ブルゥーアァーカイブゥー!ヴェハハハ!! 作:マグマ焼き豆腐
皆様、アンケートのご協力ありがとうございました。結果、女先生で進行することに決めました。
女先生の見た目は皆様ご自由にご想像ください。(私は女先生と聞いたら某よわよわ先生しか思い浮かびません)
「これは……中々に混沌としているな」
リン代行の言っていたシャーレの部室付近まで来た私だが、今眼の前に写っている光景は現実だろうか?
辺りは建物だったモノが散乱しており、火薬や火の匂いで充満している
軽い戦場になっているとは言っていたがこれほどとは……
付き添いの社員は帰らせてよかったな
「よっこいしょ……ふむ、ここなら全体を見渡せるな」
一番原型を留めているビルの屋上へと登り、辺りを見渡す
敵の数、動いている兵器、潜伏している者、全てがよく見える
「……さて、数は30ほど。だが統率はまるで取れていない。ただのザコ敵の集まりだ」
双眼鏡を覗き込み、戦場を観察する
停学中の生徒達、各々が好き勝手に動き、銃を乱射している
久々に外の空気を吸って興奮しているんだろう。とても理性的な行動には見えない
「脅威なのは数だけだ。……さぁ、どう対処する?」
少々の期待と値踏みの視線を先生へと向ける
先生自身は武器等は構えておらず、瓦礫の後ろに隠れている
戦っているのは生徒だけだ
「ユウカ!3時の方向に!」
先生が生徒へと指示を飛ばす
指示を聞いたユウカはその方向へとマシンガンを放つ
すると、隠れていた不良生徒に弾丸がヒットした
当てずっぽうに撃って、偶然当たったわけではないだろう
……なるほど、プレイヤーではなく司令塔タイプか
自身は戦わないかわりに、後方から仲間にバフをかけサポート。いわゆるバッファーと言う奴だな
「ふむ、興味深い」
今度はチナツへ視線を向ける
負傷した生徒へ素早く駆け寄り、応急処置を行う
先生は、治療中のチナツを守るように前線を動かしている
「ヒーラーは守る。当然の事は理解しているようだな」
ハスミ先輩は味方を巻き込まず、確実に敵だけを撃ち抜き、相手を近づけさせないようにしている
流石、正義実現委員会副委員長と言ったところだろうか。射撃の腕は目を見張るものがある
「彼女が何故、正義実現委員会副委員長なのかがよくわか――うぐっ!? な、なんだ!?」
突然目がくらむほどの閃光、耳をつんざくような爆発音が私を襲った
閃光弾か……! 誰が投げ……いや、一人しかいないな
「スズミ君か……!!」
彼女は閃光弾をばら撒き、隊列を乱して味方が戦いやすい盤面を作る
デバッファー兼アタッカーと言ったところだろうか
単体で見れば地味だが、パーティー単位で見れば重要な役割の一つだ
……だが、彼女は投げすぎだ。さすが『トリニティの閃光弾』なんて異名がついてるだけはあるな
「ふむ、少しずつだがわかってきたぞ」
ユウカはタンク、チナツはヒーラー、ハスミ先輩は後方アタッカー、スズミ君はデバッファー兼アタッカー
先生は生徒一人ひとりの役割を理解し、最適なタイミングで指示を出す
そして生徒というユニットの性能を100%の力を引き出す
それが先生というプレイヤーだ
「なるほど、これは確かに簡単に攻略は出来ないかもな」
その判断力、理解力、分析力、どれを取っても一流
だが……一番見るべきポイントはそこじゃない
先生は戦場そのものをコントロールしている
相手に攻めるしかない状況を作り出したり、逆に攻めさせないようにしたり
「キャラクター性能ではなく、純粋なプレイヤースキルで殴ってくるタイプか。厄介だな」
先生という存在に以前興味が湧いてきた。もう少し観察を続けよう
――その時だった
双眼鏡越しにハスミ先輩の銃口がゆっくりとこちらへ向けられる
「何をして……まさか!?」
バンッ!!
次の瞬間、銃声と共に双眼鏡が粉々に砕かれた
危なかった、咄嗟に身をかがめていなかったら目ごと粉々に砕かれていた
かなり距離が離れていたと言うのに正確に頭があった場所に銃弾を……
今のでコチラの位置は割れてしまった。次に撃ち抜かれるのは私自身だ
これ以上は限界……退くか?
いや、まだとある物についての情報が何も得られていない
……危険だが、直接シャーレへと行きこの目で確認するしかないな
ゲームでは時にゴリ押しを求める展開がある。それが今だ
瓦礫の影へ飛び降り、先生達に察知されない内にシャーレへと向かった
「……逃がしましたか」
「誰かいたの?」
「わかりません。ですが、敵意は感じませんでした。おそらく監視目的でしょう」
「監視……?」
「えぇ、新たな敵の可能性は少なからずあります。周囲への警戒を高めましょう」
―――――――――――――――
瓦礫から瓦礫へと身を隠しながら進む
正面では未だ銃撃戦が続いている
コチラとしては好都合だ
爆発音が響くたび、敵味方の視線は自然とそちらへ向く
戦場では派手に暴れる者ほど目立つ
だが、本当に厄介なのは誰にも気付かれず目的を達成する者だ
私は静かに路地へ入り込む
あと少し、シャーレはもう目の前………ん?
「人影?」
シャーレの地下室へと入る人影があった
黒い長髪、狐のような長い尻尾、何かの面
ほんの一瞬。それだけしか見えなかった
狐の獣人である事はわかる
だが、それが敵か、それとも連邦生徒会側の人間か。少なくとも、あの場で戦っていた生徒ではない
まさか……
「とある物を狙っている?」
連邦生徒会がここまで隠していた物。そして、それを狙って単独で侵入する人物。少なくとも、ただの不良生徒ではない
「なるほど、予想外のイベント発生というやつだな」
本来ならば、ここで目的の物を確認して終わりのはずだった
だが、簡単に事は進まなさそうだ
私は周囲を警戒しながら、地下室へと入る人影の後を追う
開かれた扉、薄暗い空間
外の戦闘音は徐々に遠ざかり、代わりに自分の足音だけが響く
……妙だ。確かに私以外の人物が居たはず
何故、私以外の足音が聞こえない?
それに、侵入者がいるというのに警備の者が誰も居ない
誰もここを管理している者がいないのか?
様々な思考を巡らせながら、私は息を殺し、曲がり角へと近付く
「―――あなた」
突然、耳元で声が聞こえる
反射的に前へと飛び退き、声の主を確認する
「君は……」
シャーレへと入る前に見た人影の特徴と同じだった
まさかシャーレへの侵入者が……
「"災厄の狐"……だと」
「あら、私をご存知でしたか」
「そりゃあ、異名がついているほどだからな」
無差別かつ大規模な破壊活動を常習的に行うことから、『災厄の狐』と呼ばれている彼女、『狐坂ワカモ』
SRT特殊学園のFOX小隊と単騎で互角に渡り合っていることから、ツルギ先輩とまではいかないがかなりの実力者であることが伺える
正直あまり戦いたくはない。実力的な意味でも、状況的な意味でも
「それで、ゴッドコーポレーションの社長さんは何故ここに?」
「意外と私の会社の名は知られているんだな……、連邦生徒会がここに隠したと言うとある物に用があってね」
「おや、奇遇ですね。私もそれがお目当てなんですの」
やはりか、おそらく彼女の趣味的に、それを破壊しに来たのだろう
別に破壊されても問題はないだろうが……できれば、一目見てから破壊してもらいたい
「目的が一緒なら都合がいい。それを見つけるまでは行動を共にしようじゃないか。今、君と戦いたくはないしね」
「ふむ、ご安心くださいな。私も本来なら無駄な争いは好みません」
「………ほう?」
「今は、目的さえ達成できればいいのです」
ならば、互いに見逃せばいい話だな
例のものを確認したら、そそくさとこの場から退散しよう。災厄の狐が居るこの場にあまり長居はしたくない
そう思い、地下室の奥へ足を踏み出そうとした瞬間―――
頬を一つの弾丸がかすめた
「……無駄な争いはしないんじゃなかったのか?」
「フフ、えぇ、そうですね。無駄な争いは」
「ほう、これは必要な争いと?」
「えぇ。何故だか、貴方を見ていると無性に壊したくて仕方がありませんの♡」
「なんで??」
急になんだ? 私、恨まれるようなことしたか!?
今回が初対面だし、何かをした記憶はないが……
「いや、おかしくないか? 君が壊したいのは連邦生徒会が隠したと言うアレだろう……?」
「確かに、連邦生徒会が大事にしているという物も壊したいのですが……今はあなたを優先するとしますわ♡」
「すごい、私、災厄の狐に喧嘩を売られている……」
「喧嘩を売るだなんて、そんな野蛮な物ではありません」
ワカモは口元に手を当て、クスリと笑う
「この気持ちはただの衝動ですから♡」
「余計に質悪いが!?」
「ご安心を。一瞬で終わりますので」
「私のライフがだろう!?」
私がそう言い終わるより早く、ワカモの姿が視界から消えた
瞬時に体を捻り、その場から体を逃がす
次の瞬間、コンクリートを抉る音が聞こえ、そちらへと視線を向けると、先程まで首があった背後の壁に銃剣が深々と刺さっていた
「速っ……」
思わず声が漏れる
0.1秒でも遅れていたら私は串刺しにされていた
ツルギ先輩とやっているような訓練などではない
相手は私に本気の殺意を向けている
命の保証なんてない。一回でも選択を間違えればゲームオーバーだ
「フハハ、なるほど」
常人ならば恐怖する場面。だが、私の心は踊っていた
高難易度ボスが今、目の前にいる事実に、ツルギ先輩以外のボスと戦えるこの状況に
傍から見たら私はイカれているのだろう
だが、どう思われようが関係ない
誰もが勝てないと諦める相手、常識では攻略不能と切り捨てられる存在
そんな相手だからこそ、攻略する価値がある
「フフ、そのような顔をされる方は初めてですわ。普通は逃げ惑うか、怯えるか、そのどちらかですから」
「それは勿体ないな。こんなにも攻略しがいがあるというのに」
その言葉を合図に両者が一気に距離を詰める
ガキィン!
金属のぶつかり合う音が響き渡り、薄暗い部屋を火花が照らす
鍔迫り合いとなり、互いが力任せに押し切ろうとしている
「ウフフ、あまり積極的すぎる殿方は嫌われてしまいますよ?」
「同感だ。私も積極的すぎる姫君はあまり好みではない」
「でしたら―――少し距離を置くとしましょうか」
その瞬間、押されていた力が消える
「なっ――」
押し返そうとしていた力の置き場が無くなり、勢いよく前方へと体が傾く
その大きな隙。災厄の狐と呼ばれる彼女が見逃すわけがなかった
ワカモは軽やかに後方へと飛び退き、私に狙いを定める
「まずいッ……!」
大きく崩れた姿勢をすぐには戻すことにはできず、顔面に弾丸を食らってしまう
「ちぃ……本命はこっちだったか。中々良いフェイントじゃないか」
「あらあら、褒めている余裕などあるのですか?」
正直そんなものは無い
知識、経験、力、全てが上の相手。長々と戦っていると、こちらが押し切られる
どうする? 力で押し切ることは当然不可能、戦略を立てようにも上からねじ伏せられる
……ならば、彼女の一挙手一投足を観るしかない
『ガンモード!』
どうにかして癖を見抜く
私は、ワカモの足元へ銃口を向け、ひたすらに乱れ撃つ
それに何か狙いがあるとか、考えがあるとかじゃない
勿論、そんな脳みそを空っぽにした攻撃が当たるはずもなく、軽々と躱される
「あら? 随分と適当な攻撃ですね。ヤケになってしまいましたか?」
「まさか、攻略法を探しているのさ」
再びワカモへと照準を合わせ、乱れ撃つ。今回も何も考えていない。ただ、引き金を引き続ける
ワカモは呆れたように小さく息を吐き、最小限の動きだけで全ての弾丸を躱していく
そして、二度目は通用しないと言わんばかりに、カウンター射撃が飛んでくる
バグクラッシャーを盾代わりに銃弾を防ぎ、もう一度攻撃へ転じようと……
「……っ!?」
突如悪寒を感じ、緩めたガードを再び固める
その瞬間、両腕に大きな衝撃
目の前に視線を向ければ、ワカモがバグクラッシャーに飛び蹴りを叩き込んでいた
「二度目を許すとお思いで?」
「……」
その言葉には何も返さず、力任せにバグクラッシャーを横に振るい、ワカモを振り落とす
………もしかしたら、あり得るか?
もう一度、ワカモへ照準を合わせ、銃弾を放つ
ワカモは最小限の動きで躱し、コチラへカウンター射撃を放つ
……やはり、私の予想は合っている
彼女は初見の攻撃は回避に専念し、二度目からはカウンターを狙う。それが通用したならば同じカウンターをまた行う
ふむ、格闘ゲームと同じだな。通用する戦法は相手が対応するまで擦り続ける
ならば、それを利用するまでだ
私は今まで通り、弾丸をガードするべく、バグクラッシャーを構える
後はタイミングを合わせるだけ
………まだだ
………まだ
………今だ!!
『ブレイドモード!』
防御の構えを解き、こちらへ飛び蹴りを放っているワカモへと視線を合わせる
「なッ……!」
「かかったな!!」
銃弾を身体に喰らいながら、狙いを合わせ、力一杯に刃を振り下ろした
行ける。この軌道なら無理やり軌道を修整しようと、その先へと合わせる事もできる!
互いの一撃が、後わずかで届く
その瞬間――
「ストーーップ!!!」
鋭い声が響き渡った
突如耳に入った第三者の声に互いがそちらへと視線を向け、互いの体勢が崩れる
「あ…これは……!?」
「えっ、ちょっ!?」
泡を食った声と共に、蹴りの姿勢を大きく崩したワカモがめの前に迫っていた
いや、ちょっ待……これ、避けられない!?
「きゃあ!?」
「ぐえっ!?」
そのままワカモの身体が私へと倒れ込み、二人まとめて床へと転がった
「うぅ……」
私の上には、勢い余ったワカモが覆い被さるような格好になっていた
「……」
「……」
ほんの数秒前まで本気の戦いをしていたとは思えないほど、気まずい空気が流れる
「……降りてもらえるかな」
「え、えぇ。失礼しました」
ワカモはゆっくりと立ち上がり、私もそれに合わせて身体を起こす
……はぁ
せっかく攻略の糸口が見え始めたというのに、随分と白ける真似をしてくれたものだ
先生が私の障害になるというのはこういうことか
「どうも、少々煮え切らない形となってしまいましたが……今日はここまでにいたしましょう」
ワカモはそう言うと、こちらへと視線を向ける
「目的は果たせませんでしたが、思いもよらぬ収穫がありましたので」
「……何故、私を見る」
まるで新しい玩具を見つけた子供……いや、獲物を見つけた猛獣のような目だ
普通に怖い
「ウフフ♡ それでは、私以外の方壊されないようにお願いしますね? 社長さん」
言い方が物騒だが、要は再戦の約束か。そういうことなら受けて立とう
「君を攻略する前にゲームオーバーになるつもりはない」
「えぇ、次にお会いするときまで楽しみにしておきます。それではごきげんよう」
そう言い、ワカモはこの場から立ち去った
……堂々と入口から出ていったけど大丈夫なのか?
まぁ、いいか
さて……
「えっと……ごめんね。急に大声出しちゃって……」
今、私の目の前にいる女性『先生』にどうやってこの状況をごまかそうか
戦闘描写ってむずい……むずくない?