イナイレGO1〜フィフスセクターぶちのめします!〜 作:松兄
ゼロ戦はこの次からですね
翌朝、ゴッドエデンの朝空の下、雷門イレブンはアルテミスの少女たちとの練習のために遺跡のグラウンドへと向かった。
―――だが、そこに彼女たちの姿はなかった。
虎次朗「……おかしいな。いつもなら花帆たちがもう来てるはずなのに」
虎次朗が首をかしげる。周囲を探し回るものの、人影どころか足跡すら残されていない。
昨夜の温かな静けさとは打って変わり、不気味なほどの沈黙が砂浜とジャングルを支配していた。
―――その時だった。
ザザッ……ガガッ……!
島中に設置されたスピーカーから、耳を刺すノイズが響き渡った。
続いて聞こえてきたのは、冷酷で重苦しい男の声——ゴッドエデンの教官、牙山だった。
牙山『雷門イレブンの諸君。これより我が指示に従ってもらう。島の中央に位置するゴッドエデンスタジアムまで来てもらおうか。……もし来なければ、この裏切り者どもがどうなるか——』
花帆『——来ちゃダメッ! 天馬くん、虎次朗くん、来ちゃダメぇぇっ!!』
悲痛な花帆の叫び声が響き、直後に激しい打撃音と短い悲鳴が重なる。
牙山『シードのくせに提示された任務を怠り、敵と馴れ合った馬鹿者どもの処分を見たければ、すぐに来い』ブツッ……!
無機質な音とともに放送が切れた。
天馬「花帆さん……! 美咲さんたち……っ!」
天馬が拳を強く握りしめ、胸を打ちつけられるような衝撃に顔を歪めた。
自分たちを鍛えるため、そして自分たちの友として笑い合ってくれたからこそ、彼女たちは「裏切り者」として牙山の手にかかろうとしている。
アルテミスの少女たちはフィフスセクターのシードだ。敵組織の人間と言ってしまえばそれまでかもしれない。
だが——
虎次朗「迷う必要なんて、最初からねえだろ」
静かに前に出たのは、虎次朗だった。その瞳には、地獄の業火のようなのような凄まじい怒りと確固たる闘志の炎が宿っていた。
虎次朗「あいつらは俺たちの仲間だ。サッカーを愛する、ただの最高の友達だ。助けに行かない理由なんて……どこにもねぇ!!」
神童「……ああ、その通りだ!」
キャプテンが強く頷き、車田先輩や錦先輩、霧野先輩たちも一斉に鋭い視線をスタジアムの方角へと向けた。
昨夜、同じ鍋を囲み、語り合った少女たちを見捨てる選択肢など、雷門イレブンの辞書には初めから存在しなかった。
神童「みんな、行くぞ! アルテミスを救い出すんだ!!」
雷門『おうッ!!』
円堂や風丸たち大人が力強く見守る中、雷門イレブンは一切の躊躇なく、密林の奥深く——決戦の地『ゴッドエデンスタジアム』へと向かって一斉に駆け出した。
― ゴッドエデンスタジアム ―
虎次朗「ここか……」
重厚な鉄の扉を押し開け、雷門イレブンが踏み込んだ『ゴッドエデンスタジアム』。そこに広がっていたのは、異質な熱気に満ちた狂気の空間だった。
シードたち『フィフス! フィフス! フィフス!』
地鳴りのような大歓声。
すり鉢状の観客席を埋め尽くしていたのは、この島で過酷な選別を受ける何千人もの究極シード候補生たちだった。
感情を殺し、勝利の機械となることを叩き込まれた少年少女たちのコールが、スタジアム全体を激しく揺らしている。
そしてピッチの脇——巨大な鉄の檻の中に、アルテミスの11人は囚われていた。
天馬「花帆さん……! みんな……っ!」
天馬が叫ぶ。惨めな姿で身を寄せ合う少女たち。
虎次朗たちの姿を捉えた瞬間、花帆は縋るような目を向け——次の瞬間、悲鳴のような拒絶の声を上げた。
花帆「なんで……なんで来たのよっ!? 私たちはシードなのよ!? 敵なのよ……っ! ほっとけばよかったじゃない!!」
檻の隙間から細い指を突き出し、涙を浮かべて叫ぶ花帆。
朱里も、小春も、麗奈も美月も、恵梨香も、激しい怯えに身体を震わせながら必死に帰れと首を振る。
自分たちのせいで雷門が危険に晒されることへの、痛烈な拒絶と恐怖。
―――だが、虎次朗はその言葉を鋭い眼光で真っ向から突っぱねた。
虎次朗「——んなこと知るかよッ!!」
スタジアムの歓声を掻き消すほどの、力強く揺るぎない咆哮。
虎次朗は前に踏み出し、そこに宿る強い意志で花帆の瞳を正面から見据えた。
虎次朗「シードだろうが敵だろうが関係ねぇ! 俺たちと一緒にサッカーをして、同じ飯を食ったろ! 仲間が苦しんでんのに見捨てるようなマネができるかよ……ッ! 待ってろ、絶対に助けてやる!!」
花帆「虎次朗くん……」
花帆の言葉が詰まる。その力強い言葉に、美咲も飛鳥も息を呑み、涙で濡れた瞳に小さな希望の光を宿させた。
神童「みんな、行くぞ!!」
神童の叫びと同時に、雷門イレブンは纏っていたジャージを一斉に脱ぎ捨てた。
現れたのは、黄と青の誇り高き雷門のユニフォーム。
誰一人として恐怖に足すくむ者はいない。全員が牙山と、その傍らに控える最悪の敵を見据え、即座に戦闘態勢を整える。
白竜「ふっ、愚かな……」
シュウ「天馬、君に本当のサッカーを教えてあげるよ」
天馬「シュウ……!」
対峙するのは、アンリミテッドシャイニングとエンシャントダークの精鋭によって編成された、フィフスセクター究極の混成チーム——『ゼロ』。
牙山「行け! チーム・ゼロ! 雷門を叩き潰せ!」
ゼロ『はい!』
虎次朗「行くぞぉっ!」
雷門『おおっ!!』
アルテミスの少女たちの未来と、真のサッカーの誇りを懸けた、最終決戦の死闘がいま、幕を開けようとしていた。
― つづく ―
アルテミスを助けるため……そしてフィフスセクターの管理に風穴を開けるためにも、絶対に勝てよ、雷門!