顔の良い女たらし吸血鬼が、出会った美少女を手籠にしようと頑張る話   作:レネクトン

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東京祓魔局4

 

 

ゴクリと飲み込んだカルラの血液。

熱く燃えつく甘美なそれを、身体中に素早く行き渡らせる。

新たな因子を取り込んで、全身がカッと燃えた様に熱くなった。

 

アップデート完了だ。

目前のアホがやっていたように、『丹田』を丁寧に練り上げる俺。

 

 

 

「っ!? どうな、ってるんダ…!?」

 

 

俺の変化を最も敏感に感じたのは、対面のカルラであった。

それはそうだろう。今まで『無』そのものであった男が、急に体中に氣を漲らせ始めたのだ。ありえないと、そう混乱しているに違いない。

 

 

 

「クーリ、伽藍じゃなくなった…? どういうカラクリだ!?」

「俺はお前に成ったんだよ」

「キキッ! アハっ! 訳わかんないぞクーリ!!」

 

 

嬉しそうに言われるが比喩ではない。

 

吸血鬼。

そう言われる家門の連中が使える血の秘術。

 

ーー【真血適合(ブラッド・アダプト)

 

それを簡単に言えば、相手の血を啜りその霊的要素を体内に取り込む事によって、"相手そのもの"に成る霊的技術の事だ。

 

俺も、それを使いカルラの氣を一時的に取り入れたという事である。

つまりは、それはーー

 

 

「うぎっ…!?」

「よーく目を凝らせよ? かなりギアが上がってるんだからな?」

 

 

ーー素でバケモン級の身体能力の俺に、氣によるブーストが加わるという訳だ。

 

圧倒する。

速度、膂力、全てで上回り一方的に攻めたてる。更にーー今の俺はカルラの霊的視野(クタスタ)も手に入れている状態だ。氣の流れを視認できてしまう。

 

故に、

 

苦し気なカルラが練り上げた浸雷掌の起こりも当然感じ取れた。避け、腹に強烈なカウンターを叩き込む。そこにも氣を捩じ込んで威力を増幅させていく。その威力に口の端を歪ませ、思わずと言った様子で後ろへ飛ぶカルラ。

 

 

 

 

 

「ぐっ、うぅ、でもっ、まだまだッ!!」

「っと…!」

 

 

とはいえ、力任せに叩きのめしてはコイツの顔に傷が付きかねないだろう。

それは俺の本意ではない。

だからーーここからは技術戦だ。

力をセーブし、焦らず丁寧に戦いを組み立てていく。

 

 

カルラの左ストレート。ダッキングでかわした。

お返しのアッパーは、仰け反りかわされる。

 

打撃のフェイントで組み付いた。

支釣り込み落としの仕掛け。カルラは大きく抵抗はせず後ろへ倒れてくれたが、むしろその勢いを利用して巴投げのように俺を後ろに転がそうと試みてきた。スクランブルの展開となり、互いにマウントを取りきれず一度離れる事になる。

 

 

 

「踊り独楽ァ!」

「おおっ!?」

 

 

再びの打撃戦。

そこで唐突に仕掛けられる合気の技術。俺が氣を纏った事をむしろ利用して、その氣を操ったのか、気付けば俺の体は宙を舞っていた。

 

本当にセンスが良いなと感じつつ、強かに背中から落ちる。肺の空気がゴホリと吐き出された。間髪入れず、眼前に猛然と迫り来る追撃の鉄槌。

 

 

「終わりッ! 浸雷掌ォ!!」

 

流石に、コレをマトモに食らったらヤバいだろう。

俺はそう直感する。

横に転がっても避けきれない一撃。

だがーー

 

 

「っ!? マジかぁっ!!?」

 

 

今の俺は合気の技術を使えるのだ。落ちてくる浸雷掌に手を添え、数センチ横に力の流れを傾けた。グワリと、カルラの拳の軌道が歪んで……間一髪。少女の決め技は、俺の頭の真横のコンクリを粉々に粉砕するのみの被害で収まった。

 

 

「ーー危なすぎるな本当に?」

 

無論、次を打たせるつもりはない。間髪入れずに俺は下半身を振り上げて、驚愕に目を見開いたカルラの首に、一瞬で足を絡ませていく。

 

三角絞めだ。

その頸動脈を、太腿で折れんばかりに締め上げた。

 

 

 

「ぐ、ぐうぅ…!!」

「終わりだな。ここまで密着すれば、氣の操作もクソもないだろ?」

「くー、りぃ…! カルラはまだ、お前と…!」

 

 

隙間無く入った。

蛇のように絡み付き逃さない。カルラはストンプでの脱出を試みているが、俺も上手く上半身を滑らせてそれを回避する。

 

詰みだ。

 

脳への酸素供給を完全に絶たれたカルラは、それでも犬歯を剥き出しに狂笑を溢し、最後に何かを言おうとしたがーーガクリと全身を脱力させていく。

 

失神したのだ。しばし、完璧に落ちているかを確認し……はぁ、と俺は深く息を吐いた。

 

 

 

「全く……凶暴すぎる女だなコイツは…?」

 

 

殴られすぎて顎と腕が痛い。

見た目は中々に可愛らしいのに、振る舞いと戦闘力が狂犬過ぎてちょっと女として見ることが出来ない奴だ。やっぱ顔を殴っても良かったかもなと思いつつ、灯香の方に向き直る。

 

 

 

「灯香、終わった『う、へへっ、まだまだぁ…!』

「冗談だろ…?」

 

 

しかし、しかし、後ろから響くまさかの声。

これが人妖のタフネスってやつなのだろうか…?

乾いた笑いが漏れてしまう。完全に落とした筈。だというのに体を起こし、爛々とした瞳を此方へ向けてきたカルラに流石にウンザリとしてしまう。

 

 

「もっとやろう…! もっともっともっと遊ぼう!! 互いの肉が擦り切れて、魂の形がまろび出るくらいに!! 徹底的に!! 愛しあおうクーリ!!」

 

 

心底楽し気な狂った笑み。

意味が分からん、もういい、今度こそ寝かしつけてやろう。

 

カルラはフラつきながらも、獣のような姿勢で飛び出した。良い度胸だと、俺も灯香のプレゼントをボロボロにしたボケにトドメを刺そうと駆け出してーー

 

 

「ーーそこまでです!!!」

 

俺とカルラの中心。そこへ飛び込んできた巫女が、刀の腹と鞘で二つの拳を受け止めた。

 

 

「もう勝負は付いたでしょう! 此度はクーリの勝ちでっ、そして喧嘩両成敗です!!」

 

 

そして間髪入れずに、ガツンと。

カルラには刀の峰が、俺には鞘が振り下ろされる。視界が明滅する。予想外の一撃だった事もあり、二人仲良くダブルノックアウトの結果となって地面に沈み込んだ。

 

 

 

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