ワールドオブぞんび ~ぞんび世界でオレたちだけギャルゲー!?~ 作:しょーもないおっさん
◇◇◇ 「現地民視点」
現地のコミュニティは騒然としていた。ついに『ヤツラ』が現れた、という噂が流れたためであった。
「俺、見たんだよ!『ヤツラ』がゾンビの頭を抑えて洗脳しているところをさ!」
「俺も見た!ゾンビに対して腕を振り回して、言うことを聞かせようとしていたんだ。あれマジでやばいって!」
次々に「僕も」「私も」と声が上がり、収拾がつかなくなり始めた頃、ある男が帰ってきた。
物資を調達しに地上へ出ていたその男性は、白い迷彩柄の服を纏い、埃を払いながら周りに挨拶をしていた。「まいった、まいった」と言いながら部屋に入ってくる。
「まったくよ、スーパーゾンビ共が急に活性化しだしたせいで、随分と遠回りさせられちまったぜ」
一体何なんだと、彼は憤慨していた。
「戻ってきたんですか、リーダー? 物資はどうでした?」
扉の近くに立っていた男性が成果を尋ねると、リーダーと呼ばれた男は「ああ、まだまだ余裕がありそうだ」と返した。
「で? これは一体何の騒ぎだ?」
あまりの騒がしさに、どうしたのかと扉の男に聞く。
「このエリアにもとうとう、例の『魔王』が現れたんですよ。それでこんな騒ぎに……」
「?……!? 魔王だと!! 何処にだ!!!」
「落ち着いてください、もうこのエリアからは去ったらしいですよ」
「馬鹿な! みすみす魔王を取り逃がしたというのか!!」
リーダーと呼ばれた男は激昂したまま、扉の男の襟首を掴み上げていた。
「ぐっ!? ちょっ!? お、落ち着いて……くださいよ」
「リーダー? 何してるんですか!」
「リーダー! 手を離してください!!」
彼らの騒ぎを聞き、それまで議論していた連中もただならぬ状況に、リーダーを引き離そうとする。その時――。
「やめんかー!!!」
力強い声が部屋に響き渡り、一斉に皆が動きを止め、そちらに視線を向けた。
視線の先には、コミュニティの長と呼ばれる一人の老人が立っていた。
冷静さを取り戻したリーダーは、すぐさま頭を下げて謝罪した。
「申し訳ありません、長……。君も、すまなかったな」
「ゲホッ、ゲホッ……俺も不注意でした、すみません」
扉の男も自身のうっかりした発言を謝罪し、ひとまずこの場は収まった。
老人――長と、迷彩服の男――リーダーが、共に奥へと向かって歩き出す。
「まだ、過去にできぬか?」
「……」
長の意味深な問いかけに、リーダーは無言で応じた。
「おぬしはここのリーダーじゃ。感情を制御できぬようでは、皆を危険にさらすぞ」
「……わかって、います……」
「気持ちはわかる。妻子をゾンビ共に、奪われたんじゃからの。儂も息子夫婦を奪われた。しかし、儂らは……」
「わかるわけがない! 俺の!! 俺の目の前で!! あいつらはゾンビ共に引き裂かれたんだ!!!」
「……すまん」
「俺は絶対に許さない! このゾンビ世界を作り出した、やつら『魔王』を!!」
とあるコミュニティでは、このゾンビ世界を作り出した存在として『魔王』扱いされ、激しく憎まれていることを、赤城たち彼らはまだ知らなかった。
***その頃――観客席では。
いつものように、お気に入りの喜劇を見ようと、いそいそと神が準備を始めていた。
「さ~て、今回は♪ どうなっているかな~、楽しみだな~」
ポップコーンを片手に、リクライニングシートへと身を沈めた。
【第一話のあと】
か変だな~。ん~と? 確かこの辺に置いたんだけど……あったあった、『困ったときのQ&A』。ふむふむ……。ああ! そういうことか! この知性ゾンビ、知性は獲得したけど、命令権はまだ使えないんだ。つまり不完全なんだね! めっずらしー、レアモノだ!!」
珍種を見つけたことに、キャッキャと喜んでいた。
画面には青山が「ハートだ、ハート!」といったシーンが流れていた。
「へ~、コイツを教育するのか~。あはは、相変わらずヘンテコなことをするね~。でもボク的にはアリだね!!」
親指を上にあげ、グッとポーズを決めた。
【第二話のあと】
「あはは!『行ってこい!』って、青山くん、あんなにも気弱そうなゾンビをムキムキの屈強そうなゾンビにぶつけるなんて、キミは鬼だね~。しかも英才教育って、キミ、大したことしてないでしょ? あはは!」
画面には女警官ゾンビが「すてーん!」と派手に尻餅をついているシーンが流れていた。それを見て三者三様の反応を見せ、
「キターーー!! 赤城くんのツッコミ2連発!! これを見たかったんだよね~、ウンウン。いつもながらキレッキレだね」
と、ご満悦であった。
【第三話のあと】
「なんだ、あの知性ゾンビ逃げちゃったのか? つまんないな~……。さてさて、彼らはど~うするのかな~っと。ん? へ~……」
神は何か面白いものを見つけたとばかりに、口角を上げた。
画面には、彼らの近くにスーパーゾンビがいる様子が映し出されている。
「ふ~む、これはもう終わっちゃったかな? 彼らの活躍がもう見れないなんて残念だね。でもま、いっか、次に期待しようかなっと。ん? ……は!?」
早々に見切りをつけ、次のプレイヤーを選ぼうかと目を離しかけた神の視線に、とんでもない光景が飛び込んできた。それは、3人がスーパーゾンビめがけて走り出した瞬間だった。
「えーー!!?? うっそー!? 自分から行くの?? え!? なに!? どういうこと???」
本来あまり動じることのない神であったが、このときばかりは混乱していた。
【第四話のあと】
「まさか、あの状況から逆転して助かるとはね……もってるのかね~彼らは。はは、でももう少し楽しめそうだね」
ポップコーンを食べながら、彼らの活躍が延長されたことに喜んだ。
画面には、停止した世界の中で、赤城のツッコミがツッコミまくっているシーンが流れている。
「何か、赤城くんが気になる事を言ってるな?『赤城印』って何のことだろ?『黄瀬印』とも言ってるな。夜なべして作ったって、何作ったのさ? ああー! 気になるよー! たぶん選択肢なんだろうけど、見えないのがこんなにやきもきするなんてー!!」
ワシワシと頭をかきむしる。
画面には女警官ゾンビが消えて、3人が会話している様子が映っている。
「え!? 訴訟費用って何?? 青山くーん、キミ何したのー! え? ほんと、どういうデザインだったのー? ねぇーーー!!」
白い空間には、神の絶叫だけが木霊(こだま)していた。
――第5章・幕間 終