リジェネレイト・トリップ~アルとアイザの星穹旅行記~   作:自由山明

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2話 星穹列車メンバーとの出会い

 五人についていくことはや数分、アイザたちが避難している場所に到着した。

 主制御部と呼ばれているらしいこの場所では、防衛課の人たちや職員さんが慌ただしく動いているが、その顔には戦地にいるものとは違うどこか安堵の表情がある。

 

 どうやらここの安全は保たれているらしい。

 先の戦闘で気絶した灰髪の少女(あとから聞いたが星さんというらしい)がすやすやと眠る傍らで四人と話すことになった。

 最初に、赤髪の女性が喋り始める。

 

「私は星穹列車のナビゲーター、姫子よ。さっきはありがとう、貴方の戦いぶりもあって手早く終末獣を倒せたわ。そっちのお嬢さんも研究員の誘導、感謝するわ」

 

 次に、星さんの暴走を止めた茶髪の男性が落ち着いて喋り始める。

 

「俺の名前はヴェルト・ヨウだ。よろしくな」

 

 そして黒髪の青年が短く挨拶する。

 

「俺の名前は丹恒だ」

 

 最後にピンク髪の少女が明るく挨拶する。

 

「ウチの名前は三月なのか、よろしくね!」

 

 向こうの自己紹介が終わったので今度はこちらの番。

 僕は若干緊張しているが、アイザはそんなのどこ吹く風と言わんばかりに堂々としている。

 

「僕の名前はアルティマ・ライガー。アルって呼んで」

 

「私の名前はアイザ・ライガーです。以後お見知りおきを」

 

 お互いの自己紹介も終わり、ヴェルトさんは用事があると言って去っていった。

 そして、星さんが目覚めるまでしばらく休憩となった。

 

「アル君にアイザちゃん、あなた達はここの人じゃないようだけど、一体どこから来たの?」

 

 うっ、痛いところを突かれた。

 しかし、姫子さんに悪意や疑いの目はなく、単純に聞いているだけよのようだ。

 

(マスター、ここは正直に話しましょう。彼女の終末獣に対する行動からして一定の信用が持てます)

 

(そうだね、いい人と遭遇できるチャンスは滅多にないしこの機会を逃すわけにはいかない)

 

「僕たちは旅をしていた途中にワームホールに入り、吐き出された場所がこの場所なんです。なのでこの辺りの事は一切わかりません」

 

 そう言うと、姫子さんは数秒思考し、やがておもむろに喋り始める。

 

「そうなのね……この辺りを知らないと言っていたけどスターピースカンパニーは知っている?」

 

「知りません」

 

「……カンパニーを知らないとなると相当遠い所から来たのね……いったい何が原因なのかしら? でもそうなると、あんた達は行く当てがないという事になるわね?」

 

 まあ、端的に言えばそう言うことになる。

 ちょっとやそっと木偶田伐とは思えないが終末獣のような存在のいる宇宙だ、そんなイレギュラーがあるかあるかはわからない。

 間違っていないのでアイザと一緒に頷く。

 

「なら、私たちと一緒に星穹列車に乗らないかしら? 宇宙ステーションのホームで見たでしょう? あれには星々を渡る力があるから、旅をしていけばもしかしたらあんた達の故郷の情報も得られるかもしれないわ」

 

 故郷は……ワームホールの向こう側……そのさらに外にある世界の壁の外だから正直言って情報は期待薄だ。

 しかし、僕は姫子さんの口から出た「旅」という言葉に強く心を惹かれた。

 この世界は危険なことも多いようだが、同時に面白いこともたくさんありそうだ。

 このチャンスを逃す手はない。

 

「良いんですか? ではお言葉に甘えて快く乗らせていただきます! アイザは?」

 

「もちろん、マスターにお供します」

 

「そう! じゃあ決まりね」

 

 話も終わり、しばらく姫子さんと学術的な話をしていると、どうやら星さんが目を覚ましたようでこちらにゆっくりと近寄ってきた。

 

「これで揃ったわね。そろそろ私が待っている人も来るはずだわ」

 

 姫子さんがそう言った矢先、背後から球体関節を搭載したロボットが歩いてくる。

 そのロボットは僕たちのことは微塵も気にしていないと言わんばかりに喋り出す。

 

「はぁ……私が宇宙ステーションを離れてからまだそんなに経ってないでしょう? で、なんで宇宙ステーションがこんなことになっているわけ?」

 

 第三者の登場に注意を向けていると、姫子さんが彼女の事を紹介してくれた。

 

「この人がこの宇宙ステーションの主、天才クラブ会員番号83番、ヘルタよ」

 

 姫子さんの紹介に、その女性型ロボットは難色を示す。

 どうやら気に入らないらしい。

 

「ちょっと! 私の肩書にはその称号より輝かしいのがたくさんあるでしょ? なんで天才クラブを紹介に使うわけ?」

 

 ヘルタさんが一通り文句を言い終わった後、星さんがおもむろに口を開く。

 

「あなたは……ロボット……?」

 

「そう、貴方たちが今話しているのは私が遠隔で捜査しているロボット。それにしても、今星核を持っているのはこのお子ちゃまってわけ?」

 

 姫子さんが静かにうなずく。

 すると、ヘルタさんは興味深そうに星さんを一瞥しながらつぶやく。

 

「ふーん、興味深いわね。私がこの宇宙ステーションを作ったのはその星核が惑星ブルー厄災をもたらさないためなのに、こんなお子ちゃまの体で安定させるなんて、まさに神業ね。一体どこの誰かは知らないけどどうやったのかしら?」

 

「そうね、私もなんで安定しているかは気になるわ」

 

 後から聞いた話だが、この星さんの体内にある「星核」というものは宇宙のガンのようなもので、様々な厄災を引き起こす原因らしい。

 

「さてと、このお子ちゃま、私が研究していい?」

 

「それは私の決められることではないわ。彼女に聞いてちょうだい」

 

 星さんは少し考えた後、質問をする。

 

「実験って、何をするの?」

 

「それはもう色々よ。今はお子ちゃまに興味があるから天才の知恵を使ってありとあらゆる研究をするわ。まあ、終わったらここから出て行ってもらうけどね」

 

 その自由奔放な回答に姫子さんはため息をつきながらも、星さんに選択肢を与えてくれた。

 

「あんたにはもう一つ選択肢があるわ。私と一緒に列車に乗るというものよ。列車は星核と深い関わ有りがあるわ。それに、定期的にここに戻って来てヘルタに研究してもらうこともできるわ。もし列車に乗るんだったら後で私に声をかけて頂戴」

 

「悪くないわね、それならばすぐに飽きが来ることもない。そして、私がお子ちゃまの後始末を考えなくてもいい」

 

 星さんはじっくり考えた後……。

 

「姫子さんの提案を検討する」

 

 そう答えるのだった。

 それからしばらくして……。

 

 僕たちは星穹列車に乗るための準備を進めていた。

 と言っても荷物等はないので、やることはほとんどない。

 

 列車に入ると、ヴェルトさんに丹恒さん、そして三月さんがすでに乗っていた。

 列車の発車時間まで待つためにソファーに座っていると、星さんを連れた姫子さんが列車に乗車してきた。

 

「そろそろ時間ね。出発するわ」

 

 いよいよ星穹列車が宇宙ステーションから発車する。

 ヘルタさんや助けた宇宙ステーションの人たちに見送られながら、これからの旅に思いをはせる。

 思考の海に浸かっていると、後ろの方から唐突に声をかけられた。

 

「オマエら、今日列車に乗った新人じゃな?」

 

 振り向くと、何やら制服を着た不思議な生き物がいた。

 何の用だろうかと思いながら静観する。

 

「オマエらの話は姫子から聞いておる。いいか新人、大事なことだから一回しか言わんぞ! この星穹列車にはいろんな奴が乗っておる。秘密の一つや二つ抱えている者も多い、決してオマエらだけが特別というわけじゃあないぞ。乗車したからにはこの列車のルールに従ってもらうからな! オレはパム、この列車の車掌じゃ。何か列車の事でわからないことがあったら、オレのところに来るように」

 

 そういうとパム車掌は踵を返して去っていった。

 その後アイザと別行動し、こちらのワープと同系統の技術と思われる列車の星間跳躍まで、列車メンバーと話すことにした。

 

 あまり時間がなさそうなので一人だけしか話せなさそうだ。

 丹恒さんと三月さんは見当たらなかったため、ヴェルトさんに話しかけてみる。

 

「ヴェルトさん、一つ質問をしてもいいですか?」

 

「あぁ、かまわない。何を聞きたいんだ?」

 

 ヴェルトさんは睨んでいたスマホから視線を上げ、快く話を聞いてくれる。

 

「僕たちは遠い所から来たのでここら辺の事を全く知りません。なので何かこの辺りの情報を調べられるようなものはありませんか?」

 

「それなら丹恒のいるアーカイブ室に行くといい。あそこには君が戦った終末獣などの敵対勢力や世界情勢などの情報がたくさん詰まっている。アーカイブ室は後ろの客室車両の一番前にあるぞ」

 

「ありがとうございます。早速行ってみます」

 

 車両を隔てるドアを通り、アーカイブ室へと向かう。

 ドアをノックすると、中から丹恒さんの声が聞こえてくる。

 

「はいっていいぞ」

 

 スライド式のドアをゆっくりと開け、アーカイブ室に入る。

 

「アルか。どうしたんだ?」

 

「アーカイブを見せてほしいんです。いいですか?」

 

「もちろんだ。それと、呼び方は丹恒でいい。敬語もいらない」

 

「わかった、ありがとう丹恒」

 

 丹恒はもうすぐ列車が出発するからと前の車両へと向かっていった。

 よし、丹恒もいないし手っ取り早く情報を仕入れよう。

 

 そう思い、アーカイブ端末の端子に指先に集め、端子の形に変形させたプラズマを差し込む。

 そして、アーカイブの情報を全て吸い上げ、複製する。

 

 膨大な情報の波が流れ込み、知識のコピーが完了した。

 これで少なくともこの世界の常識で困ることは無いだろう。

 情報をアイザへと共有していると、車掌の声でアナウンスが流れる。

 

「あー、あー、乗客の諸君。間もなく跳躍が始まる。各自席に座るように! 繰り返す、各自席に座るように!」

 

 アナウンスに従って前の車両に戻り、ア合流したアイザと一緒に席に座る。

 三月さんがだ座っていないが、恐らく列車の揺れに対抗する的なあれだろう。

 僕も昔よくやった、懐かしい。

 

 そして、いよいよ星穹列車が星間跳躍を始める。

 星々が急速に流れ、やがて何も見えなくなっていく。

 

 そして大きな振動と共に、一瞬で窓の外の景色が変わった。

 雪と氷に包まれた白い惑星、どうやらこれがヤリーロⅥのようだ。

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