ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~   作:しょーもないおっさん

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ルート5 第4話

「ふぅ……」

 

静まり返った資材置き場で、赤城がコンクリートの床に座り込み、大きく息を吐いた。

つい数十秒前まで、自分たちを「獲物」として狙っていたスーパーゾンビたちの気配は、もうどこにもない。

 

女警官ゾンビは、自分の震える両手をじっと見つめていた。

初めて自分の意志で、他者に命令を下した。その事実に、声は出ないながらも、彼女自身が一番驚いているようだった。

 

そんな彼女の前に、青山がドタドタと歩み寄る。

そして、腕組みをして満足そうに何度も深く頷いた。

 

「かっこよかったぜ。やるじゃねぇか!」

青山はニカっと笑いながら、親指を上に立ててサムズアップした。

 

「確かにかっこよかったですね……こうビシっ!て決めて」

赤城が笑いながら、泥だらけのスーツの膝を払いながら立ち上がる。

 

「そうね。あの時のポーズ、右手を突き出し、顔面へビシッと指差しは90年代で屈指の名作といわれたあのアニメの―――」

「黄瀬ちゃんよぉ、細けぇのはいいんだよ」

 

青山が黄瀬の語りを片手で制しながら、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。

 

「さてと。一人前になったってことで、『コイツ』を渡すときが来たって事だな」

 

青山がゴソゴソと懐から何かを取り出そうとした、まさにその瞬間。

 

――テレレーン♪

 

「うおっ、またですか!?」

本日二度目のシステム警告。

赤城の絶叫とともに大気が凍りつき、世界から色が失われた。

ポケットから何かを取り出しかけた青山のフォームのまま、時間はピタリと停止する。

 

【イベント発生:???】

 

モノクロの空間に、お約束のシステムウィンドウ。

提示された三択は、やはり青山の前に浮かび上がっていた。

 

▶ 夜なべして作った、青山印の謎のロゴ入りリーダー認定腕章

▶ 即席で作った、赤城印のオリジナルの団体旗

▶ かくれんぼで有利になる、黄瀬印がプリントされた迷彩柄のマント

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

停止した世界の中で、赤城のツッコミが限界突破した。

「上も、きになりますが!真ん中!これなんですか?赤城印って!いや、下の黄瀬印も気になりますが、いや、やはりその前に青山さん、『夜なべして作った』ってなんですか!?僕たちこのエリアに来てからずっと一緒に行動してましたよね!?」

 

「……フッ。男のポケットには、時にロマンが詰まっているものよ、赤城さん」

黄瀬が静かに瞳を光らせる。

「おそらく青山さんは、私たちが寝静まった夜、月明かりを頼りに、裁縫セットでチクチクと縫い上げていたのね。いつか成長し自分を乗り越えていったときのために、

そう!いわばこれは!!熱い師弟愛……!この光景が彼らキャラクターたちの視点なのね!!」

「……違うと思いますけどね」

 

そんな外野の騒ぎをどこ吹く風と、青山は迷わず一番上の選択肢を叩き込んだ。

 

▶ 夜なべして作った、青山印の謎のロゴ入りリーダー認定腕章

 

世界に、ドッと極彩色の現実が戻る。

 

「受け取りな、お前さんにやるわ」

 

青山がポケットから取り出し、ひょいと放り投げたのは、赤い布地に黄色いフェルトで妙なヘンテコなマークが縫い付けられた、不格好な手作りの「腕章」だった。

裁縫の技術はお世辞にも高いとは言えず、縫い目はガタガタ、糸の端がほつれて飛び出している。

 

だが、それを受け取った女警官ゾンビは、ただ一心にその赤い布を見つめた。

 

「卒業だ」

 

青山はぶっきらぼうにそう言うと、ふいと背を向けた。

 

女警官ゾンビは、自分の細い腕にその赤い腕章を当ててみる。

そして、ボロボロの制服の袖に、不格好だけど確かな温かさを持った、真新しい「リーダーの腕章」が巻かれた。

 

彼女は、帽子を脇に抱え、胸をピシッと張り、青山に向けて、今までで一番美しい敬礼をして見せた。

 

その瞬間、頭上の空から、優しく、眩い光の柱が降り注いだ。

 

【イベントno.4 卒業 完了】

 

光は女警官ゾンビを包み込んでいく。

その身体が静かに、粒子となって解けていくのを、三人、そして青山の脳裏に、すうっと冷たい風と共にある光景が流れた。

 

 

~~~

そこは、雨がしとしとと降る、平日の交差点。

白いカッパを羽織り、警察の制服を纏った彼女が、オドオドしながら赤と白の旗を振っていた。

~~~

 

 

光が弾け、廃倉庫の床には、もう彼女の姿はなかった。

周辺を漂っていたゾンビたちの気配も、嘘のようにすっきりと消え失せている。

 

「……行っちゃいましたね」

赤城が、静寂の戻った資材置き場を見つめながら、ぽつりと呟いた。

 

「ええ。師弟愛による、素晴らしく完璧なハッピーエンドだわ」

黄瀬が胸元で手を合わせ、小さく息を吐いた。

 

そんな中、青山だけはいつも通りに頭を掻いていた。

 

「そういえば青山さん、さっきの腕章にあった変なマーク、何だったんですか?」

赤城がふと疑問を口にする。

「黄色いフェルトはわかったんですけど、他はなんかよく見えなかったんですが」

 

「んん?へっ、内緒だ」

青山がニヤリと不敵に笑う。

 

「……黄瀬さん、著作権的にはどうですか?あぶなくないですか? どこかのスポーツブランドとか、有名なロゴとか使われていませんでした?」

 

黄瀬は真面目な顔で腕を組み、顎に手を当てた。

「そうね。もしあれが某世界的飲料メーカーのロゴを使っていたとしたら、私たちは次のエリアへ行く前に、法務部という名の最強の追跡者に抹殺される可能性があるわ。訴訟費用は神が払ってくれるかしら?」

 

「え!?ここ異世界ですよね?そういう、リアルに不安にさせるのやめてもらえます!?」

 

赤城の悲鳴のようなツッコミが響き渡る中。

彼らの足元から、今度は三人自身を包み込むように、眩い光の柱が立ち上った。

 

「お、今度は俺たちの番か」

「ちょっと、心の準備が! まって、まって、ほんと訴訟とか大丈夫!?」

「さあ、次の物語の開幕よ。次はどんなジャンルが待っているのかしら……!」

 

光が視界を覆い尽くし、三人の意識は、新たなエリアへと引き込まれていった――。

 

そして、あとには警官帽だけが残っていた。

 

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