ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~ 作:しょーもないおっさん
空から光の柱が降ってきて、光が消えた後に、その場にいたのは3人の男女であった。
「コレが転移?……そしてココが新しいエリアね、工場跡地?なのかしら?、あの遠くの方に見えるのがきっと倉庫跡ね、
それにしても……素晴らしい。まさか、あの伝説のカルト映画のオープニングと、全く同じロケーションに立てるなんて……。
赤城さん、あそこの崩れた壁を見てください。まさにここから、最初の犠牲者が悲鳴を上げて逃げ惑うんですよ。
現実が名作を忠実に再現している……ゾクゾクしますね」
崩れかけたコンクリートの壁を見上げながら、三人のうちの女性、黄瀬蘭がそんなことを言った。
端正な顔立ちだが、平常運転のサブカル脳であった。
「黄瀬さん、私たちはもう序盤じゃないですよ?映画なら中盤あたりか、終盤の始まりくらいじゃないですか?」
……あ、ちょっと、青山さん、先にいかないでください!」
3人の内の二人目、赤城紅一が黄瀬にツッコミを入れ、先行するもう一人に声を掛けていた。
「お、見ろよあんちゃん。あそこにいるのは現地の生存者じゃねぇか?」
三人の最後の一人、青山藍乃介が指差した先には物陰に隠れながら移動している、カモフラージュの為か白い迷彩柄の服を纏った男性が、三人の方へとやってきた。
「お前ら、あほ面揃えて、道端に突っ立って、なに余裕こいていやがる?ここはスーパーゾンビ共の巣窟だぞ?なに考えてやがる?」
彼が注意と警告を告げてくる中、赤城が「ああ、すみません、新参なものでして不慣れなんですよ」と当たり障りの無い返答をした。
「ふん、そうかい、まあ気をつけな、くれぐれもヤツラ、スーパーゾンビには手を出すなよ?」
「スーパーゾンビですか?知性ゾンビではなくて?」
「どうやら……ホントに新参らしいな……この辺に住んでるやつならそんな事を言うわけが無いからな」
彼は多少警戒心を解き、「いいか、この辺じゃ知性ゾンビはいるが、あいつは無視していい、なぜならアイツはスーパーゾンビに命令が出来ないからな」
突然の答えに赤城が驚きながら聞き返した。
「え!?知性ゾンビは命令権を持ってるはずじゃ?……」
「詳しい事は俺たちも知らんよ、疑うなら自分らの目で確かめればいいさ、この先の倉庫街で見れるからよ」
あばよ、とそういって、彼は去っていった。
完全に去ったのを確認してから赤城が他二人に問いかけた。
「今の話、どう思います?本当だと思いますか?」
「現状、彼が私たちを騙すメリットがないから本当なんじゃ?」
黄瀬はメリット面での意見を述べ。
「さっきのにいちゃんが言ってたじゃねぇか、あっちで見れるってよ、俺らの目で直接確かめようじゃねぇか。その方がはえーよ」
青山はとっとと行こうぜと二人を促し。「確かに、ここで議論するよりもその方が確実ですね」まず黄瀬が賛成をし、
ついで赤城が「わかりました、ただし慎重にいきましょう」といった。
「あれじゃないですか?」
3人の中で一番目がよさそうな黄瀬が指差した、その先には、周りのゾンビに命令しようとしている、一体のゾンビがいた。
警官の制服を着た女性のゾンビ。おそらく生前は警察官か何かだったのだろう。
彼女は、周囲で好き勝手に暴れ回っているスーパーゾンビたちを前に、必死に手を振っていた。
だが、本能のままに動くスーパーゾンビたちは気にも留めていなかった。それどころか一体のスーパーゾンビが彼女を突き飛ばすようにして走り去り、
女警官ゾンビはすてーんと派手に尻餅をついた。
スーパーゾンビたちは、我関せずと奥へと消えていく。
残されたのは、埃まみれの床に座り込み、うなだれる女警官ゾンビのみ。
「……どういうことだ?命令権を持ってるんじゃないのか?それなのにまったく機能どころか、相手にもされていないじゃないか。
いやそもそも命令権ってなんなんだ?なぜ命令できる?いつから命令できることに気付く?まだまだ、分らない事だらけだ」
赤城がため息をついた、その時だった。
「……」
テレレーン♪と音が鳴り。
「「えっ!?」」
そして突如、世界から一切の色彩が消え去り、静止した。風に舞っていた煤煙も、突き飛ばされて固まった女警官ゾンビの姿も、すべてが完全に停止した。
三人の視界の真ん中に、お馴染みのシステムウィンドウが浮かび上がる。
【イベント発生:???】
そして画面に表示されたのは、いつもの三択、そして選択のカーソルは青山の前に浮かんでいた。
▶ 「見過ごすことはできない」」とそばへとよる
▶ 「仲間外れか、ま、しょうがない」と無視して引き返す
▶ あいつら、きっとかくれんぼを始めて「あいつが”鬼”にきまったな」とニヒルに笑う
「おい、待て。一番下、なんだあれ?明らかにおかしいだろ」
「確かに、明らかに異質ですね、いつも”ああ”なんですか?」
赤城と黄瀬が話し合う横で、青山は、
「……ったく、見ちゃいられねぇな」
▶ 「見過ごすことはできない」」とそばへとよる
世界に、ドッと色が戻る。
「よぉ、赤城と黄瀬のお譲ちゃん。ちょっとおれぁやることができたからよ、あと頼むわ」
青山が首を廻しながら、ずかずかと女警官ゾンビの方へ歩き出す。
「は!?頼むって、ちょっと、何する気なんですか?ああ……行っちゃったよ、やらかしそうであとが怖いな~」
「その割には、嬉しそうな顔をしているみたいですが?」
黄瀬の言葉に赤城は口元を手で隠して「そんなことありませんよ」と言った。
「お二人の空気感……まさにアニメの共闘シーンそのものです。赤城さんが、青山さんの無茶振りに頭を抱える姿と完全に一致して―――」
すっかり忘れていたが、この女性にはこの悪癖があったことを、赤城は今さらながらに思い出した。
「なんといってもあそこで多数の敵に包囲され―――」
「要するに?」
大分手馴れてきた赤城が端的に用件だけを求め。
「ですから、仲がいいですねって」
「…………」
赤城たちが背後でギャーギャー騒ぐ中、青山は座り込んでいる女警官ゾンビの前に立つと、影を落とすようにして見下ろした。
女警官ゾンビが、顔を上げる。
青山は腰に手を当て、へッと笑う。
「よお、おねえちゃん。まずは姿勢をただしな。んなふうに丸くなってしょぼくれてりゃよぉ、だ~れも耳を貸しちゃくれねぇぜ」
知性ゾンビは、ぽかんと口を開けた。
そんな相手にかまわずに青山は
「いいか、まずは声だ! 腹ぁから声出せやぁ!!」
「なに言ってんだあんたー!!ゾンビが喋れるわけないだろ!!!」
赤城の至極真っ当すぎたツッコミが辺りに響き渡る。
しかし、青山は完全に無視して、女警官ゾンビの肩を掴んで無理やり立ち上がらせた。
「ほれ、まずは胸を張れ!んで顎を引く!聞いてほしいならよぉ、まずは自分が『ビッ』てするんだよ!!」
女警官ゾンビは、青山の勢いに圧倒されながらも、言われるがままにピシッと背筋を伸ばした。
その姿を見て、黄瀬がふむ、と顎に手をあてる。
「なるほど……! 青山さん、あなたは言葉を廃し、彼女の中に眠る『誇り』を呼び覚まそうというのですね。かつて―――」
「細けぇわ!!」
青山の怒鳴り声が、黄瀬の考察をシャットアウトした。
「いいかおねえちゃん、理屈じゃねぇんだ。ハートだ、ハート!、次あいつらが来たら、こう、ガツンとやってやんだよ!」
青山が空中に向けて大振りの身振りをしてみせる。女警官ゾンビはそれを見て、おずおずと同じように、腕を振るジェスチャーを真似し始めた。
「……なにこれ?え!?なにが始まったの???」
赤城は頭を抱え、理解不能に絶叫した。
その時、視界の隅に、再び文字が流れた。
【イベントno.1 指導 完了】
直後、青山の意識が、一瞬だけ別の場所に引き飛ばされる。
~~~
夕焼けに染まる、保育園。
賑やかに砂場で遊ぶ子供たち。
少女が足を踏み出しては戻し、最後にはただ眺めていた。
~~~
その光景を見たはずの青山は、気にも留めない様子で。
「よっし、いい面構えになってきたじゃねぇか」
青山がガハハと笑いながら、女警官ゾンビの頭を警官帽ごと、その頭を手荒に撫で回した。
「……はぁ、こんなので攻略ってできるんですかね?……まぁ、なるようになるか……。あははは……」
赤城はこれから何が起きるのか、もうどうしようもないとさじを投げ、笑って後の自分にぶん投げた。
つづく