FSS─翡翠の雷光─ 作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!
「───と、言うわけで貴団の騎士団へ入団することを希望した次第です」
「はい、ありがとうございます」
「合格通知のほどは追ってご連絡致します。本日は御足労のほどありがとうございました」
ペコリと頭を下げ、退出を促す。騎士の男は確かな手応えを感じてるのかその足は軽やかで静かに退出し扉を閉じた少しあとに。
「ダメ、不合格」
「ペケですね〜。んー、今ので53人目ですかぁ……理由の程は?」
「面接の最中、分かりやすく七音剣を構えたのに気づきもしなかったからよ」
建物の一室、そこでは部屋の中央に置いたテーブルとふたつの椅子にワタクシ、隣にはレイラが座っており私たちと向かい合うようにして机を挟んでひとつの椅子が置かれてます。
「はー、カステポーに来てはや1ヶ月……ろくな人材が来ませんわね」
「お母様の基準が厳しすぎるだけな気もしますぅ……」
「これでも大分甘く見てるわよ。はぁー、デコトラコンビに逃げられなかったらこんな面接なんてしないで済んだのに……」
ため息を吐いてワタクシが思い出すのはひと月前の出来事───
「へぇい、デコトラコンビ! 飯の時間ですわー!!
この終身雇用契約書に署名しない限りワタクシがおはようからおやすみ(子守唄付き)ついでにオマルの看病してやりますわよー!」
アドラーを出発し、補給のために寄ったボォズの宇宙港で係留中の大型輸送船に割り当てられた船室に
2人ともバストーニュでの戦いでそこそこ大怪我を負ってはいましたが、命には別状はありません。しかし、ユーバーの手下ではあった2人は指名手配をされてるでしょうから放っておいてはお縄になって刑務所にぶち込まれてしまいますわ。
歴戦の騎士をむざむざ失うようなことをするワタクシではなく、当然ワタクシの配下にしたいので意識の無い内に輸送船へ担ぎ込みまました。
そして目を覚まして開口一番に『ちょっとワタクシの部下にならない?』と尋ねたのですが、返答は朝食のプレートでした。
即座に腕につけてたパラライズ・ワームの出力を最大にして死にかけたミミズみたいにしてやりましたがね。
んで、日毎にワタクシが食事を持って行っては勧誘を繰り返しては返答は罵詈雑言にワタクシが仕返しでデコトラコンビに赤ちゃんプレイしてやるのを繰り返すこと数日。そろそろ追い詰めまくってノイローゼになってくる頃を見計らって解決法の契約書を提示してサインさせる手筈なのですが────
扉を開けた瞬側に見えたのは荒れ果てた室内に、血みどろのベッドの上には皮膚がこびり付いたパラライズ・ワームが転がっていたではありませんか。
そこにいるべき2人はおらず、壁には『
「に、逃げやがったアイツら……!!」
エマージェンシー、エマージェンシー!! デコトラコンビが逃げましたわー!
直ぐに医務室の固定電話で艦橋へ連絡し、艦内アラートが鳴り響きました。しかし、そのあと監視カメラ等を確認すれば既に2人は輸送船から脱走済み。
急いで近辺の記録をレイラ達にハッキングし総洗いしてもらいましたが、最後の記録に映るのは宇宙港の人混み紛れてどこかへ消える姿でした。
カステポーは広大です。その中から特定の人物を探すなんて困難にも等しい為、ワタクシは捜索を敢え無く断念。
仕方なく別の人材確保のために騎士たちが見る電子掲示板に人員募集の求人を出し、カステポーにある自由都市のうちの一つ、『ヴァキ市』街中にある適当な空き家を借りて面接会場とし連日連夜応募してきた野良の騎士を面接して今に至るといった感じです。
しかし、先程のようにきちんと面接をしに来るのはいい方ですが殆どがワタクシを見て侮り、質疑応答をろくにしないで『いいから俺を雇えよ。働くぜ?』って感じで、それでもきちんと面接をして気になった箇所を細かく聞いたら殆どが嘘か大分盛ってるのが殆ど。
とりあえずその場は当たり障りない言葉で帰ってもらい、後日にお祈りメールをしたら乗り込んでくる馬鹿が多いのなんの。
おそらくはワタクシのような小娘がそもそも雇い主ってのが気に入らないのに加えて、あの場にはレイラとワタクシしかないないから簡単に制圧できると考えたのでしょう。
まぁ、あっという間にワタクシがボコって軒先に蹴り出してやりましたがね。てなことで、粗忽者が多く連日連夜軒先にはワタクシがボコした連中が転がってる有様。
んで、ここはカステポー。強い奴がいると聞いたら手合わせをって感じの頭騎士やろうも多く、こちとら人材目当てで面接してんのに『どーもこんにちわ。死ね!』って斬りかかってくる戯けも出てくる始末。
流石にコレにはワタクシも人材確保所ではなく、道場破りまがいのことをしてくるカス共にブチ切れ千人斬りをする勢いで勝負を申し込んでくる馬鹿共をぶちのめし、裸にひん剥いてケツに光剣の柄をぶっ挿し髪を刈り上げ軒先に吊るしてやりました。
それが効いたのか馬鹿共の勢いも落ち着いて面接をすることが出来るようになりました。ですが、来たとしてもワタクシのお眼鏡に叶うような人は来ずに無為に日々が過ぎていきます。
「はぁぁあぁ〜……どーしたものかしら」
「随分と荒れているなお嬢さん」
「ろくな奴が来ないんですもの。こうもなりますわ! マスター、カルーアミルクもう一杯!」
「君まだ未成年だろ? ほれ、モクテルバージョン」
「飲まなきゃやってらんねーですわ!」
カステポーのヴァキ市にある騎士御用達のバー『ワックス・トラックス』にてワタクシはカウンター席に座りカルーアミルク(ノンアル)をかっくらっておりますのよ。理由? 見てわかるでしょ、ストレスですわ!
「ったくよー、ざけんじゃないわよ! 雇って欲しかったら相応の実力と品性を見せなさい!
今どき腕だけで雇おうなんてねぇんですのよ!! マスター、牛丼1つ!」
「ここを何屋だと思ってんだ?」
「ありますよ」
「あるのかよ……」
ウェイターさんが湯気の登るクラシックな店内には似つかわしくない丼に盛られた牛丼を差し出してきました。
「どうぞ」
「うーん、75点!」
普通の味ですわね!!
「
「しかも出来合いなのかよ」
そんな声を漏らすのはこのバーのマスター『ジョルジュ・スパンタウゼン』といいます。
今の彼はここのしがないマスターではありますが過去には『イオタ宇宙騎士団騎士団長』という経歴を持っており、『宇宙の戦神』という異名を轟かしたことのある実力者ですわ。
その隣でワタクシへレンチンした牛丼を提供したのが彼のパートナー・ファティマで世にも珍しい男性のファティマ『スクラープ』
彼はここのバーのドアマン兼ウェイターもやってるんですの。
「ねえマスター、なんかいい人材紹介してくれませんこと? この美少女の顔に免じておねがーい!」
「昼間っからカクテル(ノンアル)をかっくらって牛丼を掻き込む美少女なんてこっちから願い下げなんだが?
というより、君のお眼鏡に叶うような存在がいたら私が既にイオタ騎士団へ紹介してるとも」
「チッ、使えませんわね。その髭は飾り? 髪を生贄に髭を生やしたのかしら?」
「ナチュラルに失礼なこと言うな君は……あと、次にハゲっていったら出禁だぞ」
(既に手遅れでしょ貴方のマスター?)
スクラープに向けたワタクシのアイコンタクトの答えは曖昧な笑みでしたわ。
ジョルジュ様は新聞紙を開き、ニュースは目を通しながらも徐に口を開きました。
「このままだと君に居座られそうだからな。1人、君のお眼鏡に叶いそうな人物を教えるとしよう」
「彼女の名は『ナイアス・ブリュンヒルデ』……元ノイエ・シルチスにして天位を約束されていた逸材だ。
しかし、バキン・ラカン帝国での授与式で騎士数人を斬り殺したことで与えられるはずだった天位を蹴り、ノイエ・シルチスから放逐された女騎士……」
新聞から目を上げ、ジョルジュ様はカウンターに置かれていたメモ用紙の表面へとある住所を書き込み、指先で弾いてみせるとワタクシの手元へ運ばれてきます。
「そんな彼女が今、傭兵騎士団の頭目となってこのカステポーへ滞在している。
どうだね、君のお眼鏡にかなうと思うが?」
「グッド! これ、お代! 釣りはいらねーでしてよ!」
お財布から数枚のお札を取り出し、カウンターへ叩きつけてワタクシはその場からダッシュ! 待ってなさいナイアス・ブリュンヒルデ! 絶対スカウトしてみせますわ〜〜〜!!!
オホホホホホ〜!! と高笑いと共に慌ただしく店から出ていく少女を見送ったジョルジュはため息を零す。
彼女は数年前は定期的にカステポーに現れては大量の資材や物資を購入していき、街中の騎士をぼこしてはフラりと消えるのを繰り返す存在としてジョルジュは密かに関心を向けていた。
口調、性格、行動は奇天烈の極みのキワモノだが所作から高貴の育ちが身分を隠しているのは簡単にわかった。そもそもカステポーという地はスネに傷を持つものが多数いる。彼女もそのひとりだと。
しかし、そんな彼女の目撃もある日を境にパタリと消えてしまう。てっきり死んだかと思いもしたが、数年後に再び……今度は巨大な輸送艦を伴ってカステポーへ現れたのだ。
その少し前にアドラーのバストーニュでバランシェ公の最新作のお披露目がご破算となった上に領主の汚職が判明し、逃亡のために事故死したというニュースもあったりしたが関連性は不明である。
そんな彼女が騎士達が情報交換を目的としたアングラなネット掲示板で求人を出したのだから注目が集まらないわけがない。
なぜなら、彼女の人相がつい最近の星団ニュースで報道された新規精鋭のマイト……しかも10本線をもつダブルマイトその人なのだから。
フローレス・ファティマ『翡翠のレイライン』と『雷光の
以上の作品を生み出したダブルマイト、イリス・クリィムヒルト。かの四大マイトの一角モラード・カーバイトの直弟子であり名工のMHマイト、ルミラン・クロスビンと共同で作り上げた最高傑作ファティマ・エストとバッシュ・ザ・ブラックナイトへ搭載された特殊システムを一人で再現してみせた年若い天才。
『クローム・バランシェ』
『モラード・カーバイト』
『スティール・クープ』
『プリズム・コークス』
現在の星団に名を轟かす四大マイトに彼女を加えた五大マイトとなった人物が人材を探すというの情報は即座に騎士たちのコミニュティに出回る。
案の定、連日連夜彼女が面接会場としている間借りしている空き家へと押しかけた。
しかし、そのほとんどが彼女のお眼鏡に叶わずに追い返されるか、彼女の機嫌を損ね軒先に全裸で吊るされる愉快なオブジェになるのが最近の名物とも言えよう。
彼女に雇われればもしかすれば彼女の制作したモーターヘッドやファティマを与えられるかもしれない……そんな夢を見て野良騎士たちが大挙してるが、当の本人の様子を見る限りお眼鏡に叶うような者達は今のところ居ないらしい。
実際、彼女はマイトではあるが騎士でもある。しかもそんじょそこらの騎士では相手にならないほどの実力を持ち、話を聞く限りその実力は天位クラスだとか。
「まったく、本当にこの土地は退屈しないね」
ジョルジュは呟き、彼女のお代を回収しようと見ると───
「……端額ピッタリじゃねーか」
きっちりお代分の金額を見て呆れたような声が店の空気に解けるように消えるのだった。
この時期はカイエンに肩砕かれてた頃ですしいるかなー?と思ったのでナイアスを登場させます。
彼女、傭兵時代どんな騎体使ってたのな誰か教えてクレメンス。