FSS─翡翠の雷光─   作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!

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感想とか見させてもらってニヤニヤしてます。非ログインの方も送れるようになってるので是非に。


星団歴2988─黄金の騎士─
014:時間が足りない


「ふと思ったんですが」

 

「おん?」

 

「デコース様は何故ユーバーのような俗物の下に居るのですか? 

 こう言ってはなんですが、性格や性根は下劣の極みですがそれらを差し引いても引く手数多だと思いますが?」

 

「……」

 

「っぶねぇ!? だからいきなり七音剣(ストラト・ブレード)かますのやめてくれます!?」

 

「いきなり失礼なこと行ってきたテメェが悪いだろクソガキ。そのアホ毛引っこ抜くぞ」

 

 ふぁっきゅー! 叫んでデコ助へ斬りかか……ろうと双児響転で生み出した分身を先行させ、背後から切りかかろうとしますが。

 

「テメェーの手品なんぞとっくにお見通しだわ」

 

 あっさり受け止められてしまいます。

 

「ぐぬぬ、やはり何度も見せてたらそりゃ通じるわけねーですわね!」

 

 響転と普通の高速移動を併せ、怒涛の連続攻撃をかましますが全て簡単に捌かれワタクシの持ってた木剣を叩き落とすと。

 

「たりめーだろ、ボクちん天才だぞ?」

 

 その一言と共に首筋に切っ先を突きつけられました。クソが、負けましたわ! 

 まぁ、ワタクシは超天才で美少女ですが! 超天才で美少女ですが!! 

 

「喧しい2度言うんじゃねぇ。ナルシスト」

 

「それ貴方様がいいます?」

 

 自分で狂乱の貴公子って名乗るの大分イタくありません? あれ、なんかデコース様の右手がブレ─────

 

「イイッ↑タイ↓アタマガァァァ↑」

 

 この野郎! いきなり人のどたまにゲンコツしてきやがりましたわ!! 

 シンクレアだっておしりペンペンで済ましたわよ!? 

 

「ったく、人に稽古頼んどいてクソ生意気な餓鬼だな」

 

 デコース様は言うと木剣を肩に担ぎ、近くの木陰へと移動してしまいました。どうやら休憩時間に入るようですわね。

 

「んぐ、んぐ、んぐ……ぷはぁ! キンッキンに冷えてやがりますわ〜〜〜!」

 

 クーラーボックスに突っ込んでいたスポドリをがぶ飲みし、火照ったからだにキンキンに冷えた液体が爽快ですわ! 

 少し離れた木陰にはデコース様がちびちびとスポドリを飲んでるのが見えますわね。

 

 ───あの決闘の日からひと月ほど経ちました。あれ以降何かとあればワタクシはデコース様に稽古を頼み、生傷の耐えない日々を送ってます。

 

 なぜそうしているかと言えば、祖国奪還においてドンパチをするのは確定的に明らかなので鈍った身体を鍛え直す為ですわ! 

 

 バルカス達ではイマイチ稽古の相手になりませんし、かといってそこら辺にいる騎士に喧嘩を吹っかけるのも淑女とはいえません。

 

 ならどうするか? そうですわね、丁度近くに暇そうにしてる奴がいますわね。てなわけでデコ助に連日突撃してるわけですわ! 

 

「あででで、ワタクシの玉肌に青なじみが出来てますわ!」

 

 まぁ、容赦なくボッコボコにされてるのは愛嬌ということで見逃しなさい。

 にしたってコイツ強いですわね。メイド長から天位は確実って太鼓判を押されてるワタクシですが全く勝ち目がみえませんわ! 

 

 こんなプリティーフェイスを容赦なくボコれるなんてとんだ鬼畜ですわよ全く。

 

「骨が折れてねぇだけやさしーほうだろ? つか、なんでボクちゃんがこんなことしなきゃなんねーワケよ? ぶっちゃけめんどいんだけど」

 

「だってー、トローラ様って明らかに雑って言うかパワータイプなんですもの〜。

 ワタクシの戦い方ってどっちかって言うとデコース様みたいな性格わr……ゲフンゲフン、技巧派タイプですので〜。なら習うならデコース様の方が色々と参考になると思ったんですのよね〜」

 

「猫撫で声出すな気色悪ィ」

 

 最初はまだ話しやすそうなトローラ様に頼もうとしたんですが、あの人の騎体のデヴォンシャの整備をしてるとパーツの損耗具合や破損具合から戦い方を推測できますが、明らかにワタクシの戦い方とは真反対のパワーファイターです。

 

 ですが、デコース様の戦い方はすり足を用いて動作の起こりを悟らせず『伸侵剣(ロングスライド・スタンス)』による変幻自在の間合いで切り結び、合間合間に七音剣(ストラト・ブレード)を仕込むという底意地の悪い戦い方ですわ。

 

 ワタクシの戦い方は響転や双児響転で撹乱し、死角から仕留めるという感じなのでデコース様と結構似たようななところがあります。

 

 格上で似たような戦い方、なら頼らない手はありませんわよ! 

 

「俺の都合は無視ってかぁ?」

 

「日がな1日そこらをぶらついて絡んできた馬鹿を甚振ってるより、未来ある美少女の稽古をつける方がよっぽど建設的ですわよ! 

 ワタクシは強くなる、デコース様は美少女と2人きりでいられて双方にウィンウィン。断る理由がねぇですわ!」

 

「俺にだって選ぶ権利くらいあるんだが?」

 

 変なこと言いますね、ワタクシという美少女のご尊顔を拝謁できるのはとてつもない栄誉だというのに。

 

「コイツ心の底から言ってやがる……」

 

 ガチでドン引きしてるお声を出すのやめてくれません? 

 

「まぁ、話は戻しますがデコース様って何故あんなユーバー()のに雇われましたの?」

 

「まだその話続くのかぁ?」

 

「師匠と弟子の交流ですわよ。親睦深めると思って教えてくださいませ〜」

 

「ヤダねめんどくせぇ」

 

 とりつく暇もない様子にこれ以上聞くのも無駄だし、あんまりしつこく聞くのも失礼かなと思ってワタクシは追求の手を止めます。

 

 少しの間だけワタクシたちの間に無言の空気が訪れ、乾いた風が頬を撫でる中で不意に。

 

「ふと思ったんだがよ」

 

 デコース様が言いました。

 

「はい?」

 

「お前って何者なんだ?」

 

「何者って……ただの超天才美少女イリスちゃんですが?」

 

「そういうことじゃねーよ。お前、本当はユーバーの野郎に言ってた事ほとんど嘘だろ?」

 

「……根拠の程は?」

 

「少なくとも一般出身の餓鬼が剣聖剣技どころかマトモな騎士剣技を使えるかよ。

 オマケにボクと打ち合って手傷を負わせるなんてまずいねーよ」

 

 加えて、とデコース様は指を1本たてワタクシのチャーミングなおデコを小突きます。

 

「お前の普段の動きだ。お前の所作、仕草、目の動き……その殆どが何処か"品"がある。

 ユーバーみてぇな成金にゃ出せねぇ真正の人の上に立つもの特有の"高貴"さってのがな」

 

「…………」

 

 あらヤダ、この人めたくそ目がいいですわね……そういうのらバレないようにしてたつもりなんですが、無意識下の動きに出てたなんて予想外ですわ。流石はシンクレアの教育(調教)、魂レベルにまで刷り込まれてるとは……驚きよりも恐怖ガガガ。

 

「それで、貴方はどうするおつもりで? ユーバーに告げ口でも致しますの?」

 

 まさかこんな形で正体がバレるとは思いもしませんでしたね……こりゃ、今日にも逃げますか? 

 

 ワタクシはチラリと周囲の地形の把握とデコースの動きを見ようとした瞬側に彼が鼻で笑って寝そべりました。

 

「べっつにー、ボクちんにゃカンケーねーもーん。お前がどっかの国のお貴族様だろうが、何かの理由があってあんな豚に身を寄せてんのかもな」

 

「……はぁ、警戒したワタクシが馬鹿みてーじゃないですか」

 

 1人で勝手に警戒したのがバカバカしくなり、ワタクシは腰を落ち着け空を見あげます。

 

「貴方の言う通り、ワタクシは詳しくは言えませんが家を追われましてね。

 ユーバーの元に身を寄せてるのもあの男を利用するためですわ」

 

「ほーん、お前さんがユーバーのやつをだまくらかしてセコセコ作ってるMHもそのためか?」

 

「当たり前でしょ?」

 

 でなけりゃあんな男の下で作ってませんもの。『ユーバー様にお似合いの騎体を作りたいんですの〜』って言えばじゃんじゃか金や資材を使わせてくれるのでありがたい限りでしてよ〜!! 

 バルカス達のサイレンの購入費用もそこから出しましたし! 持つべきものはちょうどいい金ヅル。はっきしわかんだね! 

 

「あと欲しいのは貴方の様な強い方なんですがね。どうです? ワタクシに雇われません? 

 色々事が済んだらそれなりの地位を約束しますわよ?」

 

「ハッ、ゴメンだね。ボクちんは自由にいたいのさ。誰それのためにーなんて反吐が出る」

 

「ちぇ、残念。でも、ユーバーから解雇されたら何時でもワタクシに泣きついてもらっても構いませんよ? 

 ワタクシ、血筋だとか身分とかで差別しませんもの。強い人有能な人は大歓迎ですわ

 貴方の剣、ワタクシは綺麗で好きですよ。努力した人の剣筋は総じて厚みがあるから」

 

「──────」

 

「じゃ、今日の稽古はこれくらいで。ユーバーの奴がなんかヤケにソワソワしてるので相手をしなければいけませんのよ」

 

 

 

 

 

「おん? どーした、デコース。ヤケに機嫌悪そうだな」

 

「……別にんなことねーよ」

 

 夜、バストーニュにあるユーバーの息が掛かっているバーにてデコースと腐れ縁のトローラが落ち合い、開口一番にデコースに向けて尋ねた。

 

 聞かれたデコースはぶっきらぼうに答え、トローラは友人のその様子が珍しいのか笑いながら隣の席に着く。

 

「なんだぁ、またあのおデコちゃんにだる絡みされたのか?」

 

「……オメーにゃ関係ねーだろ」

 

「そうだな。俺にゃ関係ねぇ」

 

「チッ」

 

 琥珀色の液体の入ったグラスを傾け、強い酒精が喉を焼くような感覚が通るが騎士の強靭な身体にはなんの意味もない。

 

「なぁトローラよ」

 

「おん? どした」

 

 手に持ったグラスを傾け、その表面に映る自分の顔を見ながらデコースは口を開いた。

 

「俺たちが騎士団抜けてからどれくらい経ったか覚えてるか?」

 

「なんだよ藪から棒に。……確か、10年くらいか? 今思い出してもムカつくぜ! 

 身分が低い、血筋がねぇ、出自が悪いって色眼鏡で見やがるボンボンどもに指揮官達!」

 

 元々、2人はとある国の騎士団に所属していた。けれど、そこでの扱いは酷いもので常に色眼鏡で見られていた。

 

 それでも、2人は足掻くことを辞めなかった。

 

 戦術も、指揮も、補給も、撤退判断も学び実戦で2人はそれなりの戦果を挙げた。

 

 しかし、そこまでやってなお周囲の連中は彼らを認めようとしない。

 

 会議室等では他よりも1段低い席へ座らされた。

 

 戦果を上げても『よくやった』の一言で済まされ、失策は『やはり出自か』『所詮は平民か』と吐き捨てられ。

 

 なんてことの無いショボイ戦果を上げた貴族ってだけの無能が持て囃される。

 

 オマケにゃ危険な任務ばかり宛てがわられ、弾除けや捨て駒、露払い扱いは当たり前。戦果は貴族の若君に持ってかれていった。

 

 最終的にはとある作戦で上官の失策によって敗走の責を取らされた時に愛想は尽き果て、デコースとトローラはその場で上官たちを殺戮し騎士団を壊滅させ逃走。傭兵に身をやつし様々な戦場を渡り歩いて今がある。

 

『貴様の剣は卑怯者の剣だ』

 

『汚らしい平民の代わりに私のような貴き血筋が手柄を貰ってやる。有難く思うのだな!』

 

『下劣な血塗られた騎士(シバレース)め! お前なんぞ私たちの為に死ぬのがお似合いだ!』

 

 デコースにとって貴族とは面子とプライドだけ高いだけの何の役にも立たないクソッタレな存在だ。

 

 そう思っていたのに路地裏でたまたま出会い、いつの間にかこの館に居着いた素性の知れない少女イリス・クリィムヒルト。

 

 合間合間の所作に出る仕草などからやんごとなき身分なのは推測できるが、普段の言動だったり様子から余りにもデコースの知るお貴族様とはかけ離れていた。

 

 親しみやすさとも言えるだろう。事実、彼女はこの館に住み着いてからは使用人とも打ち解け良く会話をしている姿を目撃している。

 

 加えて、あの少女との決闘の後にちょくちょく稽古などを頼んできておりデコースは片手間にあしらってはいるが、次の日には己の動きを自分なりに噛み砕いて学習し挑んでくるのだ。

 その学習速度は脅威の一言で今は経験不足なのもあってデコースのフェイント等に騙され簡単にのされてはいるが長く続けばいずれは自分と同じレベルになるだろうことを予見させるほどの才を感じさせた。

 

 デコースは彼女との鍛錬を口では面倒だと言っているが、自分の技を盗み、学習し、少しずつその刃を研いでいく姿に無意識下に何処まで強くなるのか見てみたいという思いがある。

 

 自分が望み、出来ないと思っていた騎士としての在り方。自分の()が誰かに継承されるという感覚にデコースは何処か達成感があったのだ。

 

 そして、高貴な血の者に自分の剣が美しいと認められたことに確かな喜びが。

 

「ホントーにムカつくぜ。自分よりも小せぇ餓鬼に絆されてるのがな」

 

「の割にゃ嬉しそうだな」

 

「うっせ、ほっとけ」

 

 腐れ縁の友人に見透かされ、照れ隠しに軽くど突くがデコースの内心は次の稽古の時は彼女がどんな動きを見せてくれるのか楽しみにして気持ちを敢えて見ないフリをして酒を煽り。

 

「ほんと、ムカつくぜ」

 

 そう呟くのだ。

 

 

 

 

 

「リトルボス、この2人も逃がしますか?」

 

「……バカ言わないで『フェイン』。既にユーバーのやつが全星団に大々的に告知しちゃってるんだから逆にここで逃がしてしまえば私たちは指名手配されて速攻殺されるわ」

 

「ですよねぇ……」

 

「「……」」

 

 イーリスとその隣に佇む長身痩躯の男は悩ましげな目つきで硝子越しに部屋の中にいる2人の存在を見つめため息を吐いた。

 

「にしても、ユーバーの奴もまさかバランシェ公の城に乗り込むなんざ思いもしませんでしたよ」

 

「ホントにね……。愚かだとは思ってたけど、まさかあそこまでなんて。一応聞くけど公にお怪我は?」

 

「っす、バルカスの兄貴と『ルベル』が確認した限りでは手荒なことはされてません」

 

「っそ、それは良かったわ……はぁ、予定よりも繰り上げる必要があるわね。

 機を見て彼女たちを保護し、師匠に預けた後にここを逃げるわよ」

 

「うす、サイレンの収納と各資産の回収をしときます」

 

「ええ、お願い。…………クローム・バランシェ最後の作品、アトロポスの姉妹か」

 

「バランシェ・ファティマなんて初めて真近で見ましたよ俺。雰囲気っていうんですかね普通のファティマとなんか違いますね。いや、別に『リュカ』達のことを文句なんて言ってませんよ?」

 

「それについては同意するわ。あの子たちには何か普通じゃないナニカを感じるもの」

 

 イーリスはそう言うと視線を2人のファティマへと向ける。

 

 どちらも椅子に座り、静かにしているが身体から滲む雰囲気は浮世離れし何処か神聖さを感じる高貴さがある超常的な感覚。

 

『ラキシス』と『クローソー』

 

 イーリスの友アトロポスに次ぐクローム・バランシェが生み出した最後の作品が今自分の前にいる。

 

「ほんと、貴方の言った通りになったわねアトロポス」

 

 友人が最後に自分に頼んだことがこんな早くに訪れるとは思わなかったイーリスはため息とともに吐き出した。

 

 けれど、投げ出すつもりはない。友人の妹たちなのだ見捨てるつもりなんてないし、マイトとして目の前の子供が醜悪な存在の毒牙にかかるなんて絶対に許すものか。

 

「フェイン、他のふたりに回収準備忙しといて」

 

「うす。ボスの騎体は?」

 

「フルゴールはまだ動かせないわ。完成度も凡そ9割程度だから最後まで調整を優先させたいんですもの」

 

 それに加えてもしかしたら戦闘になるかもしれない、という言葉を飲み込みイーリスはもう一度視線を彼女たちに向ければ直ぐに視線を切り、配下を連れて部屋を後にする。

 やることは多い、準備も終わってない。けれど時間は待ってくれない。

 

「でもやることはやらないといけないわ」

 

 

 用語解説

 

 ・フェイン・ベリルト

 

 年齢:地球換算で24歳

 

 所属:イーリスフィア直属騎士団(現状3人)

 

 バルカスと同じ出身地であり、彼とは幼馴染の長身痩躯の男。

 素早い身のこなしと搦手で敵を翻弄する戦い方を得意とし、イーリスから与えられたサイレン軽装型を駆り惑星ジュノーのコーラス戦争にて多数の戦果をあげことと、その特異な武器の戦い方から後に『蛇腹剣(スネーク・ソード)』の異名で呼ばれることとなる。

 

 

 ・リュカ

 

 

 S型/ファクトリー製

 

 

 クリアランス:VS1

 

 

 マスター:フェイン

 

 

 所属:リガリエッテ公国

 

 

 スペック:戦闘能力(B2)・MH制御(B1)・演算性能(B1)・肉体耐久(B1)・精神安定(B1)

 

 

 モラードがアカデミー時代、製作に関わったファクトリー製ファティマ。

 ペリル同様にユーバーの毒牙に掛かりかけてたとこを保護し、試しにイー様ガ、フェインと引き合わせマスターと認識し主従関係に。

 

 手先が器用なフェインに髪をセットされるのが気に入っており、ちょくちょく髪型が変わってるのが目撃され、ここ最近のブームはお団子ヘア。




いよいよ原作突入。
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