FSS─翡翠の雷光─ 作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!
「とーちゃく、ここが首都ヤースですか〜。テーマパークに来たみてーですわ。テンション上がりますわねー!」
「といっても空港ですけどねここ」
「船バッカ」
輸送艦のタラップから降り、発着場に立つ3つの影。ひとつはもちろんワタクシ、もうひとつはレイラ、最後は久方ぶりの登場のポラリスですの。
「出番ナクテ、存在忘レラレタノカト思ッタゼ」
「ワタクシ視点がメインだから仕方ないですわ!」
「はわわ、なんだかメタいこといってますぅ……!」
気にしたら負けですわ!!
「ふぃー、にしてもこの星の気候は蒸し暑いねぇ。カラミティ出身の身からしたら辛いものがあるわ」
「慣れれば気にならなくなるわ。まぁ、その服装じゃ時間はかかりそうだけど」
「アンタのパートナーも似たりよったりだろ?」
「問題ありませんよナイアス様、このファティマスーツは通気性抜群なのに加え、体温調節機能もあり極限環境においても通常時と変わらないパフォーマンスを維持することができますので」
「つまり?」
「とても涼しいです」
「う、羨まし〜……! お嬢様! ジゼルも同じのが欲しいです!」
「あっついんだから引っ付くんじゃないよ鬱陶しい!」
あ、なんかナイアス様が引っ付いてきたジゼル様をひっぺがしましたわね。
「ひゃあ! 久しぶりの休暇っすー!! やっぱ労働はクソ! はっきしわかんだね!!
ビバ休み! ノーセンキュー休日出勤!! ファッキンサービス残業!!!」
「ここで騎士服を脱ごうとしないでくださいマスター! 既に色々と残念なのにもっと残念になる気ですか!?」
「職場の上司がアラサー手前で婚期逃し気味の時点で残念もクソもあるっすかよー!」
「ルルカァァアッ!! 何言ってんだお前ェ!!!」
「あひゃひゃひゃ! 逃げろっす!」
ブチ切れたクロエがルルカを追いかけ回しましたわね。
「コーラスって何が有名なんだ?」
「そうですね……観光ガイドによればディス・バイス大図書館や一般公開されてるコーラス城の巨大庭園、他にはストリートにあるバザーなどが名所としてありますよ」
「そうか。なら、時間があったら見に行くか?」
「はい、どうせならマスターもうんとお洒落していきましょうか?」
「……お手柔らかに頼む」
「ふふっ、はい」
「ジュノーって気候が南国だし、やっぱりそういう系の甘いものが多いみたいだな」
「ですね〜。じゃあ後で行きましょう!」
「だな。ハシゴして品評会だ」
「見てくださいマスター。鳥ですよ鳥。パンの耳食べますかね?」
「鳥っていうか恐竜じゃないか? つか、肉食っぽいけど炭水化物食うのかソイツ?」
「試してみれば分かります!」
「わかったからねじ込もうとするのはやめてやれ! ほら、今抑えてるうちに逃げろ恐竜!!」
なんだか三馬鹿も騒いでますわねぇ。んで、迎えが来るって話でしたけど……
「お待ちしておりましたイーリスフィア殿下。コーラス王陛下の命により、お迎えに上がりました」
そんな言葉と共に迎えの方々が現れましたわ。
「送迎感謝いたしますわ」
カーテシーを行い礼を言います。
「いえいえ、お連れの方々もどうぞこちらに。車内には冷えた飲み物もご用意しておりますので」
てなわけでいざ行かんコーラス城へ!!
コーラス王朝首都ヤースの中央にそびえ立つコーラス城、それは地球で言う南米マヤのピラミッドで有名なチチェン・イッツァに似た外見をしています。
といっても向こうが高さが24m程に対して、コーラス城は見上げるほど大きいですがね。
ついでに言えば祖国のワタクシの家とも呼べる王城よりもでけぇですわよ! 金かかってますね!!
迎えの車から降り、最初に迎えてくれたのは赤い絨毯とその先にいる方々です。
ちなみに、クロエ達はここにはいません。途中で別れ、騎体のパーツ製造のため工場に行ってますのよ。
「ようこそお越しになられましたねイーリスフィア姫、先の戦いにおいて我が軍の窮地を救っていただき感謝いたします」
そう言うのはコーラス三大王家がひとつマイスナー王国の女王『リザード・マイスナー』様であり、この方は現在の戦争で自ら軍の指揮を執る女傑ですわ。
ワタクシはカーテシーを行い、頭を下げます。
「此度の戦、我が盟友たるコーラスの為馳せ参じるのは当然の義務です。
国を追われた卑小の身ではありますが、どうぞよしなに」
「ふふっ、中隊規模で数に勝る大群を蹴散らす活躍を見れば卑小など思えませんよ。
……さて、お話も程々に陛下がお待ちです。どうぞこちらへ」
「はい」
門が開き、ワタクシはコーラス城へと足を踏み出したのです。
コーラス城の内装はやはり豪奢でありながらも清廉であり、戦争でなかったらじっくりと眺めていたいものですわ。……あの絵画、幾らするのかしらね?
「…………お嬢、なんか場違いじゃねぇですか俺?」
マイスナー王女に先導されるようにして城内を歩いていると、不意にバルカスがワタクシに小さく聞いてきました。
「まぁ、ゴリラが無理してスーツ着てるみたいなもんですわね。はたから見たら」
今の彼の服装はパリッと糊のきいた礼服を纏っており、髪型もいつものツンツンヘアーではなくヘアオイルによってオールバックに変わってますの。
けど、人相の悪さと着慣れない衣装の違和感から眉間に深い皺が刻まれ、心臓の悪い人が見たらショック死するんでないかしら?
「酷ェ……けど、実際そうだから何も言えねぇ。生まれてこの方スーツだとかに縁がなかったんだから仕方ねぇじゃないっすか」
「マスター、背筋をピンと伸ばしてください。そしてかっこいいお顔を忘れずに」
「おう。舐められないように、だろ?」
「はい」
「ん、ペリルとの勉強を忘れてないようね。一応ワタクシの護衛って名目で陛下の御前に連れてくから。
貴方は会話には加わらないだろうけど、とにかく黙ってキリッとしてりゃいいのよ!」
よゆーよゆー! ちょっとイカついインテリア的なオブジェに徹してりゃええんですわよ!!
「うぅ、レイラ緊張でお腹痛くなってきました……帰っちゃダメですか?」
「ダメに決まってんでしょ。貴方ワタクシのパートナーですわよ?」
「ひぃん……」
でもそこまでワタクシは鬼ではありませんわ。懐から取りだしたものをレイラへ手渡します。
「なんですかこれぇ……?」
「苦痛に耐えれない時に被りなさい」
そう、このタイガーマスクを!!
「……なぁペリル、なんでお嬢はタイガーマスクなんて持ってんだ?」
「わ、わかりません。ですが、きっとなにか深い理由が……あ、レイライン様がいそいそと被りましたよタイガーマスクを」
「えー、マジで? 正気か? 不敬罪で処されない?」
「こ、コーラス陛下は寛大なお方と言われてますし……きっと、笑って許してくださるはずです。多分、おそらく……メイビー……」
「不安だなぁ……」
何ぶつくさ言ってるのかしらこの2人? まぁ、いいけど。レイラ着け心地は?
「少し落ち着かないですけど、だいぶマシですぅ〜。欲を言うならもっと可愛いのがよかったですね」
「デッ〇プールならあるわよ?」
「スパ〇ダーマンはないんですかぁ〜……」
なんでよ、デッ〇プール面白いでしょ。
「面白くはありますけど、少しお下品すぎますよー。あとウルヴ〇リンの亡骸を冒涜しすぎでは?
それに、内輪ネタ的なシーンとか俳優さんの自虐ネタとか経緯を知らないと全く分かりませんよね」
「ククク……ひどい言われようだな。まぁ事実だからしょうがないけど」
でも最近の作品よりかはずっとおもろいでしょ!アコ〇イトとかアイア〇ハートに比べりゃ!!
「こちらにサードがいらっしゃいます。勿論、盗聴などの心配はありませんよ」
「まぁ、これはこれはご丁寧にありがとうございますマイスナー女王陛下」
扉が開かれると目に入るのは畳張りの広い部屋でした。靴を脱ぎ、中へ入ります。
鼻腔をくすぐるのは畳特有のい草の匂いと、焚かれているお香が混ざった不思議な空気。自然と肩の力が抜けるのを感じながらワタクシが入ってきたことに気がついたのか部屋の主が向けていた背が微かに揺れました。
身体を翻し、ワタクシの顔を見て頬を綻ばせる方こそコーラス王朝国王のコーラス3世その人。
「うむ、来たか。……久方ぶりだなイリス。いや、イーリスフィア」
「はい、お久しぶりですコーラス3世陛下。お披露目以来ですね」
「そうだな。そして、隣にいるのが君のぱーと、なー……うむぅ???」
「ぴゃっ」
コーラス様はワタクシの隣にいたレイラに気が付き、目線を向けると首を傾げます。その視線にビビったレイラは即座にワタクシの背後に隠れてワタクシを盾にしましたわ。
オイコラ、ファティマがマスターを盾にするんじゃない。ダムコン付けてないとはいえファティマとしてどーなのよ。
「だってぇ、知らない人なんですもん……」
「はぁぁぁあ、ったく我が娘ながら社会不適合すぎますわ。……お見苦しいところをお見せしました陛下、お披露目の時はそばに居ませんでしたがこの子がワタクシの作品でありパートナーのレイラインですわ」
「れ、レイラインです……よ、よろしくおねがいしましゅ…………」
レイラはタイガーマスクを被った顔をワタクシの背中から少しだけ覗かせか細い声で言うとまたすぐに引っ込んでしまいます。てか、噛んでますわよ。
そしてそんなレイラを見てコーラス様は目を瞬かせた後に微笑みました。
「ふむ、そうか。君がレイラインか。なかなか見ない性格のファティマだね」
「こんな子ではありますが、自慢の子ですのよ陛下」
「ああ、見てればわかるよ。君たち二人には深い信頼関係があふことがね。
ところでなぜレイラインは頭に被り物を?」
「クソ陰キャなのでこの子初対面の人と目を合わすことができないんですのよ」
「なるほど……」
そう言ってコーラス様はもう一度レイラを見ます。視線に気づいてビビるレイラは身体を縮こませました。
仕方ないとはいえ引っ付くのやめてくださいませんかねー? ワタクシの身長ってレイラよりも低いので全く隠れてきれてませんわよ?
「ふむ、一先ず立ち話もなんだ。そこの護衛の2人も含めて座るといい」
「かしこまりましたわ」
「……っす」
コーラス様と話しやすいように近づき、敷かれた座布団の上に正座します。隣にはレイラがワタクシの服の裾をちまっと摘みながら座り、少し離れたいちにいつでも対応できるように半警戒でバルカスとペリルの2人が座りました。
「さて、では改めてコーラス王朝国王のコーラス3世だ。此度は我がコーラス共に戦ってくれることを選んでくれたことに、我が軍の窮地を救ってくれたことに心よりの感謝を送る。イーリスフィアよ」
「はい、我がリガリエッテ家は既に遥か昔の時代にコーラス王家より別たれた家ではありますが、その血は長い時で薄れ、遠く離れていたとしてもコーラスと繋がりがあります。
それ故に此度の戦争、コーラスの危機とあらば祖国を追われた身であろうとも共に戦わんとすることは当然の義務といえましょう。
それに加え、我が肉親たちを保護してくださった御恩を返す時と思った次第であります陛下」
「うむ、そなたの思いしかと受け取った。であるならばこれからも力を貸して欲しい」
「もちろんです陛下。…………それと、どうかワタクシからもひとつ願いを聞いて欲しいのです」
「言ってみるといい」
「はっ……」
さーて、断られる心配はないでしょうが緊張しますわね。スーハーと深呼吸してレイラの手を小さく握り心を鎮めます。
「先も申したように今のワタクシは6年前の日にクーデターで国を追われました。
その日からワタクシは祖国を叛徒や逆賊達から奪還せんと力を貯めてきましたの」
「うむ」
「ですが、それでも限界があります。それに加えクーデターを引き起こした貴族たちの背後には大国の影が見え隠れしており、現在の戦力ではどう足掻いても擦り潰される未来しか見えません。
だから、だからどうか、ワタクシが此度の戦争で戦果をあげれば力添えを頼みたいのです」
「……リガリエッテの兵たちが今現在もコーラスへ刃を突き立てておいて虫のいい話と聞こえるかもしれません。
ですが、兵たちはただ祖国を卑劣にも乗っ取った逆賊たちからの命令に従っているだけなのです。
彼らは何故友誼を結んだコーラスと戦っているのか、その理由も攻め込む理由も知らされていないはずです」
「ワタクシはそれを思うと心が酷く痛みます。本来忠義を尽くしてくれた彼らがいたずらに命を失うことに。友たるコーラスへ刃を向ける現状に。
それに故にワタクシはあの戦場に立ったのです。正当なる王家のワタクシが立ち、本来の主であるワタクシが名乗れば彼らは矛を向ける相手が誰なのか気がつくだろうと」
「故にもう一度いいます。此度の戦が終えた時、どうかコーラスのお力を我が祖国を取り戻すために御力添えを……!!」
深く、深く頭を下げます。畳に額を擦り付けるように落とし、土下座をして血反吐を吐くように告げました、
ワタクシは愚かな奴によって人が死ぬのが嫌いです。悪人によって善人が食い物にされるなんて反吐がでます。
民草を庇護すべき貴族が責務を果たさないからこそ、ワタクシは愛すべき祖国を改革せんと力を尽くしてきました。
虐げられていた者を救い、血筋だなんだと不当な扱いを受けていた人材を見出し、国を良くせんと知恵を絞りました。
「……コーラス陛下、俺からもどうかお嬢に。イーリスフィア様に力を貸してください」
バルカスも同調したように言いました。ワタクシと同じように頭を下げて。
「お嬢には俺含めて救われた奴らがいます。俺は元々ボォスの田舎の国の騎士団にいました。だけど、そこじゃ俺みたいな一般の出はろくな扱いじゃなかった。
だから騎士団を飛び出したんす。でも、なんの学もない俺らはろくなことが出来なかった。
そんなときにお嬢に出会ったんです。この人は俺らを拾い上げてくれたんだ。
泥沼に足を取られ、腐ってた俺らを拾い上げてくれたんです」
「その日から俺は変わったんですよ。前を向けるようになった、陽だまりを歩けるようになった。
まともな騎士としての技を知れた、騎士としてファティマを娶り、モーターヘッドを駆れた。
国を追われた小さな女の子なのにここまでしてくれたんです。なんも無い俺に返せるものなんてないのに……
でも、お嬢は笑って言ったんですよ『臣下を育てるのも王の務め』だって。なんも無いように当たり前に簡単に言ったんです」
顔を上げたバルカスは真っ直ぐにコーラス様を見据えました。その目はどこまでも真摯な光が宿っており、自分の思いを素直に告げています。
「その時に俺は思ったんです。この人がこの小さな方が俺にとっても生涯の主君なのだと。
この人のためなら俺は幾らでも俺は命を投げ打てる。この人が国を取り戻すことができるのなら、俺からもお願いできないでしょうか?」
「バルカス……」
まさかそこまでこの男に忠誠を向けられたなんて知りませんでした。でも、臣下にそこまで思われてるのを知れるのは悪くありませんわね。
「イーリス」
「はい」
「良き臣下をもったな。ここまでの忠義を向けられることはとても珍しいことだ」
「……自慢の配下ですわ」
「うむ」
コーラス様は楽しそうに頷きました。そして、おもむろに私の頭を撫でます。
「初めて会った君と会った時、イーシェンに抱かれた君はとても小さかった。
それが気がつけばこんなにも大きくなっている。……子供の成長とは大人が思うよりも早いらしい」
「イーリスフィア、過去の時代に遠く別れたコーラスの血を決して見捨てることはない。必ず君の為に力を貸そうとも」
「ッ……感謝いたしますコーラス陛下。このご恩は決して忘れません」
深く、深く頭を下げ改めて感謝を。
用語解説
リガリエッテ家
・元々はコーラス王家に連なる血族であったイー様の御先祖様にあたる人物がある時を境に当時の家を飛び出し小さな離島に流れ着いてそこに住んでいた民族と交わったのが始まり。
そして細々とコーラスと関係を維持していたというジュノーでも割と古い歴史を持つ。
しかし、国の規模が年月の割に小さいのはコーラス同様に他国を侵略しないことを国是としていたため。
それ故に実はイー様はコーラス王家の遠縁の親戚だが、関係を最小限に保ってた為に長い時が経つうちにほぼほぼ他人みたいな関係に。
しかし、一連のことがあったためにコーラス・ハグーダ戦争を機にリガリエッテはコーラスと関係を強くしていくことになる。
家系図的にはアルルとかセイヘイと縁戚にあたりますねイー様