――心地よい揺れの中で俺の意識はゆっくりと覚醒していった。 深い浮遊感から目を覚まし、シルクハットが頭にないことに気づいて周囲を見回す。なんと、俺はアカシア様の逞しい背中に担がれて運ばれている最中だった。
アカシア様は、ほんのりと頬を染めたほろ酔いのまま、楽しい夜になったお礼として、直々に俺を我が家まで運んでくれたのだ。
「……あ、アカシア様……すみません、弟子を運ばせるなんて……」
「ははは、気にするな二鳥。本当に楽しい夜だったよ。さあ、君が建てた最高の我が家へ到着だ」
引き戸が静かに開き、アカシア様は俺を玄関へ下ろすと、優しく微笑んで夜の闇へと帰っていった。入れ替わるようにしてカカさんが駆け寄ってくる。
「ふふ、二鳥さん! おはようございます!夜ですけど…」
カカさんはふらつく俺の肩を小さな手でそっと支えてくれた。その左手の薬指には、俺とお揃いの指輪が愛おしそうにきらりと光っている。カカさんに支えられながら、俺たちはそのまま洗面台へと向かった。
1759杯ものハニーワインを浴びるように飲んだのだ。口内には強烈なアルコールの香りが残っている。俺はカカさんの手渡してくれた歯ブラシを使い、残った理性で丁寧に、徹底的に歯を磨き上げた。うがいをして、口をゆすぐ。カッと熱かった口内が清涼なミントの香りで満たされ、先ほどまでのアルコールの匂いは完璧に消え去り、これ以上ないほどいい匂いになった。
――その瞬間だった。
「――っ、二鳥さん……っ!?」
俺はおもむろに、すぐ横で心配そうにタオルを持って待ってくれていたカカさんの細い腰をガシッと力強く抱きしめた。
「ちょっと、二鳥さん!? 突然どうしたのですか? 私の生体計算にない突発的な密着なのですが……っ!」
カカさんは髪を激しく揺らしながら、一瞬で顔をボッと真っ赤に染め上げた。俺は彼女のうなじに顔を埋め、内に秘めていた最大の熱量を帯びた声でそっと囁いた。
「……ごめんね、カカさん。本当はさ、アカシア様の家にいたときから、すぐにでもこうやって、カカさんに強く抱きつきたかったんだ……」
「え……?」
「でも、あんなにたくさんハニーワインを飲んじゃったからさ。アルコールの臭い匂いのままで、大好きなカカさんに触れたくなかったんだよ。……だから、匂いを気にして抱きつかなかっただけ。俺は、ずっとカカさんのことしか考えてなかったからね」
最愛の妻…愛を隠さない妻の温かさが酒の熱と混ざり合い、俺の中の【食欲】と情愛のエネルギーを一瞬にして限界突破させていく。
「二鳥、さん……ずるいです、そんな誠実な告白は……っ」
カカさんが恥ずかしさと愛おしさで完全にシドロモドロになった、まさにその刹那。 俺は抱きしめたままの姿勢で、カカさんの軽い身体をひょいと両腕で持ち上げた。
「ひゃあっ!?」
驚くカカさんを完璧にホールドしたまま、俺は猛スピードで廊下を駆け抜け、世界一温かい我が家の寝室へと彼女を連れ込んでいく…
バタンッ!と荒々しく寝室の引き戸を閉め、俺はそのまま、柔らかいベッドの上へとカカさんの身体を乱暴に、そして決して逆らう隙を与えない強固な力で押し倒した。
「……今夜の実験は……俺が主導権を握るって……さっき約束しただろ……カカさん…?」
俺の視線がベッドの上で服を乱し、真っ赤な顔で俺を見上げている最愛の妻の瞳と、至近距離で真っ直ぐに交錯する。
「……朝まで、覚悟してね。カカさんの細胞が、俺の愛で限界を迎えるまで……絶対に解放してあげないからさ…!」
「はい……っ、二鳥さんのその重い『愛』、私のすべてを賭けて……受け止めてみせます、二鳥さん……っ!」
◆
まぶしい日差しの熱を浴びて、俺はゆっくりと意識を覚醒させた。重い瞼を押し上げて、寝室の窓から差し込む光の角度に視線を向ける。俺の精密な体内時計が弾き出したその瞬間の時刻は――なんと、既に昼を過ぎていた。
「……寝すぎた……」
そう呟き、身を起こそうとしたその瞬間、昨夜の記憶の配列が、濁流のように脳裏へと一気にフラッシュバックした。 理性が消し飛んだその刹那から始まった俺が主導権を握った『生殖可能性の検証実験』
アルコールの匂いを完璧に消した洗面台での抱擁から、ベッドに押し倒して重ねた熱。度数80%超えのハニーワインの酔いも手伝い、俺の中に理性によって秘められていた凄まじい『食欲』が大爆発してしまったのだ。
朝が来ても、文字通り灰になるまでカカさんのすべてを愛撫し、愛し尽くした、あまりにも濃厚で激しすぎたあの時間――
「っ、ああああああ……っ!」
俺は自分のあまりの大胆さと、思い出すだけで脳の構造が弾け飛びそうなほどの気恥ずかしさに、顔を一瞬で茹でたような真っ赤に染め上げた。
ふと視線を落とせば、俺の腕の中にすっぽりと収まっている最愛の妻も、俺自身も、衣服を一切身に纏っていない状態だった。つまりこの情報が昨夜の狂おしいほど甘い記憶が120%正しいものであると残酷なまでに証明しており、俺の顔の赤みはさらに限界突破を達していく。
しかし――そんな俺の腕の中で、左手を俺の胸元にそっと預けたまま眠っているカカさんは。「……すぅ……すぅ……」 髪をシーツいっぱいに散らしながら、これ以上ないほど安らかな、幸せそうな寝息を立ててぐっすりと眠っていた。
(……そっか。過剰に『検証実験』を行うと、俺の場合はエネルギーを使い果たして干からびる……だけど、カカさんの場合は、細胞の隅々まで俺の情愛が完璧に充填されて、これ以上ないほど『満たされた状態』で健やかに眠るってわけか。……うん、最高の結果だな…)
幸せそうに微笑みながら眠る妻の寝顔がたまらなく愛おしくて、俺は頭を少し軽く傾け、そっとその美しい頬に指先を触れた。
そして驚くべきことに、あれほど度数80%超えのハニーワインを大量に浴びるように呑み明かしたというのに俺の肉体は二日酔いをただの一ミリもしていなかった。ブルーニトロの代謝の構造と、カカさんの愛によるリフレッシュ効果は、本当に凄まじいらしい。
「……お疲れ様、カカさん。最高の夜を、ありがとう」
俺は愛しい妻を起こさないようにもう一度そっと腕の中に抱き寄せ、一番温かい我が家の寝室の中で、どこまでも深く、極上の幸福に満ちた愛の余韻を噛み締めていた。
そしてカカさんを起こさないよう、背中に腕を回して優しく抱きしめてから数分。腕の中で、もぞもぞとカカさんの小さな身体が心地よさそうに動き始めた。髪がシーツの上でサラリと揺れ、彼女がゆっくりと目を覚ます。
「あ、カカさん、おはよう。よく眠れ――」
俺がいつもの穏やかに朝(もうお昼過ぎだけど)の挨拶を交わそうとした、まさにその瞬間だった。
カカさんの細い両手が、すっと俺の首の後ろへと滑り込んできた。そしてそのまま逆らう隙もないほど強い力で引き寄せられたかと思うと、俺の唇には、驚くほど柔らかくて熱い彼女の唇がまっすぐに重ねられていた。
「――んっ!?」
俺は思わず目を見開いた。 カカさんの長い睫毛がすぐ至近距離で揺れている。だけど、その瞳はまだ完全には開いておらず、どこかトロンとしていた。そう、彼女はまだ完全に寝ぼけているのだ。まるで、目を覚ましたら目の前に俺がいたから、ただの『条件反射』だけでキスをしてきたようだった。
愛が深すぎるあまりの無意識の行動に、俺の胸は一瞬で熱い愛おしさで満たされる。やがて、一度ぷはっと唇が離れた。これで挨拶は終わりか――と思ったのも束の間。
「…ふぅ…んむっ…!!」
カカさんの手がもう一度俺の首元をグイと引き寄せ、まるで名残惜しむように、そのまま2度目の深いキスへと雪崩れ込んできたのだ。
(……はは。もう、本当にカカさんは愛を隠さないなぁ……)
俺はもう完全に観念して抵抗するのを諦めた。彼女の甘い体温と、重なり合う微かな音を感じながら、その熱烈で愛おしすぎる条件反射をありのまま、無抵抗に深く深く受け入れることにした。
――しかし、それから数秒後のことだった。
パチンッ!!! と、カカさんの大きな瞳が限界まで見開かれた。 頭の芯まで血流が行き渡り、寝ぼけていた脳が一瞬で覚醒したのだろう。
自分が今、衣服を一切身に纏っていない状態のまま、朝(昼)から夫に向かって猛烈な連続キスを仕掛けていたという、あまりにも破廉恥で情熱的な挨拶を完全に理解した瞬間、 バッ!!! と、カカさんはグルメ界の猛獣すら驚くようなキレで俺の胸元から飛び退いた。
「はわ……わわわわっ!?」
案の定、カカさんはシーツを胸元まで大慌てで引き上げながら、顔を一瞬で真っ赤に染め上げた。 昨夜、俺に主導権を握られて極上の幸福な眠りについたはずの妻が、今度は自分の恥ずかしさで完全に大パニックを起こしながらシドロモドロになっている。
「に、二鳥さん……っ! 今の行動は、私の脳のシナプスが一時的なバグを起こし、自律神経の計算エラーによって突発的に発生したエラー値であって、断じて私の本意では……あ、いえ、本意ではあるのですが、このような無防備な状態で連続して結合データを求めるなど、一人の妻としての気品に――っ」
「あはは! 大丈夫だよ、カカさん。カカさんの愛、全力で完璧に受け止めたからさ」
俺は真っ赤になって捲し立てる愛しい妻の姿がたまらなく愛おしくて、シーツの上からもう一度その細い身体をギュッと抱き寄せた。
「…主導権、まだ俺が握ったままでいいよね? ……さあ、カカさん。お昼ご飯の前にもう一回、『実証実験』の続きをしようか」
「……っ、二鳥さんの、ばか……っ。でも……はい、喜んで付き合います、二鳥さん……っ!」
恥ずかしがりながらも、俺の胸に嬉しそうに顔を埋めてぎゅっと抱きついてくるカカさん。誰にも邪魔されない夫婦の最高の寝室で、差し込む眩しい太陽の光を浴びながら、どこまでも甘く、どこまでも深く、俺達は身体を重ね合い続けた。
◆
前日から続くベッドでの濃厚な『検証実験』をさらにたっぷり限界まで堪能してからようやく衣服を身に纏い、遅めのお昼ご飯を済ませた。 すっかり夕方になった頃、俺とカカさんは一緒にアカシア様の家へと顔を出した。
「――よっ。みんな、お疲れ様。遅くなってごめんね」
俺がひょっこり姿を現した瞬間、並んでいた一龍兄さんと次郎が、こちらを見るなり目を「ギョッ!!」とあり得ないほど丸くして硬直した。そして次の瞬間、息の合った男兄弟の叫びが、修行場一帯に完璧にハモって轟いた。
「「――ひ、干からびてねぇぇぇえええッッ!!!」」
「何だよ突然。失礼なやつらだなぁ」
俺が苦笑いしていると、俺の姿に気づいた三虎がトコトコと嬉しそうに駆け寄ってきた。三虎は、昨日の朝のように身体の水分を失ってシワシワになるどころか、むしろお肌がツヤツヤで全身から【スッキリ】とした爽快な生気が溢れ出している俺の姿を見て、心の底からほっと胸を撫で下ろした。
「……よかった。二鳥の兄者、干からびてない……カカ、昨日の約束を守って、兄者にちゃんと優しく『検証実験』をしてくれたんだな……っ! 嬉しいぞ……っ!」
小さな手をきゅっと握り締め、ピュアな瞳を輝かせて大喜びする三虎。しかし、カカさんはその純粋すぎる直訴を思い出して背後で「はわわ……っ」と再び一瞬で顔を真っ赤にしてフリーズしている。
そんな可愛い妻を愛おしそうに見つめながら、俺は三虎の頭をひと撫でし、悪戯っぽく不敵に微笑んで教えてやった。
「ううん、三虎。カカさんは全然優しくなんてしてくれなかったよ? 何しろ、その『検証実験』……さっきまでずっとぶっ続けで続いていたからね?」
「……えっ!? さっきまで……!?」
三虎が驚愕のあまり目を丸くする。そんな新しい弟に向けて、俺はこれ以上ないほど堂々と胸を張って語りかけた。
「不思議かい? だけどな、三虎。これこそが――【愛の力】ってやつなんだよ!」
「「――んなわけあるか、このバカップルがぁああああッ!!!」」
一龍兄さんと次郎の、本日2回目の全力の否定が綺麗にハモった。
「さっきまでぶっ続けって、あんたらの生体スペックはどうなってんだよ!」と次郎が戦慄し、一龍兄さんも「弟に変な常識を植え付けるんじゃねえ!」と頭を抱えている。
そんな俺たちの騒がしい、だけどこれ以上ないほど温かいやり取りを、奥の特等席から見守っていた美食神アカシア様が、やれやれと肩をすくめながら、何とも言えない苦笑いを浮かべて歩み寄ってきた。
「ふふふ……。いやはや、二鳥、カカさん。昨夜の虹の実ハニーワイン飲み比べ勝負では、私が見事に大勝利を収めたはずだったのだがね……」
アカシア様は、まだほんのりと頬を染めて俺の後ろで俯いているカカさんと、完全にリフレッシュされて無敵のオーラを放っている俺の姿を交互に見つめ、顔を引きつらせながら呟いた。
「どうやらそっちの……夫婦の愛の領域に関しては、私であっても生涯、絶対に勝てそうにないな…」
「あらアカシア。あなたも私への愛なら、いつだって負けていないわよ?」
フローゼ様が優しく微笑みながらお茶を運んできてくれて、アカシア様は慌てて「あ、ああ、もちろんさ、フローゼ」と照れくさそうに顔を赤くしていた。どうやら美食神であっても、奥様への愛の前には形無しらしい。
「さあ三虎! 兄者の愛の強さが証明されたところで、今日からまた、一龍兄さんたちと一緒に人間界の相続修行、死ぬ気で張り切っていこうぜ!!」
「うん……! 俺、二鳥の兄者みたいな、愛の力を持った凄い男に絶対なる……っ!」
「三虎ぁ!お前はそこを絶対に真似するんじゃねえ!!」
何度もいうぞ。二鳥にチ◯コは生えていません。つまりヤッてはいません。
皆さんはどっちだと思います?二鳥は…
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攻め?
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受け?