FSS─翡翠の姫君─   作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!

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FSSなのにMH同士の戦闘が全く起きないってマジ?


006:狂乱の貴公子

「ほーん、『バストーニュ』領主『ワトルマ公』失脚、後釜としてトラン連邦は『ユーバー大公』を指名ですか。

 なんまたあんな成金を? あんまり良い噂を聞かないのに……

 そういや、あの国ってなんか数年前から大統領が行方不明なんでしたっけ?」

 

 モラード師匠はご友人であるバランシェ公の診察のために留守しており、ワタクシはその留守の間の師匠のお仕事の代理のためフルゴールの建造はお休みです。

 

 朝食のジャムを塗ったトーストを齧り、テレビに映っていたニュースの内容を見て所感を述べると同じように朝食を寝癖だらけの頭でボサボサとなった髪をそのままにレイラがホットミルクを飲みながら口を開きました。

 

「お母様、ユーバー大公ってどんな人なんですか?」

 

「んー、簡単に説明すると成金のゲス野郎ですわ」

 

「簡単すぎてよく分かりませんが、悪い人って言うのだけはわからました」

 

「そんな認識で構いません。さらに詳しく説明するなら旧王族から商人に転じ、1代で大きな商会を築き上げた才覚は本物ですが素行や性根などはゲスの極みでして美しい者なら男女問わずに毒牙に書ける変態ですわよ」

 

「ひ〜……おっかないですね」

 

「実際関わっていい事なんてありませんわ。というか噂ですけど領主の座に着いたのも相当悪どいことしたらしいですし。

 でなけりゃ善政を敷いて市民からも信望厚い領主でもあったワトルマ公が失脚するわけありませんわ」

 

 改革急進派だったミッション・ルース大統領の派閥だってのも相まって恐らくは既得権益を守ろうとする保守層の策謀っぽくありますわねぇ……

 

 ん? でも、考えてみればこれはある意味で好機では? ユーバーは評判はクソですが、持っている商会の規模は商人としての人脈はかなりのもの。

 取り入ることができれば、ワタクシが祖国を取り戻した時に大いに役立つはず……

 それに、ユーバー本人も結構野心家ですし師匠のお仕事の傍らでお客さんとの雑談では何やらアイツ、騎士を集めてるってのもききましたわね……

 

 あら、あら、あらあらあらぁ? 

 

「ひょっとしてコレ……チャンス?」

 

「ふぇ?」

 

「大商人が領主となり、その領主は野心溢れ騎士を集めて力をつけている……おまけに本人は商人としての才覚は本物ですがかなりの俗物……

 ……けど、手段を選ばないせいで敵は多い」

 

 ブツブツと呟き、ワタクシの超天才的頭脳は高速で計算をはじめます。

 様々な点同士が線となって繋がり始め、降って湧いてきた現状に自然とワタクシの口角が弧を描きました。

 

「ふふ、ふふふふふ……来ましたわ!!」

 

「ひぇぇー……お母様のお顔が怖いです……」

 

「レイラ!」

 

「ひゃい!」

 

「早急にフルゴールの回収準備をしておきなさい!」

 

「えぇ!? そんないきなり過ぎますぅ!」

 

「時は金なりですわ! マスター命令です!」

 

「うわーん! 人使いが粗すぎますぅ!」

 

「泣き言言わない! 祖国奪還のための目処が立ちましたわ!」

 

 オーッホッホッホ! 転がり込んできたチャンス、ものにして見せますわー!! 

 

「てなわけで行きますわよバストーニュ!」

 

 

 

 

 自由都市バストーニュ、そこはイースター太陽系の第3惑星アドラーのトラン連邦、レント自治連合にある完全独立自由都市です。

 

 元々はワトルマ公という人物が治めていた都市なのですが、前述した通りユーバーという男が乗っ取ったらしいのですが……

 

「市街を見る限り、市民の方々にはあんまり関係なさそうですわね」

 

 乾燥した気候のため、パサついた空の下でたくさんの人達が出歩く様を見ながらワタクシは眩しい日差しに目を細めます。

 基本的に師匠の館で仕事をするかボォスの秘密基地でフルゴールの建造をしてましたのでこうして外に出るのっていつぶりかしら? 

 

「さて、領主の館はどこかしら?」

 

 手に持った観光パンフレットを団扇変わりに仰ぎつつ、大通りを進みますが人が多いですわね。

 年齢的に仕方ないにしても身長がちんまいから歩くのも大変ですわ〜! 

 

 騎士としての身体能力を行使するのもいいんですが、今のワタクシの格好はワンピースドレスですのでド派手に動けばスカートの下のくまちゃんパンツが丸見えになってしまいます。

 なので追放された身とはいえ王女ですのでそんなはしたない真似をしたとなればシンクレアになんて言われるか……

 

「想像しただけで身体がブルっちまいますわ!」

 

 二の腕をさすりつつ、何とか人の海を掻き分けていけば不意に人混みがぱったりと消えてしまいました。

 あら? と思い前を見てみれば見てるのは薄暗い裏路地でどうやら前をよく見ずに進まなかったせいで道を逸れてしまった様です。

 

「無理してあんな人混みを進むよりもこっちを進んで回り道した方が早いかしら?」

 

 後ろを見てたくさんの人混みの溢れたところに戻るよりもこっちを選んで進んだ方がストレス堪らなそうですわね。

 

「問題は明らかにカタギじゃない人らがいそうなのですよねぇ?」

 

 いちおう護身用にスカート中には光剣(スパッド)がありますけど、好き好んで人を切りたいわけじゃありませんしササッと走り抜けてしまいましょうか。

 

「よっと、ほっと、じゃーんぷ」

 

 タッタッタッ、と路地を軽快に走り曲がりくねった道を障害物を飛んだり跳ねたりして躱して進みます。

 3分ほど進んだところで、不意に前方の開けた場所で何やら人が屯をしてるのが見えました。

 

「あら?」

 

 何やらピリついた空気を感じ取り、走る足を止めワタクシはそそくさと積まれた木箱の物陰に隠れて伺いますわ。

 少し遠いですが、騎士の五感なら問題ありません。目を凝らして見てみればどうやらチンピラ数人が1人を囲んで因縁をつけてるようですわね。

 

「テメェ、今なんつった!」

 

「俺らが雑魚だと!?」

 

「舐めた口聞きやがって……ぶち殺してやる!」

 

「はぁ〜、これだから頭がスッカスカな連中は嫌だね〜。ボクちん、何度も言ってんの理解できない? 

 お前ら弱すぎ、威勢だけで使い物になんねーのよベロベロばー」

 

「「「ぶっ殺す!」」」

 

 どうやら騎士同士の喧嘩らしく、1人を囲んでいた男たちは光剣を取り出し刃を展開させますが囲まれてる本人は怖気ずくどころか逆に煽り散らかす始末。

 血管を浮き上がらせてチンピラたちは囲んでいた人物へ切りかかりましたが、次の瞬間に囲まれていた男の顔が嗜虐に歪みワタクシの背筋に悪寒が走りました。

 

 咄嗟に頭を下げればワタクシの隠れていた木箱の上部が吹き飛び、立て続けに複数の悲鳴が聞こえてきます。

 

「あひゃひゃひゃ、やっぱ雑魚じゃねーか!」

 

「あっぶな……」

 

 品のない笑い声に顔を顰めつつ、危うく首をチョンパされかけたことに冷や汗とともにワタクシは荒い息を吐き出しつつ立ち上がれば物陰の外へ出て口を大きく開けて叫びます。

 

「ちょっと! 危ないじゃありませんの!? 明らかにワタクシ狙ってましたわよね!?」

 

「ヒヒッ、なんかチョロチョロいるなーって思ったけどこりゃボクちん予想外! こんなおデコちゃんとはね!」

 

 そこに居たのは洒落たコートに胸元をはだけさせたシャツを下に着たダメージジーンズとロングブーツという出で立ちの金髪の男で足元には虫の息のチンピラ騎士たちが倒れており、今すぐ治療を施さねば早々に死んでしまうでしょう。

 

「あぁ、もう! 貴方これ以上なにかする気はあります!?」

 

「あ? 特にねーなー。ほっといてもこいつら死ぬし」

 

「あっそ! じゃあさっさと消えてくださいまし! ペッペッ!」

 

「んだよー、つまんねー。お前も騎士だろ?」

 

「貴方みたいな明らかにヤバそうなやつとサシでやるなんて冗談でしょ! 死にはしないでしょうが、明らかに大怪我するから嫌ですわよ!」

 

「───へぇ」

 

 チンピラたちに駆け寄り、すぐに怪我の具合を診察します。致命傷ではありますが、切れ味がとても綺麗ですわね……腹立ちますがこの男かなりできますわ! 

 

「すぅ……よし」

 

 お腹に力を込めて集中。両手にお腹の中のものを流し込むイメージをすれば両手に淡い光が灯り、掌をチンピラたちに向ければキラキラとしたシャワーのような灯りが降り注ぐ。

 

 苦痛に喘いでいた男たちの表情が微かに和らぎ、流れる血の量が少なくなっていきものの数分で傷口が塞がりましたがあくまでも応急処置。すぐに適切な治療を施さないといけませんわ。

 

「ぜぇ、はぁ……きっつ!」

 

「おー、すげー。どんな手品したん?」

 

「マイトとしての力の応用ですわ。師匠ならもっと綺麗に出来るんでしょうが、ワタクシじゃこれが限界……ってまだ居たんですの!?」

 

 興味深そうに覗き込む男に思わずり後ずさりをしようとします。しようとしましたが───

 

「あ、やば───」

 

 足から力が抜け、座り込んでしまいました。それどころか全身が震え酷く寒気がします。

 

「おん? どしたー?」

 

「ちから、つかいすぎ……いし、き……」

 

「あれ、結構やばげ?」

 

「うぎゅぅ……」

 

 何とか意識を保とうとしますが、それも長くは持たずその場でイーリスは目を回して倒れてしまった。

 しかし、後頭部が地面にぶつかる既ところで男……『デコース・ワイズメル』が彼女を受け止める。

 

「一応息はあるか? んー、別にボクちん放置してもいいんだけどなぁ……けど、面白そうだしユーバのとこに持ってくかぁ!」

 

 米俵のように担ぎ、デコースは愉快げに決めれば歩き出した。

 自分が切った連中は置いていくが、一応病院に連絡を入れておくのは忘れはしなかったのは一重にイーリスが彼らを治療を施したから見殺しにするのはやめておくか程度の義理ではあるが。

 

 

 

 

 

「知らない天井ですわ……」

 

 天井に吊るされたシャンデリア、触り心地のいいショーツとベッド。

 ぼんやりとした頭でワタクシは身体を起こしてみればそこは明らかに金のかかった部屋です。

 

「ここどこですの……?」

 

 左右に視線を向ければベッド脇の机の上にワタクシの光剣と光剣を吊り下げておくためのベルトが置かれており、帽子もハンガーにかけられてますわ。

 とりあえずベッドから降りて、とととと……

 

「あーきっつ……二日酔いってこんな感覚でしたわねぇ……」

 

 ベッドから降りた途端に視界が歪み、足元がおぼつかなくなり酷い倦怠感と頭痛に堪らず呻いてしまいます。

 久しく忘れていた二日酔いの感覚を思い出し、懐かしさと同時に酒なんて二度と飲まねぇという一日で破る誓いもたこともあったっけってことを思い出しましたわね……

 

 にしても。

 

「マイトの力は便利ですけど不便ですわ……」

 

 実はマイトってファティマやMHを作る以外にも人を治療することができるのです。詳しい説明は端折りますが、マイトは物質を操ることに特化した魔道士の一種でして(魔道士(ダイバー)は魔法使いのようなもの)なんかこう、SF(ファンタジー)SF(ファンタジー)することで人の病や怪我を癒せます。

 

 けど、やりすぎるとワタクシみたいにぶっ倒れてしまうので多用厳禁ですが。

 師匠ならもう少し上手くできたんでしょうが、まぁそこはご愛嬌ってことで。

 

「にしてもマージでここどこですの?」

 

 机の上に置かれていたベルトを太ももに巻いてホルダーに光剣を差し、ハンガーにかけられていた帽子を回収。

 改めて部屋の内装を見ます。調度品から何もかも高級なものですが、主張しすぎずかと言って埋もれていない。持ち主のセンスの良さが伺えます。

 

「金持ちの家っぽいですが……」

 

 体内の生命力を整えたことで頭痛や倦怠感が収まり、動くのに問題ないことを確認すると一先ず部屋の外に出ようと扉に向かいドアノブを回そうと手を伸ばした瞬間、外側からドアノブが周り扉が開けられました。

 

 入ってきた人物はワタクシの記憶に新しい人物で、ワタクシに気がつけばニヤリと笑います。

 

「お、起きてたのか? どーよ身体の方は?」

 

「このとーり元気ビンビンですわ。……貴方がワタクシを?」

 

 路地裏で見た時とは格好が変わり、上流階級の服装の男は軽薄な笑みを浮かべてワタクシを見下ろしていました。

 

「そっ。別に放っておいても良かったんだけど、ボクちんやさしーからさ〜? 子供をあんなところに放置してたら酷いことになりそーじゃん?」

 

「説得力ありませんわねぇ……どーせ、面白そうだからって思ってって感じでしょ?」

 

「あひゃひゃ! よく分かってんじゃねぇか。つか、マイトって人の感情読めんの?」

 

「いーえ、状況と貴方の性格を予測からの推測でしてよ。ここって貴方のお屋敷?」

 

「いいやぁ? ここはボクちんの雇い主……『ユーバー・バラダ』の領主館だぜ」

 

「……マジ?」

 

「マジもマジおーまじ」

 

「……貴方、ユーバー大公に雇われてるって言いましたよね?」

 

「言ったなぁ」

 

「何者ですの?」

 

「ボクちんのこと気になるー?」

 

「そりゃあの騎士たちの怪我の具合を見た限り、貴方ってかなり強いってことだけは分かりますわ。

 ただ強いだけじゃない。巧く、そして殺しに慣れてるヤバいやつです。

 だって今こうして相対しても強く感じないんですもの。ワタクシの師匠が言ってましたわ、目の前でいて脅威に感じない騎士は総じて強いって」

 

「───イヒャッ……!」

 

 男は玩具を見つけたみたいに笑い声をあげれば大仰な仕草で手を広げ。

 

「おチビちゃんの割には見る目があるみたいだな! ボクちんの名前はデコース・ワイズメル。知ってるかい?」

 

 その名乗りを聞き、ワタクシはカステポーでその異名を轟かしていた存在を思い出しました。

 

「まさか去年のダラッカ内戦でフィルモア帝国の主力MH『サイレン』を3騎撃破した『狂乱の貴公子』デコース・ワイズメルその人ですの…………?」

 

「あっはっはっ! へぇー、そこまで知ってんのか!」

 

「情報通なら誰でも知ってることですわ。……なるほど、それならあれだけの実力もあるのも納得ですの」

 

 デコース・ワイズメル、その名はカステポーにおいて悪い意味で知られており、傭兵として戦場に現れれば凄まじい活躍を上げる実力の高さに対してその性格や品性というのは下劣の極みで敵対した者の殆どは殺されています。

 

 悪行の数々からある時を境にして『狂乱の貴公子』という異名がつけられ、当の本人も気に入ってるのか自分でもよく名乗るらしいですわ。

 

 そして、ワタクシの前にそんな危険人物が立ってる事実に軽く怯みそうになりますが、一国の姫君として気圧される訳には行かず後ずさりしそうになる足を敢えて前に出せばスカートの端をつまみ、優雅に一礼をします。

 

「ワタクシはイリス・クリィムヒルトと申します。この度は大変ご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。

 気を失ったワタクシをお屋敷に運び、介抱されたことに心よりの感謝を述べさせていただきますわデコース・ワイズメル様」

 

「こりゃ礼儀正しいどーも。一先ずだいじょーぶそうならユーバーの奴がおチビちゃんを連れてくるよう言っててよ。来てもらうぜ〜」

 

「承知しました。元よりユーバー大公様に御用がありましたので好都合ですわ」

 

「へーへー」

 

 デコースはどうでも良さそうに言うとこちらに背を向け着いてこいと言わんばかりに歩きだし、ワタクシもその後に続いて歩き出します。

 さて、はて、ここからが正念場ですわよイーリスフィア・ゼノ・リガリエッテ。ユーバー・バラダに取り入り、その力を利用しワタクシが祖国を奪還するためにもね。

 




デコ助登場。
原作だとどれくらい前からユーバーに雇われたのかわかんないから捏造です
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