顔の良い女たらし吸血鬼が、出会った美少女を手籠にしようと頑張る話   作:レネクトン

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巫女と吸血鬼3

 

意識が覚醒する。

周囲は薄暗い。

俺の隣で着物を掛け布団にしつつ眠る美菜子の頭をそっと撫で、起こさぬようにその頬にキスを落とす。静かに布団から離れ、脱ぎ捨てた自分の着流しに腕を通した。

 

「……」

 

 

着物の袂に入っていた金の腕輪を一つほど、囲炉裏のそばに置いておく。前に襲ってきた妖からぶん取ったものだ。妖霊被害者遺族年金は貰っているだろうが、少しでも生活の糧にして欲しいと、そう願いつつ、後ろ髪を引かれつつも俺は美菜子の家を後にした。

 

 

「……流石に寒いな」

 

 

外もまだ薄暗かった。

村の中央、山水を集積する水路にて着流しを脱げば、寒さから鳥肌が立つ。が、俺の体は美香子の愛液やら唾液やらでカピカピの有様だったので、行水しないという選択肢はなかった。

 

惚れた巫女の怒りを買わぬよう、体を清めていく。

 

 

「きゃ…!」

 

 

その半ば、小さな女の悲鳴

反射的に音源へ目をやれば、木桶を抱いた村の女が俺を見て驚いているようであった。じりりと少し後退り……しかし目前の全裸の男が、たまに村で見かける余所者だと理解したのか、ホッと小さく安堵の息を吐いた。

 

 

「どうも、使わせて貰ってるぞ」

「い、いえいえ、どうぞご自由に…」

 

そう言いつつも木桶を胸に抱える女はーー20半ば程の女は、俺の体を何処か上気した顔付きで、恥ずかしげに、しかしじっくりと見やってきた。

 

「……」

 

まぁ、俺の容姿は目立つ。

この辺にはいない金髪で、身長は190近い。自分で言うのもなんだがツラが良いし、無駄な脂肪の無い体付きは彫刻が如しだ。

見たくなる気持ちもわからんでも無い。

が、

 

 

「そうあまり見てくれるな」

「あ、あ、その……」

 

勃起しそうになるだろ?

節操なく獣欲が高まるのを感じつつ、着流しを羽織り直す。濡れた金髪をかき上げ女に近づきーー

 

「んっ…!?」

 

俺を見上げる女の唇にキスを落とし舌を捩じ込んでやった。彼女の体が強張り背筋がピンと張る。が、受け入れてくれたのかトロンとした表情で、つたなく俺の舌に舌を絡めてくれた

 

 

「ぷはっ…♡」

 

俺は、ヤレそうな女はすべからく大好きだ。

村を出る事を告げれば彼女は残念そうにしたが、いつかは戻る事を告げれば軽くはにかんでコクリとうなづいてくれた。

 

そのまま、村の出入り口に足を伸ばす

 

 

ーーーーー

 

 

「どうも、朝から精が出るな?」

「待て」

 

 

いつものように最低限の挨拶で自警団のプレハブ小屋を通り過ぎようとしたら、遮るように目の前に体を差し込まれた。その胸には、猟銃が抱えられている。

 

 

「お前、山の家で巫女に会わなかったか?」

「会ったぞ、すこぶる美人のな」

「なら……ちっ、しくじったのか」

 

 

悪態をつく男。

その反応で分かった、この男が俺に巫女をけしかけてきた村の自警団の長とやらなのだろう。俺は鼻を鳴らす。残念だったなとだけ返し、横を通り抜けようとしてーー

 

「くっ、避けるんじゃねえ!!」

 

 

こめかみに当たるような軌道で猟銃の銃床が振り抜かれたので、首を捻ってサッと避けた。しつこいぞ。目線をやれば、一発かましてやらねぇと我慢ならねえと、怒りに上気した男の全身が視界に収まる。

 

その銃口の先端は、俺の足の方へと向いていた。

 

 

「モテない男の僻みは醜いな?」

「うるせぇ!! 部外者の癖にっ! 美菜子は俺が先に狙ってたんだぞ!」

「撃つのか? 朝っぱらからご近所迷惑だぞ?」

「五月蝿え吸血鬼のバケモンが!!」

 

 

一応、吸血鬼も法的に日本国民と認められてるはずなんだが……なんて事を考えてしまうも、そんな道理は目の前の男の関心の外のようであった。

 

 

「へへっ……こんな朝っぱら、誰も見ちゃいねえ。獣か妖を撃ったと言えばそれでお終えよ…! それに脚だけだ、痛い目見るだけで済ませちゃる」

 

 

銃のボルトが引かれ、ガチャリと初弾が装填された。そうか。抵抗する気もない。

 

俺が黙ってその場で立ち尽くしていたら諦めたと思ったのか、男はニヤリと笑い肩付けに猟銃を構えーー朝の空気を裂く猛烈な銃声音。狙い違わず俺の太腿に散弾が着弾する。

 

 

「ーーは?」

 

 

しかし、その程度で俺は傷つかない。

倒れず、平然とする俺を見て男は固まった。衝撃は中々だがそれだけだ。撃たれた箇所の肉が盛り上がり、ポトリと鉛の弾頭が地面に落ちる。

 

 

「ただの猟銃じゃ無理だろ? 化け物と呼んでおきながら化け物を舐めすぎじゃないか?」

「こ、このーー!?」

 

 

五月蝿いので何度もは撃たせない。

一歩踏み込む。ギョっとした男が体をのけ反らせたが、その襟元を掴み、引き込み、右膝を股座へ正確に叩き込んだ。

 

 

「うっ、ぎゃあああぁあ…!!?」

 

 

瞬間、何かがプチっと潰れる感触。倒れ込み、その場でゴロゴロと地面を七転八倒し始めた男。泡を吹き、もがき苦しみ、鼻水を垂らしている。

が、男の苦しみなんぞに興味はない。

しゃがみ、悶え苦しむ男の前髪を掴んで顔を上げさせた。怯える目に目を合わせ、端的に告げる。

 

 

「村を出る、暫くは戻らない。だが美菜子は俺の女だ、無理やり手籠にしようとしたら…」

「へ、ひっ…! わ、分かった分かっだぁ! 手は出さねえ!! 誓うから許してぐれぇ!!」

「ご理解痛みいるよ」

 

 

前髪を離してやる。

抜けた毛がパラパラと風に舞う。

良かった良かった。ノーと言われたらタコ殴りにして説得するしか無かったからな。手っ取り早く話を済ませた事に満足感を覚えつつ、山の麓へ歩を向ける。

 

さて、巫女さんに会いに行くか。

 

 

ーーーーーー

 

 

「よう、待たせたな」

「遅いですよ。それで、話を付けたのですね?」

 

 

山の麓。柔らかな風が吹く中。

凛と佇む灯香が舞う髪を抑えつつそう答える。

 

 

「あぁ付けた。しかし、改めて見ても美人だな?」

「そうですか」

「もう少し笑った方が可愛いぞ?」

「無表情は貴方もでしょうに」

「俺は、ほら、笑おうと思えば笑える」

 

 

ニコーっと笑ってみせる。

そんな俺を胡散臭そうに見つめる灯香は、行きますよとだけ返しすぐ側の軽バンに乗り込み始めた。なんという愛想の無さか?

俺も乗り込み助手席に着座すれば、プルルと軽快に鳴るエンジンの始動音。

 

 

「つれない態度だな? 日は浅いが仲間なんだ、もう少し相互理解を深めるべきじゃないか?」

「ふむ……それは、まぁそうですね」

「なら俺から質問だ、使命ってなんなんだよ?」

 

 

問いかける。

行き先も目的も知らないというのは話にならない。窓の外の風景が流れるのを見やりつつ、彼女の言葉をしかと待つ。

 

 

「とある、神器の一つを追っているんです」

 

すると彼女は、神妙な顔でそう切り出し始めた。

 

 

「神器を?」

天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)いう物をご存じですか?」

「それは勿論、三種の神器の一つだよな?」

「えぇそうです」

 

 

当然と頷く。

神器とは、地上に降ろされた神々の魂の分け身であり、多くの力を秘める超常の至宝の事だ。その中でも天叢雲剣は、日本皇国を代表する神器の一つと言えるし、義務教育を受けた人間ならば誰もが知っているだろう。

 

 

「それを、探していると?」

「はい」

「だが、それはおかしな話じゃないか?」

 

 

そう突っ込む。何故ならば、国を代表する神器というのは伊達じゃないからだ。

 

言うまでもなく天叢雲剣も、東京大結果の中心たる皇居、その地下奥深くにて厳重に管理されていると聞くし、その大切にされようは歴史上一度も御開帳を許された事が無い事からも推して測れるだろう。

 

とどのつまり、探すようなものでは無いのだ。

国の中心でしっかりと鎮座しているのだから。

 

 

「まぁ、よく言うよな? 三種の神器は歴史上一度もご開帳無し、誰も見た事がないから本当は無いんじゃないかって、冗談半分に言う奴もーー」

「その、まさかです」

 

 

おっと、マジか?

思わず俺は隣の灯香を見やった。しかしその美しい横顔は深刻な表情を湛えていて、とても冗談を言っているようには見えなかった。ヤバいなという言葉が自然とこぼれ落ちる。

 

 

「一応釘を刺しておきますが、口外厳禁ですよ」

「それは勿論だ。だが、無いっていうのは盗まれたって認識でいいのか?」

「国は、まず間違いなくそうだと考えています」

「ははは、この国もこれから滅びるかもな?」

「そうならぬよう、私たち祓魔局は動いているのですよ」

 

 

中々に愉快な状況のようだ。

神器とは神々の分け御魂、つまり霊的技術に覚えがある悪党が悪用すればエライ事になる。俺は専門家じゃないから具体的な被害は分からないが……とにかく、凄く凄い被害が出るということだ。

 

どうしたもんかなと、俺は投げやりに天を仰ぐ。

 

 

「その、申し訳ございません……不安ですよね、いきなりこのような事を知らされては」

「あぁ、不安だ」

 

 

灯香とセックスする前にこの国が滅びないか本当に不安である。なんて事を言ったら怒られるので、殊勝な顔をしておく。

 

 

「とはいえ、あれほどの神器を悪用するにはかなり大規模な儀式が必要なものです。各地の優秀な祓魔師や巫女がその兆候を探っている以上、いきなり国が滅ぶような事はありえないでしょう」

 

「だといいがな。で、肝心の探した方にアテはあるのか?」

 

「ここを使います」

 

 

そう言ってトントンと、自らの鼻筋の通った鼻梁を叩く灯香。

 

 

「神気、魂の匂い、その片鱗を追うのです」

「そんなものが分かるのか?」

「えぇ、霊的感度には少しばかり自信がありますし……天叢雲剣、その本神たる八岐大蛇の魂の匂いにはよくよく覚えがありますので近くに有れば分かりますよ」

 

 

魂の匂い。俺には一欠片も想像できない概念だが、一部の領域に至った祓魔師や霊能力者ならばそれを捉えられると、そう聞く話である。

 

所謂、第六感を持つ高位も高位の術者の事だ。きっとこの巫女は、祓魔局の中でも大層期待されている若手のエースなんだろう。

 

立派な人間ってやつだな?

俺とは大違いだと笑ってしまう。

 

 

「立派な、人間……どうでしょうか。人の良し悪しは能力や地位によって判断するものではありませんからね」

 

「なら、何で判断するんだ?」

 

「真面目で直向きで目の前の難事から逃げず、謙虚に生きているかどうか。それだけですよ。それを出来ている人ならば誰しもが、立派な人間というものです」

 

 

運転しつつ、淡々と持論を述べる巫女様。

真面目、直向き、謙虚さ。

まるで俺とは真逆の要素であった。

やはり、俺とは程遠いなと鼻で笑えば、『貴方もいつかはそんな立派な人間になるんですよ』と、大真面目な表情で謎の太鼓判を押されてしまった。意味が分からなくて首を傾げる。

 

 

「俺がそうなるように見えるのか?」

「はい、私はそう信じています」

「有り難いが、何故だ?」

「信じる事が宗教者の務めですから」

「灯香、お前の言葉は少し難しいな?」

「人に捨つる者なし、という事ですよ」

 

 

てんでピンと来なくてうなじを摩る。

すると灯香は、いずれ分かりますよとだけ呟き再び運転に集中し始めた。難しい女だ。可愛い美しいと誉めそやしてもきっと、有り難う御座いますとかで終わるのだろう。

 

お預けを食らうのも嫌いじゃないが、これを落とすのには時間が掛かるなと直感してしまう。

 

 

「ともかく、一度東京へ向かいましょう。貴方を雇う事を上に報告せねばなりませんし、色々と備品を補給する必要もあります」

 

「なら、俺にも給料が出るのか?」

 

「勿論です、タダ働きはさせません」

 

「嬉しい誤算だな。それで、だ」

 

「えぇ」

 

 

キィっと車が停められる。

二人して車外に降りれば鼻腔に流れ込む臭気。ガサガサと草木が擦れる音。灯香も刀を抜き正眼に構え周囲を警戒し始めた。妖だ。自然と背中を預け合う。軽く肩を回し手首をストレッチした。

 

 

「人里離れたらすぐコレとはツイてないな。地方に派遣する祓魔師、もう少し増やした方がいいんじゃないか?」

 

「担当部署も人員がカツカツなのですよ。それでクーリ、何か武器は必要ないのですか?」

 

「折ったら悪いし邪魔だ、俺はコレでいい」

 

 

脇差を見せられたが、拳を構えて遠慮しておく。なら行きますよ、と灯香が言って互いに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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