家に帰り着いた俺は、今日進めた作業の心地よい疲労感と、明日への期待に胸を膨らませながら、居間にいたアカシア様へと声をかけた。
「アカシア様、ただいま戻りました。……あの、おかげさまで、明日には部屋が完成します」
「おや、それはよかったね、二鳥。よく頑張った」
アカシア様がいつも通りの温和な笑みを浮かべて労ってくれた、その瞬間。横のソファから、待ってましたとばかりに一龍兄さんが身を乗り出してきた。
「おいおい二鳥、お前さっきから部屋部屋って言ってるけどなぁ。俺が昼間に見た骨組みは、どう見ても部屋なんて規模じゃなくて本格的な『一軒家』……いや、お前たちの『愛の巣』って言った方が正しい大層な代物だったぞ?」
「ピャっ――!? に、兄さんまさか……見ていたのか……っ?!」
本日何度目だろうか、俺の心臓がドクンと跳ね上がり、驚愕のあまり声が裏返った。隠れ家の近くとはいえ、まさか現場までわざわざ足を運んで覗いていたのかと戦慄する俺に向かって、一龍兄さんはにやりと満面の悪い笑みを浮かべ、はっきりと言い放った。
「おう、全部バッチリ見てたぞ。カカがお前に照れながら『あ〜ん』したり、逆にお前が顔を真っ赤にして『あ〜ん』し返したりして、お互いにパニックになりながら弁当食ってたところも、最初から最後まで全部な!」
「ぎ、ぎゃあああああ――っ!!」
頭の中の、一番人に見られてはいけない甘酸っぱすぎる黒歴史の全貌をド直球で突きつけられ、俺の精神は完全に崩壊した。
俺の羞恥心は完全に限界を突破し、帽子を両手で抱え込んだまま、その場にがっくりと膝をついて蹲ってしまった。ブルーニトロの頑丈な皮膚が、恥ずかしさのあまり熱湯のように熱くなっている。
(全部……! 全部見られてた……! チチの野郎に吹き込まれてパニックになってたカカさんも、心臓爆発しそうになってた俺の姿も、あの盗み聞きトリオにエンタメとして消費されてたのか……っ!)
「こら、一龍。可愛い弟をいじめるのも、それくらいにしておきなさい」
悶絶する俺の姿を見かねて、奥の調理場から顔を出したフローゼ様が、少し呆れたように一龍兄さんをパチンと軽く叱ってくれた。
「二鳥たちが一生懸命、お互いの気持ちを確かめ合っていたのよ。それをそんな風にからかうなんて、お兄ちゃんとして感心しないわね」
「…はい、申し訳ありませんフローゼ様。だけどあいつらの初々しい姿があんまりにも面白くてさ」
一龍兄さんは頭を掻きながら、それでも嬉しそうにくつくつと笑っている。そんな賑やかな兄貴分たちのやり取りをフッと優しく見守っていたアカシア様が、蹲っている俺の目線に合わせて、穏やかに問いかけてきた。
「二鳥。……その家が完成したら、君はもう、カカさんと一緒にそっちの新しい家へ移り住むようにするのかい?」
アカシア様のその問いに、俺は少しだけ顔を上げ、帽子の鍔の下から、少し赤みが引いた顔で静かに、深く頷いた。
「……はい。カカさんが料理人として一番使いやすくて、一番安心して暮らせるように、二人のこだわりを全部詰め込んだ家を作っています。だから……完成したら、俺はカカさんと一緒にあそこで暮らしたいと思っています」
「…そうか。寂しくなるけれど、二鳥が一人の男として大切な人を守る居場所を決めたのなら、私たちはそれを全力で祝福するよ」
アカシア様は本当に嬉しそうに目を細め、俺の大きな青い肩をポンと優しく叩いてくれた。一龍兄さんの容赦ない暴露には心底魂が削られたが、アカシア様たちのこの圧倒的な親心と温かい祝福に触れ、俺の胸の奥にある『人間の魂』は、再び明日への熱い職人魂とカカさんへの愛でいっぱいに満たされるのだった。
◆
「よし、それじゃあ行ってきます! 今日で完璧に完成させてみせますよ!」
翌朝、カカさんとの『約束のお弁当』への期待と、マイホーム完成への執念で、俺――二鳥は朝食を終えるや否や立ち上がった。大工道具を抱え、気合十分で玄関へ向かおうとしたその時、背後からアカシア様の温和な声が掛かった。
「待っておくれ二鳥。実はね、今日の工事には私たちも見に行こうと思っているんだ」
「えっ……? アカシア様もですか?」
驚いて振り返ると、アカシア様の隣ではフローゼ様が嬉しそうに特大の手提げ籠を抱えており、一龍兄さんは相変わらずニヤニヤしながら次郎を肩車していた。
「大切な息子の新居が完成する瞬間だからね。親として、そして家族として、それを見届けないわけにはいかないだろう?」
アカシア様が本当に嬉しそうに目を細めて言ってくれる。
「私も、カカさんへのご挨拶を兼ねて、新居のお祝いを持っていきたいわ」
「俺も、二鳥の『愛の巣』がどんな仕上がりになるか、特等席で見物させてもらうぜ!」
「……っ、ありがとうございます! みんな、ぜひ来てください!」
前世が普通の男だった俺にとって、この偉大な家族が総出で応援に来てくれることが、どれほど誇らしく、嬉しいことか。俺はシルクハットの下で満面の笑みを浮かべ、家族を案内しながら、大急ぎで工事現場へと向かった。
しかし、現場に到着した瞬間、俺たちアカシアファミリーは全員、その異様な光景に足を止めて呆気にとられることになった。
「――お待ちしておりました、二鳥さん。そして、アカシア先生にフローゼ様、一龍さんもようこそおいでくださいました」
現場の正面。まだ屋根の一部が未完成の家の前に、白長衣のフードを綺麗に下ろしたカカさんが、実に凛とした姿で佇んでいた。
その隣には、顔面を原型が留まらないほどボコボコに腫らし、身体中に凄まじい打撲痕を作ったチチとジジが、頑丈な捕獲用の縄でミノムシのようにグルグル巻きにされて転がっていた。
「……ピャっ!? か、カカさん、その二人は一体……!?」
俺が驚愕して指を差すと、カカさんはフッと冷徹な、しかしどこかスッキリとした笑みを浮かべて、いつもの調子で長文の解説を始めた。
「これですか? 昨日、私たちが食事という極めてプライベートかつ神聖な行為を行っている最中に、この隠れ家の裏の泥岩の陰に隠れ、グルメ細胞の聴覚受容体を不当に拡張させて私たちの会話を盗み聞きしていた不届き者たちです。生物学的なプライバシーの侵害であり、かつニトロとしての最低限の倫理観を著しく欠いた行動に対する正当防衛として、今朝、私の全力の拳と調理用鈍器をもって、生存に支障がない限界値までの『半殺しの刑』に処させていただきました……っ!」
「は、半殺し……っ!」
「ひっひっひ……カカの野郎、マジで手加減がねぇ……」と、腫れ上がった嘴でチチが意識朦朧と呟き、「あ〜んの応酬を見ただけなのに、この仕打ちはあんまりじゃて……」とジジが涙目で白目を剥いている。
(あ、危ねぇ……! 昨日一緒になって覗いてた一龍兄さん、マジで今ここにいて良かったな……っ!)
俺が冷や汗を流しながら一龍兄さんを見ると、兄さんは流石に引きつった顔で「……ニ、ニトロの女を怒らせると、マジで洒落になんねぇな……」と、肩車の次郎を抱きしめながらボソリと呟いていた。
アカシア様とフローゼ様は、一瞬呆気にとられたものの、「ふふ、カカさんは本当にしっかりした、強いお嬢さんだね」「ええ、二鳥を安心して任せられるわ」と、逆に頼もしそうに微笑み合っていた。
「さあ二鳥さん、害虫の駆除は終わりました。今日の仕上げですが、昨日お伝えした発酵室の天井高と、換気口の角度の最終調整に入りましょう。私が指示を出しますから、あなたはそれに従い……その…最高の家を建てましょう!」
「は、はいっ! よろしくお願いします、カカさん!」
カカさんの的確な、そして相変わらず情報量の多い指示を受けながら、俺は木槌を握り直して足場へと飛び乗った。ボコボコにされたチチとジジが岩場に転がり、一龍兄さんがハラハラしながら見守り、アカシア様とフローゼ様が温かくお弁当を広げる準備をする中で、俺とカカさんの共同作業は凄まじい熱量で進んでいく。
そして太陽が真上に昇り、約束のお昼の時間が近づいたその瞬間。俺が最後の特製防音木組みの楔をゴン!と力強く打ち込むと同時に、二人のこだわりが全て詰まった、世界で一番頑丈で機能的な、そして誰にも邪魔されない『理想のマイホーム』が、ついに完璧な姿で完成の声を上げたのだった。
「――よし、これで完成だ!!」
俺が最後の楔を打ち込み、足場から飛び降りると、新築の木の匂いと発酵室から漂う微かなスパイスの香りが、完璧な調和を保って新居を満たした。グルメ界の天変地異が来てもびくともしない防音性と頑丈さ、そしてカカさんのこだわりが1ミリの狂いもなく反映された、俺たちの最高のマイホームだ。
「さあ二鳥さん、家が完成したということは、すなわち即座にエネルギーを補給し、失われたグリコーゲンを回復させるべき時間ということです! 約束通り、私の全力を尽くした特製のお弁当を広げましょう!」
「はい! ありがとうございます、カカさん!」
新居の広間に、アカシアファミリーと味仙人が一堂に会する。
俺はカカさんが用意してくれた二段重ねの大きな重箱を開けた。中には、昨日よりもさらに手が込んだ、色鮮やかで栄養満点のスタミナ料理が美しく敷き詰められている。俺の胃袋を、これ以上ないほど刺激する最高の眺めだ。俺がさっそく箸を伸ばし、みんなで食事を始めようとした――その瞬間だった。
「おいおい二鳥、カカぁ。お前ら、今日はあの『あ〜ん』ってやつはやらねぇのか? 昨日あんなに盛り上がってたのによぉ、ひっひっひ!」
声の主は、部屋の隅で未だに縄で縛られ、顔を風船のように腫らせたチチだった。半殺しにされた直後だというのに、そのからかい精神だけは1ミリも衰えていないらしい。隣のジジも、腫れた目を細めて「そうじゃな、新居の初飯があ〜んなしでは縁起が悪かろうて」とケラケラと笑う。
「ぶっ――!? チチ、ジジ!! お前ら、まだ懲りてないのか!?」
俺はまた心臓をバックンバックンと跳ね上がらせ、大慌てで手を振った。昨日の一龍兄さんたちだけの時ですら魂が消えかけるほど恥ずかしかったのだ。
「む、無理だ! アカシア様やフローゼ様、まだ小さい次郎まで見ている前で、そんな……そんな破廉恥で非効率的なコミュニケーションができるわけがないだろ!!」
俺がメンタルをフル稼働させて全力で否定しようとした、その時。俺の隣に座っていたカカさんから、パチパチパチ……と、凄まじい威圧感のグルメ細胞のスパークが弾けた。
「……二鳥さん」
「え? カカ、さん……?」
おそるおそる横を見ると、カカさんは羽毛を限界突破して真っ赤に染め上げ、目は完全に座り、半ばヤケクソ状態の凄まじい形相で俺を睨みつけていた。
「チチやジジごときに、私たちの恋人としての神聖な儀式を否定され、コソコソと隠れるような真似をするなど、味仙人のプライドが許しません……っ! 確かにアカシア様たちの前での実行は、私の精神的ストレス指数を通常の五倍に跳ね上げ、脳内物質の分泌を異常にする羞恥の極みではありますが……! ここで引いては、昨日構築したラブラブな関係性の合理性が崩壊します……っ!!」
「カ、カカさん!? 目が怖い、目が怖いです!!」
「いいから口を開けなさい、二鳥さん!! これが、私たちを盗み聞きしたあの害虫どもに対する、最大の反撃であり、私たちの愛の証明なのです!! ほら、あ、あ〜〜〜〜ん……っ!!!」
「うおっ、圧が、圧がすごい――っ!?」
カカさんは震える箸で特大の焼き肉を摘むと、ヤケクソの咆哮と共に、俺の嘴の前に凄まじい勢いで突き出してきた。あまりの気迫と「愛の重さ(物理)」に、俺のブルーニトロの肉体すら完全に気圧される。ここで拒否したら、今度は俺が別の意味で半殺しにされる未来が明確にシミュレーションできた。
「た、食べます! 食べますから!! ……んむっ!」
俺はカカさんの凄まじい圧に完全に屈し、涙目でそのお肉をガブリと受け入れた。瞬間、口の中に広がるのは、昨日を遥かに超える、言葉にできないほどの至高の美味。けれど、やっぱり心臓の音がうるさすぎて脳の処理が追いつかない。俺は顔を真っ赤にしたまま、帽子の鍔をぎゅっと掴んで蹲ってしまった。
「――っ、ふ、ふん! 見ましたかチチ、ジジ! これが私と二鳥さんの、合理的かつ最高にラブラブな絆です……っ!!」
やり切ったカカさんは、重箱を持ったまま、顔から火が出るほどの羞恥心で真っ赤になりながらも、フイと胸を張って勝ち誇ってみせた。それを見た一龍兄さんは「ガハハハハ! カカの奴、ヤケクソであ〜んしやがった!」と腹を抱えて大爆笑し、チチとジジは「ひええ、怒らせたカカはマジで化け物だぜ……」と縄の中でガタガタと震えている。
そして、その様子を特等席で見守っていたアカシア先生とフローゼ様は――。「ふふ、本当に熱い絆だね、二鳥。カカさんの愛情がたっぷり詰まった、素晴らしい新居のスタートじゃないか」「ええ、本当に。お互いに全力で向き合える、最高の恋人ね。二鳥、カカさん、おめでとう」
料理神と美食神の、どこまでも優しく、全てを包み込むような温かい祝福の微笑みが、新築の広間に満ち溢れていく。足元では、幼い二郎が「あ〜〜ん!」と俺の真似をして元気に口を開けており、俺はもう恥ずかしさの極みで消えてしまいたかったが、同時に、これ以上ないほどの幸福感に包まれていた。
恥ずかしくて、騒がしくて、けれど、世界で一番温かい、俺とカカさんの『愛の巣』。この大切な家族たちに祝福されながら、俺たちの新しい生活は、最高の、そして少し非効率的な「あ〜ん」の味と共に、賑やかに幕を開けるのだった。
◆
ヤケクソの「あ〜ん」の熱気が冷めやらぬ中、一龍兄さんはクスクスと笑うのをやめ、新築の天井を見上げながら、どこか遠い目をしてぽつりと言った。
「……にしてもさ。こんなにラブラブな二人だからこそ、もし子供が産まれる種族だったら、きっとめちゃくちゃ可愛い子供が産まれるんだろうなぁ。本当に、これだけが惜しいぜ。俺も本気でお前たちの姪や甥の顔が見たかったんだがな……」
いつになく本気で、寂しそうに惜しむ兄さんの言葉に、居間は一瞬、しんとした温かい静寂に包まれた。
「そうだね……」
アカシア様も、フローゼ様と顔を見合わせながら穏やかに微笑む。
「可能ならば、私だって二鳥たちの『孫の顔』は見たいと思ってはいるよ。だが、こればかりはニトロという種の真理だ。二鳥とカカさんがこうして幸せに寄り添ってくれているだけで十分さ。贅沢は言わないよ」
親兄弟としての深い愛情がこもった言葉に、俺は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。今の俺はブルーニトロだ。そして隣にいるのはレッドニトロのカカさん。俺たちの間に、人間のような子どもが生まれる未来は、この世界のルール上存在しない。
すると、俺の隣で重箱を抱え直したカカさんが、羽毛をかすかに震わせ、俯いたまま俺の衣服の袖をぎゅっと掴んできた。
「あの……二鳥さん」
「え? はい、カカさん」
カカさんは頬を夕焼けのように赤らめ、長いまつ毛に縁取られた瞳を上目遣いに揺らしながら、消え入りそうな声で尋ねてきた。
「二鳥さんは……その……私との、子どもが、欲しいですか……?」
「ぶっ――!?」
あまりにもストレートで、純情な恋人からの問いかけに、俺の心臓は今日何度目か分からない大爆発を起こした。俺の顔は、また血がすべて沸騰したかのように熱くなる。
だけど、カカさんがこれほどの勇気を持って聞いてくれたんだ。俺は帽子の鍔をぎゅっと掴み、真っ赤な顔のまま、けれど真っ直ぐに頷いた。
「……はい。もし、俺たちの間に子どもが生まれるなら……カカさんに似た、お喋りで、優しくて、可愛い子がいたらいいなって……本気で、そう思います」
「――っ」
俺の肯定を聞いた瞬間、カカさんの頭の中で、凄まじい速度の「もしも」のシミュレーションが始まった。
「二鳥さんとの、子ども、ですか……。もし私たちの特性を引き継ぐなら、その個体は生まれつき旺盛な食欲と、高い特殊調理技能、そして二鳥さんのような精密な空間把握能力を兼ね備えた極めて優秀な個体となるはずであり、私がその子を抱き抱えながら、離乳食の成分について何時間も語り聞かせ、その横で二鳥さんが木のおもちゃを作って与えるという、そのような生活は……あ、圧倒的な多幸感です……っ!」
カカさんは自分の想像の甘さに耐えきれなくなったのか、再び「うぅ……!」と顔を真っ赤にして、長衣のフードを深く被り直して小さくなってしまった。
そんな二人の様子を、縄に縛られたまま転がっていたジジが、腫れ上がった目を細めてわざとらしく見つめた。
「ひっひっひ……おいカカ、二鳥。そう落ち込むな。ワシは以前、人間界の古い文献で、子どもにまつわる面白い話を聞いたぞ?」
「え? 何ですかジジ。ニトロの発生学における新たな知見でもあるのですか……?」
フードの中からカカさんが食い気味に問いかける。ジジはニヤニヤと笑いながら、いかにももっともらしく言い放った。
「人間界ではなぁ、子どもというのは『コウノトリ』という大きな鳥が、夜中にカゴに入れて運んで来てくれるらしいぞ? お前らも毎日窓を開けて待っていれば、そのうちコウノトリが気を利かせて、可愛い赤ん坊を落としていってくれるかもしれんのう!」
「な、何ですかその非科学的かつ突飛な運搬システムは……っ!?」
カカさんが呆気にとられる中、その隣でボコボコにされているチチが、ガハハと腫れた嘴を歪めて後に乗っかった。
「いやいやジジ、俺が聞いた話はちょっと違うぜ! 人間界の若い男女はなぁ……『ブチューと激しいキス』をすれば、それだけでお腹の中にポコッと子どもが出来るって聞いたぞ! なぁ二鳥、カカ! 子どもが欲しいなら、今すぐそこでその『キス』ってやつを試してみたらどうだ!?」
「ぶはっ――!! 違う、違うに決まってるだろチチ! キスで子どもができるわけが!!」
前世が人間の俺は、チチのあまりにもデタラメな「キスの迷信」に全力でツッコミを入れた。しかし、人間の文化を全く知らないピュアな味仙人――カカさんにとっては、その言葉は核爆弾級の衝撃だった。
「キ……っ、キス……!? 唾液の交換を伴う口腔同士の接触行為によって、新たな生命の遺伝子情報が結合し、肉体が形成されるというのですか……っ!? それはいったいどのような細胞分裂のメカニズムで――!? いえ、それよりも、今すぐここで二鳥さんとそのような、その、濃厚な接触を………!っ………!!!!!」
カカさんは羽毛を最大まで逆立て、湯気を上げながら、新居の壁に向かって完全に硬直してしまった。
「ガハハハハ! おい見ろよ、カカの奴、今すぐキスされると思って完全に固まってやがる!」
一龍兄さんが膝を叩いて大爆笑し、アカシア先生とフローゼ様も「ふふ、チチたちも本当に人聞きの悪い嘘を言うね」「でも、カカさんの反応がとても可愛らしいわね」と、楽しそうにクスクスと笑い合っている。
「チ、チチ、ジジ……!! あとで絶対に、もう一回縄をキツく縛り直してやるからな……っ!!」
俺は顔から火が出るほどの恥ずかしさに悶絶しながらも、壁際で真っ赤になって固まっているカカさんをどうやって宥めようかと、新築の我が家の中で大慌てで右往左往するのだった。
二鳥とカカの子どもなんですが…作者の中で一つ仮説を立ててあります。仮説の説明は明日になりますけどね。
皆さんはどっちだと思います?二鳥は…
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攻め?
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受け?