あいぎす日記 作:石を割るのだ!
一日目
何が起こったのか分からない。
演目の途中……そう、地元の祭で演劇をやっていたんだ。
内容は、異世界召喚された勇者の王道物。
自分がやる予定だったのは巻き込まれエキストラなんだけどね。
その途中で目の前が光って、まぶしってなったら廃墟みたいなところに立ってた。
……まじで?
いや、こうして文章にして書いてみると……、いやいや、ありえない。
最近の劇は手が込んでるなぁ……。
足元にはピカピカ青色に光る石のかけらかな? そんなのが一杯落ちてるし……。
なんか敷き詰められるレベルで落ちてる。
綺麗だし、何個か拾っとこうかな!
とりあえず、今は廃墟の……家の中なのか?
石柱だけドーンと有って吹き抜けだし、元家の中だな。
学生役をやっていたので、現在服は学ランに学生かばんを装備してる。
装備って言い方もあれだけどな……。
んで、あまりにも混乱して現状を書くことによって把握、整理している。
とりあえず、人が居ない。
お腹が空いた……。
見回ってきた。
リンゴっぽい果物が外になってた。
ちなみに、外は滅茶苦茶、森。ヤバいくらい森! 見渡す限り森!!
あ、この廃墟の位置は外が一望できる高台だ。
でも、森しかないんだよなぁ……。あれぇ町内の舞台って凄いんだなぁ……。(白目)
これって食べて大丈夫かな。変な匂いとかはしないけど……。
ライターもないし、火を起こすこともできないや。
あまりにもお腹が減ったら食べようかな。
結構、風が吹き抜けるから寒い。でも学ランって中々あったかいんだな。
自分の学校はブレザーで、胸元すーすーしてたもん。
この学ラン人からの借りものなんだよなー。
……田中よ、すまないがしばらく借りるぜ。
あ、襟章と胸の校章格好いいデザインしてるな……。
うし、もうちょっと見回ってくるかぁ。
地下室を見つけた!!
風がしのげる最高!!
ちょっと埃っぽいけどベッドもある!
ついでに机もあるぜ!!!!! 書きやすいぞぉぉぉ!!!
……でも、机の上の羽ペンとインク。時代錯誤だなぁ(遠い目)
なんか読めない文字の書かれた手紙もあるなぁ。(白目)
何語だろうこれ。眠いときに書く、ミミズみたいな字だぜ。
壮大なドッキリってやつだなぁ……。
暗くなってきた。
凄い真っ暗。電気もないし、遠吠えみたいなのも聞こえる。
……こ、怖くなんかないもんね!
蝋燭とマッチは見つけた。
でも締め切ったこの部屋で点けて、一酸化炭素中毒とか為らないだろうか?
……きょ、今日のところはつけないでやるよ!
暗いし、寝る。……この妙な夢が冷めますように!!!
おやすみなさい。
P.S.
お腹が空き過ぎて、食べたリンゴみたいな果実はリンゴでした。
とても甘くておいしかったです。明日もまた食べよう!
……夢から覚めてなければ。(覚めてくれ)
二日目
……。
落ち着け。俺。
え、嘘だろ、ありえ――
(しばらく、混乱を落ち着けるような言葉が続いている)
――落ち着いた? いや、さすがに落ち着こう。
状況は最悪だ。
いや、うん。なんか俺、森に居る。
よく分からないけど森だ。
たしかに、昨日よく分からない廃墟の部屋で埃臭い布団にくるまった覚えがある。
で、目が覚めたら森だぜ。
……良くできた夢だなぁ。
とにかく、昨日あの廃墟が高台にあったことを思い出して探してみようと思った。
見える場所に無いか、とにかく探せ。
残念な結果のお知らせだ。
結果は森の木の葉っぱはとても厚く、隙間の青空しか見えんと言う結果が分かった。
木登りしてみようと思ったんだけど、この森の木ってやたらデカいんだよなぁ。
幹を抱きしめて、反対側に全然手が届かない位の太さ。
うろはあるんだけど、そこからどうしても登れない。
……という訳で、諦めた。
ザメハァ!!! とか叫んで木に頭を打ち付けてみた。
呪文が違うのか、俺には目覚めの呪文は使えんらしい。
ケタケタ笑ってる俺がいる。
――たすけて。
久しぶりに泣いた。
頭ガンガンする。
学生カバンの中に何故かリンゴがいくつか入ってる。
昨日のおいしかった奴だ。腹痛とか今無いし、たぶん普通に果物だろう。
家に帰りたい。コンビニ弁当が恋しいよ……。
日が暮れてきた。また遠吠えだ。
結構遠い。
……野犬って保健所の専門の人が乗り出してくるぐらいヤバいんだよね?
早く夢なら覚めてくれ。
見つけた大きな木のうろの中で寝ることにする。
幸い、この周りに糞とかはないから野生生物はいないんじゃないかな。
……毒虫とか嫌な単語思いついてしまった。
三日目
……眠い。
結局気になってうつらうつらしか寝れなかった。
遠吠えは近づいてこなかった。
安全かどうかは分からないけれど、俺はこの巨木のうろを中心に周りを探索してみようと思う。
カバンの中のリンゴは残り2つだ。これが無くなる前に代替の食料を発見しなくては……。
……なんで入ってたんだろうか。ピッコロさんでもいるんだろうか?
眠気と戦いつつ、自生していた葡萄のような食べ物を見つける。
これは食べれるのだろうか?
……いや、空腹と喉の渇きがひどく辛い。食べてから考えよう。
結果は、葡萄だった。……ふるーてぃーな味に涙が出て来た。
俺、葡萄系の炭酸ジュースが好きなんだ。
――また飲めるのかな……?
日が暮れる前に巨木のうろの掃除をした。
無論、虫が居ないか必死で確認した。
……アリ一匹いなかった。逆に不安だ。
遠吠えが聞こえてきた!!!
近い近いちかいっ!!!!
四日目
一睡もしてない。
遠吠えが怖くて、木の穴の奥で震えてた。
近づいたり、遠くに行ったり、近づいて来たり。
なんか不気味なギッギッギッって叫び声も聞こえてた。
アレは何だろう……? 考えても分からないし、怖いのでやめよう。
思考停止状態って奴だ。乾いた笑いすら出てしまう。
昼の間は、寝ることにしよう。
――こんな場所、とっととオサラバしたい。
違う違う違う!!!!!!!!!
何で、何でだ!!!!!
寝たら、別な場所にいる……!
――訳が分からねぇよ!!!
……カバンの中にリンゴが追加されてた。
大声でピッコロいい加減にしろ!!!って叫んだ俺は悪くないはずだ。
なんだ? 俺をどうしたいんだ!? 俺はどうすれば……!!!
暗くなってきた。
最悪だ。
遠吠えは、幸いなことにかなり遠い。初日位の遠さだ。
……だけど、寒さをしのぐ場所がない。
凍死するほど寒くはないけど、風邪を引いたら真面目に死ぬ。
この睡眠不足+空腹+気力の低下という酷な状況で引かないことを祈る。
とりあえず、木の根元に葉っぱを集めた。
それを布団代わりにして寝るのだ。今もすっぽり入っている。
現代人として初めての経験だ。……震えるほどの寒さではなくなった。
もたれ掛っている巨木の葉っぱの隙間から、満月が見える。
今日は文字が書けるな。……書いてる時が一番落ち着ける。
――なけてきた。
五日目
……どうやら、俺は夢遊病の気があるらしい。
生まれて初めて知った。――風邪はひかなかった。
とにかく、訳が分からない。
遭難した時は動くなってよく言うけど、寝たら勝手に体が動くときってどうすればいいんだ。
……カバンにはリンゴが増えてた。さすがに、飽きてきたな。
あてもなく歩いていたら、ギッギッギッという不気味な声が聞こえてきた。
……嫌な予感とはああいうものなのだろう。
背筋がぞくっとして、思わず逃げ出していた。
いい加減、訳の分からない夢から現実に目が覚めるのを待つ状況がつらくなってきた。
胡蝶の夢と言う単語が頭をよぎる。
――もしかしたら、こっちが現実なのだろうか……?
今日は穴を見つけた。
走り回ったにしては疲れがない。
頭どころか、体もおかしくなってきてるのだろうか?
……普通に考えて頭が可笑しくなったから、体の疲れを感じていないのだろう。
寝よう。
起きたらどうせ、またどこか別な地面だ。
六日目
案の定、見覚えのない場所だった。
そして、恐ろしいことが起きた。
寝れば勝手にリンゴが入ってると思っていたんだが……入ってなかった。
焦ってカバンをひっくり返したんだが、見覚えのある青いかけらが結構出て来ただけ。
ノートを読み返してみると、初日に自分が現れた足元に合ったやつだ。
……元の現実にこれがあれば帰れるのだろうか?
噛んでみると、硬くひやりと冷たかった。
――食べ物ではないようだ。
お腹すいた。
お肉食べたい。
人と会いたい。
水が、飲みたい。
……かゆ、うま。
……最後に書いたのは縁起でもないな。
ボールペンだから消せないや。
すきっ腹がつらい。せめて水でもあれば……。
日はまだ登ってるけど、寝る。
こんなこと書きたくはないけど。
ピッコロさん、頼む……!!
七日目
ありがとう。
ありがとうピッコロさん……!
場所は、綺麗な湖の畔だった。
朝起きると焚火が焚いてあった。ピッコロさん、ありがとう。
そして、その周りには肉の塊の刺さった枝が炙られていた。
飛びついて食べてしまった。
そして、泣きながら食べてると笑い声が聞こえてきた。
思わずきょろきょろ周りを見回した。
すると、なんか小人が学生カバンから飛び出してきた。
白いスクール水着にピンクな蝶々の羽を生やした手のひらサイズの女の子だ。
学生カバンはいつから妖精郷と繋がったのだろうか……。
彼女は自分のことを祝福の精霊と呼んだ。
ハッピーと言う名前らしい。
なぜか、助けてくれてありがとうとお礼を言われる。
……学生カバンの中で寝ていたので宿の恩的なアレかもしれない。
よく分からなかったが、気にしないでほしいと言って、此方からもお礼を言わせてもらった。
……会話ってこんなに嬉しい物だったんだな。涙出て来た……。
ハッピーにはまた笑われてしまった。
後、雰囲気違うね? とも。いったい何のことだろうか。
その後、ぽつぽつとハッピーと会話した。
内容は、廃墟みたいな場所に突然現れたと言う事や、一人で心細かったと言う事だ。
さすがに、後半は恥ずかしくていろいろ誤魔化しながらしゃべったけど……。
やるはずだった劇でも、巻き込まれた生徒Tみたいな配役だった。口下手なのは結構前からさ。
ただ、この世界の事には衝撃を受けた。
なんでも、千年戦争と言うクソ長い戦争が終わり、平和が訪れていたはずなのだが、最近になって魔物が復活してきたらしい。しかも、今回は王国とか幾つも滅びる規模の復活だとか。
……今更だけど、やっぱり現代の日本じゃないのか。
どう見てもそうだろうと思っていたけれど……、他人から言われると、現実逃避できないな。
俺、いったいどうしてこんなところにいるんだろうか。
遠吠えや不気味な声も魔物の声だったようだ。
……俺の直感、よく仕事した。
水浴びしてきた。
よくよく考えたら一週間も風呂に入ってなかったんだな。全然気にする余裕もなかった。
学ランが汚れてるだろうと思ったら全然汚れてない。新品みたいだ。
田中の学ランすげぇな。
……これから、俺はどうすればいいんだろうな。
暗くなってきたので、ハッピーに俺のことを任せてみる。
……説明で夜の俺が目覚める可能性があるとか言うと、少しばかり卑猥な感じがした。
もしかしたらピッコロさんに会う可能性もあるのか……、それも伝えておこう。
いつも以上に、ウトウトする。何度か思わず、誤字してるのが笑えるな。
小さい精霊だけど、人が居るっておちつくし、あんしんできる――。
ザメハ。DQの目覚めの呪文。
精霊。一発で聖霊とか脳内変換できない。