顔の良い女たらし吸血鬼が、出会った美少女を手籠にしようと頑張る話   作:レネクトン

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巫女と吸血鬼1

1話

 

 

 

 

ここがその吸血鬼の家ですか…

 

 

緑深い山の中腹。

辿り着いたボロ屋を前に巫女が呟く。

 

袂に入れたスマートフォンが指す時刻は、既に夕の5時を回っていた。麓の村で『悪い吸血鬼に村の娘が攫われ困っている』と縋り付かれたのが1時間前なので、手早くその吸血鬼とやらを確認せねばならぬだろう。

 

「あまり長居は出来ませんね…」

 

 

巫女はそう頭を回し、足早に小屋へと近づいていた。雑な作りの木扉の前で足を止め、耳を澄まし中の様子を伺えばーーガタンという物音と、若い女のくぐもったような悲鳴。

 

 

「失礼しますよ!」

 

 

すわ緊急事態かと思いガラリと木扉を開ければ、大柄な金髪男が、板の間に年若い女性を組み伏せている光景が目に飛び込んだ。反射的に刀を抜き、正眼に構えて警告を投げかける。

 

 

「やめなさい! 離れないと斬りますよ!!」

「……」

 

 

声に反応してか、男はチラリと巫女を一瞥した。

 

整った顔立ちの男だった。気怠さを孕んだ切れ長の赤い瞳。着流しの合間から垣間見える鍛えられた痩身は鋼のように引き締まっており、自然な金髪とクッキリとした目鼻立ちは、海外の血が入っていることを容易に巫女に連想させた。

 

歳の頃は20前後か。組み伏せられた体操服の少女は刀に対する恐怖か、口をパクパクさせ言葉を失っている。

 

 

「もう一度言いますよ! 離れなさい!!」

「……」

「な、何を笑っているのです!?」

 

 

再びの警告。

しかし自分を一瞥しただけで、あろう事か男は鼻で笑い、少女に再び覆い被さった。生来の貞操感から顔が熱くなり巫女は反射的に顔を背けそうになったが、ギリギリで思い止まり草履を履いたまま板の間に踏み込んだ。

 

 

「はあっ!」

 

刀の峰による頭部への打撃。

吸血鬼とはいえ、当たれば気絶するであろう力加減。日頃から積んだ鍛錬が、美しい軌道を描いて男の頭頂部に向かっていきーー

 

 

「ーーなっ!?」

 

 

振り返りもせずに男は、その斬撃を後ろ手に回した左手の二指で掴み取ってしまった。引いて刀を戻そうとしてもビクともしない。魔力や氣は欠片も感じないのに凄まじい膂力だと巫女は慄く。

 

 

「……人のセックスを邪魔するのが教義なのか、それとも混ぜて欲しいのかどっちなんだ巫女さん?」

 

 

刀を摘んだまま、男がのそりと立ち上った。細身ではあるが、壁のように大きな上背だった。180はゆうに超えているだろう。上から見下ろされて少したじろぐも、しかし毅然と巫女は言葉を返す。

 

 

「麓の住人からこの山に、女性を攫う悪い吸血鬼がいると聞いて確認に来たのですが……貴方の事ですか?」

 

「悪い吸血鬼? まぁそうだな。俺は善人とは口が裂けても言えないし、吸血鬼である事も本当だ。しかしいきなり討たれるような事をした覚えはないぞ?」

 

「と言いますと?」

 

「あ、あ、あの巫女様…! 違いますっ、クーリさんは私を攫ってなんかいなくて、むしろ私の方からここには来ていて…!」

 

「なるほど……となると、ただの狂言でしたか」

 

 

 

傍迷惑な、と巫女は呟き刀を鞘に納める。両者同意なら自分が口を出す事ではないと結論づけ、腰を折り深く頭を下げ謝意を示した。

 

 

「大変申し訳ございませんでした。緊急事態と誤解したとはいえ、いきなり峰打ちをしようとしてしまい」

 

「構わないぞ、無視した俺にも非はある」

 

「そう仰って頂けるのなら幸いです」

 

「それで、だ」

 

 

男は顎に手を添え、巫女の体を頭から爪先までじっくりと観察した。

 

顔と体、(すこぶ)る良し。白衣を押し上げる乳房はドップリと大きく、腰まで伸びた黒髪は濡羽のように美しい。均整の取れた顔立ち凛とした意志を孕んでおり……凄まじい美人だと、誰に聞いてもそう答えるに違いないだろうと、男は巫女を総評する。

 

 

「さっきも聞いたが混ざりたいなら大歓迎だ。もう日が沈むだろうし、今晩は此処に泊まっていかないか? 勿論、初めてが怖いならゆっくり慣らすと誓おう。一生の思い出になるような、そんな素敵な一夜にすると約束する。どうだ巫女さん?」

 

 

整った顔立ちに軽薄な笑みを浮かべ、自分の手を優しく取った男。その横でソワソワと、落ち着かない様子で此方の様子を伺う体操服の少女。

 

 

「いいよな、美奈子?」

「は、はい。クーリさんが望まれるのでしたら…!」

 

 

二人の視線が自分を捉え、どういう状況なんだこれはと巫女は頭が痛くなった。しかし頭を振り、先ほど感じた男の強さを思い出す。

 

 

「まず、その申し出は受けられませんね」

「残念だ」

「しかし私から一つ、貴方にお願いしたい事があります」

「うん? まぁ聞こうじゃないか?」

 

 

白衣の襟元を正し、巫女はふぅと息を吐く。直観があった。この男は自分の使命の一助になってくれると。こんな所で腐らせておく強さではないと、その赤い瞳をしっかり見つめ手を差し出した。

 

 

「此処を出て、私と一緒に東京の祓魔局で働きませんか? 何か要望があれば可能な限り叶えます。ですので貴方の力を、どうか私にお貸し頂けないでしょうか?」

 

 

 

 

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