イナイレGO1〜フィフスセクターぶちのめします!〜 作:松兄
雷門とアルテミスが仲良く夕飯食べてます(笑)
そして、彼女たちがシードをやってる理由が明らかに……。
激闘の汗を流した夕暮れ時。アルテミスの遺跡エリアには、心地よい料理音とともに香ばしいスパイスの香りが漂っていた。
三国「おい倉間! にんじんの切り方がでかいぞ。火が通りにくくなるだろ!」
料理上手な三国さんが周りに具材の切り方の指示を出す。
倉間「大きい方が食べた気がするんですって!」
カレーの大鍋の前に集まっていたのは、雷門とアルテミスの面々だった。
昼間は「フィフスセクターの究極シード」と「管理サッカーを打ち破る者たち」として壮絶に牙を剥き合ったはずのふたつのチーム。
だが、そこに敵意の欠片すらなかった。いや、この両チームには初めから敵意はなかったと言っていいだろう。
虎次朗の、『骨を砕かれかねない一撃』にも怯まず立ち向かい、最後まで勝利を諦めなかったアルテミスの少女たち。
雷門のメンバーは、彼女たちをフィフスセクターの手先などではなく、紛れもない「真のサッカー選手」として完全に認めていたのだ。
小春「……ふふっ、みんな楽しそう」
気弱な小春が、煮立つ大鍋をのぞき込みながら小さな声で微笑む。
錦「ああ。みんなでワイワイ作る飯が一番うまいんじゃ!」
隣で薪をくべていた錦が、笑う。小春は少し照れくさそうに、でも嬉しそうに頷いた。
彼女たちは親に売られ、孤児として拾われ、勝つことだけを強要されてきた。
そんな少女たちにとって、誰かと笑い合いながら食事を作る時間など、生まれて初めての経験だった。
朱里「ほら、アンタもボサっとしてないで手伝いなさいよ!」
強気な朱里がニンジンを片手に神童先輩突っかかってくるが、その表情は柔らかい。
神童「ああ、料理したことなくてな……教えてくれないか?」
朱里「仕方ないわね……」
苦笑しながら包丁を握る神童先輩の横顔と、料理を教える朱里。
そしてキャプテンの花帆は少し離れた場所から料理の火加減を見ている虎次朗を静かに見つめていた。
料理は火入れが命と言っていいほど重要な火加減。虎次朗の料理のうまさはあの炒飯で知っていた。
花帆(…………………)
昼間の試合で自分たちの化身すら破り点を奪い取り、最後には自陣から撃ち込んできたの圧倒的な覇気。
そして今、仲間の真ん中で照れくさそうに笑う温かさ。
花帆(やっぱり、すごいな……伊月くんは)
胸の奥がほんのりと熱くなるのを感じながら、花帆はすりおろした隠し味のリンゴを鍋へと投入した。
花帆「天馬くん、味見してみて」
天馬「あ、はい! ……うわっ、すごく美味しいです、花帆さん!」
目を輝かせる天馬の姿に、アルテミスの面々からも、雷門の面々からも自然と笑みがこぼれ落ちる。
今度は大きな鍋の周りで食事を分け合う。
過去の傷も、フィフスセクターの呪縛も、ぐつぐつと煮込まれるカレーの湯気の中に溶けて消えていくようだった。
沈みゆく夕日がゴッドエデンの海を茜色に染め上げる中、少年少女たちの賑やかな笑い声が、どこまでも高く響き渡っていた。
―――そして、
虎次朗「できたぞ! 米は大丈夫か?」
桜「任せなさい! 問題なしよ!」
車田「みんな、盛れたかー? いただきます!」
雷門&アルテミス『『いただきます!』』
大盛りのカレー皿を掲げた車田先輩の号令とともに、浜辺に威勢のいい声が響き渡った。
熱々のカレーを頬張り、あちこちで「うまい!」「ちょっと辛いぞこれ!」と賑やかな声が上がる。
そんな中、花帆は自然な動作で虎次朗の隣のスペースを確保していた。
少し顔をほころばせながら、一口ずつ大切そうにカレーを口へと運んでいる。
朱里や飛鳥、小春たちも雷門のメンバーと並び、昼間のプレースタイルや互いの技について笑い合いながら談笑していた。
そんな和やかな空気の中、ふと疑問を抱いた神童が、静かなトーンで問いかけた。
神童「……なぁ。失礼なことを聞くかもしれないが、なぜ君たちほどの選手が、シードなんてやっているんだ? 君たちのサッカーには、フィフスセクターの言う『管理』なんて歪んだものは感じられなかった」
一瞬、周囲の雑音がすっと引いた。神童の言葉に、アルテミスの面々は一息置くと、静かに視線を交わし合う。
美咲「あー……それね」
朱里がスプーンを皿に置き、苦笑いを浮かべた。
朱里「別に隠すようなことでもないんだけどさ。私たち、小さい頃に親に金で売られたり、行くあてのない孤児だったところを拾われた身なのよ」
神童「っ……!」
神童の顔から一気に血の気が引いた。
踏み込んではいけない過去に触れてしまったことに気付き、激しい後悔が押し寄せる。
神童「す、すまない……! そんな事情を知らずに……っ」
花帆「いいのよ、神童くん。謝らないで」
狼狽する神童を制するように、花帆が優しく首を振った。
花帆「命を救われて、ここまで育ててもらった恩はあるわ。だから組織に従ってはいるけれど……だからってフィフスセクターのやっていることが正しいなんて、全員これっぽっちも思っていないの」
朱里「そうそう!」
朱里が腕を組み、ニッと笑ってみせる。
朱里「今日アンタたちとやったサッカー、久しぶりに心の底から楽しかったわよ。やっぱりサッカーってのは、こうやって熱くなって、自由にボールを追いかけるもんでなくっちゃね!」
小春「うん……すごく、楽しかった……」
小さく頷く小春の瞳にも、「シード」としての陰りはなく、純粋にサッカーを愛する一人の少女の光が宿っていた。
そのやり取りを、少し離れた場所から見守っていた円堂、風丸、吹雪、壁山、不動そして鬼道たち大人の面々。
円堂(親に売られ、組織に利用されながらも……こんなにも真っ直ぐサッカーを愛しているのか)
円堂は胸を締め付けられるような想いとともに、握りしめた拳にぐっと力を込めた。
恩義と歪んだ管理の狭間で揺れる彼女たちを、このままゴッドエデンという孤島に、フィフスセクターの呪縛の中に縛り付けておいていいはずがない。
風丸「……どうにかしてやりたいな、円堂」
風丸が低く呟き、鬼道も静かに眼鏡の奥の瞳を光らせる。
円堂「ああ……絶対に、あいつらを自由にしてみせる」
円堂の強い言葉が、夜の風に溶けていった。
目の前で笑い合う虎次朗や天馬、そしてアルテミスの少女たちの未来を守るため、彼らの大人としての決意はより一層固く燃え上がっていた。
― つづく ―
花帆たちのシードをやってる理由。いかがでしたか?
恩はあれど、やってることを全面的に正しいと思える様な組織に都合のいい人間ではなかった花帆たち。
なにかきっかけがあれば簡単に離反しそうな感じですね
次回は月曜日の夜0時(今日の夜)に投稿します!