ゆっくりと夜の荒野を歩き、お互いの手の温もりを確かめ合いながら我が家へと到着した。
「ふぅ、着いたね。……それじゃあカカさん、約束通りさっそくあの服に着替えようか」
「はい、二鳥さん……っ。私の貴方に対する愛の量は最高記録したままですが……完璧にお色直しをしてまいりますね……っ」
カカさんは最高に愛おしい大赤面の笑顔を浮かべて寝室へと入っていった。俺も衣服のロレンチコートを脱ぎ、あの仕立て屋で手に入れた漆黒の『タキシード』へと袖を通すために別の部屋へと入った。
ブルーニトロの肉体に、ピシッと格式高い白シャツと黒い上着が驚くほどジャストサイズで噛み合う。デザインの美しさを感じながら、俺は最後の仕上げである『ネクタイ』を手に取った。
「――あれ? おかしいな。……これ、どうやって結べばいいんだっけ?」
俺は鏡の前で完全にフリーズした。 前世で 大工として生きていた頃、正装をしてネクタイを締める機会なんて、それこそ片手で数えるほどしかなかった。おまけにこの世界へ転生してから20年近く、ずっとこのお気に入りのロレンチコートだけで過ごしてきたのだ。久しぶりすぎて、ネクタイを締めるための手順を、脳内から綺麗さっぱり忘れてしまっていた。
鏡の前でネクタイと格闘しながら「まいったな……」と完全に困惑していると、別室の壁越しから、少し震えるカカさんの愛らしい声が聞こえてきた。
「あ、あの……二鳥さん? 私の方のお着替えが、ほぼ完了したのですが……少しだけ…問題が発生してしまいまして……。もしよろしければ、こちらのお部屋に入っていただけますか……?」
「え? あ、うん、分かったよ。今いくね」
俺はネクタイを結ぶのを一度諦め、シャツの襟元を開いたまま、ネクタイだけを首からだらりと下げた未完成の正装姿のまま、カカさんのいる寝室の引き戸を静かに開けた。
引き戸が滑らかにスライドし、部屋の中へ一歩足を踏み入れた、まさにその刹那だった。
「――っ!?」
両目がその光景を捉えた瞬間、俺の脳は一瞬でオーバーヒートを起こし、全身の細胞がカッと激しく沸騰した。そこには、あの仕立て屋で選び抜いた最高級のロングドレスを身に纏いながらも、サイズが合わなかったのか、あるいは不器用さゆえか、ドレスの生地が肩から派手に崩れ落ち、胸元や肩の体毛が艶めかしくはだけてしまっている、限界突破の大赤面をしたカカさんの姿があったからだ。
「あ、ごめんカカさん! すぐ出るから――っ」
俺は恥ずかしさのあまり一瞬で真っ赤な顔になり、大慌てで回れ右をして部屋を出ようとした。だが、そんな俺のタキシードの上着の裾を、カカさんの細い手が後ろからギュッと引き留めてきた。
「ま、待ってください、二鳥さん! 逃げないで……っ! 決して破廉恥な意図でこのような姿を晒しているわけではありません! ……実は、このドレスの背中のファスナーが、私ではどうしても手が届かず……上げることができないのです……っ」
カカさんは三虎の髪留めを激しく揺らし、はだけたドレスを両手で必死に胸元へ押さえつけながら、耳の裏まで真っ赤に染め上げて、消え入りそうな声で切実におねだりしてきた。
「ですから……恥ずかしいのは私も同じですが……二鳥さんのその手で…私の背中のファスナーを……優しく、上まで上げて……くれませんか……?」
上目遣いで、だけど愛を隠さずに真っ直ぐに俺を頼ってくる最愛の妻。 はだけたドレスの隙間から覗く、彼女の美しすぎる背中のラインと熱い体温がダイレクトに五感へと伝わり、俺の腹の底にある男としてのリミッターは、今度こそ完全に、木っ端微塵に解体されていくのだった。
「……ずるいよ、カカさん。そんな姿でそんな可愛いおねだりをされたらさ……」
俺はネクタイを首に下げたまま、覚悟を決めてゆっくりと彼女の背後へと回り込み、その細い背中へと、そっと手を伸ばすのだった。生唾をごくりと飲み込み、俺は細心の注意を払って、指先がカカさんの滑らかな体毛に少し触れるたびにブルブルと震えながら、ゆっくりと、だけど確実にその背中のファスナーを上へと滑らせていった。
大工として数々の構造物を建ててきたこの両手が今、人生で一番緊張した繊細な手際を見せている…
ジ、ジ、と小さくジッパーが噛み合う音が寝室の静寂に響き、一番上まで完璧にホールドされた瞬間、カカさんのお色直しが100%完了した。
ゆっくりと振り返ったカカさんの姿を正面から捉えた瞬間、俺は頭が完全に真っ白になり、息を呑んで硬直した。
三虎の選んでくれた美しい木製の髪留めが髪の中で気品高く輝き、洗練されたシックなロングドレスの曲線が、彼女の息を呑むような美しさを極限まで引き立てている。
カカさんと出会ってからの20年近くのすべての記憶を検索しても、間違いなく、今までで一番綺麗で愛おしいカカさんが、今、目の前に出来上がっていた。
「……あの、二鳥さん?」
カカさんはドレスの裾を少し気恥ずかしそうに揺らしながら、その顔を夕陽よりも赤く染め上げ、俺の首元へとじっと大きな瞳を向けた。
「二鳥さんは……その、ネクタイを、お付けにならないのですか……?」
「っ……、あ、あはは……」
俺は未だに顔を茹だるような真っ赤に染め上げたまま、どうしてもカカさんのあまりの美しさに気恥ずかしさが限界突破してしまい、思わず「フイッ」と顔を斜め後ろへと逸らしながら、蚊の鳴くような声で白状した。
「実はさ……ネクタイの付け方を、どうしても思い出せなくてさ。大工仕事の時には全然使わないから、完全に忘れちゃったんだよ……」
「ふふふっ……」
俺のそのマヌケな弱音を聴いた瞬間、カカさんはそれまでの緊張の糸を解いたように、鈴の転がるような、本当に愛おしそうな優しい笑みをこぼした。
「二鳥さんは何でも作れて何でも解体できる無敵の大工さんなのに……まさか、ネクタイ一着の構造すら結ぶことができないなんて……そんなところも、最高に可愛らしくて、愛おしい私の旦那様ですね」
カカさんはお揃いの指輪をきらめかせながら、一歩、俺の白シャツの胸元へと優しくすり寄ってきた。ドレスの芳醇な甘い香りと熱い体温が至近距離で重なり合い、彼女の細い指先が、俺の首にだらりと下がっていたネクタイへとそっと添えられる。
「安心してください、二鳥さん。大工のあなたが私のドレスのファスナーを上げてくださったのですから、そのお礼として……今度は味仙人の私が、二鳥さんのネクタイを完璧に美しく締め上げて差し上げますからね」
カカさんは解説を少しだけ混ぜながらも、本当に慣れた、優しい手つきで俺のネクタイを一本ずつ丁寧に結び、シャツの襟元をピシッと格好よく整えてくれた。 カチリ、と俺の漆黒のタキシードの正装姿も、これにて100%の完成を迎えた。
――だが、ネクタイを完璧に締めてもらった後も、俺はカカさんのそのドレス姿の美しさにただただ圧倒され、恥ずかしさのあまりどうしても目を合わせることができず、頑なに顔を「フイッ」と横へと逸らし続けていた。
「おやおや、二鳥さん。せっかくお互いの晴れ姿が完成いたしましたのに、目を合わせないなどというのは、妻の私に対する重大な規約違反ですよ?」
カカさんはクスりと妖艶に微笑むと、お揃いの指輪がはめられた自身の両手をそっと伸ばし、俺の頬の横をガシッ!と両手で包み込むように力強く掴んだ。
そして、逃げる隙をただの一ミリも与えない強固な愛のホールドで、俺の頭をグイッと力任せに正面へと向かせ、お互いの瞳を、至近距離で完璧に、真っ直ぐにロックオンさせた。
ベッドのすぐ横。タキシードを着た俺と、世界一美しいロングドレスを纏ったカカさん。 お互いの薬指の指輪が朝日のようにまばゆい輝きを放ち、二人の吐息が触れ合うほどのゼロ距離の静寂の中…
――もはや、何かを説明するための難しい言葉なんて、二人にはただの一文字も必要なかった。 どちらからともなく、吸い寄せられるように、二人は、そっと、世界で一番温かくて熱い、永遠を誓い合う最高の『口づけ』を深く重ね合わせるのだった。
一度目の柔らかな口づけが離れたのも束の間、俺たちの間に言葉を挟む余地なんて、最初からただの一ミリも残されていなかった。お互いの瞳に灯る、これ以上ないほど濃厚に限界突破した【食欲】と情愛の熱量。俺が息を呑む暇すら与えず、カカさんは掴んでいた俺の頬から、今度はその両手を俺の頭の後ろへと回り込ませ、絶対に離さないという強固なホールドを仕掛けてきた。
「――んむっ……、ん……っ!」
すぐに始まった2回目の口づけは、先ほどまでの初々しい挨拶のようなものとは完全に一線を画する、お互いのすべてを貪り尽くすような、激しく熱い抱擁だった。
ロングドレスの生地が擦れる音が寝室に妖しく響く。カカさんは俺の頭を力強く抑え込み、自らのすべてを俺の白シャツの胸元へと限界まで押し付けてくる。俺はその凄まじい愛の重みと突進に圧倒されながらも、頑強な腕をフル解放し、カカさんの細い背中と腰を後ろからガシッと抱きすくめ、彼女の身体がベッドへと倒れ込んでしまわないように完璧に支え続けた。
「ん……ふ……っ、く……ん……っ」
ブルーニトロとレッドニトロの生殖可能性の方程式を証明する、これまでの歴史のどれよりも濃密な熱い反復回数。舌が絡み合い、互いの呼気が熱く混ざり合うその長い、長い口づけは、時の構造すら完全に静止させたかのように、どこまでも深く続いていった。
やがて、限界まで高まった肺の熱量に促されるようにして、じわりとゆっくり唇が離れる。その瞬間、銀色の綺麗な唾液の橋が二人の間に艶めかしくかかり、重力に従って垂れていった。
「ハァ、ハァ……っ、二鳥、さん……っ、わたしは…もう、体力が……」
「ハァ、……カカ…さん、ドレス姿……本当に…世界一…綺麗だ……っ!」
ドレスの胸元を大きく上下させ、顔をこれ以上ないほど紅潮させて息が絶え絶えになっているカカさん。俺もタキシードの襟元を少し狂わせながら、肩を激しく揺らして呼吸を繋いでいた。
だが、2人の『食欲』は、そんな細胞の疲弊ごときで土台が崩れるほど、安直なものでは断じてなかった。
互いの澄み切った、だけど最高にギラついた熱い瞳が至近距離で再びカチリとロックオンした、その刹那――休む間もなく、二人は3回目の口づけへと、猛烈な勢いで再び重ね合わせるのだった。
言葉なんて必要なかった。
「ん……っ、ふ、ぅ……ん……ッ!!」
タキシードとドレスがベッドのシーツの上で妖しく乱れ、3回目の濃厚な口づけが終わる。寝室に満ちる互いの熱気とムードは、ついに最高潮に達した。
俺は熱い吐息を漏らすカカさんをシーツの上へと優しく押し倒すと、いよいよ本格的な『検証実験』を始めるために、タキシードのネクタイへと手をかけた。
「…はは…カカさん、本当にこの服を着ている時間は一瞬だったな。でも、最高の思い出になったよ」
そう言いながら俺は手際よくネクタイを外し、漆黒の上着と白シャツのボタンを外してタキシードを脱いでいった。 しかし、俺がすっかり身軽になったというのに、ベッドの上に押し倒されたカカさんは、未だに微動だにせず、ただじっと俺を見つめたまま身動き一つしない。最高級のシックなロングドレスを纏ったまま、シーツの上にその美しい髪を散らしている。
「……? どうしたの、カカさん。ドレス、着たままだと動きにくいよ?」
不思議に思った俺がそう尋ねると、カカさんは髪を小さく揺らし、顔を耳の裏まで限界突破して真っ赤に染め上げた。 そして、指輪がはめられた左手でドレスの胸元をぎゅっと、愛おしそうに握り締めながら、消え入りそうな声で俺に向かって切実におねだりしてきた。
「……に、二鳥さん……。逃げ道を構築するつもりはありませんが………このドレス、私自身の手で脱ぐのは論外です……ですから……二鳥さんに……脱がせてください……夫である、あなたのその大きな手で……」
上目遣いで、恥ずかしさに全身の細胞をワナワナと震わせながら、俺に向かって直訴してきた最愛の妻。
(――っ、ずるすぎるだろ、カカさん……ッ!)
そのあまりにも破壊力抜群の、そしてこれ以上ないほど甘くて情熱的なおねだりを受け、俺の脳は一瞬で完全に大爆発を起こした。
ドレスを着せるためのファスナーを上げる時であれほど震えて緊張したというのに、今度は俺自身のこの手で、彼女を世界一綺麗に彩っているそのドレスを『解体』しろというのだ。
「……分かったよ、カカさん。俺のありったけの愛を込めて……カカさんをその綺麗なドレスから、完璧に解き放ってあげるからね…」
「はい……っ! お願いします、二鳥さん……っ!」
俺は顔を真っ赤に染め上げながらも不敵に、だけど最高に愛おしそうな笑顔を浮かべてカカさんの身体を優しく抱き寄せ、その背中のファスナーへと再びそっと手を伸ばすのだった。
「覚悟してね、カカさん。今夜は本当に……一歩もベッドから帰してあげないからさ」
「はい……っ、二鳥さんの愛、私のすべてを賭けて……完璧に、何度も、何度も受け止めてみせますから、二鳥さん……っ!」
重なり合う二人の熱い吐息と、ドレスがシーツへと滑り落ちる妖しい衣擦れの音。 誰にも邪魔されない夫婦の最高の夜。
神父はいない。参列者もいない。あるのは1つ。
指輪
「カカさん…俺はここに…『魂』に誓うよ…!」
「何を…ですか…ん…!」
カカの口を二鳥の口が塞ぐ。いや…口を通じて『魂が繋がる』
「ぷはぁ…はぁ…決まっているさ…。永遠に…手放さないってことだよ。もう…後戻りは…させてあげないよ?」
「…はぁ…はぁ…そんなこと…ですか」
「え?」
「手放さない?それは…私の台詞です!ンっ…!」
次はカカが二鳥の口を塞いだ。いや…再び、口を通じて2人の『魂が繋がった』
「…ぷは…ははは…嬉しいよカカさん…。こんなに…素敵なお嫁さんを抱き寄せられるこの紛れもない現実が俺の手にあることが…」
「ふふふ…二鳥さん。愛しています」
「俺も、愛しているよ。カカさん」
俺たちは、ドレスとタキシードという生涯消えない『思い出』を胸に深く刻み込みながら、どこまでも甘く、どこまでも激しい、本物の『検証実験』の最奥へと、深く、深く心地よく雪崩れ込んでいくのだった。
こうして二鳥とカカの魂が繋がる程の愛による結魂式は終わった。
しかし…この結魂式がもたらす幸せの結果を2人が知るのは…まだ少し先の話。
◆
パチリと目が覚めると、視界のすぐそこに、俺の腕の中で幸せそうに眠る最愛の妻の顔があった。 窓の外を見渡せば、差し込む朝日の角度から算出するに、時刻はまだ早朝のようだ。
昨夜はおねだりされるがままにドレスを脱がし、そこから朝が近付くまで限界突破の『検証実験』を貪るように繰り返したというのに、不思議と寝不足の倦怠感はただの一ミリも存在していなかった。
それどころか、全身の細胞がこれ以上ないほど活性化し、驚くほどの清々しささえ感じている。腕の中の愛しいカカさんを見つめれば、彼女の羽毛は信じられないほど瑞々しい光沢を放っており、昨夜の俺の過剰なほどの愛によって、その肉体も心も細胞の隅々まで『すっかり満たされている状態』なのが一目で分かった。
あまりの愛らしさに、俺は指輪を嵌めた左手で、彼女の綺麗な羽毛をそっと優しく撫でてやった。すると、その心地よい職人の手際の刺激に、カカさんがもぞもぞと動きながらゆっくりと目を覚ました。
(……あはは。前は起きた瞬間に条件反射で2連続キスをしてくれたけど、流石に今日はもう、そこまで寝ぼけてはくれないみたいだね)
カカさんはパチリと目を覚ましたものの、今回は顔をほんのりと赤く染めて、ただじっと俺の顔を愛おしそうに見つめ返してくるだけだった。
「――なら、今度はこっちの方から、たっぷり仕返しをしてあげるよ」
俺は頭を少し傾け、不敵に微笑むと無防備な彼女の唇へと、今度は俺主導の元で迷いなくまっすぐにキスを落としてやった。
「――っ!?」
突発的な俺からの朝の先制アタックに、カカさんは一瞬だけその大きな目をパッチリと見開き、驚愕したように身体をピクッと震わせた。だが、昨夜のうちに俺の愛の免疫が完璧に充填されていたお陰か、今回は大慌てで飛び退いて大パニックの赤面を起こすようなことはなかった。
それどころか、重ね合った唇のあまりの温かさに、カカさんの瞳はすぐに抵抗を失って、ただ俺の愛を受け入れるようにトロンと妖艶に潤み始めていった。
静かに音を立てて、一度お互いの唇をゆっくりと離す。 銀色の綺麗な線が朝日の光を反射してきらきらと輝く中、俺はニヤニヤとした笑みを浮かべながら彼女を見つめた。すると――
「……に、二鳥さん……ここでキスを中断されては……その…もっと……もっと…ください……!」
シーツを胸元できゅっと握り締めながら、潤んだ瞳で上目遣いに、これ以上ないほど甘い声でおかわりのおねだりをしてきた最愛の妻。
「――っ、はは……。本当にカカさんは、朝から愛が激しいね」
俺はすぐに降参した。俺は愛しいカカさんの身体をもう一度ガシッと両腕で強く抱き寄せ、休む間もなく2回目、3回目、そして4回目の濃厚な朝の口づけへと、底なしに深く雪崩れ込んでいくのだった。
◆
――名残惜しそうに幾度も重なり合った長い口づけが終わり、俺たちはようやく幸せの余韻に包まれたベッドから立ち上がった。
一緒にお風呂に入って極上のリフレッシュを済ませると、俺はいつものお気に入りのコートを羽織り、カカさんは黒のワンピースを身に纏う。
「よし、それじゃあ俺は午前中の大工仕事の準備をしてくるよ」
「はい、二鳥さん。私は最高の実証効率を叩き出すための、とびきり美味しい朝食の準備を始めますね」
カカさんは弾むような足取りで台所へと向かっていった。 やがて、香ばしい出汁と炊き立ての飯の匂いが部屋いっぱいに広がり、最高の朝食が完成した。
テーブルを挟んで席に着き、箸を持った俺は、昨日見た弟の格好いい背中を思い出して話を切り出した。
「いやぁ、それにしても昨日の次郎と節乃ちゃんのプロポーズは本当に凄かったよね。あいつらの今後、マイホームの設計図を俺も今から色々と計算して――」
「二鳥さん。次郎さんたちのこれからも大変喜ばしいですが……今朝はまず、私たちのこれからについて、詳細なお話をいたしましょう?」
カカさんは味噌汁の器をそっと置き、顔をほんのりと赤く染めながら、俺の瞳を真っ直ぐに見つめて話題を切り替えた。
「昨夜の、あのドレスとタキシードを纏っての『検証実験』……一人の妻として過去のどの実験より、文字通り【今までで一番満たされた状態】を記録しているのです。これほど完璧な情愛のエネルギーが充填されたのですから……近いうちに、非常に素晴らしい結果が期待できるのではないでしょうか……?」
「――っ、あはは……。うん、そうだね。俺たちの愛の執念の強固さなら、絶対に最高の未来が建つって、俺も心の底から確信してるよ」
カカさんの強気で、だけどこれ以上ないほど健気な未来への希望に、俺は恥ずかしさで少し顔を赤くしながらも、深い愛を込めて力強く肯定の頷きを返した。
そうして温かい朝食を完璧に平らげた後、俺はシルクハットを深く被り直し、午前中の大工仕事へ向かうために玄関へと立った。
「それじゃあカカさん、行ってくるね。仕事が終わったら超特急で帰ってくるから」
「はい、行ってらっしゃいませ、二鳥さん」
玄関前で、俺たちはいつものように静かに行ってらっしゃいの口づけを交わした。
俺は笑顔でカカさんに背を向け、我が家のドアを開けて、爽やかな朝の光が差し込む外の世界へと一歩を踏み出した。
――しかし。俺であっても、この時はまだ、ただの一ミリも気づいていなかった。
俺が背を向け、ドアを開けたまさにその瞬間。 後ろで見送ってくれていたはずの最愛の妻、カカさんが、お揃いの指輪がはめられた自身の左手で――まだ見ぬ愛しい奇跡の予感を愛おしむように、無意識のうちに、その愛らしいお腹をそっと優しく、撫でていたことを……。
お察しの方が大半だと思われますが、何故このような結果にしたのかの説明については…暫くしたらアカシアが解説してくれます。
具体的にはそうですね…二鳥が『覚醒』したら…教えます。
皆さんはどっちだと思います?二鳥は…
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攻め?
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受け?