FSS─翡翠の雷光─ 作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!
「さて、まずジュノーンの問題点というか改善すべき点は明確です。エンジンの出力ですわ」
ホワイトボードにプリントアウトしたジュノーンの設計図を手に持った指し棒でぺしっと叩きます。
「既存のモーターヘッド同様に
ピピピッと端末を操作し、立体ホログラム映像で稼働時におけるエンジン出力の割り当てグラフが推移したものを2種類表示されました。
片方は非戦闘時、片方は戦闘時のものを。
「ジュノーンにはベルリンと同様のエンジンのもの……出力は1兆1000万馬力と現代に於いては低めですわ。
まぁ、ベルリン自体の基礎設計は割と古いものですが堅牢で十分な性能だったので問題は無かったのでしょうね」
ちなみに星団三大モーターヘッドの出力は1兆2000万〜1兆3000万を推移していることからジュノーンやベルリンの出力の低さが分かりますかね?
「まぁ、モーターヘッド自体パワーで全てを語れるわけではありませんわ。その日の様々な空気や地面、騎士とファティマの状態でパフォーマンスが前後しますもの」
加えて設計が古いということはそれだけ長い間経験が蓄積し、問題点を改善しフィードバックをされてきたということです。
最新のモーターヘッドがベルリンと戦っても、コーラスの歴戦の騎士が戦えば1歩も引くことはありません。
まぁ、ワタクシのローカストならたとえ歴戦のベルリン相手でも負けませんし、現に勝ってますがねぇ! おほほほほほほ!!
「てなわけでエンジンの出力が足りない? なら手っ取り早くエンジンを増やしちまいましょっか!」
エンジンを2基搭載した状態の出力ならば余裕でパワー不足の解消が可能ですわー!
「質問、いいだろうか?」
「はい、どうぞコーラス陛下」
「うむ」
椅子に座っていたコーラス様はそう言うと頷き、口を開きました。
「エンジンを増やすというが、現在のジュノーンの内部構造的に加え時間的にももつ1基のエンジンを積めるような余裕は無いはずだ。加えて、よしんば積めたとしても排熱や冷却の問題があるのでは?」
「その疑問も当然ですわね〜。時間も構造的余裕もありません! ですが陛下はお忘れですか? ジュノーンがほかのモーターヘッドと違う要素があることを」
ワタクシが不敵に語りかけ、コーラス様は僅かに思案します。
「……ランド・ブースターか?」
「
端末を操作し、立体ホログラムのランド・ブースターが表示されるとワタクシは立て続けに操作を加えてました。
「ジュノーン本体に積む余裕がない? ならば外側に積めばええやんってことで
これならちょろっと構造を弄る程度で済みますし時間もそこまでかかりませんわ〜」
「……なるほど、エンジンを外付けか。盲点だったな」
「まぁ、そもそもモーターヘッドのイレーザー・エンジン1基でも十分すぎる出力ですからねぇ。2基も積むなんて過剰出力が過ぎますから」
思いつかないのは仕方ねぇですわよ〜。そんなことをするのがワタクシ加えてもう一人いるのですがねぇ。
まぁ、ワタクシのフルゴールは技術的な問題で直結型に妥協せざるを得ませんでしたが……
でも、単純な分組み込むのは割と簡単な部類ですわ〜。
「まぁ、これでエンジン問題は解決しますが次の問題点が冷却問題です」
「当然の帰結ともいえるか……」
「はい。てなわけで元々フルゴール用の建造途中だった追加の『グレゴリ・ユニット』を流用しますわ〜」
「む、良いのか?」
「そこはまぁ、フルゴールに後で謝ればいいだけですわ」
実は現在のフルゴールは未完成と言えます。元々、フルゴールには2種の増加ユニットを実装予定でしたの。
腰部のアレゴレカ・ユニットと背部の『グレゴリ・ユニット』を装備することで改めてフルゴールは完成と言えるのです。
バストーニュにいた頃はユーバーの有り余る財力にものをいわせ、なんとな腰のアレゴレカ・ユニットまでは完成させたのですがグレゴリ・ユニットまでは手を回す余裕がなかったのですよね〜。
でもバストーニュを飛び出してからチマチマと作り、基礎部分が出来上がってたのですが、ジュノーン完成のために流用することに決めました。
やむを得ない事情ってことでフルゴールには納得してもらいましょう!
これを使えば冷却効率が目に見えて上がりますからね。
「一先ずエンジン、冷却関係についてはこれで決着としますが、次はシステム面の問題がありますわ」
端末をペポパッとな〜。
今度のホログラムは改造後のジュノーンのスペックと戦闘時にファティマへ掛かる負荷の予測値でした。
改造前よりも明確に負荷が増えており、加えて操作性についても悪化してることを示しています。
まぁ、エンジン2つ搭載すりゃ出力も2倍ですから負荷も倍増するのはさもありなんですわ。
「これは相当な暴れ馬になるな……」
神妙な顔つきでコーラス様は目の前のグラフを見つめて呟きましたが、当然ですわよねぇ。
ワタクシのフルゴール自身もレイラの搭乗を前提とし、あの子がいないと全力稼働時にまともに動かすことができませんもの。
「ですが、武闘派たる陛下と師匠の傑作たる『ウリクル』様ならばできて当然とワタクシは信じております」
「ふっ、過大な期待だな。だが、応えて見せよう」
「ええ、はい。……ですが、戦闘において一瞬の隙が命取りになるのが世の常です。
増大したエンジン負荷に加え戦闘時の各種膨大な情報にウリクル様の処理能力が追いつかない可能性がありますわ」
だから、こうします。
「故にもう一人、ファティマを増やします」
「……それは可能なのか?」
「可能というか既にダブル・ユニットシステムはワタクシがやってますわねぇ」
「はい〜。フルゴールには私とポラリスが一緒に乗ってるんですよ〜」
そう、実はフルゴールにはレイラと一緒にポラリスが乗ってたりします。
レイラは戦闘時の情報処理を行い、ポラリスはフルゴールのエンジン制御関係の調整を担当してもらってるのですわ。
元々、レイラだけでも各種調整や処理を行えてましたがポラリスを追加したことで幾らかレイラにも余裕ができました。
思わぬ恩恵によって得られたそれの情報を元にジュノーンにフィードバックを行うんですの。
「なるほど、作業分担か。しかし、良いのか? あのエトラムルは君にとって大切な子供だが……」
「マイ・ペンライッ! コーラス様なら無事に帰してくれますと信じてますわ!!」
でなけりゃ可愛い我が子を預けませんもの!
「弟をお願いします〜」
「……了解した。必ず彼を私の命に変えてでも君たちのもとへ帰すと約束する」
「ンな縁起でもないこと辞めてくださいまし! 帰ってくるのなら全員五体満足で、ですわよ!」
やーねー、そんな簡単に命かけられても扱いに困りますわ!! 立ちはだかる敵を全て薙ぎ倒して帰ってきてくださいまし!
「さて、改造計画はこんなところでしょう。とにかく時間がありませんわ!」
「うむ、早速取り掛かるとしよう」
用語解説
・ジュノーン中期型
別名フードル・ジュノーン。イーリスフィアがコーラス3世の要請によってジュノーンを改装した姿。
前期型のエンジン問題をもう1基ベルリンのエンジンを改良型ランド・ブースターへ搭載し、2基直結式へとしたことで強引に解決してみせる。
しかし、それにより出力が倍増した弊害か排熱や操縦性等の負荷が著しく悪化してしまった。
それの解決のため、ファティマ・ウリクルとエトラムルファティマ・ポラリス搭乗させるダブル・ユニットシステムを採用。
それぞれに騎体制御とエンジン制御を役割分担することで問題を解決した。
排熱及び放熱についてはランド・ブースターにフルゴールへ実装予定だったグレゴリ・ユニットを流用する。
これにより、ジュノーンは既存のモーターヘッドを置き去りにする性能を手にすることとなった。
・グレゴリ・ユニット
フルゴールの増加オプションユニット。アレゴレカ・ユニット同様にフルゴールの過剰エネルギー、放熱及び排熱問題を解決するためにイー様が開発していた兵装。
しかし、基礎部分は出来ていたが前述した通りジュノーンの改良のため流用されたので完成せず、フルゴールには装備されることはなかった。(当然フルゴールは拗ねた)
その外観はアレゴレカ同様に骨のような形をした翼をしており、非使用時や近接戦闘に於いてコンパクトな形へ折りたたまれる。
因みにプランのひとつに翼部分を取り外し、それぞれ基部へバスターランチャーを一問ずつの計二問取り付けたものがあるという情報があるが真偽は定かではない。