タイトルは適
「んっ…♪おはよう…。提督…。」
「あ、あぁ…。おはよう響」
響が来てからおよそ2週間。当たり前のように俺の布団に侵入し、目と目があったらそう言葉を交わしてくる。
ちなみに響ちゃんは初日から布団に潜り込んできていた。
恐らく貴重な部屋決めも「提督の部屋の隣がいい」と即答。
俺的には日に当たるのが好きという妖精さん達の前情報のせいで日当たりがいい場所がいいんじゃないかと提案したのだが、ムスッとした表情をした後に「ここがいい。いや、ここじゃなきゃ嫌」と言われてしまった。
「あっ♪司令官さん!おはようございます♪響ちゃんもおはよー♪」
もう当たり前になっている吹雪ちゃんが、マイエプロンを着込んで朝食を作っていた。何でだろう。普段着がちょっと学生服っぽい娘が上からエプロン着てると…幼なじみ感が半端ない。
「おはよう吹雪ちゃん。今日も可愛いね」
「んへ〜♪ありがとうございます〜♪」
両手を両頬に当てクネクネと動きながらそう反応する。うん、可愛い。
「……。んっ。僕も。」
「はいはい。響ちゃんも可愛いよ」ナデナデ
「むふ〜♪」
ちなみにナンパじゃない。ただ思った事を口にして本人に伝えてるだけだ。何も不思議な事は言ってない。
「あ、響ちゃん、今日も一緒に水上訓練する?」
「ん、する。感覚、鈍らないようにしないと。」
「了解♪だって妖精さん♪」
いつも通り吹雪ちゃんの料理を観賞してる妖精さんに吹雪ちゃんがそう言う。メモに《合点承知》と記入すると、他の妖精さん達がふよふよとある場所へと向かっていった。
吹雪ちゃんがここに来てからちょくちょく行う『水上訓練』
水の上でジャンプしたり走ったりする彼女たちには、この水上訓練は日課らしい。艦である以前に人の形をしてる彼女たちは陸と海を行き来する様になった為に、陸での生活に慣れると海での行動がぎこちのない物になってしまうらしい。
しばらく陸でのびのび生活していた響も、吹雪ちゃんが海上場で軽く走ったり、武装の試し打ちなどを目撃してから一緒にするようになった。
艦娘同士ということもあり、仲良くなれるかな…とか、そんな心配ははなから要らなかった。お互い和気あいあいと話す姿を遠目で見るが、とても仲良さそうで大変ほっこり。吹雪ちゃんが淹れてくれるコーヒーが進む進む。
そうしていつも通り吹雪ちゃんの朝食を頂く。今回のメニューは俺が褒めてからずっと出てくるようになった赤味噌と白味噌で作った味噌汁。それから今日は目玉焼きにタコさんウインナー、少量のサラダにたくあん白飯……。
「ほぉ…こういうのでいいんだよ。こういうので」
思わずほっこり。何だろう、日本人に生まれてよかったと心の底から思います。いや、どちらかと言うとこんな食事を毎朝欠かさず作ってくれる吹雪ちゃんに感謝をするべきだろう。
「本当…いつもありがとうね」
「〜?♪はいっ♪司令官さんの為ですから♪」
いつも通りの反応。いつも通りの返し。マンネリ化してるんじゃないかと不安になる。やっぱ変化球が必要なのか…?
でも朝食を褒める時の変化球ってなんだろうか…?
「毎日食べられる」
…は、よく言うからな。それにただの感想であって褒めてはないよな?うーん?何が正解なのだろう。「お嫁に来るか?」は、なんか地雷踏み抜いて俺が苦しくなりそうだから言わない事にする。
うーむ。悩ましいな。
「んふっ…?♪司令官さん?どうかしました…?も、もしかして…お口に合いません…でしたか?」
頭のなかであーでもないこーでもないと考えていたら表情に出てしまっていたらしい。少し不安げにそう聞いて来る吹雪ちゃん。
「いやいや何言ってんの。お口に合わなかったらご飯おかわりしてないでしょ」
すでに3杯目に手を付けているんだぞ?てか朝食食いすぎ問題。俺このままだと吹雪ちゃんに餌付けされてぶくぶく太っていくダメ人間になるのではなないのだろうか。
「提督、朝からご飯3杯は、よく見る光景だけど食べ過ぎだと思うよ…?」
「響ちゃんに言われちゃぁーどうしようない」
まさかの隣に座る響ちゃんにそう突っ込まれる。だって仕方がないやん。美味いもんは美味いんだなも。
「そう言う響ちゃんだって、それ2杯目だよね?」
「僕はノーカン」
「理不尽やろがい」
響と俺があーだこーだと言ってる間で口に手を当て笑いをこらえる吹雪ちゃん。そこに海上訓練の準備ができたと報告しに来る妖精さん達。
《人間さん♪今日も楽しそうだね♪》
《艦娘の皆も楽しそう♪うん♪いいのを見れた♪》
ふよふよと、満足気に去っていく妖精さん。それを合図に二人は残りの朝食に手を付ける。俺?俺はもう食い終わってる。
二人からお皿を受け取り、「行ってらっしゃい」と伝える。吹雪ちゃんは元気よく「行ってきます!」と言い、反対に響ちゃんは「んっ♪」っと一言だけ残してトコトコ歩いていく。
「さてと。俺も日課になりつつある釣りをしますかな。」
そう言って、裏庭へと向かう。
『吹雪ィ!モット早ク動ケ!ソンナンジャ大事ナ提督ハ守レナイゾ!!』
「っっ!!分かってます!!ていやぁぁぁ!!」
『ナァァンダソノ腑抜ケタ射撃ハァ!!カァァァァァツ!!』ドパンッッ!!
「きゃぁぁ!このっっ!よくもっっ!!」
『周リヲ見ロ吹雪!熱デ我ヲ失ウナ!常二冷静二立チ回レ!ソンナンジャスグニデモ海二沈ムゾ!!』
「……………。」
『ホラ!響ヲミテミロ!至極冷静ダゾ!』
「いやいや…まだこの状況に僕が慣れきれてないだけだから……」
『ムッ?何カオカシナ部分ガアルノカ?提督ハ今日モ問題ナク釣リヲシテルケド』
「あー…いや、うん。気にしないで。うん。頑張って慣れるよ。提督が普通って言うんだから…普通なんだから。多分…うん。」
『ナンダカヨクワカラナイガ、ヨカッタ♪ヤハリ、アノ時オマエヲ助ケテ正解ダッタ。オ陰デ私ハ、私ノ行イガ間違イジャナカッタト安心デキル』ニコ
「……。その…ありがとう?」
『アァ!ドウイタシマシテ!』ニコ
遠くの方からドッタンバッタンと音が聞こえてくる。今日も元気に訓練してるようだ。
「いやーでも、何とか丸く収まってよかったなぁ…。ヲ級と釣りしてるところをまさか目撃されるとは思わなかったからな。」
3日前。
「まぁー待て待て…その、なんだ。話せば長くなるんだが……」
「どいてください!司令官さんが優しいのはもちろんわかっています…ですが!!司令官さんが守ってるその人は!私達の!敵なんです!!」
重火器を向けてくる吹雪ちゃん。少し前のアレがフラッシュバックしたかのように、眉間にシワがよって可愛いお顔が大変怖い顔に…
響「提督…ソイツは敵。敵は…殺さないと……」
冷静にそう言葉を漏らす響ちゃん。そこにいつもののほほんっとした表情はなく、幾億もの修羅を越えた少女には似つかわしくない表情。ちょっと怖すぎるんだけど。
「えぇとだな……こいつは……」
ほんでもって、お前は何を普通に釣りを楽しんでるんだよ。もっと怯えたりなんだりするもんだと思ってたよ。俺は
『……ムッ、提督。糸ガ切レタ。新シイノハドコダ?』
「あの…もっと怯えるとか…無いんですか?」
『怯エル?…フム。提督ハ私ノ怖ガル姿ガ御所望ト?』
「違う、そうじゃない。」
怖がれと言って怖がるとか犬かお前は。一応ゴッツい兵器向けられてるのよ?貴女。
『マァ見テオケ。』ポンッ
「ちょっ…!」
ヲ級が俺の肩をポンッと叩く。
「っっっ!!司令官さんに…触るなぁぁぁぁ!!!」
怒号。それは、今まで見てきた吹雪ちゃんからは想像のつかないほど低い声だった。迷わず彼女は引き金を引いた。
「えっ…?まっ!」
響が焦る。それはそうだ。もしヲ級が避けたら俺に当たる。んまぁ…死ぬわな。そりゃ。
『……落チ着ケ。感情二流サレタラ、救エル者モ救エナクナルゾ』
カンッといつの間に持っていた杖を鳴らす。複数浮遊する物体のうちの1つが、吹雪ちゃんが放った砲撃を弾き飛ばす。いつの間にクラゲ頭を装着したのだろうか
「ふざけるな!!司令官さんを…司令官さんにっっ!!」
『ソノ、司令官サントヤラヲ殺ソウトシタノハ、ドコノドイツダ?』
「お前がっっ!!」
「落ち着いて、吹雪ちゃん」
「でもっっ!!」
「いいから、落ち着いて。よく見て」
すっ…っと俺に指を突きつけてくる。俺を守るように前に出てるヲ級。そんなヲ級は、杖に手を乗せて『ハァ…』と分かるぐらいにため息をついている。
「は……えっ………?」
『…ヨウヤク理解シタカ?モシ私ガ守ラズ、避ケテイタラ、間違イナク砲撃ハソノ司令官本人二直撃シテイタゾ。モットモ、オマエダケガ酷ク激昂シテイテ、隣ノ娘ハシッカリ状況ヲ把握シテイタヨウダガ』
吹雪ちゃんの顔がドンドン青ざめていく。自分の手で俺を殺していたのかもしれないという罪悪感。
「…吹雪ちゃ」
『慰メルナ。…提督、オマエハ優シイ。ダガ、ソノ優シサハ言ウナレバ毒ダ。深海棲艦ヲ、艦娘ヲ溺レサセル毒。ダカラ、コウイウ勘違イモ起コル。…モチロン、今回ノハ彼女ガ正シイ。何度モ言ウガ、私ハ人類ノ敵ナノダ。彼女達ノ反応ガ正シクテ、提督…貴様ノ考エガオカシイノダ。』
まるでグサリと刃物で刺されたかのようにズキズキと痛みが広がるような感覚。
正直楽観視してた節は確かにある。深海棲艦とか、艦娘とか、俺にはよく分からない。今世の中の何が正しくて、何が正しくないのかも。
彼女達に対する世の中の評価すらも分かってない。同時にそれは深海棲艦にも言えることだ。
俺は、彼女達について、何も知らない。あまりにも知らなすぎるのだ
「………………。」
『………。…何モ、ソノ性格ヲ直セトハ私ハ言ッテイナイ。モチロン、提督ノヨウナ性格ダカラコソ、私ハ救ワレタ。ソシテ彼女達モマタ救ワレテル。タダ、知ラナスギルノハ危険ダ。』
ごもっともだ。何も言い返せない。
「ありがとう、ヲ級。お前が俺の友達で本当に良かった。」
『オマ……。…フッ…♪本当二話ヲ聞カナイ奴ダナ…。敵二友達トワ』
「ヲ級はヲ級だし…。俺の認識が壊れてるのは今に始まったことじゃない。それでもヲ級は変わらず俺の友達には変わりないわけだし」
『ソウイウ所ダゾ…♪本当二…♪………サテト』
俺から視線を外し目の前を見据える。響に肩をさすられ、自分の過ちを後悔し続ける吹雪ちゃん。
見るに堪えないその姿。だが、見なきゃならない。俺は彼女達を自分の意思で引き取った。
これはケジメだ。
目を逸らしたい気持ちは今もある。目を瞑り、そっと耳を塞ぐ。終わった頃にいつものテンションで話しかければ、全てが元通りだ。
……それじゃー、前と変わらない。だから、今起きてることを、全力で見守る。
『吹雪、オマエハ弱イ。感情二流サレヤスイ。何ヨリモ周リガミエナクナッテル。視野ガセマイ。』
「…………。」
『ソレジャ、深海棲艦ト同ジダ。オマエハソレデモイイノカ?』
「私…は………」
『………。オマエハ、司令官ヲ殺シタイノカ?』
「ちがっ…!私は司令官さんを守りたくて!」
『今ノママノオマエニハ無理ダ。心ガ戦場カラ離レタオマエデワ、提督ヲ守ル事ナンテ出来ナイ。』
「っっ!!………っっ…。私…」
『…………。……ダカラ、私ガオマエヲ鍛エテヤル』
「は………」
「っ!?」
『ソノタルンダ精神、叩キ治シテヤル。オマエハソノママデイイノカ?司令官ヲ守ルトイウ使命スラマトモ二果タセズ、タダタダ彼ノオ荷物トシテ生キテ居タイノカ?私ニハ無理ダ。ソンナノ。惨メ過ギル。』
「…………。やる…やって…やるわよ…」
「えっ…?ほ、本気…?」
「悔しいけど…私より……深海棲艦の方が司令官さんの事理解してる。悔しい…悔しいっっ!私の方が司令官さんの事を知ってるつもりだった…。それなのにっ…!敵である深海棲艦の方が司令官さんの事を理解してるっ!そんなの!!悔しすぎる!!!」
「えっ…?理由そこ……?」
「そこしか無いでしょ!?私の方が司令官さんの事好きだもん!!絶対認めさせてやる!!そして絶対!絶対に勝つ!!勝って!胸張って司令官さんを守れる艦娘になるっっ!!」
「え…これ…僕の感覚が麻痺ってるのかな…?」
『…話ハ纏ッタカ?ソレナラスグ二特訓ダ。弱音ハ聞キツケナイカラネ』
「上等!てか深海棲艦に弱音なんて吐きませんから!覚悟してください!」
『口ダケナラ何トモ言エル。』
「っっっ!!!!ぜぇぇぇっったい!!超える!!」
そうして2人は海の方へと消えていった。ポカンっと立ち尽くす響ちゃん。
「まぁーなんだ。とりあえず釣りでもするか。案外楽しいぞ」スッ
響ちゃんに、先程までヲ級が使って釣り具を手渡す。
「…提督…。僕の常識が間違ってるのかな……?」
「いいや、響ちゃんの常識の方が正しい。間違ってるのは、俺の知識全てだよ」
「…?????僕の常識が普通で…?提督の常識が間違ってて……??…でも提督の言う事は全部正しくて…???ん…?んん〜〜〜??……はえ〜〜〜?????」
壊れたロボットのように頭をグルグルさせていた。とりあえず
「今は釣りでもしてよう。難しいことは、まとまってからしようか」ニコ
「うん…?うーん……?そう…する……??」
ポンポンっと膝の上を手で叩く。わけも分からないまま、響ちゃんは俺から手渡された釣り具を持って、俺の膝の上に座る。
「ん〜?…ん〜〜……?……まぁ…いっかぁ……♪提督とこうしての〜んびり過ごせるなら…それで…♪」
「そーそーソウイウ事。よく分かってるじゃないか響ちゃん(脊髄会話)」ナデナデ
「んふふ〜♪♪完全に理解した♪」
とりあえず、事なきを得た。
吹雪
司令官の事になると我を忘れる。今後、ヲ級との訓練でその部分を改善されていく。全ては司令官さんが求める吹雪になる為に…。
ヲ級
自分で思ってる以上に提督の事を理解している。あえて言わないのは、その甘さにドップリ使っていたいから。『毒』という言葉は、自分自身にも言い放った言葉の刃である。幼稚過ぎる吹雪をみてられなくなり稽古をつけることに。『母へノ反逆?知ルカ。提督ガ身内二殺サレル所ヲ黙ッテ見テロト…?私モ死ヌゾ。』
響
ここ1週間で完全に提督色に染められてしまった悲しき少女。妖精さんという存在しか知らない空想上の生き物が大量に居る事と、それと会話する提督さんに全てを焼かれてしまった悲しき少女。「…なんとなく、それとなく、だいたい、提督さんが言うならそれが正しいよね…♪」
人間さん
問題を先送りにしがち。時間が解決すると思っている。基本的に無知。もうそれは無知。「何となく、それとなく、だいたい物事は何かとうまくいくもんなのよ!考えたら負けだと思ってる!でも働きはします!馬車馬のように働かせて頂きます!妖精さんが全部やっちゃうけど!」
反省していただきたい。