リスポーンスキルで原作を破壊する男、信仰され執着されドン引きされ曇られ脳を焼く   作:はっかいだー

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1 破壊神は今日も征く

 俺が大好きだったゲームの結論ビルドは『デメリットマシマシリスポーン初期取得ビルド』だった。

 このゲームはゲーム開始時に主人公の初期ステータスをビルドする。

 この時、デメリットを得る代わりに初期ステや初期スキルに割り振れるポイントのボーナスを得られるスキルが幾つか会った。

 ステータスも、最初はすべてのステータスに10振られているのだが、これを1にすることが可能。

 結果として、結構な量の初期ポイントを手に入れることが可能になっている。

 そこで取得できるようになるのがスキル「リスポーン」だ。

 

 ぶっちゃけこのスキル、最初は死にスキルと思われていた。

 このゲーム、最上位難易度はハードコア――いわゆる一度死んだらデータが消滅する仕様になっている。

 しかしリスポーンスキルがあれば、このデータ消滅を免れることができるわけだ。

 それだとハードコアの意義が薄れるし、何よりそれ以外の難易度では普通にリスポーンが可能だ。

 

 ただ、ゲーム開始してすぐ、このリスポーンが通常のリスポーンとは仕様が違うと判明した。

 とはいえその時点ではこれを利用できるほど、プレイヤーに知見がなく、死蔵されていたのである。

 それがゲームについて理解が進むとともに、使えるんじゃないか? リスポーンスキル……となっていった。

 理由はまあ色々あるのだけど、問題はどうやって初期スキルとしてリスポーンを取得するか。

 リスポーンは初期取得を逃すと、次に取得できるのはゲーム終盤。

 流石にこのタイミングでリスポーンスキルが必要になることはない。

 絶対に、最初期の段階でリスポーンを取得する必要があった。

 ただ、そのために取得するスキルをどうするか。

 これがプレイヤーにとっての課題だった。

 

 無数にあるデメリットスキルはその多くが、ゲームの進行に支障をきたす代物ばかり。

 特に組み合わせて取るとなると、非常に繊細なスキル選択が求められる。

 それでもなんとか、プレイヤーたちは検討を重ね――ついに完成した。

 

 それが、例の『デメリットマシマシリスポーン初期取得ビルド』。

 無数のデメリットスキルを取得しながら、ギリギリでゲームが破綻しないように工夫されたそれは、まさに芸術。

 これほど美しいビルドは、おそらくこのゲームに存在しないだろう。

 かくして、結論ビルドは完成した。

 素晴らしいのはこれが、難易度ハードコアでも使えるということ。

 

 すなわち――――もしゲームの世界に転生した場合、取得するビルドはこれ一択というわけだ。

 ゲームと違って、現実になったらリスポーンはないからね、当然だね。

 

 

 ○

 

 

 その日も俺は、レベリングのために”ギルドホーム”を訪れていた。

 人の活気と、ダンジョンを目指す者たちの熱気。

 それらが複雑にひしめき合う、冒険者の拠点。

 この空気が、俺は好きだ。

 なんたってここは夢の集まる場所

 ”アスピレイション・フロンティア”。

 通称アピフロの世界の中心とも言える場所なんだから。

 とか思いながら、視線を周囲に彷徨わせていると手元がおろそかになってしまうもの。

 

「おっと、すまん」

「あ、ご、ごめんな――」

 

 もともと人が多かったのも相まって、人とぶつかってしまうのはある意味必然といえる。

 ただ、問題はそれで俺のフードが取れてしまったことだろう。

 フードと口元を覆うマスクの二つがないと、俺の容姿は目立って仕方がないというのに。

 

「さ……い」

 

 ぶつかってしまった少女が、段々と語気が弱くなっていくのと比例するように、俺の周囲から少しずつ喧騒が消えていった。

 まぁ、そりゃそうだろう。

 頭にはぐるぐる巻きの悪魔の角、髪は二色で、目もオッドアイ、口はギザギザ。

 更にはこれら全体に「邪貎」と呼ばれる見たものを恐怖させるパッシブスキルまで付与されている。

 これを見て、言葉を失うのはあまりにも自然なことだ。

 とはいえこれらのスキルって、対人交渉系の判定に不利になるけど、別に隠しステの”魅了ステータス”が下がるわけじゃないんだよな。

 要するに見てくれは悪くない。

 その辺りも、このビルドの完成度の高さを物語っているというべきか。

 まぁ何にしても、そんな俺を見て、少女がぽつりと零す。

 

「――――破壊神”ユークリ”様……」

 

 ユークリ、元は俺のハンドルネーム兼プレイヤーネーム。

 スキルをビルドする際に名前入力を求められたので、この名前を入力した。

 それが現在の、俺の名前である。

 

「悪かったな」

「ひっ」

 

 言いながら、フードを被り直す。

 少女は明らかに恐怖していたが、まぁ好感度は下がらないから問題ない。

 魅了ステータスが低いと声をかけるだけで嫌われるんだが、幸いその心配はいらないからな。

 世の中やはり顔がよければ多少……多少? の欠点は誤魔化せるものなのだ。

 周囲の視線は相変わらず俺に向いているけれど、何も起こらないと分かればそのうちこの沈黙も元通りになるだろう。

 俺は依頼ボードの方に向かうと、複数張り出されている――いわゆるサブミッションを一つずつボードから引っ剥がすと受付に向かった。

 

「すいません、この依頼を受けたいんだが」

「は、はい……これを全部!?」

 

 なんだ、いつもは全然気にせず受理してくれるのに。

 さっきので怖がって、意識してしまっているのだろう。

 まぁ怖がっているだけなので普通に受理してくれた。

 ゲームでもギルドの受付は常に事務的に処理してくれるからな、色々と。

 

「おいおい、受けれる依頼片っ端とか……何を破壊するつもりだよ、あの破壊神」

「やべぇな……今日中にダンジョンから魔物が消えるんじゃねぇか?」

 

 ざわざわと、周囲のささやき声が聞こえてくる。

 それに対して感じるのは若干の気恥ずかしさと、誇らしさと――それからもう一つ。

 前世からあまり人付き合いが多くない方のオタクであったため、注目されることは苦手だ。

 とはいえ、今こうして”破壊神”として注目を集めるのは俺がこの世界でそこそこ長く活動しているから。

 多少なりともゲームの頃からこの世界にのめり込み、愛着があるからこそ俺は恥ずかしながら心地よく思ってしまうわけだ。

 ただ、もう一つ――

 

「おお、破壊神がダンジョンに潜るぞ」

「……恐ろしいな、今度は何をしでかす気だ?」

 

 ――()()()()()が、多少俺の心のなかにはあるのだった。

 

 

 ○

 

 

 それからだいたい1時間後、俺は宿のベッドの上で目覚めた。

 数秒ほど、ぼーっと天井を眺める。

 

 

「死んだ」

 

 

 リスポーンである。

 ダンジョンに入ってからたった一時間、俺は見るも無惨に死に晒し、リスポーン場所である宿に戻っていた。

 いやぁガッツリ死んだね。

 はっきり言おう、既定路線である。

 最初から死ぬつもりでダンジョンに潜りました、今日。

 ただまぁそれでも、あれだけ俺の動向を気にしていた冒険者達に、実はあっさり死んでましたとか情けなくて言えないよ。

 まぁそもそも、死んだはずなのに

 

 目的は、先日ダンジョンの奥にあると判明したとある装備。

 他の冒険者達もガッツリ狙っているだろうけれど、これはどうしても俺にとって必要なものだったのだ。

 手の中にある、黒い刃の短剣を見ながら笑みを浮かべる。

 

「取れたぞぉ、漆黒破剣……これが欲しかったんだぁ」

 

 死んだ時手に持っていたので、リスポーンした時もそのまま手の中にあったのだ。

 このリスポーンスキルの仕様、”装備アイテムはロストしない”という特性を利用して確実に持って帰ってきたのである。

 現実になると痛みで武器を手放してしまってロスト、とかあるので気が抜けない。

 流石にもう()()()()()()()()()()()()()()()けど、武器を手にしたまま死ねるかは反射みたいなところもあるので、細心の注意が必要だ。

 あと、誰かに見られてないかどうか。

 

 ――何にしても、今日も今日とてリスポーンスキルはやはり神だ。

 この世界に転生するとわかった際、これを取得して本当によかった。

 俺は今、最高にこの世界を満喫している――!

 

 

 ○

 

 

 ”破壊神”ユークリ。

 その破滅的な相貌と、圧倒的なまでのダンジョンに対する執着からそう呼ばれていた。

 彼はダンジョンに対して以上に執着している。

 一日に、何度も何度もダンジョンへ潜っては脱出を繰り返しているのだ。

 脱出のためには、多少値の張るアイテムが必要で、普通ユークリのように湯水のごとく使うことは出来ない。

 

 加えて、ダンジョン内での戦い方も異様だ。

 まるで死を畏れていないかのように、彼は振る舞っている。

 一度戦闘を生で見た冒険者は、肉を切らせながら激しく戦闘を繰り広げる彼に恐怖するという。

 恐ろしいのは、彼が笑っているということだ。

 彼はフードとマスクで顔を覆っている。

 それにもかかわらず、笑っていると解ってしまうほどに獰猛に魔物へ食いかかる。

 あまりにも――あまりにも異様な光景であった。

 

 ――そして何より、彼が破壊神と呼ばれるのは彼を信奉するものがいるからだ。

 その圧倒的なまでのダンジョンへの執着は、ダンジョンに夢を抱いてやってくるものにとっては劇毒過ぎた。

 

 先ほど彼とぶつかった少女――リスベルも、その一人。

 否、先程その一人に()()()

 だって、あの顔は確かに恐ろしいけれど――美しかったから。

 リスベルは面食いであった。

 

 かくして、今日も今日とて信者を増やしながら、多くの冒険者にドン引きされ、中には曇らされたり執着されたりしながら。

 彼は多くの冒険者の――脳を焼いている。

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