FSS─翡翠の姫君─   作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!

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003:作戦会議

「さて、第一回リガリエッテ公国奪還会議を始めますわ!! 司会進行はワタクシことイーリスフィア・ゼノ・リガリエッテが努めさせていただきましてよ!」

 

「わ、わーぱちぱち〜」

 

「なんか始まったなぁ」

 

「ではクーデターされた祖国へ凱旋するために必要なことはなんでしょうか?」

 

「え、え〜っと〜? やっぱり、へ、兵力でしょうか〜?」

 

「その通り! 見事正解したいい子には飴ちゃん(イチゴ味)を進呈しますわ」

 

「わ、わーい! や、やりました。えへへ」

 

 懐から取り出した飴玉を貰い、喜ぶレイラを横目にワタクシはホワイトボードにキュキュッと『兵力』の文字を記入します。

 次いでに最終目標は『祖国への凱旋! と『クーしたお馬鹿さん達の処刑』』\_(・ω・`)ココ重要! とも。

 

「んで、どーやってその兵力を集まるんだイーちゃん? 今のお前さんにゃこれといった名声とかある訳じゃないだろ?」

 

「そこなんですわよ師匠! 今のワタクシはただの騎士兼マイトの大学を飛び級し、博士号を持つ超天才追放系美少女でしかないのですわ!!」

 

「ははーん、思ったよりも余裕だなお前さん?」

 

「何時でもどこでも王女としての風格を忘れないだけでしてよ〜! 

 と、も、か、く! 凱旋しようにも人! とにかく人が要りますわ!! 

 騎士団クラスの人員とMHが!!」

 

「無理じゃね? フルゴールはあってもアレって未完成だったはずだし、動いたのも奇跡ってレベルだったんだろ?」

 

「認めるのも癪ですがその通りですわね。本当にフレームがようやっと組み上がったって感じですもの。素顔すらもろ出しですわよ?」

 

「あ、あの子も『早く着るもん着せて欲しい。寒い』って、愚痴ってましたよ……?」

 

「設備がねぇんですのよ! 我慢なさいって言っておきなさい!」

 

「わ、わかりましたぁ……!」

 

 首をブンブンと縦に振るレイラから視線を外し、師匠へ視線を向ければ難しい面持ちで紅茶をひとのみしてそっとカップをソーサーへと戻すと口を開きました。

 

「つまるところ、とにかく国レベルの兵力を自由に動かせる力が欲しいってことか?」

 

「エサクタ! まさにその通りですわよ師匠! そのためにも手頃な小国を乗っ取ればいいんですの!!」

 

「へー、どうやって?」

 

「…………どうしましょ?」

 

「ど、どうするんでしょうね? あ、す、すみません。私が口を出す事じゃありませんよね……

 ッスゥー…………私、お邪魔でしょうし隅っこで置物に徹してますね……」

 

「んもー、そうやってすぐ陰気臭い空気を出すの辞めなさいな!」

 

 なんか一人で勝手に自責し部屋の隅へ体育座りし始めたレイラに突っ込みつつ、ワタクシはモラード師匠とお話を進めますの。

 

「小国を乗っ取るっつったってなぁ。そんな都合のいい場所なんてあるかぁ?」

 

「ですわよねぇ……戦争状態だったなら武勲を上げて召抱えあげてもらい、そのまま成り上がるっていうのもできたのですが」

 

「今はどこの国も小競り合いはあっても表立ったドンパチはねぇな」

 

「うーむ、こうなったら適当に情勢を煽って戦争状態に無理やりさせた方がいいかしら?」

 

 幸いにもワタクシたちのいる惑星ボォズというとは成り立ちからして火種に事欠きません。反政府ゲリラも数多くいるためやろうと思えば幾らでも紛争を引き起こせそうなのですが……

 

「バレた時に国に迷惑がかかるんですのよねェ……」

 

 他国のお姫様が別のお国の情勢を煽り、戦争を引き起こさせたなんて知られたら速攻他の国に責めいられる大義名分を与えてしまいます。しかもその理由が祖国をクーデターされたからなんてことを知られたらヤバいですわ!! 

 

 特にフィルモア帝国には知られたくないですわ! あの国とは昔モラード師匠の元で学んでいた時に詳しいことは省きますが、色々とやらかしましてね……

 その因縁で変にワタクシの存在が明るみに出たら命は取られないにしてもあの国は絶対ワタクシの身柄を拘束しようと躍起になりましてよ〜!! 

 

「んー、とりあえずコレでも売っぱらって活動資金を得たら商人としてスタートしましょうかしら?」

 

 お城を駆け回ってたついでに回収しておいたブツ(国宝時価総額100億円)の翡翠の首飾りを弄びながらワタクシは考えます。

 クーされた時になんとか持ち出せたのはこの国宝の首飾り、MHザ・ジェイド・オブ・フルゴール(THE J.O.F)(完成度6割弱)1騎、パートナーファティマ・レイライン、交易用のオンボロ宇宙船が1隻って所。

 

 首飾りを元手にして商会を立ち上げ、商人としたの立場で惑星を渡り歩いて人脈を築くことでゆくゆくはお抱えの傭兵騎士団を手に入れるっていうのが安牌でしょうか? 

 

「んー、ダメですわ。時間がかかりすぎます」

 

 幾らジョーカー星団の人類の寿命が300年くらいあっても、悠長にしてては祖国が地図から無くなってしまいますわ! それに加えて、ハクーダのババアが縁もゆかりも無い我が国にクーデターを起こさせる理由が想像できないのも気味が悪いですね。

 

 というか、あの国に我が国まで手を伸ばさる余裕など無かったはずですのに……それに、コンプレックス拗らせてるあのババアがコーラス王朝以外眼中に無いはず……

 

 やはり、第三者の介入が濃厚でしょうね。コーラス王朝は星団法の制定に関わったことからかの国の地位は星団列強となっております。幾ら国是が他国不可侵であろうともその規模について列強諸国は無視など出来ませわ。

 

 故にいずれコーラス王朝を潰すための布石として、我がリガリエッテ公国とハグーダ帝国をその足がかりとした……というところかしら? 

 

 ん〜〜〜、ガッッッッッデム!!! 

 

 完全に巻き込まれましてよ〜〜〜! コンプレックス拗らたババァの野心に乗っかる形でワタクシの祖国が貰い事故なんてやってらんねぇですわ〜! 

 というか、仮に凱旋して祖国を取り返したとしても今度は列強諸国の魔の手がワタクシの国に伸びるだけじゃありませんこと〜〜??? 

 

「んー、未来が過酷でしてよ〜〜〜!」

 

 さよならクソみたいな前世! からwelcome勝ち組人生! と思ってたらこれですわ!! 

 

「あ、あのぅマスター……頭を掻きむしってるところ失礼しても……?」

 

「なんですの!?」

 

「ひぃう!? ご、ごめんなさいごめんなさい! 私みたいなのが口出しするなんて不敬ですよね! すみません、すみません! このまま口をつぐみますぅ!」

 

「あー、今のはワタクシが悪かったですわ。あなたは悪くありませんわよレイライン。さ、ワタクシに何を言おうとしたのかお教えくださる?」

 

「は、はい……その……国宝の首飾りですが……売ろうとしても、先ずマトモな換金屋だと取り扱ってくれないと思いますぅ……」

 

「それは、なんでまた?」

 

「だ、だって……ガッツリとリガリエッテ家の家紋が刻まれてますもん……

 見せただけで直ぐさま警察に通報されますよ? されなくとも『立場のある存在がやんごとない事情で明らかにやばいものを売りに来た』って勘ぐられるでしょうし……

 回り回ってマスターがリガリエッテ公国のイーリスフィア・ゼノ・リガリエッテ第1王女と露見した事に加えてリガリエッテ公国がクーデターにより情勢が不安定となっていることが周辺諸国にバレてしまうかもですぅ」

 

「そうだったわよチクショウ!! なんでそんな初歩的なこと忘れてましたのー!!? 

 でも、よく思い出させてくれましたわねレイライン! 流石はワタクシの娘ですわ〜! 天才! 褒めてあげますわ!!」

 

「え、えへへ〜。ほ、褒められちゃいました〜」

 

 危うく祖国へ凱旋する計画がアボンするところでしたわ〜! それに気づかせてくれるなんてこの子はなんて素晴らしいんでしょうね! 

 というか、それに気づかないくらいワタクシがテンパってただけなんでしょうが!! 

 

 んもー、どうしましょ! 詰んでますわ!! 

 

 そんなことが起きないようにまっさらな経歴でゼロからスタートしたかったんですのよワタクシは!! 

 

 いつまでも師匠のお世話になる訳にはいきませんし、マジでどーしましょ? 

 

 グルグル思考が回るワタクシでしたが、そんな思考を中断させるように師匠が声をかけてきました。

 

「そんなおデコちゃんに朗報だ」

 

「はえ?」

 

 顔を上げて師匠を見やれば、まるで悪戯をしたような子供の笑みを浮かべて懐から取り出した大きな書類の封筒をワタクシに差し出してきましたわ。

 

「なんですのこれ?」

 

「お前さんらように偽装した戸籍情報だ」

 

「マジ!?」

 

「マジだぜ〜」

 

「流石は師匠! 愛してますわ!!」

 

 まさかの救いの手がありましたわ。さっすが師匠! ちゃらんぽらんなオッサンという感覚が強いですが、腐っても四大マイトってことですわね! 

 

「ハハハ、褒めてんのかそれ?」

 

「褒めてますわよ、も〜!」

 

 力加減をしつつベシベシと師匠の肩を叩きつつ、ワタクシは渡された封筒の中身を確認してみますわ。どれどれ……

 

「ほーん『イリス・クリィムヒルト』って名前ですのね〜。ボォスのハスハ、ボルサ諸島列島出身ですか……」

 

「ひとまず用意できる身分じゃそんなもんだな。一応見習いマイトとして俺の親戚のツテを辿って下宿してるってことにしてるから問題はねぇだろ」

 

「レイラを傍に置くためにも必要な措置ですのね」

 

「そうだ。流石にMHの設備は用意できねぇから勘弁な?」

 

「これくらいして下さるのですから寧ろ感謝しかありませんわ。フルゴールについてはワタクシがどうにかしますもの」

 

「ハッハッハ、たしかにな。一応聞いとくが、俺よ教えたことあ忘れてねーよな?」

 

「ったりめーですわ。でなけりゃ、レイラを生み出していませんもの。レイライン!」

 

「ひゃい! な、なんでしょうか?」

 

「貴方も聞いてたでしょうが、しばらくの間ワタクシはモラード師匠の助手のイリス・リガエッテとして過ごします。

 故に本名で呼ぶのを気をけるように! いいですね?」

 

「は、はい。わかりました! レイライン、記憶しました。です!」

 

「宜しい。貴方もこの方のお仕事のサポートをすることになるでしょうから、しっかりと学ぶように」

 

「め、めんどくさいですぅ……」

 

「何が言いまして?」

 

「なんでもないです! レイライン、頑張ります! はい!」

 

「宜しい!」

 

 てなわけで、イーリスフィア改め見習いマイトのイリスちゃんとして再出発でしてよ〜! 

 

 

 

 

「よっ、調子はどうだ『バランシェ』」

 

「まずまず、といったところだモラード」

 

 陽の光が入る部屋にてモラードは片手を上げて部屋の主であるベッドに寝かされていた人物へ声をかければ、その人物は読んでいた書類を近くのテーブルの上に置いて顔をあげる。

 

 ヤツれ、痩けた輪郭でありながらもその瞳には力強い輝きを宿す長髪の男性。彼こそ星団に名を轟かす四大マイトの一角でありバランシェ・ファティマという傑作たちを生み出す最高位のファティマ・マイト『クローム・バランシェ』だ。

 

 そして、モラードの良き友人でもある。

 

「そういえば聞いたぞ、お前のところに何でも愉快な子が転がり込んだとか?」

 

「おう、ちょっとした縁でな。昔に巣立ったはずの雛鳥が子供を連れて羽休めに来たんだ。相変わらずピーピーと喧しいったらありゃしねぇ」

 

「ふっ、それは何とも愉快な光景が広がるようだ。ゴホッ……ゲホっ……!」

 

「あんまり無理すんな。お前の身体はボロボロなんだからな」

 

「なんとも情けない限りだ。昔はお前とも殴り合いの喧嘩をしたこともあったと言うのに、今はこうしてお前に助けてもらわねば生きられぬのだからな……すまない、少しだけナイーブになってたようだ」

 

「仕方ないさ。お前の気持ちもわからんでもない」

 

 肩を竦めたモラードはバランシェのすぐ側まで歩み寄ると椅子を引き寄せ、ドカりと腰を落とす。

 

「……モラード、俺はあとどれほど生きられる?」

 

「……どんなに持たせても10年と少しだな。それ以上はどう足掻いても無理だ」

 

「そうか……」

 

「怖いか?」

 

「どうだろうな。……いまいち実感が湧かん」

 

 バランシェ公の身体は老衰や薬物中毒により蝕まれており、親友のモラードでさえ延命をさせるのが限界であった。

 

「そういや、さっきの話を戻すが俺のところにきた子なんだがな。例のシステムを独自要素を入れてはいるが完全に再現してたぜ」

 

「なに、それは本当か?」

 

「モチだモチ。あの子の作ったファティマのMHを見たがきちんと機能してたよ」

 

 バランシェの瞳に興味の色が浮かび、モラードは自慢するように笑みを浮かべ持っていた端末を差し出す。

 端末を受け取り、バランシェはその画面に映されたデータを流し見すると無意識に口角を上げた。

 

「凄まじいなこの娘。この歳でこれほどの技術と理論を持つのか……!」

 

「だろ? 口調と性格はだいぶ変だが、騎士としてもマイトとしてもその才能は本物さ」

 

 脳裏に高笑いを浮かべるイーリスの姿が過ぎる。性格はぶっ飛んでるし、口調もエキセントリックな変人であるがモラードの言う通りにイーリスの才能の非凡さを改めて理解する。

 

「だからあの子にはお前から預かってた胚を預けようと思う」

 

「───本当か?」

 

「ああ。野心はあるが、あの子はファティマが戦いで生命を散らすことに心を痛めている。

 自分のファティマにも人として生きられるようにとダムゲート・コントロールを外してるくらいだからな」

 

「……そうか。なら、俺はお前の選択に何かを言うつもりはないさ。『ロンドヘアライン』の胚をどう使おうとも俺の手から離れた以上はお前の自由だ」

 

「おう。きっとお前も驚くような使い方をするかもしれないぜ?」

 

「ふっ……その時まで生きてたら、な」

 

 互いに差し出した拳を合わせ、2人は淡く笑いあうのだった。

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