落とし神のIS学園生活!   作:フルーレ

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FLAG 1.0

 ボクの名前は桂木桂馬、2週間後に高校入学を控えた15歳の男だ。趣味はギャルゲー、特技もギャルゲー、主食もギャルゲー。ネット上ではギャルゲー攻略の神、『落とし神』と呼ばれ、崇められている。

 

「何だこれは?」

 

 ボクが手に持っているのはプレイ・フィールド・パーソナル、略称はPFP、ゲームを楽しむだけでなく、インターネットやメール機能も搭載した優れものだ。

 落とし神たるボクはこれを通じて、ギャルゲー攻略の質問や、ボクに対するファンメール等をもらうことは珍しくない。

 

「ふざけた内容のメールを……」

 

 普段ならば、迷える子羊からのメールも快く返信するボクだが、内容によってはそうもいかない。

 

「『落とし神様へ。あなた様に、ある1人の女性を救って頂きたくてメールしました。彼女を救う過程には、大変な困難や危険が多くあると思いますが、是非とも落とし神様のお力を借りたいです。ですが、いくら落とし神様と言えど、こんな依頼はやはり無理でしょうか? 無理ですよね? いやー無理だよねー? そうだよ、無理無理っ!』だと?」

 

 極めてふざけた内容だ。途中までは敬語なのに、最後の方は完全にタメ口になっている。メール一通の中で敬語が抜けるほど、ボクと仲良くなったつもりなのか。

 せっかく新作のゲームをたくさん購入した帰り道に、こんなメールを読まされたこちらの身にもなってほしい。しかも、匿名でのメール。この時点で既に相手にする必要などは一切ない。

 

 だが

 

 ボクは神、落とし神だ。ここまで挑発のアロマを漂わせるメールを受け取って、無視するわけにはいかない。無理、だと? この神に向かい、何を言っていると思っているんだ。攻略不能と呼ばれたゲームでさえ悉くクリアし、数多のヒロインを救い出してきた、このボクに。

 

「神は――」

 

 逃げない。

 

「承諾だ!」

 

 添付された承諾ボタンを迷わず選択する。このボクをここまでコケにした罪、しっかりと贖ってもらおう。そしてボクに感謝するがいい。

 

「ん?」

 

 何か音が聞こえる。周りを見渡すが、ここは人通りも少なく、閑散とした道。音源があればすぐに気付くはずだが、少なくともボクの目にそんなものは映らなかった。

 

「上か?」

 

 X軸、Y軸上にないのならば、後はZ軸、つまりは上下を警戒するしかない。

 

「何だあれ……?」

 

 ボクは正しかった。この現実(リアル)というクソゲーの中でも正しい選択肢を選んでしまうとは、さすがだボク。

 だが、ここで悦に浸ったままというのはいただけない。何故ならば、上空を飛来する謎の光の輪が、ボクに向かって来ているからだ。

 

「え、え? こ、こっちに来る!?」

 

 まず間違いない。ボクの方へ向かって来る。今この状況は、少なくともリアルでの『普通の事態』ではない。

 

「う、うわぁ!?」

 

 その速さは回避不可能なものだった。あの速度では、いくら神であるボクでも対応できない。やはりリアルは、理不尽な選択や展開を強いるクソゲーだった。着弾と同時に発せられた光の中で、ボクはこの状況を嘆くしかない。

 

「あ、あれ? 何ともない……?」

 

 しかし、ボクには外傷の1つもない。PFPも壊れていないし、眼鏡も割れていない。周りの環境にも、何か影響があったとは考えにくい。

 

「全くなんだったんだ……、うん?」

 

 気を取り直し、PFPの画面を見たが、一瞬だけ画面に反射した自分の姿に違和感を覚える。見えたのはボクの丁度首のあたり、そこに何か巻かれていた。

 

「何だこれ、チョーカー?」

 

 恐る恐る触ってみると、それはどうやらチョーカーのようだった。いつの間にボクの首にこんなものが。つい先ほどまではなかったはずだが。

 

「まさか……」

 

 このチョーカーは一体いつからボクの首に付けられていたのだろうか。何かきっかけとなるようなことはなかっただろうか。考えられるとすれば一つ、先程の、あの光の輪。

 

「な、なんだこれ! 外れないぞ!」

 

 何か得体のしれない危険物だと考え、急いで取り外そうとしたが、それができない。さすがのボクでも少し焦ってきてしまった。

 

「こ、この!」

 

 無理矢理力尽くで外そうとするが、やはり敵わず、ボクの首に痛みを残すだけになってしまった。いや、残した結果はそれだけではなかった。

 

『な、なにするんですか!? ひ、引っ張らないでください!』

「は!?」

 

 その時、どこかからか女の声が聞こえた。否、それは表現としては適切ではない。この声はどこかからかかけられているものではなく、ボクの頭の中に直接響いているような、そんな感覚のものだった。

 

「だ、誰だ、どこにいる!?」

『ここです、ここぉ~。あなたの首のところですぅ~』

「な、なに!?」

 

 謎の声に導かれるように、ボクは再び首に手を掛ける。そこには先程と変わらずに、やはりチョーカーが装着されたままだった。

 

「ま、まさか、これが喋っているとでも……? いや、通信機の類か?」

 

 ゲームの世界、次元の向こうの楽園ならば、こういう展開も在り得る。しかし、ここは現実だ。『リアル』などという雑魚キャラにこんな大技ができるだろうか。大方、このチョーカーに通信機が内蔵されていて、それから声が聞こえるのだろう。そうに違いない、そうであってくれ。この頭に直接響いてくるような感覚が不可解だが……。

 

『わ、た、し、が喋っているんですよ! わたしは神様に仕えて世界を救うために作られた、インフィニット・ストラトスなんです!』

 

 インフィニット・ストラトス、通称IS。物心付かない子供や、よほど奇特な環境で生きる人間でなければ、それを知らない者はいないだろう。女性にしか操縦できないパワードスーツ。元々は宇宙開発のために作られたが、ある事件を境に軍事転用が始まってしまった、ある意味では不幸な兵器だ。条約で軍事利用は禁止されているそうだが、実際はどうなっているのかは知らない。ただ少なくとも、ISを使用した戦争は起きていない。

 この兵器の完成を機に、世界が女尊男卑のものへと変わったが、そもそも現実に興味がないボクには関係がない。一か月ほど前、ISを扱える男が一人現れて騒ぎになっていたが、それもボクには関係ない。

 

 かくいうボクも、IS関連のゲーム等はプレイした経験がある。単純な格闘ゲームから実機のシミュレーションのようなものまで一通り遊んだが、もちろんオンライン対戦でのボクの黒星はゼロだ。

 

「何言ってんだ、こいつ……」

『あ、名前を言わなきゃですね! わたしの名前は『エリュシオン』、ギリシア神話に登場する、死後の魂の楽園を示しています。 キャー、自分の名前ながら、格好いいです!』

 

 ボクが絶賛混乱中なのを余所に、僕の首にあるという奇怪な存在は呑気に自己紹介をしている。こういうボクの想定通りに動かない、マイペースでボクを振り回すような手合いは苦手だ。

 

『あ、でも普段はエルシィって呼んでくださいねっ』

 

 そんな仇名みたいな略称などボクにとってはどうでもいい。問題はもっと根本的な部分にある。

 

「か、仮にお前がISだとして、何で空から降ってきたんだ? そして何故ボクの首にチョーカーとして装着されている?」

『実はわたしも目が覚めたばかりでわからないんですよ……。ただ自分の名前と目的だけが情報として存在するだけで……』

 

 急に不安そうな声になるチョーカー女。確かに人間に置き換えれば、まさに記憶喪失にも近いこの状況には不安を抱いても仕方ない。

 

『あ、でもチョーカーっていうのは別に問題ないですよ! ISは待機形態では基本的にアクセサリーの形状をしてるので!』

 

 前言撤回。急に明るい声になった。そこら辺の人間よりも喜怒哀楽に富んでそうな奴だ。いや、そもそも

 

「ISって皆お前みたいに喋るのか?」

 

 ISのコアに、人格のようなものが存在するという説は聞いたことがある。といっても眉唾物だが。

 

『うーん、そんなことはないと思いますよ?』

 

 歯切れが悪いが、確かにどいつもこいつもこんな調子で喋られたら、兵器として扱うなどできないだろう、心情的に。

 

「はぁ、とりあえずボクの首から外れてくれないか?」

『ご、ごめんなさい、それはできないんです。無理に外そうとすれば……』

「すれば?」

『バァーンです、バァーン!!』

 

 まさかとは思うが、こいつの言い方を聞く限りでは

 

「爆発するのか……?」

『はぅ、恐ろしくて言えないですっ』

 

 どうやら正解のようだ。というかこいつは本当にISなのか? 爆発なんて見慣れていそうなものだが。いや、そういえば目覚めたばかりとか言っていたな。それに、これが爆発するということは、こいつも死ぬということだろう。

 

『まぁ、それは置いといて』

「置いとくな!」

 

 会話を初めて5分と経っていないが、こいつの能天気さには呆れるばかりだ。

 

『とりあえず目的を果たさないと、わたしは外れないってことですね』

「目的? いや、その前にISは、一人の例外を除けば女にしか扱えないはずだろ、何でボクなんだ? ISがこうして降ってきたってことはISに関することなんだろ?」

 

 おそらくボクの推察は正しい。こいつの言う目的とやらはやはり、IS絡みのことだろう。これがゲームなら、『わたしを操縦して世界を救って!』とでもなるのだろうが、生憎ボクには達成できない願いだ。

 

『それはですね――』

「桂木桂馬様、ですね?」

 

 チョーカーが話し始めたが、そのすぐ後に、別の声がボクの意識に割り込んでくる。今度は正真正銘、現実から聞こえてくる人間の声だ。

 

「な、なんだ?」

 

 声のした方向を振り向くと、そこには黒い服を着てサングラスを掛けた、とても一般人とは思えない雰囲気の男が一人立っていた。いや一人だけではない、周りからぞろぞろとボクのところへ集まってくる。その数、十人は超えている。

 

「お、おい。何かやばそうな連中が集まってきたぞ……!?」

 

 小声で呟くように言ったが

 

『ふえぇ……、こ、こわいですぅ~』

 

 使えねえ! 

 もう既にこの時点で、ISとしての価値はほぼゼロである。というかこいつは周りの様子が見えているのか。

 

「我々は決して怪しい者ではありません」

 

 むしろ、怪しい者ですと名乗る方がおかしいだろう。礼儀として完璧な角度で曲げられた腰も、人当たりの良さそうな喋り方も、逆にボクの警戒心を高めている。

 

「……」

「そう警戒なさらないでください。我々は日本政府の者です」

「政府?」

 

 ボクは首に手を当てて、改めてそこにあるものを確認する。少し考えればわかること、このチョーカーがこいつらの目的だろう。完全に疫病神、ボクにとってのこいつの存在価値は完全にマイナスになった。

 

「ええ、あなたが男性の身ながらISを扱える、という情報を頂いたものでして、ちょっとお話をと」

「なん、だと?」

 

 確かにボクの首には、ISを名乗る奇怪なチョーカーが装着されているが、扱ってはいない。その情報筋は信用しない方が良いと忠告したい。

 

 いや

 

 もしかしたら、本当に扱えるのかもしれない。あのメール、このチョーカー、そしてこのタイミングで現れる政府関係者。何か大きな流れが、意思が、欲望がボクの周りで蠢いている。そんな奇妙な感覚に、ボクは不安を募らせていた。

 

 

 

 

 

 




駆け魂→女性にしか憑かない
IS→基本的に女性にしか扱えない

これはやるしかない(使命感)

ということで、よろしくお願いします。
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