこで拳を握りしめて熱弁を振るう黄瀬に、赤城のツッコミが炸裂する。
「衣装を着るまでは百歩譲っていいとして、なんでゾンビしかいない世界で同人誌即売会を開かなきゃいけないです?」
「がはは! いいじゃねぇか、祭りみたいでよぉ。俺が机と椅子を並べるぜ」
青山が「よいしょ」と机を引っ張り出してきた。
「えっ!?そんな!いきなり……ほんとにやるんですか?」
赤城が躊躇していると、老女ゾンビはトコトコと歩み寄り、青山の机設置をスッと手伝い始めた。
「ほら見てみなさい赤城さん、彼女のモチベーションは最高潮よ!」
「確かに……やる気に満ちている」
その瞬間、頭の中にあの音が響き渡る。
——テレレーン♪
世界が静止し、半透明のシステムウィンドウが出現した。
【イベント発生】
▶手に入れたオタ本を並べる
▶その辺に落ちていた瓦礫を並べる
▶広い場所にムズムズしだした青山が踊りだす
「おい、まて!!」赤城がすかさず叫ぶ。「なんだよ踊りだすってなんなんだよ! わけわかんねぇよぉ!!ここで提示する必要ねぇだろ!?」
「ほう!あんちゃんよぉ、俺の一世を風靡したあのダンスを見たくはねぇのかい?」とステップを踏もうとする青山。
「なんだよ、一世をを風靡ってあんた相変わらずよくわからない経歴だな!」
「お二人ともいつもの漫才はそこまでです、まったく仲良しなのは分かりましたから、もう少しTPOを考えてくださいね、とにかく選択をしますからね」
黄瀬が【▶手に入れたオタ本を並べる】をポチッと押すと、世界が再び動き出した。
『イベントNo4.:即売会ごっこ 完了』
折りたたみ机の上に、皆で調達してきたサブカル本が綺麗に並べられる。
机の裏に座るのは、いつの間にかにサークル主となっていた黄瀬と、なぜか売り子として寄り添う老女ゾンビ。
当然、客はゼロ。
遠くでスーパーゾンビの唸り声が虚しく響くだけである。
「……あの、黄瀬さん」赤城が気まずそうに声をかけた。「一応、私も並べるのは手伝いましたけど……見ての通り、客いませんよ? いや、客というか、当事者なんですけど」
「フー……いいですか、赤城さん、即売会とは人数じゃないんです。この空間、この空気を共有すること自体に意味があるんですよ」
凛とした表情で、困った子供を見つめるように黄瀬が答えた。
「ほ〜、そういうモノなのか〜? 奥が深いねぇ」青山は丸椅子に深く腰掛け、感心したように頷いている。
すると隣で、老女ゾンビがパチパチパチ……と、小さく、拍手をした。
その顔は、まるで本当に楽しそうに、笑っているように見えた。
夕暮れが近づき、廃墟の街がオレンジ色に染まっていく。
その時、不意に本日二回目の『テレレーン♪』が鳴り響いた。
世界が夕刻のままピタリと静止する。
「一日で2回も!?」
「ほう」
「……」
赤城が驚き、青山は驚嘆し、黄瀬は違う事に気をとられて、三者違う表情を浮かべた。
【イベント発生:???】
選択肢
▶共に、余韻に浸る
▶とっとと、片付ける
▶ホクホクで入れた戦利品を確認する
黄瀬は何も言わず、まっすぐに【▶共に、余韻に浸る】を選んだ。
世界が再びゆっくりと動き出す。
長い影が伸びる広場で、老女ゾンビが静かに黄瀬を見つめていた。
言葉は交わせない。けれど、彼女の穏やかな瞳がすべてを語っていた。
黄瀬は並べられた本を愛おしそうに見つめた後、老女に向き直って静かに微笑んだ。
「楽しかったですか?」
老女ゾンビは答えない。ただ、満足したように……その身体が、淡い光の粒子となって、夕暮れの空へと静かに消滅していった。
周辺一帯を徘徊していたスーパーゾンビたちも、それに連鎖するように光となって消えていく。
誰もいなくなったスペースで、黄瀬がぽつり。
「……私もです」
『イベントNo.5:知らなかった世界 完了』
黄瀬の脳内に「謎の光景」がフラッシュバックした。
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静かな、広すぎる屋敷の窓際。
年老いた女性が、一人、本を開いている。
顔を上げると退屈そうな表情を浮かべていた。
窓の外からは、子供たちの明るい声が響いていた。
ほんの少しだけ、カーテンを開けその光景を覗き見ていた。
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「…………」
「……なんか、黄瀬さんが暴走してる間に、いつの間にか終わりましたね」
赤城が、首を傾げながら言った。
「がはは。面白かったからいいんだよ。これで」
青山がガシガシと頭を掻きながら笑う。
そんな二人に気を取り直した黄瀬が
「暴走なんかしていません。至極まっとうな『布教』です」
黄瀬はいつものクールな調子を取り戻し、カメラを片付けながら返答した。
「あ!やっぱり、布教って、攻略してないじゃないですか!!」
「あっ!?しまった、つい本音が……!」
「がはは、あの着ぐるみなかなか着心地が良かったな~」
そんな他愛ない言い争うをしている時、3人の身体が、眩い光の柱に包まれる。
「いつもながら唐突すぎる!」
「次はどこかねぇ……」
「私の戦利品は……!」
眩い光がギャーギャーと騒ぐ3人の声ごと連れ去り。
次の瞬間には、アニメキャラのアクリルキーホルダーと静寂だけが残されていた。
ルート5 へ