FSS─翡翠の雷光─ 作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!
027:王族とは国の奴隷の別名
星団歴2989年、サザンド太陽系第三惑星ジュノーにて大国コーラス王朝へ小国ハグーダ帝国及び同盟国のリガリエッテ公国が宣戦布告。
星団の人々は誰しも国力の差を考えず、大国へと噛み付いた小国たちが容易く蹂躙されると予想していた。
しかし、彼ら彼女らの予想を裏切るようにして2カ国はコーラスの国土を侵略し、擁する騎士団を幾つも壊滅させた上に複数の都市を占領してみせる。
この番狂わせとも呼べる戦況に驚きを見せたのは何よりもコーラス王朝であった。
確かにハグーダ帝国は近年力を付け始めた軍事大国ではある。しかし、その規模はコーラスが吹けば飛ぶような国力しかない。加えてリガリエッテ公国についても歴史はあるが、軍事力はハグーダよりも小さい。
そもそも、リガリエッテ公国においては次期女王と呼ばれているイーリスフィア第1王女の方針も相まって国力の増加に注視していた筈。
それがどうして遠く離れた縁もゆかりも無いハグーダ帝国と同盟を結び、あまつさえ古くから親交あるコーラスへ宣戦布告するという狂ったとしか言えないことをしでかしたのか市井の人々は首を捻るしかできなかった。
しかし、人々は知らない。リガリエッテ公国を統べる王家がクーデターにより離散し、王朝へと亡命してきたことに。
既にフィルモア帝国の奸計により、ハグーダを挟んで貴族や軍部を唆し裏から支配されていることに。
「戦線は悪化の一途を辿ってますわねェ」
「ジュノーのパワーバランスは知らないけど、ハグーダってのはそんなに強かったのかい?」
「んー、ぶっちゃけ軍事国家ではありますがコーラスと比べたら月とすっぽんレベルですわよ。
マグロウは悪い機体ではありませんが……コーラスの旗騎である『ベルリン』には劣りますわねぇ。まぁ、どちらもワタクシの設計した騎体に劣りますがね!」
輸送船の艦橋にて中央モニターに投影された星団ニュースを艦長席に座っね眺めながら隣の副長席に座るナイアス様へと答えます。
「にしたって、ワタクシの居ない間にハグーダと同盟結びやがって……周辺諸国との取引が全てパーですわよ!」
てか、なに宣戦布告してんじゃい!! これじゃ祖国を取り返してもコーラスから目の敵にされるんじゃなくってぇ???
「ほーん、大変だねぇお姫様」
「他人事だと思ってぇ……!!」
「実際他人事だしねぇ。まぁ、給料分は仕事するから安心しなよ」
「そこは頼りにさせていただきますわよ!」
クバルカンとの取引で奪還する時に大隊規模の軍を派遣してくれるます。けれど、それまではワタクシとナイアス様の戦力を含めて二個小隊規模。
ワタクシがクーされる前のリガリエッテ公国の軍事力は稼働騎体数は凡そ1000と200弱程度。そのうち予備機200の本土防衛の為に残しておく割合と派兵してる割合を考えれば本国に300騎いればいいほうかしら?
クーされた後に増産されたとしても2000はいかないだろうし……
てか、ニュースの映像とかで確認できた騎体の中にワタクシが設計した『ローカスト』がおりませんことぉ???
いや、まぁ次期量産機としてα騎、β騎とテストを諸々終えて順次量産体制を整えてたんだから完成してたら投入はされてるでしょうけども! ベルリン相手に1歩も引かない戦いを繰り広げて生みの親として嬉しいですけども!!
けど、納得できるかどうかは別の話ですわよぉ!!??
いやぁ、それにしてもクロエ達がスリービースト達を持ち出してくれてて助かりましたわぁ。あの子達までこの戦争に投入されてたら流石にコーラスも終わってたでしょうし。
……既に割とズタボロな状態からは目を逸らしますが。けど、逆にチャンスと捉えましょう。
この戦争にワタクシが参戦し武勲を上げさえすれば戦後、コーラスからの賠償責任などお目溢しをして貰えるかもしれません。
幸いにもコーラス3世様は我が国の事情を理解してますし、お母様とも御学友の間柄。どーにかお目通りを叶い、とにかくいい感じに軟着陸させなければ!
あぁ〜……! ワタクシ、中学生なのにやることが多すぎますわ!!
義務教育終了済じゃありませんことよ〜〜〜???
「このままじゃ過労死する未来しか見えませわね!!」
「働き者だねぇ」
「王族というのは国の奴隷の別名でしてよぉ〜〜〜!」
「なんかヤケクソになってない?」
「空元気ですわ!」
おほほほほほほほほ!! ワタクシが高笑をしていると。
「おう、姫さんもうすぐ降下ポイントだ。一応言っとくが、ショックに備えとけよ」
操舵をしていたダンディなお髭にパイプを加えたThe船長といっと風体のおじ様が言ってきました。
彼は元がユーバーの持ち物の輸送船の船長だったのですが、今はワタクシの配下として雇われていますの。当初は反発もあったかと思ったのですがどうやら元々ユーバー自体嫌っていたらしく、あっさりとワタクシの配下に着くことを了承してくださった方です。
見た目はイカつく無愛想ですが、長年船乗りとして舵を握ってきた経験は本物のベテランですの。彼の指揮の下船員の方々はよく働いてくれています。祖国を奪還した暁には彼らを正式に召抱えたいですわねぇ!
ともあれ、ワタクシは艦橋から見える緑の多い惑星……ワタクシが生まれ育った祖国のあるジュノーが見えました。
「なんというか感慨深いですわねぇ」
クーデターにより国を追われ、身分を隠し、名を偽り、いつか帰ることを夢見て日々を過ごしてきた。そして、今この瞬間に祖国を奪還せんとして故郷へと帰ってきた事実にワタクシの胸中は不思議と穏やかです。
楽しみですわねぇ、ワタクシを追放してくださったお馬鹿さん達の首をこの手でたたっ斬る瞬間が……
うふふ、ふふ、うふふふふふふふふ……!!
「アンタのマスター乙女がしちゃいけない顔して笑ってるけどいいのかい?」
「長年の苦労が実を結んだからか、ココ最近お母様テンションがおかしくなってるんですぅ。そっとしておいてあげてください〜」
「大変なんだねぇ」
「です」
なにやらレイラとナイアス様が和やかに会話をしながらお茶してますわね。ワタクシにも熱々のお紅茶をくださいな!
てなことで惑星の大気圏へ降下しながらワタクシ達は優雅にお茶会が始まりました。
「お、このスコーン美味しいね」
「マスターの作るお菓子はとても美味しいんですよ〜」
「そう言って食べすぎてファティマなのに体型維持だらしなくなってるの知ってるのよワタクシ?」
ムニッとレイラの脇腹を摘みます。本来ファティマというのは皆同じ体型ですが、レイラは他の子たちよりも食い意地が張ってると言いますか、モノグサといいますか、少々ふっくらしてますの。
「あるのがいけないんです! あるのがいけないんです!!」
節度を守りなさいと言ってんのよワタクシはよぉ〜??? 口いっぱいにクッキーを頬張るのやめなさいな! 口の端っこにカスがついてますわよ!!
「んぃ〜……」
「はい、これで可愛いお顔が綺麗になりました」
「……なんというか、マジモンの親子みたいだねぇ」
ワタクシがレイラの口元をナプキンで吹いている様を見てナイアス様が呆れたように言いました。
「はい、マスターはレイラのお母様ですから〜」
「はいはい、抱きつくのはやめなさい。まったく、大きくなっても甘えん坊ですわねこの子は」
「えへ〜」
「けどま、ナイアス様の言う通りこの子はワタクシの娘ですからねぇ」
「そういやアンタ、マイトだったね」
抱きついてきたレイラの頭を撫でつつナイアス様へ胡乱な目を向けます。
「なんですの、まだ信じてなかったんですの? 貴方々のサイレンを本国のものと同等にチューンしたのに」
彼女達の騎体のサイレンは国外輸出向けの性能を抑えた型式の騎体です。
しかし、手を加えさえすれば本家と同じ性能にすることが出来ますわね。因みに、バルカス達に与えたサイレンはそれに加えて各々の戦い方に合わせた改修を施してたりしますわよ。
「いやぁ、感謝はしてるよ? 不調気味だった騎体が新品みたいに回復したんだからね。アンタに一人一人個別にセッティングしてくれたし。
でも、それはそれとして普段の言動を見てると、ねぇ?」
ナイアスの脳裏にイーリスの奇行の数々が思い浮かび、優雅に紅茶を飲むイーリスを見た。
「うん、説得力ないね」
「は〜〜〜??? この通りご立派ァ! な10本線がお見えでない???」
ドレスの胸元に付けられた10本の紐を見せつけます。失礼なこと言いやがりますわねこの方は! れっきとしたマイトですわよワタクシ!! 名義は偽名の方ですがッッ!
「そういうことじゃないんだけどねぇ」
はー、キレそ!!
そんなことを会話していると。
ビッー! ビッー! ビッー!
というアラートが鳴り響きます。即座にワタクシは立ち上がり、オペレーターへ尋ねました。
「何事ですか?」
「後方から急速接近する機影を確認! 速度から見て航空機だと思いますが、その大きさがおかしいです!!」
「映像、出ますか?」
「少々お待ちを……映像、メインモニターに出します!」
オペレーターがコンソールを操作した数秒後、艦橋中央の立体感ホログラムモニターへ映像が出されます。
望遠カメラによって出た映像を見た瞬間、ワタクシは息を飲みました。何故ならば────
「はー、やれやれ今日も今日とてアタシはお空でブラック労働っすかー!!
休みが欲しいっすねぇ!!」
『それも仕方ないですよマスタ〜、マスターのこの騎体が1番早くて偵察に向いてるんですから。いざ戦闘となっても戦闘機と違って必ず帰ってこられる保証があるんですし』
「働いてるアタシの疲労は無視っすかねー? このフライトで何連勤だったっけ?」
『えーと……これで確かまるまるひと月飛んでますね! 公国に居た時よりも沢山飛んでます。けど、この子はもっと飛びたいって言ってますよ?』
「休み! 休みがまじで欲しい!! アタシは本業メイドっすよ!」
『あはは……お世話になってるサード様に恩を返す為なのと、姫様が帰ってきた時の為ですよマスター』
「それはわかってるっすけど〜……! んもー、クロエ先輩お披露目ん時に連れて帰ってくりゃ良かったのに……」
『まぁまぁ、今回の任務が終わったら3日ほどお休みを貰いましたから。頑張りましょうマスター、ね?』
「へーへー、了解ですよ〜。ったく、イー様とバカやってたのが懐かしいな〜!!」
ジュノーの大空を超音速で飛行する1つの機影がある。それは鋭角的なシルエットを持った戦闘機だった。
しかし、その戦闘機は従来の航空機よりも巨大であり、その騎体の中で気の抜ける会話をするのはふたつの声。
戦闘機の種類によってはたしかにパイロットは2人いるだろう。しかし、その戦闘機のコクピットは別々にあった。
加えて、その内装は航空機のものとはべつものだ。それに先の会話の内容から察するにこのふたりは騎士とファティマだろうと推測できる。
つまり、この戦闘機はモーターヘッドだ。
「さーてと、領空に入ってきた所属不明の船は〜っと」
コクピットの中で少女は言うと、ファティマルームのパートーナーすぐに答える。
『すでにレーダーで補足しています。船体を出しますね』
「ひゃ〜、こりゃおっきーっすね〜。通信繋げてくれるっすか?」
『わかりました』
ファティマは己のマスターに指示を出されたとおり、進行方向へ降下を終えたばかりの輸送艦へと通信回線を開いた。
「あーあー、こちらコーラス王朝領空である〜。所属不明艦へ告げる〜、直ちに出ていかないと撃ち落とすぞ〜。
3分やるからとっとと失せろー」
『毎度思いますけど、猶予短く無いですか?』
「いいんすよ別に! んで、なんか変化あったっすか?」
『少々お待ちを……あ、返答が来てますね。読み上げましょうか?』
「頼むっす」
『承知しました。……って、え? えぇ!!?』
「おん? どーしたっすか『クララ』? BL漫画で添付されてたっすか?」
『そ、そうじゃありませんよぉ!! と、とにかくこの返信を見てください!』
「へーへー」
言われた通りにモニターへ投影された文章を目を通した瞬間に少女、リガリエッテ公国近衛騎士団の1人『ルルカ・リールル』は目を見開き。
「マジで!!?」
叫ぶのだった。
用語解説
・ルルカ・リールル
年齢:地球換算で凡そ18歳
所属:リガリエッテ公国・近衛騎士団兼王家専属メイド
愛称:ルル
リガリエッテ公国の王家に仕えている専属使用人であり、歳若くも王族近衛騎士団に抜擢されている実力を持に語尾に『〜っす』と砕けた口調をするのが特徴の女騎士。
少数民族のミミバ族出身で、その高い身体能力を活かして諜報活動を任されてたことから忍者メイドという属性が多い。
加えて、実力も高いためにイー様からスリービーストのひとつスカイ3のテストパイロットに任命されていた。
しかし実力が高い半面、性格はかなりズボラでメイド服を着崩し、仕事をサボってはイー様に絡みに遊んだりして上司のクロイツェフのパートナー・ファティマのシンクレアにイー様共々シバかれお説教される光景が城内でよく見られたりする。
クーデター当時は離宮にて同僚たちやイー様の家族と軟禁されてたが、隙を見て仲間たちと脱走し王宮地下の工房に放置されてた乗騎を奪取後、コーラス王朝へ亡命。
現在はスカイ3の特性のため、哨戒任務を任されているがほぼほぼワンマンに近いためそろそろ休みたいと愚痴ってる。
パートナーの趣味に理解ある良きマスター。
・クララ
S-M型/サリタ・アス・ジンク作
クリアランス:VVS1
マスター:ルルカ・リールル
所属:リガリエッテ公国
スペック:戦闘能力(A)・MH制御(A2)・演算性能(A)・肉体耐久(B1)・精神安定(A)
ルルカのパートナーであり、イー様からスカイ3のテスターを任されているファティマ。
実は腐女子でベッドの裏にBL本を隠してたりする。尚、パートナーのルルカからはその趣味はバレてるが本人はバレてないと思ってる。(ルルカからは暖かい目で見られてる)
加えて夏と冬のある時期は長期休暇を取り、姿を消すが帰ってきた時は両手やバッグに大量の出自不明の薄い本やポスターを持ち帰ってくる様がよく目撃されるとか。
多分、ビュラードとソープの絡みを見たら鼻息荒くスケッチしてるだろう。
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