原作突入したら自分でもめちゃくちゃ面白い展開になると思っているので気軽にお待ちください!
オルステッドの姿が森の奥へ消えていく。
レオンはしばらくその場に立ち尽くしていた。
握り締めた剣はまだ震えている。
ドラゴンとの戦いで傷ついた腕は思うように動かず、全身が痛んでいた。
それでも、不思議と痛みは気にならなかった。
頭の中に焼き付いているのは、たった今見た一太刀だけだった。
「……なんだったんだ、あの剣。」
見えなかった。
ドラゴンを斬った瞬間も、剣を振り抜いた瞬間も。
気付いた時には勝負が終わっていた。
自分が必死になって傷を付けることしかできなかった相手を、あの男は一瞬で退けた。
悔しかった。
情けなかった。
だが、それ以上に胸が高鳴っていた。
「……あんな風になりたい。」
その一言が、自然と口から零れた。
レオンは剣を鞘へ収めると、オルステッドが歩いていった方角へ視線を向ける。
もう姿は見えない。
普通なら諦めるだろう。
だが、レオンは違った。
「行こう。」
小さく呟き、走り出す。
森を駆け抜けながら、折れた枝や踏み潰された草を探す。
ドラゴンとの戦いで乱れた地形には、オルステッドが歩いた痕跡が微かに残っていた。
それを頼りに、ひたすら走る。
一時間。
二時間。
日は少しずつ西へ傾いていく。
途中で何度か魔物と遭遇したが、相手をしている余裕はなかった。
すべて振り切る。
あの背中を見失いたくない。
その一心だけだった。
やがて、木々の向こうに白い後ろ姿が見えた。
「いた……!」
思わず声が出そうになる。
慌てて口を押さえ、大木の陰へ身を隠した。
オルステッドは一定の速度で歩いている。
焦る様子も、急ぐ様子もない。
レオンは距離を取りながら静かについていく。
(追いついちゃ駄目だ。)
(見つかっても駄目だ。)
(でも、見失うのはもっと駄目だ。)
父と狩りへ行った日のことを思い出す。
獲物を追う時は音を立てるな。
風下へ回るな。
枝を踏むな。
その教えを思い出しながら、一歩ずつ慎重に進んだ。
オルステッドは一度も振り返らない。
それでも、妙な威圧感だけは消えなかった。
まるで「気付いている」と言われているような感覚。
だがレオンは足を止めない。
夕暮れが近づいた頃、オルステッドは開けた岩場へ辿り着いた。
腰を下ろすこともなく、静かに剣を抜く。
レオンは息を呑んだ。
(また……。)
次の瞬間、オルステッドはゆっくりと剣を振る。
速くはない。
ドラゴンを斬った時のような神速でもない。
それでも、一切の無駄がなかった。
踏み込み。
腰の回転。
肩の力。
腕ではなく全身で剣を振る。
そのすべてが一つの動きとして繋がっている。
レオンは瞬きすら忘れて見つめた。
(違う……。)
(父さんとも違う。)
(もっと自然だ。)
オルステッドは何度も同じ動きを繰り返す。
一本。
また一本。
まるで呼吸をするように剣を振り続ける。
レオンはその姿を頭へ焼き付けた。
そして少し離れた場所で、そっと剣を抜く。
見たままを真似する。
足を開く。
呼吸を整える。
踏み込む。
剣を振る。
ブンッ。
「違う……。」
もう一度。
ブンッ。
何かが違う。
形は真似できても、あの静かで鋭い剣にはならない。
それでも何度も繰り返した。
オルステッドが一振りするたびに、自分も一振り。
その差を少しでも埋めようと必死だった。
夢中になって剣を振っていると、不意に低い声が森へ響いた。
「……好きにしろ。」
レオンの身体が固まる。
オルステッドはこちらを見ていない。
それでも、その言葉が自分へ向けられたものだとすぐに分かった。
気付かれていた。
最初から。
それでも追い払わない。
レオンは剣を握り直し、小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。」
返事はなかった。
オルステッドは剣を納めると、そのまま歩き出す。
レオンは少しだけ笑みを浮かべる。
「……絶対に盗んでみせる。」
その日からレオンは、オルステッドの背中を追い続けることになる。
教えを乞うつもりはなかった。
弟子になりたいわけでもない。
ただ、見て、考え、盗み、自分の力へ変える。
それだけで十分だった。
_____
オルステッドの背中は、不思議だった。
速く歩いているわけではない。
一歩一歩はごく普通だ。
それなのに、どれだけ走っても距離が縮まらない。
レオンは木々の陰に身を潜めながら、その背中を追い続けていた。
日はすでに傾き始めている。
ドラゴンとの戦いで消耗した身体は重く、脇腹の痛みもまだ引いていなかった。
それでも足は止まらない。
あの男を見失えば、二度と会えない気がした。
森を歩くオルステッドには、一切の隙がない。
枝を踏んでも音がしない。
落ち葉の上を歩いているはずなのに、足音はほとんど聞こえない。
それどころか、周囲の魔物が自ら道を空けているようにさえ見えた。
「……なんでだ?」
レオンは首を傾げた。
さっきまで近くにいた魔物の気配が、一つ、また一つと消えていく。
逃げている。
まるで森そのものが、あの男を恐れているかのようだった。
そんなことを考えていると、不意にオルステッドが立ち止まった。
レオンは慌てて近くの岩陰へ飛び込む。
息を殺し、様子を窺う。
オルステッドの視線の先には、一匹の魔物がいた。
全身を灰色の毛で覆われた巨大な狼。
レオンでも知っている。
フォレストウルフ。
群れで狩りをする危険な魔物だ。
だが、その個体は異常だった。
普通の倍近い体格。
全身には古傷が刻まれ、片目は潰れている。
群れの主なのだろう。
狼は低く唸りながらオルステッドを睨みつける。
「グルルルル……」
レオンは思わず剣へ手を掛けた。
しかし、次の瞬間だった。
狼の身体が大きく震える。
唸り声が止まり、耳が伏せられる。
そして――。
「クゥン……」
尻尾を丸めると、そのまま一目散に森の奥へ逃げ去ってしまった。
「……え?」
レオンは目を瞬かせる。
戦ってすらいない。
睨んだだけだ。
それだけで、あの魔物は逃げた。
(やっぱり……。)
(この人は普通じゃない。)
オルステッドは何事もなかったように歩き始める。
レオンも距離を保ちながら後を追った。
日が沈み始める頃、二人は小さな湖へ辿り着いた。
透き通る水面に夕焼けが映り込み、森を赤く染めている。
オルステッドは湖畔へ腰を下ろすと、静かに目を閉じた。
レオンは少し離れた木の陰から様子を窺う。
(休憩……かな。)
自分も疲れていた。
水を飲み、干し肉を一口かじる。
視線は一度もオルステッドから外さない。
すると、湖の向こう側で水面が揺れた。
ザバッ――。
水中から現れたのは、大人ほどの大きさがある巨大な魔魚だった。
鋭い牙を並べ、一直線にオルステッドへ飛びかかる。
「危ない!」
思わず叫びそうになる。
しかし、オルステッドは動かない。
飛びかかる魔魚との距離は、あと数メートル。
次の瞬間。
魔魚の身体が突然弾き飛ばされた。
まるで見えない壁へ激突したかのように宙を舞い、湖へ叩き落とされる。
水柱が高く上がり、そのまま動かなくなった。
「……今、何をした?」
レオンにはまったく見えなかった。
魔術を使ったのか。
剣を抜いたのか。
それとも別の何かなのか。
何一つ分からない。
分からないからこそ、知りたくなった。
もっと近くで見たい。
もっと強さの理由を知りたい。
その思いは、もう止められなかった。
レオンは静かに立ち上がる。
一歩。
また一歩。
音を立てないよう慎重に近付く。
あと十歩ほどで声が届く距離だった。
その時だった。
「いつまで隠れている。」
低い声が静かな湖畔に響く。
レオンの身体が硬直する。
気付かれていた。
まただ。
気配を消したつもりだった。
足音も立てていない。
それでも、この男には通用しない。
レオンはゆっくりと木の陰から姿を現した。
「……すみません。」
オルステッドは振り返らない。
ただ湖を眺めたまま口を開く。
「付いてくる理由は何だ。」
レオンは少しだけ迷った。
だが、嘘をつく意味はない。
「強くなりたいからです。」
「……。」
「あなたみたいに。」
静かな風が二人の間を吹き抜けた。
しばらく沈黙が続く。
やがてオルステッドは短く息を吐いた。
「俺を真似しても、お前は俺にはなれない。」
その言葉は冷たく聞こえた。
しかしレオンは首を横に振る。
「なるつもりはありません。」
オルステッドが初めて少しだけ振り返る。
金色の瞳がレオンを見つめた。
「俺は、俺の戦い方を見つけたい。」
「そのために、あなたから盗めるものは全部盗みます。」
その言葉を聞いたオルステッドは、数秒だけレオンを見つめると、何も言わず立ち上がった。
「……好きにしろ。」
それだけ言い残し、再び歩き始める。
レオンの口元に自然と笑みが浮かんだ。
「はい!」
短く返事をすると、少年はまた竜神の背中を追いかけた。
この時レオンはまだ知らない。
この出会いが、自分だけの「魔剣」の道へ繋がる最初の一歩になることを。
今後の展開
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一気に歳をとって成長する
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修行
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魔法を極める
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剣術を極める