落とし神のIS学園生活!   作:フルーレ

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更新遅れて申し訳ありません。33-4の大差で敗北するくらいの申し訳なさが胸中で広がっております。


FLAG 4.0

『神様、これからどうしましょうか……』

「何がだ?」

『午前の授業も終わってもう昼休みですし、駆け魂の対策とか何か思いついたかなぁと思って』

 

 ボクが声を出していても、それを訝しむ者はいない。昼休みは開放されているとはいえ、入学、新学期初日から屋上で食事をしようという生徒はいないようだ。

 

「とりあえず、様子見だな」

『ええ!?』

 

 エルシィが焦燥したような、不安を感じているような反応をする。

 駆け魂を捕まえるということは、人間の心のスキマを埋めるということだ。ISであるエルシィには、極めて限定的な場面でなければこの作業に貢献することは難しい。だからこそ焦る気持ちも理解できなくはないが、今こちらから動いてもメリットは薄い。

 

「ボクとあの女とのファーストコンタクトはどんなものだった?」

『え、えっと、最悪なものでした』

 

 間違ってはいないが、そういうことではない。

 

「聞き方を変える。どちらからの接触だった?」

『セシリアさんの方から……』

「そうだ。つまり、次のイベントも向こうから何か仕掛けてくる可能性が高い。だから、今は待つ時なんだよ」

 

 ゲームならば、ただ待つということはあまりしたくはないが、今回は仕方がない。あの強気な態度と喧嘩っ早さだ、こちらから仕掛けるとルートが複雑化する恐れがある。次のイベントでおそらく、当面のボクとセシリア・オルコットの関係性が確立する。こちらから仕掛けるのはその後だ。

 

『な、なるほど。でも……、ふふ』

 

 何だ? さっきまでは不安そうだったのに、いきなり明るくなったな。

 

『神様、何だかんだ言って、ちゃんと考えてくれていたんですね!』

「あ、当たり前だ! こっちは物理的な首が掛かってるんだぞ!」

『あー! ひょっとして神様照れてます? 素直じゃないんですからぁ、もう』

 

 全く以って忌々しい。照れる照れない等言ってる状況じゃないだろうが。

 

「チッ……。そんなことより、ついでだ。他にも話しておいた方が良いことがある」

『え、何ですか?』

「お前の製作者についてだ」

『でも、私の記憶には……』

 

 以前にもこいつと話したが、エルシィは自分の製作者についての記憶、あるいは記録と言っても良いかもしれないが、それらを持ち合わせていない。

 ボクの方で考察していたが、手続きや検査、ゲームで忙しく、話していなかったがいい機会だ。

 

「お前の記憶なんて当てにしていない、ボクが導き出した答えについてだ」

『ええ!? そんなことまで考えてくれてたんですか!?』

 

 やめろ、驚きと喜びが混在するような反応はやめろ。

 

「と、ともかく聞け」

『はい!』

「まず、ISとしてのお前の性能、形状に関してだ」

 

 エルシィ、というよりエリュシオンはその基礎スペックこそ第3世代最新鋭と同等だが、第3世代特有の特殊武装を持たない。その代わり、無駄に豊富な武装拡張領域を持つ、戦闘方法を選ばない多様性役割(マルチロール)な機体だ。また、その形状は第2世代最後期の機体『ラファール・リヴァイヴ』に酷似している。その機体特性と相まって、第3世代型ラファール・リヴァイヴと言っても過言ではない。

 

「その2つから考えれば、お前を作ったのはラファール・リヴァイヴの開発元であるフランスのデュノア社、あるいは関係組織だが……」

 

 しかし、これはあり得ない。

 

「IS学園への入学が正式に確定するまでに、ボクに勧誘や交渉をしに来た連中を覚えてるか?」

『は、はい』

「その中で、1番必死だったのはどこだった?」

『え、えーっと……』

「デュノア社だ」

 

 エリュシオンの基礎データは既に関係各位に対して、広く公開されている。ボク自身は日本国籍の日本人だが、エリュシオンは日本に帰属してるわけではなく、平等性を保つためには既に日本が調べてしまったデータは全世界に公表するしかなかった。

 その経緯から、デュノア社もエリュシオンのデータは持っているはずだ。

 

「そして、お前を作ったのがデュノア社なら、あんな交渉はしてこない」

 

 もしそうならば、今頃こいつは問答無用でフランス所属のISとなっているはずだ。それに、社長自ら出張ってきて、その端正な顔立ちを交渉中、焦燥で彩るようなことはしない。

 特許権だ、著作権だの問題は出てきただろうが、開発者不明の上、強制的に操縦者にされたボクの背景にも暗いものがないのだがら、どうしようもなかったのだろう。IS関係の総括組織である国際IS委員会でさえ、このエリュシオンがフランスに独占されるくらいなら、問題を保留か揉み消したいとも思っているはずだ。

 

『そうですよね』

「ここからが核心だ。元々デュノア社は第3世代の開発が暗礁に乗り上げているという噂があったらしいが、今回の件でそれは確定的だ。だが、それでもIS業界で強い力を持っているのには違いない」

 

 世界第3位のシェアを誇るラファール・リヴァイヴは、その汎用性の高さからこのIS学園でも訓練機として多く利用されている。それはこの業界においては高いステータスとなっているだろう。

 

「そんな中で、お前の存在はそのデュノア社に喧嘩を売っているようなものだ。正気の沙汰ではそんなことはできない」

 

 あるゲーム会社が開発したゲームの続編を、別のゲーム会社が勝手に作ってしまうようなものだ。そんな言語道断なことをやってのけ、それを他人にポンと渡してしまう狂的な行為。さらに、開発元のデュノア社を軽々追い越してしまう技術力。

 

「今までの全てを踏まえると、お前を作ったのは十中八九――篠ノ之束だ」

 

 ISの開発者たる篠ノ之束はその能力だけでなく、人格の方も少々ネジが飛んだような人物らしい。ボクの中では最適解だ。ISの開発者ともなれば、IS関係での裏工作等もできるはずだ。

 

『ほえ~』

 

 何だその間の抜けた反応は。理解しているのだろうか、こいつは。

 

『何だかそう言われても実感が沸かないですね……』

 

 それもそうか。いきなり『母親はあの人です』と言われてもピンと来ないだろう。

 

「まぁとりあえず頭の隅にでも置いておけ」

『は、はい』

「しかし……」

『どうしました?』

「いや、気にするな」

 

 ボクの説が正しかったとしたら、あのメールの差出人も篠ノ之束、あるいはその関係者ということになるだろう。

 問題はあの内容だ。『ある1人の女性を救ってほしい』という依頼。その女性とは一体誰だろうか。考えられるとすれば、篠ノ之束の家族、もっと限定して妹である篠ノ之箒だろうか。あるいは母親か、親友、篠ノ之束自身という可能性すらある。

 少なくとも、あのメールが指す女性がセシリア・オルコットであるということはないだろう。

 

「これは……、面倒くさくなるな」

 

 おそらく、メールの差出人が助けてほしい女性とは、ギャルゲーにおける隠しヒロインに相当するものだ。全ヒロイン、あるいは一定の達成度をクリアすることで、ルートがアンロックされる隠しヒロイン。これを現実で攻略しようと思えば、かなり骨が折れるだろう。

 

「はぁ……」

 

 本当に、厄介な事態だ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「さて、今日の授業はここまでだ。初日からご苦労だった……、と言いたいところだが、1つ決めておかなければならないことがある」

 

 特にためにもならない授業がようやく終わると思った矢先、織斑千冬の平坦な声が教室に響き渡った。

 

『わー、何でしょうね?』

 

 素人め。学園物で新学期初期に決めておかなければならないことと言えば、かなり絞り込めるだろ。

 

「再来週、それぞれのクラスから選出された代表によるクラス対抗戦が行われる。もちろんこのクラスでもその代表を決めなければならない」

 

 やはりな。このタイミングならば、クラス委員やそれに近い類の人員を決めるのが王道だ。

 

「ISによるクラス対抗戦だけでなく、生徒主体の会議や委員会にも参加してもらう。自薦他薦は問わない。迅速に決めろ」

「はいはーい! 私は織斑君が良いと思います!」

「私も!」

 

 織斑千冬の指示通り、他薦の声が迅速に沸き上がった。その対象は織斑一夏。まぁ、当然の状況だろう。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺はISに関しては素人だぞ!?」

「でもやっぱり、男性操縦者って箔があるし?」

「そ、それだけでか?」

 

 織斑が後ろを向き、教室を見渡しながら呆れるように呟く。

 

「あ」

「ん?」

 

 ボクと織斑の視線がぶつかる。ボクを見て、奴の顔に希望の光が差し込んだような表情が浮かんだ。まぁ、何を思いついたかは大体想像がつくが。

 

「男って言うだけなら、桂木もそうだろ! 俺は桂木を推薦するぜ!」

 

 どこかの小さな名探偵張りにこちらを指差す織斑。それに釣られてか、クラス中の視線がこちらを向いているようだ。皆一様に微妙な反応だが、ボクだってお前らの代表になんてなりたくない。だが、他薦されてしまっては仕方がない。

 

「他薦が2人いた場合はどうするんですか?」

「え?」

『え?』

 

 ボクが素直に反応したことに、皆驚いているようだ。何故かエルシィまで驚いている。失礼な奴だ。

 

「あ、ああ。そうだな……」

 

 織斑千冬まで動揺している。むしろボクは真面目だし、能力的にも代表に相応しいと思うが、何が不満で何が意外なのだろうか。

 

「では――」

「納得いきませんわ!」

 

 バンと机を叩く乾いた音が鳴り響く。その音源へと移るクラス中の視線。織斑、ボク、そして次はその音源と、首を回すのが好きなクラスだ。

 

「男がクラス代表を務めるクラスで1年もの長い時間を過ごすなど、耐えられませんわ! そのような選出は認められません!」

 

 どうやら、イギリスの代表候補生たるセシリア・オルコットはこの状況を容認できないようだ。いやむしろ、容認してもらっては困る。ボクはこの反発を待っていたのだから。でなければ、こんな茶番に付き合うものか。

 

「それじゃあどうする? ボクと織斑とオルコットでじゃんけんでもするか?」

「そんな運否天賦に任せられません! 決闘ですわ!」

 

 自分でもびっくりするほど、いい流れに乗って事態が動いている。

 

「クラス代表の最初の責務はクラス対抗戦で勝つこと。つまり、ISでの決闘で勝った者が代表を務めるというのは自然だとわたくしは考えます。いかがでしょうか、織斑先生?」

 

 少々美味しすぎるイベントだが、オルコットの言う通り自然な流れだ、不自然なところは何もない。ここは素直に波に乗るべきだ。

 

「オルコットの提案を呑もう。クラス代表はオルコット、織斑、そして桂木の3人によるISを用いた戦闘で決める」

「ちょっと待ってくれよちふ、織斑先生! 俺は――」

「他薦を受けた者の辞退は認めん。腹をくくれ、織斑」

「そ、そんなぁ……」

 

 姉である織斑千冬の有無を言わさぬ宣告を受け、織斑は項垂れている。おそらく3人の中で奴だけが不本意で臨むことになるだろうから無理もない。いや、ボクも大概不本意だが。

 

「日時は来週の月曜日、放課後に行う。場所は決まり次第連絡する。各自準備を怠らぬように」

 

 この瞬間、この時点でのボクとオルコットの関係が決定した。クラス代表の座を争う決闘者。これが2人のスタート地点となる。

 

「さてと……」

 

 ――攻略、開始だ。

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