FSS─翡翠の雷光─   作:アマテラス、アンタちょっとガメツイよ!

7 / 7
007:オラッ!催眠!

「なんか思ったよりも簡単に取り入ることができましたわね……」

 

「何か言ったかねイリスちゃん?」

 

「いぃえ〜、流石はユーバー大公様ですわ〜! もっとじゃんじゃん飲んでくださいまし〜!」

 

「うわっはっはっはっ! 美少女からの酌は実に美味いのう!! 君もどんどん食べなさい! 美味いぞぉ?」

 

「まぁ! 是非いただきますわ! でも今はユーバー様のかっこいいお顔を見ていたいんですの〜」

 

「ほぉ〜! まだ幼いのにワシのこのイケメンフェイスを分かるとは何とも有望なこだのぉ〜!」

 

「まぁ、ユーバー様はお褒めの言葉もお上手ですのね! イリス、将来はユーバー様みたいな素敵なおじ様と結婚した〜い」

 

「うわっはっはっはっ!! 嬉しいことを言ってくれるじゃないか!」

 

 豪勢な食事が並ぶテーブルを前にして下卑た大笑いを上げてワタクシを横に侍るジャンルがジャンルなら竿役として出てきそうなでっぷりとした大男がいました。

 この男こそ現バストーニュ領主、ユーバー・バラダ大公その人です。

 

 デコースによって彼の前に通された時にワタクシは介抱された礼を程々に、彼にワタクシが予め用意していたカバーストーリーを告げたのですわ。

 

 騎士としての力やマイトとしての才能があること、故郷では騎士について理解がなく酷い扱いだったこと。

 親類のツテを辿り、アドラーにいる親類の家に転がり込んだこと。そこでマイトとしての師事をうけていたが、バストーニュでユーバーが騎士を集めてる話をきいたこと、ここでなら自分の力を活かせることを大袈裟にユーバーに言えば特に考えることなくユーバーはトントン拍子でワタクシを庇護下に入れたのですマル。

 

 流石にワタクシも余りの呆気なさに拍子抜けしましたが、ユーバーの懐に潜り込めるのなら万々歳ですわ。

 

 ってなわけで、ワタクシはユーバーにお抱えのマイトとして雇われることになったのです。

 

 そして今行われてるのはワタクシの歓迎の宴みたいなことで、ユーバーはこの後のことを考えてワタクシをどうやって閨につれていこうか考えとるのでしょうねぇ? 

 

 というか少しは考える仕草を隠しなさいな。目にありありとワタクシの身体を愉しもうと考えてるか浮かんでますわよ? 今現在もしきりにワタクシの腰に手を回したり、二の腕を撫で回してるし……手つきが生々しくて気持ち悪くってすんごく鳥肌をたってます。

 

 お姫様時代に使用人の忍者メイドからそういった演技な交渉事を習ってるから簡単には顔に嫌悪の表情を出さないように頑張ってますけど、キッチーですわ〜〜〜! 

 

 あの手この手でユーバーの魔の手を躱し、適度にユーバーを褒めちぎってヨイショし、手当たり次第に酒やら何ならを飲ませ続けてますが全然潰れませんわねコイツ……

 

「グフフフ、イリスちゃんの肌はすべすべだの〜!」

 

「うふふ、そんな触られてしまうと照れてしまいますわ〜」

 

 寧ろアルコールのせいで理性のタカが外れてきてるせいでちょっと目つきと手つきが露骨になってきてますわ! 

 ちょ、やめろコラ! やめ、やめろって! やめろっっっってんだろ!! 離せ! はーなーせーですわ! 

 

「…………仕方ありませんわ、緊急事態ってことで。オラ! 催眠!!」

 

「ぶひゃっ!? ────グゥzzZ」

 

 マイトパワーでユーバーの体内の生命力を操作! 眠気を誘発させて酒に潰れるように偽装! おら! 良い子は寝る時間ですわよ! つか、寝ろ!! 

 

 ……よし、寝ましたわね! スイマセーン! このおっさん酒に潰れたので後始末お願いしますー! 

 

 使用人にユーバー(豚野郎)を押し付け、ワタクシは宛てがわれた部屋へとそそくさと退散。きっちりと扉の鍵を閉めようやく一息つけましたわ。

 

「はー、疲れましたわ……ったく、あのオヤジ淑女の扱いがなってませわね」

 

 ユーバーのせいですっかり酒臭い服を脱ぎ捨て、身体に染み付いた臭気を洗い流すために部屋に備え付けられたバスルームへと飛び込みます。

 

 蛇口をひねり温度の調整したシャワーが床を叩き、シャワールームに水音が反響する中でワタクシは裸身を晒しながら耳に嵌めてたピアスへ触れますわ。

 すると、宝石に見えるランプが点滅しコーリーングを繰り返すのを待つこと1分弱。

 

『はい、ズルッこちらレイラインですズルズルッ。どーしましたーズルルッ?』

 

「こちらイーリスフィアですわ。レイラ、そっちはどう?」

 

『はいぃ、ズルッただ今フルゴールの搬送作業の休憩時間でカップ麺を食べようとしたところですぅズルッ。

 寂しく、味気なく、ひとりで、カップ麺をズズッ!』

 

「圧が強いですわねぇ……というか食べながら話すのやめなさいよ」

 

 イヤリング型の通話機から聞こえてくるレイラの声の圧の強さに思わず耳を塞ぎつつ、近況報告を互いに交わしますわ。

 

「とりあえずワタクシの方はユーバーの庇護下に入ることができました。少しずつあの男に取り入ってゆくゆくは持っている全てのものをいただきたいところです」

 

『ひゃあ、こっちからは見えませんがお母様悪い顔してそうですねぇ。

 私の方は噂話になりますが、なんだかジュノーに色んな物資が流れて言ってるって話ですぅ。なんでも、近々大きな戦いが起こるかもって』

 

「ふーむ、ワタクシが国を追われてから4年ですがそろそろ動き出すってことでしょうか……」

 

『戦争ってことです?』

 

「間違いなく起こるでしょ。それもそう遠くない話に」

 

 でなけりゃワタクシの国でクーなんて引き起こさないでしょうに。

 

『ひゃ〜、おっかないですね』

 

「だからこそユーバーなんて気持ち悪いやつに取り入ったのですわ。あの男の商人としての力は役立ちますもの。

 レイラ、貴方はフルゴールを持ってきたら師匠のところで待機をしておきなさい。下手にワタクシの近くにいればアイツの目に入ってしまえばろくな事にはなりませんわ」

 

『は〜い、わかりました。お母様のことはモラード様に伝えておきますか?』

 

「ワタクシの方から言っておきますわ。お世話になってるのだから、スジは通しておくべきですもの」

 

『絶対怒りますよぉ?』

 

「でしょうねぇ……でも、まワタクシには必要なことですから勘当されたらそこまでですわ!」

 

『はーい。じゃあ作業に戻るので切りますね〜』

 

「ええ。心配はないと思いますが、くれぐれも人買いに気をつけなさいよ?」

 

『わかってますよ〜』

 

「ふふっ、言ってみただけですわ。じゃあおやすみなさい」

 

『はい、何かあったら連絡しますねお母様。おやすみなさい』

 

 通話を切り外したイヤリングを化粧台の上に置き、ワタクシは通話を聞かれないように流しっぱなしだったシャワーを浴びて手早く汗を流します。

 

「ふぃー、サッパリしましたわ」

 

 デリケートな場所は死守しましたが、身体のあちこちをまさぐられたりで本当に不快でしたからね。シャワーをとにかく浴びたかったんですの。

 

「さて、師匠に連絡をいれないといけませんわねぇ」

 

 怒られますかね? やっぱり怒られますわよね〜……うにぃ……自分に非があるときのお説教って苦手なんですわよね〜……

 

 でもお世話になってる手前、必要な事ですのでやりたくない気持ちを抑えつつも連絡するワタクシだったのです。

 

『こんっっっつの、大バカ野郎!』

 

 はい、案の定メタクソ怒られてます。

 

 内容を要約すると『年頃の娘が何危ないことしてるんだ』と『アイツの評判知ってるだろ!』と『自分の身体を切り売りするようなことをするな!』ですわ。

 はい、全面的に師事の仰る通りですわ! でもでも必要なことなんですのよ!? 

 

『でももヘチマもあるか! あぁー、ったく……一応聞くが本当に何もされてないんだな?』

 

「モチのロンですわ! ベタベタ触られましたがその前に寝させましたし、いざって時はマイトパワーでどうにかしますもの」

 

『そういう事じゃ……だぁ〜、もういいや。とにかく危なくなったら逃げるんだぞ?』

 

「りょ、ですわ〜」

 

『それと、この件はしっかりもシンクレアには伝えるからな?』

 

「エ"ッ"!? ちょ、ちょっと待ってくださいまし!! 彼女にだけはやめてクレメンスですわ! 

 このことを知られたら絶対ヤベーんですのよ!? 師匠だって彼女の怖さは知ってるでしょう! よくそんな人の心がないことをできますわね!? 

 てか、彼女らの安否は不明でしょう!」

 

『そんなおでこちゃんに朗報だ。ついさっき連絡が来たところなんだが、シンクレア含むクロイツェフを筆頭に王族近衛騎士団数名がMHを強奪してコーラス王朝に亡命してきたんだとよ。その中にはお前の弟妹達もいるらしい』

 

「まぁ! それは本当ですの? 弟と妹たちが! もちろんお母様もいらっしゃいますのよね?」

 

『……いいや、女王陛下は子供や騎士たちを逃がすために残ったらしい』

 

「そう、ですか。……いいえ、心配をするのはよしときましょう。お母様はとても強い魔道士ですもの」

 

『…………家族に連絡するか?』

 

「いいえ、それはやめておきますわ。今声を聞けばきっとすぐにでも飛び出してしまいそうになりますもの」

 

 今の今まで不明だった家族の安否が知れただけでも万々歳ですわ。だから悲しそうな顔をしないで欲しいですわ師匠、ほらいつもみたいにスマイルスマイル! 

 

『そうか、お前さんがそう思うなら俺は何も言わないさ』

 

「ふふっ、じゃあ師匠。あの子たちにはワタクシは元気でやってるって伝えておいてくださいまし」

 

『わかった。必ず伝えておくさ……シンクレアにもな』

 

「ホントマジで彼女にだけは勘弁してつかーさい! シンクレアだけは! シンクレアだけはやめて欲しいんですの!」

 

『いーやダメだね。お前さんの保護者としてきっちりとスジは通すのさ。ガハハハハ!』

 

 師匠はそう言うと通話を切ってしまいツーツーという音が響くのがやけに物悲しいですわ。

 なんとも言えない気持ちになりながらも、ワタクシの胸の内は安堵と嬉しさが満ちていました。

 

「……良かった、家族が無事で」

 

 会いたい、今すぐ会いたい。

 

「でも、ダメですわ。再開するのは祖国を奪還する時ですもの」

 

 そんな気持ちを振り払い、ワタクシは改めて決意します。必ず奪われた祖国を取り返し、裏切り者共を血祭りにあげ、こんなことを引き起こしたアルルメイヤの首をこの手で切り落とすのだと。

 

「……そのためには英気を養いますわ! さーて寝よ寝よ」

 

 無駄に柔けーこの布団ならぐっすりと寝れますわー! おやすみ! 

 

 

 

用語解説

 

忍者メイド

 

近衛騎士団の諜報担当の忍者。イー様とは歳の近い幼なじみのような関係。

よく仕事をサボってはシンクレアにしばかれてる光景が城内で目撃されている。

語尾に「っす」と着くのが特徴。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

トローラ・ロージン転生(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:ファイブスター物語)

※本作は作者が読みたい原作改変を自給自足する趣味作です。感想や考察はありがたく拝見しますが、展開は作者の予定と趣味を優先して進めます。▼星団暦2988年、アドラー。▼ユーバー・バラダに雇われた傭兵騎士トローラ・ロージンは、目覚めた瞬間に自分が「もう詰んでいる」ことを悟る。▼視界いっぱいに迫る黄金の電気騎士、K.O.G.。▼本来ならここでトローラは、MHバルン…


総合評価:1520/評価:8.73/連載:22話/更新日時:2026年07月10日(金) 18:00 小説情報

偽書・ガンダム機動戦記(作者:雑草弁士)(原作:ガンダム)

宇宙世紀0079、サイド7ノアの1バンチコロニーグリーンノア在住のアルバイター、エグザベ・オリベは難民である。故郷であるサイド5ルウムを地球連邦とジオンの戦争で破壊しつくされた彼は、どうにかサイド7に流れ着き、ジャンク屋で働きつつ生活を立て直そうとしていた。しかし0079の9月18日、ジオン軍の英雄シャア・アズナブル少佐率いる特殊部隊がサイド7を急襲。エグザ…


総合評価:1858/評価:8.67/連載:54話/更新日時:2026年03月11日(水) 05:39 小説情報

愛と勇気と正義にかけて、市民をお守りいたします!(作者:イングラマン)(原作:機動警察パトレイバー)

某巡査の娘が特車二課第二小隊に配属される、原作再構成二次小説です。▼自分が読みたいがために投稿しました。▼・TVアニメ版を軸にOVA、漫画版や小説版をミックスしています。▼・転生オリ主最強です。▼・一部キャラクターの生年と経歴を変更しています。▼・作者は警察組織や軍事関係、コンピュータについてはネットで調べた程度の知識しかありません。▼以上の点を踏まえて、本…


総合評価:3050/評価:9.05/連載:17話/更新日時:2026年07月10日(金) 18:00 小説情報

アルカンフェル転生(作者:ぶーく・ぶくぶく)(原作:強殖装甲ガイバー)

※本作は作者が読みたい原作改変を自給自足する趣味作です。感想や考察はありがたく拝見しますが、展開は作者の予定と趣味を優先して進めます。▼気が付くとアルカンフェルに転生していた▼お仕置きビリビリは嫌だが、巨大小惑星の衝突は回避しないと地球丸ごと死ぬとか草。▼原作開始まで何万年?忘れない様に石板に覚えてる原作内容を書き込んでおこう。気が付いたら眠りの神殿に石板が…


総合評価:3083/評価:8.69/連載:52話/更新日時:2026年07月10日(金) 17:00 小説情報

【完結】私、ジャブローのモグラ志望って言いましたよね???(作者:むにゃ枕)(原作:ガンダム)

お前はひっこんでろ、私は安全に出世したいんだよ。▼出世すりゃあ私の持てる権力も多くなるからな。▼ジオン残党は跳梁跋扈しているが、とりあえず私はそこそこの残党を討伐してジャブローのモグラになるぜ!▼


総合評価:8158/評価:8.37/完結:24話/更新日時:2026年04月17日(金) 17:54 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>