ISの名前、というより登場人物の名前を変更させてください。
『ミストラル・リヴァイヴ』愛称ミスト
↓ ↓ ↓ ↓
『エリュシオン』 愛称エルシィ
にしようと思います。
以前の名前の方が、『読者の皆さんがISの形状を想像しやすい』『デュノア社関係のイベントの布石が打てる』『エルシィ(旧ミスト)の製作者を桂馬が考察するときに役に立つ』という一石三鳥だったのですが、悩みに悩んだ結果、変更させていただくことにしました。
といっても変えるのは『名前』だけなので、皆さんが想像している通り、ラファール・リヴァイヴに関係する機体であるということは変えません。そこは次回のFLAG 4.0で補足を入れます。
長くなりましたが、FLAG 3.0 お楽しみください。
「何なんですの、あなたは!?」
やはり一から説明しないとダメか。良いだろう、語ってやる。お前みたいな金髪縦ロールのお嬢様、貴族キャラの真髄を。
「いいか、まずお前みたいなキャラはな――」
――ドロドロドロドロドロドロ。
「は?」
思わず気の抜けた声を出してしまった。何だ、今の音は?
『あわわわわ~……』
「な、なんですか、この変な音は? あなたの首のチョーカーから聞こえるみたいですけど」
またお前か! 本当に面倒しか起こさない奴だ。しかもこの音は、普段のエルシィとの会話と違い、周囲にも聞こえている。
「い、いやぁ。ちょっとISの方にプライベート・チャンネルで通信が。ということで失礼!」
とりあえず、ここは戦略的撤退だ。今この状況で何かが起きた。それは間違いない。すぐにこのポンコツを問いたださなければならない。
「あなた、専用機を持っていますの!? ちょ、ちょっと!」
後ろで金髪縦ロールが騒いでいるが、無視だ無視。ここは離脱を優先する。
「邪魔だ、
何故教室の外に、こんなにリアル女が沸いているんだ。どこでどういうフラグを建てれば、こんな大発生イベントが起きるのだろうか。
「い、痛い!」
「ちょっと、先輩に向かって何するのよ!」
「こっちのは無礼な男ね。でもあっちの男は誠実そうよ」
なるほど、こいつら揃いも揃って、野次馬根性丸出しという訳か。どこかでフラグを建てたのではなく、ボクと織斑一夏の存在自体がフラグだったということだ。
「くっそー! どれもこれも皆このポンコツのせいだー!」
叫びながら、ボクはこのリアル女の群れの中を突っ切ることになってしまった。ボクのスタミナゲージは減るし、どいつもこいつも個性は持ってないくせに、実体は持っているから邪魔になる。リアルでの移動は本当に不便だ。ギャルゲーのような移動システムも実装できないとは、本当にクソゲーだな。
◇
「はぁ、はぁ……、ここなら誰もいないな」
辿り着いたのは、屋上へ繋がる扉の前だ。さすがに昼休みや放課後ではないからか、開放はされていない。ボクはその扉に背を預け、腰を下ろしている。
『あの、神様。授業始まっちゃいますけど?』
この馬鹿は誰のせいでボクが今ここにいると思っているんだ。全く以って忌々しい。
「そんなことはどうでもいい! 早く設定を吐け、設定を!」
『せ、設定?』
「さっきの変な音の事だ! どうせ何かあるんだろ?」
IS学園を舞台にした『ゲーム』がこの入学初日に始まったのだとしたら、この展開は言わばチュートリアル。ここでこのゲームの基本的な設定、世界観が語られて然るべき状況だ。
『えっと、さっきのはわたしのレーダーが
「かけたま?」
やはり来たな。新しいキーワードだ。このゲームの……、少なくとも序盤はこのキーワードを中心にして物語が進んでいくのだろう。
『わたしという存在で、もうお分かりかもしれませんが、ISのコアには魂が宿っています』
それは想定済みだ。だが、実際にはそういう研究成果は未だになく、ISのコアにここまで明確な魂、自我が宿っていると考えている者はほとんどいないだろう。
エルシィは初めてボクと会った時、『目覚めたばかり』と言っていた。つまり、今この世界に存在するほとんどのコアは『目覚めていない』状態にあるという仮説が立てられる。
「その魂がお前の言う『駆け魂』ってやつか?」
先程の音は、あの金髪縦ロールに反応していたように見えた。あの女は代表候補生であり、おそらくは専用機持ちでISを常備している。ということは、あの女が持っているISは『目覚めた』状態にあると言うことだろうか。
『いえ、それは違います』
「なに?」
『駆け魂はコアに宿る魂の、さらに悪の部分を指す名称なんです』
悪の部分? 人間で言う悪意の様なものだろうか。
『ある条件下で、コアから魂の悪の部分、つまり駆け魂に当たるものが流出することがあります』
悪の部分が本体から分離するということか。どこかの神様と大魔王みたいな設定だ。玉を七つ集めろとでも言うんじゃないだろうな。
「それでそのある条件下とは何だ?」
とりあえず、某摩訶不思議アドベンチャーに当てはめれば、駆け魂とやらの仕組みは理解できる。問題はそれが発生する条件だ。
『そのコアの身近に、心にスキマを持った女性がいることです』
「心にスキマ?」
『はい、要は人が抱える悩みのようなものです。駆け魂はその心のスキマに入り込んで、人間に憑くんです』
なるほど、そういうことか。
『えっとえーっと。つまりですね……』
「いや、もういい」
コアにはまだ目覚めていない自我と魂があり、その中の悪の部分が独り歩きして、心にスキマを持つ、悩める女の中に寄生する。簡潔に言えば、そういうことだろう。
『え、もういいって……?』
「お前が要約しても、むしろ分かり辛くなる可能性の方が高いからな」
『あはは……、じゃあ、授業に戻りましょうか!』
「いや、ボクが『もういい』って言ったのは、今までの話のことだ」
まだこの話には先がある。ただ駆け魂がいます、では何も前進していない。
「その駆け魂の目的と、ボクたちの目的をまだ話してないだろ」
『あ……』
珍しく少しシリアスな雰囲気になったと思ったらすぐこれだ。やはりこいつはどこまで行ってもポンコツか。
『じゃあ、わたしたちの目的から話しますね』
「手短にな」
『わたしたちの目的、それはズバリ! 駆け魂を捕まえることです!』
まぁ予想通りだ。悪者を捕まえる正義の味方。ゲームとしては王道にも近い、シンプルな構図だな。
「方法は?」
『駆け魂に憑かれてる女性の心のスキマを埋めることです。居場所がなくなれば、駆け魂は外に出てきます。それを捕まえるんです』
心のスキマを埋める、つまりは悩みを解決しろということか。
『わたし、思うんです』
「何をだ?」
『女の子の心のスキマを埋めるもの……、それは恋だと!!』
鯉? この場面で何を言っているんだ、こいつは。そんなに鯉と戯れたいなら、河にでも行け。いや、その場合ボクも行かなければならないのか……。
『ということで! 駆け魂に憑かれた女の子と恋愛して、愛情で心のスキマを埋めて駆け魂を追い出しましょう!』
レンアイ? アイジョウ? まさか、こいつ……
「ボクにリアル女と恋愛しろって言うのか?」
『はい! 神様はどんな女性でも恋に落とせる『落とし神』なんですよね!? なんですよね……?』
どうして最後の部分で不安になった? いや、その不安はむしろ正しいのだが。
「ボクはゲーム内の女子にしか興味がない」
『ですよねぇ~……、この二週間で何となく分かってましたぁ……』
こいつにこんな言い草をされるのは気に食わないが、それも仕方のないことだ。ボクにリアル女と恋愛するなんて選択肢は存在しない。
『で、でも! 神様ならきっとやれます、頭だってあんなに良いんですし!』
「ぜーったいいやだ! いやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
こんな展開、本当のゲームだから許されるんだ。リアルでは刑務所行きだぞ。むしろリアルが刑務所に行け。
『でも駆け魂を捕まえないと、契約不履行で首が飛びますよ? 物理的に!』
「あんなものクーリングオフだクーリングオフ!」
『と、とりあえず駆け魂の目的の話をしましょう!』
「話を逸らすな! と言いたいところだが、そっちも気になるな」
これで『世界が滅ぶ』、とかだったらボクには関係ないが、『ゲームが出来なくなる』だと死活問題だ。ボクはあの世に逝ってもゲームがしたいからな。
『では話しますね』
また急にシリアスムードだな。情緒不安定な奴め。
『駆け魂はまず、宿主の心の負のエネルギーを糧にして、力を蓄えます』
「まず、ということは先があるんだろう?」
『はい、駆け魂の最終目的、それは……』
「それは?」
『憑いた女性の子供として、この世に生を受けることです』
◇
「やはりサボりはまずかったか」
『授業中にゲームをするのも同じくらいまずいと思いますけど』
別にゲームは構わんだろう。リアルの事情に、罪なきゲームを巻き込むのはやめたまえ。
「いや、それより――」
「桂木! さっきから何をブツブツ言っている、静かに立っていろ!」
相変わらずうるさいな、織斑千冬。三限の授業をサボった罰として、ボクは今こうして教室の後ろで立ったまま、授業を受けさせられていると言うのに、これ以上何を望むと言うのだ。
『セシリアさん、大丈夫でしょうかぁ~』
セシリア・オルコット。先程の事から、彼女に駆け魂が憑いていることは間違いない。そして、それは彼女の心にスキマが空いていることを示している。
問題は何が原因で心にスキマが出来たか、ということだ。これさえ分かれば、態々恋愛をしてスキマを埋めることをしなくとも、ピンポイントで悩みの元を断ち切ればそれで解決だ。
『心配ですぅ~』
『大丈夫だ、問題ない』
『あれ? あ、これって……、神様のゲーム機!』
今までゲームをするのに夢中で気が付かなかったが、PFPのチャット機能を使えば、声を出さなくてもエルシィと意思の疎通ができる。言わば、筆談に近いものだな。
『ところで、駆け魂は子供として転生するまで、つまり普通に女の中にいるだけの時は何もしないのか?』
『力の弱い駆け魂は何もできませんが、力が強くなるにつれ、宿主への精神干渉を行ったりします。あくまでこの世に完全な命として生まれることが優先目的ですが』
精神干渉というのはおそらく、スキマが広がるように、負のエネルギーが増大するように宿主を誘導していくんだろうな。自分がより力を蓄えて、強い状態でこの世界に生まれるために。前世で装備や貯金を蓄えて、来世で強くてニューゲームと言ったところか。
『駆け魂として生を受けた子供はどうなるんだ?』
『最初から駆け魂の化身として生まれてくるのではなく、幼少期は「ちょっと変わった子かな」程度の認識を受けると思います』
『つまり、母の腹から出てくるときは正常という訳か』
『そうですね。駆け魂の力や精神が表層に現れ始めるのは、ちょうど神様くらいの年齢の時です』
肉体は成長の余地を残しつつ、徐々に出来上がり、対して精神は不安定になるこの時期が、駆け魂にとって都合が良いと言うことか。つまり駆け魂がこの世に完全な状態で現れるのは、憑いた直後に女が妊娠、出産したとしても、最短で十五年以上掛かるということだな。
『なるほど、とりあえずそこまで分かれば十分だ』
『はぁい』
「ふぅー……」
これで当面の情報は集まったな。後は物語が進んでいけば、もっと深い情報が手に入るイベントが起こることだろう。
「ええー!? 篠ノ之さんってあの篠ノ之博士の妹さんなの!?」
「ん?」
『ほえ?』
何だかいきなり教室が騒がしくなったな。一体何の話をしていたんだ?
「すごーい! このクラスに有名人の身内が二人もいるなんて!」
「やっぱり篠ノ之さんもお姉さんに負けず、天才だったりするの?」
クラス中の視線が集まる先、そこには先程織斑一夏を連れて行ってくれたポニーテールの姿があった。確か箒と呼ばれていたはずだが、この状況から察するに、フルネームは篠ノ之箒で、篠ノ之束とは姉妹関係にあるということか。
「あの人は関係ない!!」
苛立った様子で怒鳴る篠ノ之。その怒気にリアル女たちは驚いたのか、皆一様に動きが固まっている。
「お、大声を出してすまない。しかし、姉妹とは言っても私とあの人は別人だ。皆の期待に添うようなことは何もできない」
女子たちの様子にしまったと思ったのか、慌てて弁明する篠ノ之だったが、既に教室は重苦しい沈黙に包まれている。いや、これが正常な授業風景だな。
「あんなに騒ぐなんて、リアル女はやはり低俗だな。授業妨害になるのがわからないのか」
『それ、神様が言いますか……』