「おいカカ、しっかりしろ! 二鳥を連れてきたぞ!」
一龍が血相を変えてカカの寝所に飛び込んできたとき、二鳥はその背後で、完全にパニックになっていた。新築したばかりの綺麗な部屋の隅で、カカは白長衣のフードを目深にかぶったまま、力なく壁に寄りかかっている。あの、放っておけば何時間でも喋り続けていたはずの口が、今は固く結ばれ、呼吸のたびにスマートな肩が小さく震えていた。
「カカさん……っ!? 一体どうしちまったんですか、どこか痛むんですか!?」
二鳥が巨大なブルーニトロの体躯を縮めるようにして駆け寄る。チチとジジから「あいつが帰ってから、謎の病気だの何だのとブツブツ言ったきり、一切喋らなくなって飯も食わねぇ」とざっくり聞かされたときは耳を疑ったが、目の前のカカの弱り切った姿は、明らかに異常だった。
カカは、二鳥の声を聞いた瞬間、ビクリと大きく身体を震わせた。だが、顔を上げようとはしない。それどころか、這いずるようにして二鳥から距離を置こうとすらした。
「……っ、こ、来ないで……ください……」
掠れた、蚊の鳴くような声だった。その様子をじっと見ていた一龍は、フッと小さく息を漏らすと、二鳥の肩を力強く叩いた。
「二鳥。お前、大工の腕だけじゃなくて、施主の『アフターケア』も仕事のうちだろ。カカの体調が戻るまで、ここでしっかり面倒見てやれよ」
「えっ、あ、兄さん!?」
「チチ、ジジ、俺たちは外の猛獣の様子でも見に行くぞ。ちょっとここいらの風通しを良くしてやらねぇとな」
一龍はニヤリと不敵に笑うと、事情を察してニヤついているジジとチチの首根っこを掴み、強引に部屋から連れ出してしまった。バタン、と頑丈な木の扉が閉まり、新築の隠れ家には、二鳥とカカの二人だけが残される。凄まじい静寂が、部屋を満たした。
「あの……カカさん」
二鳥はおそるおそる、しかし真っ直ぐにカカの傍へ歩み寄り、その場に膝をつき、目線をカカの低さに合わせる。
「どこが悪いんですか? 俺の作った部屋のせいで体調を崩したなら、どこでもぶち壊して作り直します。だから、何が原因なのか教えてください……。カカさんが喋ってくれないと、俺、生きた心地がしないんです」
前世が人間である二鳥の言葉には、ブルーニトロの肉体からは想像もつかないほどの、純粋な悲痛さと優しさが満ちていた。
「……あなたには、関係ありません」
カカは長衣の合わせ目をぎゅっと握りしめ、顔を背けた。
「関係なくないです! 俺、カカさんのことが……!」
そこまで言いかけて、二鳥は自分の脳裏に冷や水を浴びせられたような衝撃を覚えた。
(今……俺は何を言おうとしたんだ……? 無責任にも『好きなんです』だとか抜かそうとしたのか……!?)
ダメだ。それだけは、絶対に言ってはならない。 自分の肉体はブルーニトロだ。目の前のカカたちレッドニトロを、大昔に奴隷のように虐げていた歴史的天敵の種族。そんな恐ろしい姿をした自分が、中身が人間だからというだけで、彼女の心に踏み込んで「好きだ」なんて伝えるのは、ただのエゴであり、無責任な暴力でしかない!
生真面目で職人気質なプライドが、そしてカカの優しさを誰よりも尊重したいという想いが、二鳥の口を必死に塞ごうとする。
(諦めて胸の引き出しにしまうって決めたんだろ、俺……! これ以上、カカさんを怖がらせるな……!)
しかし…
前世で飢え死にし、今世でようやく「美味しいご飯」と「大好きな家族」に出会えた二鳥の魂の根底には、人一倍強い、一度掴んだ幸せや温もりに対する【ハングリーな執念】が目を覚ましていた。
目の前で弱り果てている想い人を、このまま放っておくことなんて、絶対にできない。
葛藤で、二鳥のグルメ細胞が激しく脈打つ。 理性が弾け、二鳥の意地が崩壊し、純朴で真っ直ぐな、男としての「本音」が喉を突き破って溢れ出た。
「………っ!関係なくないです……っ! 俺、カカさんのことが、一目見たときから、ずっと……!」
「ずっ…と!好きなんです……!!」
言ってしまった。 二鳥はニトロの大きな顔を真っ赤に染め上げ、心臓が爆発しそうなほどの気恥ずかしさと、取り返しのつかないことを口にしてしまったという後悔で、その場に立ち尽くした。
「あ、いや……今のはその、忘れてください! ブルーニトロの俺がこんなこと言うなんて、気味が悪いですよね……!? すみません、変なことを言って……っ」
シャイな本性が暴走し、慌てて大柄な身体を縮めて頭を下げ、言い訳を並べ立てようとした二鳥だったが――。 カカが信じられないものを見るような目で、じっと自分を見つめていることに気がついた。
(なぜ……なぜ否定しようとすると、こんなにも胸の細胞が、心が、引き裂かれるように痛むのですか……!)
カカはもう、自分の
「……ず、図面が……」
ぽつり、とカカの嘴から、小さな声が漏れた。
「え?」
「図面が……間違っています……。あなたが、ここの湿度管理のために提案された、あの乾燥地帯の泥岩の成分ですが……。あれは確かに風を通しますが、私の調理する発酵菌との相性を考えるなら、あと3%ほど、東の森の腐植土を混ぜて壁を塗るべきだったのです……。そうしなければ、ここの空気の循環が……」
消え入りそうな声で、しかし、一度溢れ出た言葉は止まらない。
「それに……あなたが、私の部屋の窓をあんなに大きく作ったせいで……。朝日が、必要以上に眩しくて、起きたときに、あなたのあの、呆気にとられたような、締まりのない赤い顔を……思い出して、しまうではないですか……。思い出すと、私の脈拍は通常の1.5倍に跳ね上がり、呼吸筋が硬直して、胸の奥が、壊れてしまいそうなほど、苦しく……っ」
そこまで一気にまくし立てて、カカははっと息を呑み、自らの嘴を両手で塞いだ。長衣の隙間から見えるカカの顔は、耳の羽毛に至るまで、茹で上がった甲殻類のように真っ赤に染まっている。二鳥は、呆然と固まっていた。大工としての脳がカカの「長文のダメ出し」を処理した直後、後半の言葉の意味が、人間の脳にダイレクトに突き刺さったからだ。
「それ……俺の顔を思い出して、胸が苦しくなってたんですか?」
「……ち、違います! これは、細胞の拒絶反応でして、ブルーニトロの遺伝子情報がもたらす精神的圧迫による、防衛本能的な――」
「カカさん」
二鳥は、大きな、しかし驚くほど優しい手で、カカが顔を隠していた長衣のフードを、そっと後ろに手繰り寄せた。露わになったカカの瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙がたまっている。
天敵であるはずのブルーニトロの、鋭い爪が生えた大きな手。それなのに、不思議なほど怖くない。伝わってくるのは…温もりのみだった。
「ごめんな。俺が未熟なせいで、カカさんにこんな苦しい思いをさせて……。でも、壁の泥岩の件は分かった。すぐに東の森の腐植土を調達して、俺が完璧に塗り直す。窓の大きさも、カカさんが眩しくないように、取り外しできる頑丈な木製の遮光ルーバーを今すぐ造る。……だからさ」
二鳥は真っ赤になった顔を、不器用ながらも最高に愛おしそうな笑顔に崩して、カカの目を見つめた。
「これからもずっと、俺にカカさんの『アフターケア』、させてもらえないかな……?」
その真っ直ぐで、あまりにも素直な言葉に、カカの胸の細胞は、今度こそ限界を迎えて完全に降伏した。否定の言葉はもう出てこない。カカの瞳から、堪えきれなくなった一粒の涙が、二鳥の温かい手の上にぽつりと零れ落ちるのだった。
◆
「――今日は、一度帰ります」
カカさんの赤くなった顔と、自分の大きな青い手。その温度の差に、俺はハッと我に返り、そっと手を離した。これ以上ここにいたら、カカさんの体調をさらに乱してしまうかもしれない。
何より…自分の胸の鼓動がうるさすぎて、ブルーニトロの胸板を突き破ってしまいそうだった。
「ひとまず、カカさんが俺の顔を思い出して寝不足にならないように、木製の遮光ルーパーに改築する図面を引いてきます。明日、また来ますから……。今日はしっかり、休んでください」
「あ……え、ええ。二鳥さん、わざわざ、私のこんな、成分分析ともつかない奇妙な体調不良の報告のために、お時間を割かせてしまい……ブツブツ……」
まだブツブツと呟いているカカさんの枕元に、持参していたフローゼ様の体に優しい滋養強壮のスープを置き、俺は部屋を後にした。パタン、と頑丈な木の扉を閉める。その瞬間、張り詰めていた緊張が一気に解け、俺は廊下で大きく息を吐き出した。
(……いや、バレバレなんだよな、外の人たち)
気配で分かっていた。この新築の隠れ家は、俺がグルメ界の強風を防ぐために防音性もかなり高めて作ったはずなのだが、外にいるのはあのチチ、ジジ、そして一龍兄さんだ。
ブルーニトロの聴覚を働かせなくても、扉のすぐ向こうから「おい、聞いたか?」「脈拍が1.5倍だってよ、かっかっか」というヒソヒソ話が筒抜けだった。俺が外へ出ると、案の定、三人はわざとらしく空を見上げたり、地面の石を突いたりしていた。突っ込んだら負けだ。俺はあえて何も聞かず、ただ一龍兄さんの前に歩み寄った。
「一龍兄さん。……ちょっと、いいか?」
「ん? おう、どうした二鳥。カカの様子は、アフターケアできそうか?」
ニヤニヤとした笑みを微かに残しながらも、一龍兄さんは俺の真剣な目、気配を察して、すぐに真面目な顔になった。チチとジジも、少し離れた場所で肉を焼き始め、俺たちに場所を譲ってくれる。隠れ家から少し離れた、グルメ界の荒涼とした岩場。夕闇が迫る中、俺は自分の大きな青い手を見つめながら、ぽつり、と胸の内を溢した。
「一龍兄さん……俺は、どうするべきなんだろうか…」
「どうするべき、とは?」
鋭い爪の生えた手を、ゆっくりと握りしめる。
「勢いで、好きなんて言っちまった。……でも、俺はブルーニトロだ。中身が元人間だとしても、この肉体があの優しくて頭の良いカカさんたちを苦しめてきた種族であることは、絶対に変わらないんだぞ? カカさんが俺を思い出して苦しくなってるのが、もし、本当に『恋』なんだとしたら……俺は余計に、カカさんを困らせたくない。ブルーニトロの俺が、レッドニトロのあの人にこれ以上踏み込んで、本当に幸せにできると思うか?」
前世で孤独のまま死んだ俺だ。恋愛なんて、設計図を引いたこともない未知の領域。 しかも、種族の分厚い壁が目の前にある。 職人気質な俺の頭は、カカさんの最大の幸福を考えるあまり、自分の存在そのものが「設計ミス」なんじゃないかと、そんな弱気な答えを叩き出しそうになっていた。
そんな俺の言葉を、一龍兄さんは腕を組んだまま、静かに聞いてくれていた。 そして、夕闇の中で優しく、だけど最高に頼もしい笑顔を浮かべると、俺の大きな背中をバシッと力強く叩いた。
「二鳥。お前はやっぱり、最高に素直なのに頑固で、最高に優しい大工だな」
「一龍兄さん……」
「ブルーニトロだとかレッドニトロだとか、大昔の奴らが何をしたかなんて、今を生きる俺たちには関係ねぇよ。お前がHMPを作った時、子供たちが笑ったのはお前がブルーニトロだからか? 違うだろ。お前が泥にまみれて、あいつらのために一生懸命、良いもんを作ってくれたからだ。カカだって同じさ。あいつが胸を苦しくさせてんのは、歴史の教科書に出てくるブルーニトロに対してじゃねぇ。自分のために汗を流して、顔を真っ赤にして部屋を直してくれた、『二鳥』っていう一人の男に惚れてんだよ」
一龍兄さんは、俺の青い拳に、自分の拳をコツンとぶつけた。
「お前が作ったあの隠れ家はよ、ビクともしねぇほど頑丈なんだろ? だったらお前のその気持ちも、種族の壁くらいでグラつくようなヤワな建て方すんなよ。カカが困ってんなら、今度はあいつの心の雨風を防いでやるような、世界一温かい
「――っ、一龍兄さん……!」
兄さんの、どこまでも真っ直ぐで力強い言葉が、俺の胸の奥の迷いを綺麗に吹き飛ばしてくれた。 そうだ。俺は叩き上げの大工だ。難しい理屈は分からないけれど、施主が困っているなら、何度だって泥を被ってでも最高の仕事をするだけだ。
「……あぁ、そうだな! 逃げ出したら男がすたる。明日、最高の遮光ルーバーと一緒に、俺のこの気持ちももう一度、完璧に施工してくる!」
「おう、その意気だ!」
俺が顔を真っ赤にしながらも前を向くと、一龍兄さんは「かっかっか!」と嬉しそうに大笑いした。 遠くで肉を焼きながらこっちを見ていたチチとジジも、呆れたように、だけどどこか温かい目で手を振っている。
よし、まずは家に戻って、徹夜で最高の図面を引くぞ! 前世の飢え死にした記憶も、ブルーニトロとしての重い宿命も、この温かい家族と、そしてカカさんのために、すべてを引っくるめて最高の未来を作ってやるんだと、俺は夜空に向かって強く誓った。
◆
翌日、俺は約束通り、大工道具と新しく引き直した図面を抱えて隠れ家を訪れた。
(カカさん、少しは休めたんだろうか……。飯、ちゃんと食えてるといいけど)
ブルーニトロの大きな心臓が、昨日よりも激しく内側から肋骨を叩いている。緊張で口の中が乾くのを感じながら、新築の木の扉をそっと押し開けた。
「……失礼します」
中に入ると、いつもなら肉を焼く匂いや煙管の煙で騒がしいはずの広間に、チチとジジの姿はなかった。一龍兄さんが気を利かせて、二人をまたどこかへ連れ出してくれたのだろう。
静かな部屋の奥に、唯一人、カカさんが座っていた。昨日までの、あの今にも消え入りそうだった衰弱ぶりが嘘のように、その肌には瑞々しさが戻り、耳の羽毛も艶やかに整っている。
「あ、カカさん。顔色、戻ったみたいで良かっ――」
「二鳥さん。そこに座って、待っていてください」
俺が安堵の声をかけるより早く、カカさんは凛とした、しかしどこか硬さのある声で俺の言葉を遮った。白長衣のフードは綺麗に下ろされており、そのまっすぐな瞳が俺を射抜くように見つめている。
「え? あ、はい…」
そのただならぬ雰囲気に気圧され、俺は言われるがまま、無骨な木の床に大きな体を丸めるようにして腰を下ろした。それから、数分。奥の調理場から、何かがパチパチと爆ぜる音と、これまで嗅いだこともないほど優しく、どこか胸の奥を温めるような芳醇な香りが漂ってきた。
やがて、カカさんが両手で大切そうに一つの器を抱え、こちらへ歩いてくる。器から立ち上る湯気の向こう側、カカさんの表情は、驚くほど真剣で、そしてほんの少しだけ、耳の裏の羽毛が赤く染まっていた。
「お待たせしました。……これを、召し上がってください」
俺の前に差し出されたのは、琥珀色に透き通った、美しいスープだった。
「これ……料理、ですか?」
「はい。今の私の全力をもって調理した、特殊調理食材の特製スープです」
カカさんは俺の正面に座ると、小さく深く呼吸を一つ、それから、いつものあの「長話」のトーンで、しかし一言一言に魂を込めるようにして語り始めた。
「このスープに使用した食材はですね、エリア7の特定の山岳地帯、それも一年のうちで最も大気が安定する『数日間の夜明け』にしか採れない特殊な果実の果汁がベースになっています。通常、ブルーニトロの強靭すぎる肉体と細胞は、人間やレッドニトロの料理では十分に満たされない、あるいは拒絶反応を起こす性質を持っています。ですが……」
カカさんはそこで一度言葉を切り、俺の青い手を、じっと見つめた。
「ですが、私は諦めたくありませんでした。あなたの肉体がどれほど強大で、どれほど私たちの歴史にとって恐ろしいブルーニトロの器であろうとも……。その中にある、あなたのその、あまりにも不器用で、素直で、優しい温もりを、私はどうしても否定したくなかった。……いえ、否定など、到底できなかったのです」
「カカさん……」
「ですから、私は考えました。ブルーニトロのグルメ細胞を刺激しつつも、その奥にある精神を極限まで安らげ、私への……その、拒絶反応を、すべて包み込むための調合を。火を入れる時間は秒単位で計算し、包丁を入れる角度は一分の狂いも許さず、私があなたへ伝えたい……いえ、伝えるべきすべての『真意』を、このスープの味に閉じ込めました。ですから、二鳥さん」
カカさんは、涙の滲む瞳をまっすぐに持ち上げ、俺の…ブルーニトロの目を捉えた。
「我ら味仙人、ひいてはレッドニトロにとって、言葉以上に万の真実を伝える最大の手段は『食』です。これが……これが、私のあなたに対する、すべてです。冷めないうちに、どうぞ」
その言葉の重みに、俺の胸はちぎれそうなくらいに熱くなった。この世界において、料理を振る舞うということは、自分の命の輝きを相手に捧げることと同義だ。カカさんは、ブルーニトロという種族への何百年もの恐怖や葛藤を、俺という一人の男のために、この一杯のスープで完全に乗り越えてみせたのだ。
「……いただきます」
俺は震える大きな青い手で、カカさんの想いが詰まった器を持ち上げ、スープを口に含んだ。その瞬間、五臓六腑が、いや、俺の全身のグルメ細胞が、歓喜のあまり震え上がった。圧倒的な美味。
しかしそれは、暴力的で傲慢なブルーニトロの食欲を満たすようなものでは決してなく、まるで、凍えた身体を包み込む毛布のように、どこまでも優しく、どこまでも温かい。不思議だった。スープが喉を通るたびに、俺の胸の奥にある『人間の魂』が、じわじわと涙を流すように癒されていくのが分かった。
「……うまい、です。めちゃくちゃ、温かいです、カカさん」
器を置き、俺がそう言って微笑むと、カカさんはずっと張り詰めていた糸が切れたように、ほろほろと大きな涙をその場にこぼした。
「……よ、良かったです。これで、もしあなたの細胞に合わなければ、私は別の食材を求めて今すぐグルメ界の最果てまで赴き、再び数千の工程を…」
「カカさん、もう大丈夫ですから…」
泣きじゃくるカカさんの姿を見て、俺の胸の奥の異常な執念が、今度は「この人を一生かけて幸せにしたい」という明確なカタチになって爆発した。
俺は立ち上がると、無骨な木の床を踏みしめてカカさんの目の前まで歩み寄り、その華奢な身体を、大きな青い腕でそっと、だけど壊れないように強く抱きしめた。
「二鳥、さん……?」
「カカさん。俺、やっぱりあんたのことが大好きだ。ブルーニトロだとかレッドニトロだとか、大昔の因縁なんて関係ない。大工のプライドにかけて、俺が一生、あんたの心の雨風を防ぐ頑丈な家になってみせる。……だから、俺の隣にいてくれませんか…?」
前世で寂しく死んだ男の、今世での不器用だけど真っ直ぐな、命懸けのプロポーズ。
カカさんは俺の広い胸に顔を埋めたまま、耳の羽毛を茹で上がったように赤くしながらも、コクコクと何度も強く頷いてくれた。
「……はい。……はいっ! 私も、あなたのことが、理屈抜きで……大好き、です……っ!」
その瞬間、新築の隠れ家に、これ以上ないほど温かい春が訪れた。
ブルーニトロの強靭すぎる肉体と細胞は、人間やレッドニトロの料理では十分に満たされない、あるいは拒絶反応を起こす性質、というのは「オゾン草」を食べたペアが吐き出した描写から推測しています。
そんな性質を持っているブルーニトロでも「美味しく」食べられる、この場合は飲めるスープを持てる知識全てをフルに活用してカカは二鳥に振る舞いました。
これこそが…レッドニトロのカカがブルーニトロの二鳥に対する「恋心」に対しての覚悟の証明なのです。
そして二鳥も、カカが壁を乗り越えて来てくれたのなら…乗り越えるのが大変だろう壁を…種族の壁というものを…ぶち壊す覚悟をしました。…大工らしく、少しずつ解体して…。
皆さんはどっちだと思います?二鳥は…
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攻め?
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受け?