イナイレGO1〜フィフスセクターぶちのめします!〜 作:松兄
早朝の新聞配達、豆腐屋の清掃、八百屋の荷運び——。
11人の生活費と美味しいご飯のために、虎次朗が毎朝午前四時から泥みまみれになって汗を流していたとある朝。
―――午前七時三十分。
両手いっぱいに八百屋からの貰い物の野菜と、豆腐屋のお裾分けを抱えた虎次朗が、いつものように息を弾ませて木枯らし荘の玄関を開けた。
虎次朗「ただいまー。秋さん、今日の野菜と豆腐……」
靴を脱ぎ、食堂のドアを開けた瞬間、虎次朗の足がぴたりと止まった。
いつもなら賑やかな笑い声と朝食の匂いで満ちているはずの食堂が、静まり返っている。
長テーブルを囲むように座っているのは、アルテミスの11人全員(それと天馬)。
その全員が、じっと虎次朗のことを見つめていた。
花帆の目元は真っ赤に腫れ上がり、朱里は腕組みをして拳を握り締め、美咲と麗奈は今にも溢れ出しそうな涙を必死にこらえている。
虎次朗「……え? 何、みんな揃って……? 俺、なんかマズいことしたか……?」
冷や汗を流しながら首を傾げる虎次朗の背後から、秋がそっと苦笑いを浮かべて声をかけた。
秋「ごめんなさいね、虎次朗くん。……バレちゃったの」
飛鳥「……虎次朗くん」
静寂を破ったのは、普段は穏やかな飛鳥だった。
声は低く、けれど震えている。
飛鳥「毎朝四時に起きて……新聞配達して、豆腐屋さんの掃除して、八百屋さんで重い荷物運んでたって……本当?」
虎次朗「っ……!」
虎次朗は思わず抱えていた段ボールを落としそうになった。
虎次朗「な、なんでそれを……」
朱里「なんでじゃないわよ、このバカ!!」
朱里が立ち上がり、机をガタッと鳴らして虎次朗へ詰め寄った。
朱里「毎朝毎朝、アタシたちが気持ちよく寝てる間に、身体削ってバイト掛け持ちしてたって!? 中学生が、しかも部活もやってる奴が、そんな生活して無事でいられるわけないでしょうが!!」
花帆「朱里の言う通りだよ……!」
花帆がボロボロと大きな涙をこぼしながら、虎次朗のジャージの胸元に顔をうずめた。
花帆「どうして言ってくれなかったの……!? アタシたち、虎次朗くんに苦労させるためにここに来たんじゃないのに……! アタシたちが美味しく食べてたご飯も、お豆腐も、全部虎次朗くんが汗流して貰ってきてくれたものだったなんて……っ!」
美咲「私たち……虎次朗くんに甘えっぱなしで、何も知らなくて……っ」
美咲も涙を拭いながら声を詰まらせる。11人全員の瞳から溢れる涙と、痛烈なまでの思いやり。
自分のために怒り、自分のために泣いてくれる彼女たちの姿に、虎次朗は胸が締め付けられる思いだった。
虎次朗は溢れそうになる感情を抑え込み、ふっと息を吐くと、いつもの真っ直ぐな瞳で彼女たちを見つめ返した。
虎次朗「……言ったらお前ら、絶対遠慮するだろ。ご飯も遠慮して食わなくなるし、気にして縮こまっちゃうだろ。……俺はそれが嫌だったんだよ」
花帆「虎次朗くん……」
虎次朗「俺が啖呵切ってお前らを引き取ったんだ。お前らが毎日腹いっぱい飯食って、安心して笑って学校通って、サッカーできる環境を作るのは……俺の義務なんだよ。商店街のおじさんたちだって、俺の頑張りを認めて手伝わせてくれてんだ。俺はツラいなんて一度も思ったことねぇよ」
どこまでも愚直に、自分を貫こうとする虎次朗。
その頑固さに、3年生である優里が呆れたように、けれど心底愛おしそうにフッと微笑んだ。
優里「……ほんと、どこまでもカッコつけるんだから、あなたは」
優里はゆっくりと立ち上がると、虎次朗の頭を撫でた。
優里「でもね、虎次朗。アタシたちも黙って守られてるだけの『お荷物』じゃないの。……これからは、朝の家事も、できること全部アタシたちが分担する。あなたひとりにカッコつけさせないから」
小春「あ、アタシも……!」
小春がオドオドしながらも前に出た。
小春「虎次朗くんが朝バイト行くなら、帰ってきた時に最高の朝ごはんができてるように、朱里ちゃんたちと準備しておくから……!」
恵梨香「私は、虎次朗の体をケアするストレッチメニューを組むわ」
桜「朝のトレーニングを兼ねて、八百屋の荷運びなら私も手伝う」
歩美「私もやるわ!」
飛鳥「私も!」
美月「寝ぼけてる場合じゃないね。私も早起きするよ」
麗奈「……まったく。これからは私たちが、アンタの『裏の大黒柱』になってあげるわ」
と麗奈が自信満々に胸を張った。
11人の強い意志と、溢れんばかりの愛に包まれ、流石の虎次朗も参ったように頭をかいた。
虎次朗「……お前らなぁ。俺が引き取ったのに、なんで俺が世話焼かれてんだよ」
花帆「当たり前でしょ? 私たちは『仲間』であり、『家族』なんだから!」
花帆が涙を拭い、虎次朗の手をキュッと握り締める。
秋が温かいお茶をテーブルに置きながら、優しく微笑んだ。
秋「ね? 虎次朗くん。一人で背負う必要なんてないの。この子たちはね、あなたと一緒に背負いたいのよ」
虎次朗は手元の豆腐と野菜を見つめ、それから自分を囲む11人の最高の笑顔を見渡した。
胸の奥から湧き上がってくるのは、疲れなんて一瞬で吹き飛ぶほどの温かいエネルギーだった。
虎次朗「……わかったよ。じゃあ、これからはお前らにも甘えさせてもらう。……その代わり、飯は今まで通り遠慮なく食えよ?」
花帆たち『もちろん!!!』
元気に響き渡る11人の声。
朱里と美咲が手際よく温め直した味噌汁と、香ばしく焼けた油揚げがテーブルに並べられる。
みんな『いただきまーす!!!』
朝の光が差し込む木枯らし荘の食堂。
早朝の泥臭い汗と涙を乗り越えたみんかの絆は、また一段と強く、温かく、決して解けないものへと、深まっていったのだった。
― つづく ―
【アルテミス】の少女たちにて、画像あります。女の子たちの中で誰が気になりますか?
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相澤花帆
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加山美咲
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古谷飛鳥
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平沢小春
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葉山朱里
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剣崎優里
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司馬麗奈
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八神恵梨香
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葛城美月
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木島歩美
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城戸桜