世界の破壊者は「超かぐや姫!」の世界を通りすがったようです   作:白豆男爵

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思いつきの短編の予定です、一応。


門矢士という男

「いらっしゃいませー」

 

私、酒寄彩葉は今日も今日とてバイトに勤しんでいる。

BAMBOOcafeは今日もたくさんのお客さんで賑わっており、私はホールスタッフとして注文を捌いている。

そして今日のキッチン担当の人に注文を伝える。

 

「門矢さん、3番テーブルの注文入りました」

「ああ」

 

キッチンの青年は一言だけ返すと、出来上がった皿をこちらへ差し出した。

 

「5番テーブルだ」

 

そう短く伝え、作り終えた料理をこちらに渡す。

門矢士さん。

私と同じバイト先で働く大学生で、年齢は二十歳。

そう聞いているけれど、とてもそうは見えない。

いつも落ち着いていて、何を考えているのか分からない。

だけど、不思議なくらい何でもこなしてしまう人だ。

 

最早戦場とも思えるほどの注文の量にも動じず、完璧とも言える出来の料理を次々に完成させていく。

注文票が次々と積み重なる。

フライパンの音、食器のぶつかる音、店員とお客さんたちの声。

普通なら慌ててもおかしくない店内で、門矢さんだけは別世界にいるようだった。

一切焦らず、一切乱れず、淡々と料理を完成させていく。

門矢さんの仕事ぶりのおかげで、今日のバイトも無事に乗り切ったのであった。

 


 

「門矢さんって本当になんでも出来ますよね」

「なんだ?藪から棒に」

 

バイトの帰り道、私は率直に思ったことを門矢さんに伝える。

 

「今日の料理だって、全部完璧だったじゃないですか」

「まあな」

「否定しないんですね…」

 

門矢さんは、自信家だ。

普通なら鼻につきそうなのに、不思議と嫌味には聞こえない。

本当に、それだけの実力があるから。

親に無理言って独り立ちして、背伸びをしている私とは違う。

 

門矢さんの態度はちょっと苦手だけれど、尊敬もしている。

何でもできる彼は、私の目指す理想に近いと思ったから。

 

そう思っている私の横で、パシャリ、という音が聞こえる。

見ると門矢さんは、いつも首から下げているちょびっと古い、インスタントの二眼カメラで街の風景を撮っていた。

 

「好きですね、写真撮るの」

「そうだな、習慣みたいなものだ」

「でも、いつもブレッブレじゃないですか」

「…」

 

そして何を隠そう、門矢さんの撮る写真はいつも何を撮ったのか判別できないほどに酷いものになっている。

私が知っている、門矢さんが唯一出来ないこと。

それが写真撮影なのである。

 

「…世界が俺に撮られたがっていないだけだ」

「そういうことにしておきますよ」

 

そう話しているうちに、やがて自宅に着いた。

 

「じゃあな、酒寄」

「はい、今日もありがとうございました」

 

分かれの挨拶とともに、私たちは各々の部屋に帰宅する。

何の偶然か彼の家は同じアパート、しかも私の部屋の隣であった。

最初は驚いたけれど、今ではすっかり慣れてしまった。

慣れというのは恐ろしいものだ。

 

でもこの時の私は、まさか門矢さんが"ただの大学生"ではないなんて、夢にも思っていなかった。

 


 

3連休が翌日に迫ったバイト帰り、自宅まで帰ってみればそこには、七色に光る電柱があった。

何を言っているのか分からないと思うが、私もよく分からない。

とにかく、電柱が光っていたのだ。

そして焦っていた私はあろうことか、その中から出てきた赤ん坊を成り行きで拾ってしまい、部屋の中まで連れ込んでしまった。

何とかヤチヨの歌を歌って落ち着かせたはいいものの、警察を頼っても相手にされないのは明白。

一体どうしたら…

 

「どうした酒寄、赤子の鳴き声のようなものが聞こえたが、何かあったのか?」

 

コンコン、というノックの音と共に、そんな声が聞こえてくる。

どうやらこの赤ん坊の泣き声は隣の部屋まで響いていたらしい。

 

「あ、えっと…」

 

私は、迷った。

この意味の分からない状況。

年上で何でもできる門矢さんを頼ってしまいたいという気持ちと、門矢さんに迷惑をかけたくない+そもそもこの状況を話して信じてもらえるかという気持ちを天秤にかけていた。

その結果…

 

 

 

「ふむ、電柱から赤子が…」

「は、はい…」

 

結局、全部話してしまった。

 

「なるほど。だいたいわかった」

 

話を黙って聞いていた門矢さんはあっけらかんとそう返す。

 

「本当ですか?自分で言ってて何ですけど、荒唐無稽すぎませんか?」

「お前が人を騙すようなやつじゃないのは知っているからな。ーー」

 

最後に、門矢さんが小さく何かを呟いた気がした。

 

「?何か言いましたか?」

「こっちの話だ…仕方ない」

 

門矢さんは赤ん坊を一瞥して、小さく息をつく。

 

「手伝ってくれるんですか…?」

「ああ、このまま放置しても目覚めが悪いからな」

「…ありがとうございます」

「申し訳なさそうにするな。俺が勝手に首を突っ込んだだけだ」

 

そうぶっきらぼうに返す門矢さんと共に、ひとまずこの赤ん坊を育てることになった。

 


 

今回辿り着いた世界は、今までとは少し違った。

ライダーも居なければ、何かの組織が蔓延っているわけでもない。

至って普通の世界。

強いて言うなら、今までのどの世界よりも時代が進んでおり、文明が発展しているということくらいだ。

 

ボロアパートに住み、バイトに勤しむ大学生。

それが今回、俺が与えられた役割らしいが、イマイチ何をすればいいのかよく分からなかった。

敵もライダーも居ない以上、今までのような目的がない。

だがこの世界に来た以上、何か理由がある。

そう考えていた。

 

そんな時だった。

隣人でバイト先の同僚、酒寄彩葉に異変が起きた。

七色に光る電柱から赤ん坊を拾ったという。

その話を聞いた瞬間、俺は理解した。

 

これが、この世界で俺が役割だと。

 

「これが、俺の役割ってことか……」

 

思わず漏れた独り言に、酒寄が首を傾げる。

 

「?何か言いましたか?」

「……こっちの話だ」

 

俺はその赤ん坊を一瞥し、小さく息をついた。

とにかく、この赤子が普通でないのは火を見るよりも明らかだ。

この赤子が、この世界のカギなのか。

それとも、酒寄彩葉自身がカギなのか…

 

まあいい。

この世界に来た答えは、自分の目で確かめる。

今までと同じ。それが俺のやり方だ。

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