FSS─翡翠の雷光─   作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!

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021:非常識バトル。勝った方がさらに非常識になるだけです

 光剣を両手で握りしめ、突撃した姿勢で固まるフルゴール。足元には首から上を貫かれたことで地面へ擱座したデヴォンシャが。

 

 コクピットの中で荒い息を吐き、何度も呼吸を繰り返すイーリスは滝のように流した汗を拭わずゆっくりとコクピットの中で右腕を空高く掲げ────

 

「決着ゥゥ──ーッ!!」

 

 雄叫びを挙げ、デコースに勝利したことを高らかに宣言する。

 

「はぁぁぁぁあっ……っっっっかれましたわ〜〜〜!」

 

 デコ助は強いとは知ってましたが、まさかフルゴール相手にデヴォンシャであそこまで粘られるとは思いもしませんでしたわ!! 

 

『つ、強かったですう……』

 

「……お疲れ様、レイラ、フルゴールも。初陣でよくやってくれましたわね」

 

『えへへ〜、レイライン頑張りました! フルゴールも沢山頑張ったって言ってますぅ〜』

 

 両手を大きくバンザイして喜びレイラが微笑ましく思いつつ、ワタクシはそっとコクピットを撫でて頑張ってくれたフルゴールを労います。

 

 けれど、喜びは程々にしてワタクシは急いでソープ様たちの方へとフルゴールを向けました。助けに来ておいて捕らえられました〜、なんて結末はノーセンキューですわ! 

 

「? …………なんだあの金ピカ!?」

 

『わー、ピカピカしてますぅ……』

 

 なんとそこに居たのは頭からつま先までまっきんきんのピカピカ主張の激しいモーターヘッドがそこにいたではありませんか! 気のせいかな〜? って戦闘後のアドレナリンを過剰分泌した脳が見せた幻覚かと思い、瞼を擦り2度見しましたけどマジでいますわね! 

 え、あれモノホンの金を使ってるの? そこんとこどうなのレイラ? あ、解析からマジで金の反応が出てるのね……やばぁ(恐怖)

 

 てか、なにあの騎体!? いつからそんな所にいましたの!? うわっ、足元に上半身と下半身が真っ二つになってるトローラ様のバルンシャがいるじゃありませんこと〜〜〜!!? 

 

『そっちは終わったみたい、かな?』

 

 ワタクシが目を離してる間に起きすぎてる事実にフリーズしていると、金ピカモーターヘッドから通信回線が開けばそこからソープ様のお声が聞こえてきましたわ。

 耳が孕みそうになる美声を聞いて意識が戻ったワタクシがモニターを見れば、表示されたウィンドウにソープ様とラキシス様のお顔が映ってたんですの! 

 

「うぇ!? ソープ様とラキシス様!? まさかその金ピカに乗ってるんですの!!? 

 え、マジで!!? 建造費用幾らかかったのか教えて貰っても宜しくて!?」

 

『あはは、期待通りの反応ありがとう。コイツの建造費用はちょっとA.K.D.の財政が傾くレベルとだけ言っておこうかな』

 

「(こいつ正気か? という目)」

 

 この人正気ですの? ワタクシのフルゴールも大概とんでもねーくらい金かけてますけど、ソープ様はそれ以上にやべーですわね!! 

 

『お、おのれ……化け物どもめェ!! バスター砲じゃ! ドーリーのバスター砲で奴らを吹き飛ばせぇ!!』

 

 ワタクシが戦慄しているとユーバーの叫び声が聞こえました。というか聞き逃せないセリフがありましたわね。今、バスター砲とか言いました? 

 

『ッ、お母様! バスターロックです!! あのドーリー、私たちにバスター砲を撃つ気ですよぉ!?』

 

「ふぁ!?」

 

 あの戦争とかじゃまず持って使われないヤツで、撃ったら(悪い意味で)歴史の教科書に乗ると言われてるトンデモ破壊兵器のバスター砲を!? 

 

 バスター砲を知らない人に簡潔に説明すると、口径がいちばん低いものでも富士山程度を消し飛ばし、最大のものなら惑星すら破壊可能のヤベー奴でしてよ! 説明終わり!! 

 

『なぁに、心配いらないさ。こっちにもあるからね』

 

「モーターヘッドにバスター砲積んでるとか正気かオメー!?」

 

『バレなきゃ問題ないから!』

 

 そーいう問題じゃねー!! 

 ヘルマイネのパーツ搬入作業の時もヘルメットや作業着を来てない時点でうすうす感じてましたけど、ソープ様って一般常識をお持ちでない!? 

 

 目の前で繰り広げられる非常識のオンパレードにワタクシのツッコミ止まりませんわ〜〜〜!!! 

 

『当たれぇええ!』

 

「マジで撃ったぁぁあ!!?」

 

 黄金のモーターヘッドの構えたランチャーからバスターエネルギーの光芒が放たれる。

 それとほぼ同じタイミング、同じ射線、同じ威力。互いに互いを消滅させんとする滅びの光がぶつかり合った。

 

 この世界に存在する物質の悉くを分子レベルにまで分解する極光は互いを食い潰さんと混ざり合い、巨大な円形のドームへと膨れ上がる。

 

 空高くまで広がり、放たれた光は一時的にアドラーの空を白夜へ染め上げた。

 

 遠く離れたバストーニュの人々は見るだろう。神の裁きと思うほどの光、恐怖、衝撃を。

 

 宇宙創造の爆発の如き光は空間を引き裂き、虚空へと吸い込まれ消えていく。

 

 そんな現実離れした光景を間近で目撃したワタクシはレイラの報告に意識を現実へ引き戻されるのでした、

 

『ッ! 同規模のバスターエネルギーの相殺による対消滅を確認!』

 

「ッ、フルゴールの前方に防壁を展開!」

 

『最大出力でもうやってますぅ!!』

 

 フルゴールの肩部装甲へ内蔵されているバリア発生器からこれから来るだろう余波から騎体を守る為の障壁を展開。その数瞬後に途轍もない暴風がフルゴールへ襲いかかりました。

 

「あばばばばば!!?」

 

『目、目が回りますぅううう!!?』

 

 障壁で軽減されてるとはいえ、えげつない振動がコクピットを揺らしシートベルトなんてないファティマ・ルームにいるレイラはきっとワタクシよりも酷い状態でしょうね。

 

 ミキサーにかけられたかのような状態がおよそ1分ほど続き、収まった頃にワタクシは目の前の光景に絶句してしまいます。

 

 目の前の大地には巨大なスプーンでくり抜かれたのかと思うほど巨大なクレーターが出来ていたのですから。

 

 そして対角線上の位置には健在のエアドーリーとユーバーのヘルマイネが。

 

『も、もう1発だ!! 幾ら化け物でも連射など出来なかろう!!』

 

『ッ、不味いな。さっきのでコイツの回路が焼き付いてる……もう一度打たれたら相殺できないぞ!』

 

「ちょ、それヤバイんでなくて?」

 

『マジヤバですぅ! 早く逃げちゃいましょうよぉ!!』

 

『マスター、先程のバスターランチャーの過負荷でK.O.G.の駆動系にエラーを多数確認しました!』

 

『……ひょっとして絶体絶命?』

 

『……ですね!』

 

 マジですのー!! えぇ!? レイラ、テレポートして逃げれない? ……あ、無理? 

 デコ助との戦闘プラスさっきの余波を防ぐのにフルゴールのエネルギーの大半を使ったせいで強制冷却に入ったから出来ない? 

 

(DEATH)わ!!?」

 

 っべー、ですわ! マジでっべーですわ!! あぁ、エアドーリーのバスターランチャーにまたエネルギー充填され始めてますわ!! 

 

『マスター、マスター』

 

「なに!?」

 

 どうしようとあたふたしてるとレイラから声をかけられましたわ。

 

『エネルギーチャージ中の今ならあのエアドーリー鹵獲できませんか?』

 

「…………あ」

 

 言われるが否やワタクシは即座にソードスピアーの位置を確認。レイラによってアレゴリカ・ユニットのチャージは幸いなことに済んでます。

 

「ソープ様!」

 

『ん、なんだい?』

 

「ちょっと行ってきますわー!!」

 

『え、それってどういう意味────

 

 返事を待たず、アレゴリカ・ユニットを稼働させ磁力による反発を利用した高速移動を実行。

 道中地面へ突き刺さっていたソードスピアーを回収し、フルゴールのエンジンと直結。

 強制冷却状態でんなことしたら完全にオーバーフローでシステムダウンしますが、背に腹はかえらねぇですわ!! 

 

『A.D.R.ソードスピアーチャージ完了!』

 

 ソードスピアーの刀身部分に翠のプラズマが纏わり、フルゴールの全身からは同じように稲妻が迸る。

 切っ先はエアドーリー下部のバスター砲ユニット。

 

『目標チャンバー内にバスターエネルギー充填確認、発射までおよそ5秒!』

 

「上等!!」

 

 アレゴリカ・ユニットが変形し、突撃形態へ移行すれば充填されているエネルギー全てを推進力へ! 

 

 レイラインによる進路補正OK、肩部バリア機構による障壁確認、電磁レール構築完了!! 

 

 閃光

 

 貫通

 

 そして遅れて衝撃と雷鳴

 

『なっ、あぁ……!!?』

 

『わーお、すごい速さだ。星団最速ってのもふかしじゃないかな?』

 

『計測速度……光速の3分の1!? 殆ど稲妻です!』

 

 その場にいた全員の目にはフルゴールが一際強く光ったかと思えば次の瞬間にはエアドーリーのバスター砲ユニットがごっそりと円形にくり抜かれていたという光景になっていた。

 

 ユーバーは理解が及ばない光景に思考停止し、ソープは面白そうに、ラキシスは驚愕を顕に。

 

「さて、まだやります?」

 

 エアドーリーの後方へ着地し、フルゴールの中で行われたワタクシからの問の返答は迅速な武装解除でした。

 

「くそ、くそくそくそぉ!! 全てがご破算だ!! 貴様らのせいで!」

 

「わー、この人喋れるってすごいですぅ」

 

「ええぃい、ファティマ風情が棒で突っつくでないわぁ!!」

 

「ええ、えぇ、既に座標送ってるから輸送艦で降下してきてちょうだい。

 まだペイロードに余裕があるでしょう? 下半分がゴッソリ削れてますけど、主要部分は無傷ですから直せば使えるでしょうからね。じゃ、なる早で頼みますわー」

 

 通信を終え、端末を懐へしまってワタクシは足元へと視線を向けます。

 そこには『パラライズ・ワーム』によって騎士の行動を無効化する代物で拘束されているユーバーと芋虫みたいに跳ねるユーバーをそこらで拾った小枝でつんつんするレイラが見えました。

 

「騎士も喋れなくなる代物なのに怒鳴ることが出来るなんてガッツありますわね」

 

 脂肪の厚さで効きが悪いのかしらね? 

 

 戦闘が終わり、離れた場所には着陸したエアドーリーとユーバーのヘルマイネが鎮座しています。

 近くには大破したバルンシャとデヴォンシャが転がり、デコ助、トローラの2人は手当をされた状態で放置されてもいわすわね。多少の骨折と打撲はありますが、どちらも命に別状はありませんわ。

 

「さて、ユーバー・バラダ大公閣下。取引しましょうか」

 

「取引だと!? そんな物するわけがなかろう!! 早くこの拘束を解け! さすれば命だけは助けてやるぞ!?」

 

「この状況でそこまで言えるのはある意味大物ですわね。……けど、これを見てもそう言えるのかしら?」

 

 ワタクシがユーバーに見やすいように顔の近くに端末の画面を置きます。

 

「な……!!?」

 

 そして、画面を見た瞬間にユーバーの顔が赤色からだんだんと真っ青に変わり、挙句には血の気の引いた土気色にコロコロ変わります。この間なんと1秒以内。笑えますね。

 

 ユーバーがそのようになった原因はLIVE配信されてるニュースサイトでした。テロップには匿名でユーバーの悪事の証拠の数々が提供されたと書かれ、現在進行形でヤサ入れされてる最中の動画です。

 

「不正、汚職、脱税、密輸、密売、人身売買etcetc……このまま解放しても貴方に待ってるのは良くて残りの人生を冷たい牢獄で過ごすか、最悪絞首台がいい笑顔で待ってますわよ?」

 

 ニコニコと微笑みながら告げれば、ユーバーは面白いくらいに汗を流しガタガタと震え始めました。あらあら、そこまで寒かったかしら? 

 

 もはやユーバーに退路はなく、待っているのは終身刑か死刑かの二択。

 いや、獄中自殺に見せかけた処刑も有り得ますから実質死という未来しか残ってませんわね。

 

 コイツの持ってる資産や裏金の類はほとんどワタクシが回収してますから賄賂も使えませんし。そのことを告げたら動かなくなってしまいましたわよ。

 

 へいへーい、どーすんのー? ワタクシと取引するー? 

 

「わ、分かった……取引に応じる……」

 

「話が早くて助かりますわ〜! じゃ、貴方今日から私の下僕ね。祖国へ凱旋した暁には諸々の財政やら政務やら諸々手伝ってもらいますから。

 拒否権は無いのはご存知ですわよね? きちんと仕事をするなら、綺麗な戸籍やらなんやらを用意してあげますわ」

 

 ユーバーは俗物のロクデナシではありますが、商人としてはホンモノです。

 首輪をつけて変に欲を出さないようにすれば使えますわ。そこら辺の手綱を握るのも女王としての腕の見せどころかしらねぇ。

 

 これからの事を考えていると、不意に頭上に影が差します。思わず見上げればそこには空を覆うほど大きな宇宙船がいたではありませんか。

 

「わー、おっきー船ですぅ」

 

「そうですわね〜って、ちがーう!」

 

 呑気に言ってる場合ですかおバカ! あの船はA.K.D.を牛耳る天照王朝本家の天照家が所有し、かのミラージュ騎士団旗艦『ベル・クレール』ですわの!! 

 なんでそんなものがこんな場所に…………いや、有り得そうなのがいましたわ!! 

 

 ワタクシは弾かれたように首を動かし、黄金のモーターヘッドへ向けた瞬間に息を飲みました。

 ラキシス様に寄り添うように抱いていたソープ様の髪は銀をそのまま鋳溶かしたかのような白銀へ、瞳は血のような紅玉を思わせる真紅へ変わったのです。

 

「な、な、な、なぁ……!!?」

 

「イメチェンですかぁ?」

 

「おっと、薬の効果が切れたみたいだね」

 

 ソープ様……いな、いな、いな!! そこにいるのはその場に佇む存在こそはイースター太陽系の惑星「デルタ・ベルン」の超巨大統一国家アマテラス・キングダム・ディメン(A.K.D)の国家元首であり、グリース王国天照朝の第84代皇帝。

 

『アマテラス・ディス・グランド・グリース・エイダスフォース』

 

 またの名を皇帝アマテラスその人。

 

 え、嘘、まじ? ここ数日の間に交流したソープ様に割かし不敬というか失礼というか、半泣きになるまで説教したんですが!!? 

 

 えー、やだー、こわー……不敬罪で処されたりしませんわよね? 

 

「君はワタシをどんな人だと思ってるんだい?」

 

「1000年近く生きてる妖怪?」

 

「んー、ナチュラル不敬罪」

 

「あ、やべ。今のなーし!」

 

「手遅れだと思いますぅ……」

 

 黙らっしゃい! 

 

「ふふっ、君とパートナーは退屈しないコンビだ。色々と話もしたいところだけれど、ここでお別れかな」

 

「イリス様、色々とお世話になりました! ご恩は忘れません!!」

 

「────ええ、はい。さようならお二人とも。どうか末永くお幸せに!! 

 そして、ラキシス様を泣かせるようなことしたらフルゴールに乗ってぶっ飛ばしに行きますからね〜!!」

 

「さよーなら〜」

 

 ベル・クレールに格納される黄金の騎士(K.O.G)に寄り添う2人を見送り、ワタクシは大きく手を振ります。

 ベル・クレールはあっという間に遠くなり、見えなくなってしまいました。

 

『お嬢! 迎えに来ましたぜ〜!』

 

 それと同時、空からワタクシの母艦が降下しバルカスの声が響き渡ります。

 大量の物資を運搬することを目的とした大型輸送船のソレはユーバーの所有していた資産のひとつで、丁度いいからと所有者の名義をワタクシにこっそり変えておいた経緯があったりしますわ。

 

「さて、と。じゃあワタクシたちもトンズラこきますか!」

 

「ですぅ〜」

 

 その前に戦果の回収♪ 回収♪ 

 

 大型エアドーリーに無傷のヘルマイネ、その他人員多数! ひゃっほい!!!




ペーパープランだけど、フルゴールにもバスターランチャーをオプションとした装備案があったりなかったり
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